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読書感想文2007 part 1
「読書感想文2007」 part1 は、1月〜2月の読書録です。
↓ Click NOVEL mark !
巷説百物語 (京極 夏彦著、角川文庫)
作品の紹介
江戸時代のお話。 7編を集めた短編集。 「百物語」というくらいだから
怪談にまつわるお話なのだけれども、怪談そのものではない。 闇の仕事を
依頼された必殺仕事人的な一味が怪談を利用して事件を解決するというスタイル。
時代小説と怪談とミステリー小説を全部楽しめる趣向。 しかも、どの作品も
ストーリーのクオリティーが高い。 秀逸な一作。 続編も出ています。
僕のオススメ度:8.5
法月 綸太郎の本格ミステリ・アンソロジー (法月 綸太郎著、角川文庫)
作品の紹介
人気のミステリー作家、法月 綸太郎氏がセレクトした12編のミステリーを収録。
日本、アメリカ、イギリスの作品が4編ずつという構成。 密室殺人を3編、他にも
犯人当ての(クイズ)形式のものやちょっと毛色の変わった短編まで、ひじょうに
バラエティーに富んだミステリーが集められています。 とは言え。 初心者には
ちょっと、とっつきにくい作品があるかもしれません。
「本の雑誌」 2005年度おすすめ文庫 「国内ミステリー部門」 第2位。僕のオススメ度:7
不自由な心 (白石 一文著、角川文庫)
作品の紹介
30代半ばの江川は、妹から夫が会社の女性と不倫しており、離婚を考えている
と告げられる。妹の夫は、江川の会社の後輩だった。江川は、妹の夫、そして
相手の女性と話をしようとするのだが、自分に、その資格があるのかと自問する。
江川自身も、結婚後、複数の女性と関係を持ち、それが原因で妻が交通事故を
起こし、車椅子の生活となっていた・・・・・・。
表題作(「不自由な心」)を含む5編を収録。表題作以外の作品もレベルが高いです。
たとえば、末期がんで余命半年の宣告を受けた40代の男が妻と娘を家に残し、
かつての不倫相手の女性を訪ねる話。 たとえば、結婚した、かつての不倫相手と
再会し、帰りの飛行機で事故に巻き込まれる男の話などが収録されています。
どの話も、30代〜40代のビジネスマンが主人公で、不倫が出てきます。でも、単純な
不倫小説ではなく、ほんとの愛、幸福、そして、命の意味などを問いかける深み
のあるつくりです。 僕のオススメ度:8
家守綺譚(いえもりきたん) (梨木 香歩著、新潮文庫)
作品の紹介
今から100年と少し前のお話。 売れない小説家、綿貫 征四郎は、亡き友、
高堂の父から家の管理人(=家守)として、自分の代わりに家に住んで
くれないかと頼まれる。 綿貫は、その家で一人暮らしを始めるが、そこは
掛け軸から親友 高堂の幽霊が出てきたり、池に河童が、木に小鬼が現れる
ふしぎな世界だった・・・・・・。
そんな世界を28編の短編で描いています。 他にも、人を化かす狐や狸、
かわうそが出てきたり、龍や人に恋する木が登場します。 とは言え、気味の
悪い話ではなく、人がまだ、そういうふしぎな存在と共に生きることができた
おおらかさがふわりと描かれています。
「本の雑誌」が選ぶ2004年度ベスト10 総合 第6位。
「2005年 本屋大賞」 第3位。 僕のオススメ度:8.5
ライオンハート (恩田 陸著、新潮文庫)
作品の紹介
17世紀のロンドン、19世紀のフランス、20世紀のパナマ、そして、ふたたび
20世紀のロンドン。 時と空間を超えて、巡り会う一組の男女。 けれども、
二人が会えるのは、一生のうちでほんのわずかな時間。 立場や年齢もまちまち。
決して結ばれることのない運命だが、二人は何度も巡り会う・・・・・・。
ただの不思議なラブストーリーではなく、なぜ二人がこういうことになったのか、
ちゃんと解説してくれるし、オチもあるので、安心して(?)お読みください。
僕のオススメ度:7.5
慟哭 (貫井 徳郎著、創元推理文庫)
作品の紹介
東京郊外で幼女の誘拐殺人事件が連続して発生する。 捜査本部を指揮する
捜査一課長の佐伯は、同じ年頃の娘を持つ父親として胸を痛めていた。
一方、娘を亡くした松本という男が、新興宗教にのめり込み、死んだ娘を復活
させるべく、黒魔術の儀式を習得しようとしていた・・・・・・。
物語は、事件を指揮する佐伯の苦悩と、娘の復活を信じる松本の苦悩を、交互に
語っていきます。 じゃあ、犯人は松本かな、、、と考えながら読んでいると、
驚愕のラストが・・・・・・。 物語全体がだまし絵みたいなミステリーです。
きっと引っかかります。 僕のオススメ度:8
プリズム (貫井 徳郎著、創元推理文庫)
作品の紹介
子どもにとても人気のある小学校の女性教師が自室で死体として発見される。
何者かが部屋に侵入した形跡は残っていたが、事故か他殺か判然としない状況
だった。 しかし、司法解剖の結果、彼女が睡眠薬入りのチョコレートを食べて
いたこと、そのチョコの送り主が同僚教師であることがわかり・・・・・・。
この作品は、4つの章で構成されています。 最初の章は、彼女の教え子の男子
が語り手。 次の章は、同僚の女性教師。 第三章は、学生時代の元恋人。
そして、最終章の語り手が、現在の不倫相手の男性です。 章が進むうちに、
教師としての彼女の「表の顔」とは別の顔や過去が次々に明かされています。
同時に、語り手たちが、事件の真相を探ろうとし、さまざまな仮説を構築するの
ですが、核心に迫りそうで迫れずに物語が進んでいきます。 僕のオススメ度:7.5
風の影(上)(下) (カルロス・ルイス・サフォン著、集英社文庫)
(上)
(下)
作品の紹介
1945年のバルセロナ。 10歳の少年、ダニエルは古本屋を営む父に連れられて、
「忘れられた本の墓場」を訪れる。 そこで、彼が手にしたのは「風の影」という、
バルセロナ出身の作家、フリアンの著書だった。 謎の作家、フリアンに興味を
抱いたダニエルは、フリアンの過去を調べ始める。 しかし、それが、フリアンに
関わる人たちの友情と憎悪に満ちた数奇な世界に足を踏み入れることを意味する
とはダニエルは知る由もなかった・・・・・・。
物語は、すべての謎が明らかになる9年後まで続きます。 ミステリーをベースに
しながらも、青春小説、恋愛小説の要素も持ち合わせた物語です。
スペインで生まれた物語は、37カ国で翻訳され、500万部を突破するセールスを記録
記録しました。 僕のオススメ度:8
すべてがFになる (森 博嗣著、講談社文庫)
作品の紹介
天才ソフト開発者の真賀田(まがた)四季に会うために孤島の研究所を訪れた
大学助教授の犀川(さいかわ)と学生の萌絵(もえ)。
ところが、四季は密室で殺害され、続いて、研究所の所長も殺害される。
犀川と萌絵は、事件の謎に挑むが、密室のトリックが解けない。 そんな矢先、
第三の殺人が発生し、事件はますます謎を極める・・・・・・。
「理系ミステリー」のジャンルを確立した話題作。 その名の通り、タイトルの
意味は、文系の僕には、想像もつかないものでした。
トリックも精緻で、予想のつかないまさかの結末。 読み応え十分でした。
96年 第1回「メフィスト賞」受賞にて著者のデビュー作。 僕のオススメ度:8.5
テロリストのパラソル (藤原 伊織著、講談社文庫)
作品の紹介
新宿の場末のバーの雇われマスター兼バーテンの島村(菊池の偽名)は、40代半ば
にしてアル中だった。 ある日、新宿中央公園で彼は大量殺戮爆弾テロに遭遇する。
幸い、無事で済んだが、死者の中に、学生時代の学生闘争の同志だった男性と女性
の名前を発見する。 そして、その女性のひとり娘、塔子と事件の謎を追うのだが、
菊池は、指名手配で警察から追われる身となる・・・・・・。
読み応えたっぷりの本格ミステリーです。 物語の構成も、人物造形もすばらしい。
菊池は、事件を追う内に、二十数年前、自らが偶然関わった爆弾事件と今回のテロ
とのふしぎな連鎖に巻き込まれていきます。 ぐいぐい引きつけられるドライブ感。
そして。 クライマックスのどんでん返しには「やられた」っていう感じでした。
95年「江戸川乱歩賞」受賞。 96年「直木賞」受賞。 僕のオススメ度:8.5
エコノミカル・パレス (角田 光代著、講談社文庫)
作品の紹介
34歳の私は、年下の男と同棲中。 細々とフリー・ライターの仕事を続けてはいるが、
生活のためにバイトをせざるを得ない。 ある日、同棲相手の男が会社を辞めてしまう。
けれども、彼は職探しを始めようとしない。 そんな時、ひとまわり以上も年下の大学生
から偶然かかってきた電話がきっかけで、彼と会うようになり・・・・・・。
主人公の女性も、同棲相手の男性も、若いときは好き勝手生きればいいさ、という考えで
生きてきました。 事実、仕事にもお金にも困ることはなかったし、一年間、東南アジアで
きままな放浪の旅を経験するわけです。 けれど、日本に戻ってからは、不況も災いし、
なんか思うようにいかない。 家賃や公共料金の支払いにも悩む毎日の中で、時代の変化と
自分の変化を実感せざるを得ない。 そんなせつなさが描かれていました。
「本の雑誌」 2005年度おすすめ文庫 「現代文学部門」 第2位。 僕のオススメ度:7.5
陰の季節 (横山 秀夫著、文春文庫)
作品の紹介
表題作(「陰の季節」)を含む計4編の短編を収録したミステリー作品集。
警察系のミステリーですが、刑事が主人公ではなく、管理部門の警察官が主人公に
なっています。 そして、管理部門の警察官が対峙するのは、同じ警察内部の人間です。
警察官 vs 警察官の心理的な駆け引きが見所の秀作。
表題作は第5回「松本清張賞」受賞。 僕のオススメ度:8.5
海の稜線 (黒川 博行著、創元推理文庫)
作品の紹介
高速道路で車が爆発して、男女の焼死体が発見された。 その六日後、マンションの一室で
火災が発生。焼け跡から男性の死体が発見される。 しかし、この二つの事件は、単なる
殺人事件ではなく、ある海難事故からつながっているものだった・・・・・・。
著者初期の警察小説の傑作です。 舞台は大阪府警捜査一課。 叩き上げの五十代の刑事、
三十歳目前の地元の刑事に、東大卒の新人キャリアがからんで、ある時は地道に、そして
ある時は大胆に事件の核心に迫っていきます。 おもしろかったけど、頭の中を整理しながら
読まないと、ちょっとついていけなくなるかも。 僕のオススメ度:8.5
千里眼 運命の暗示 (松岡 圭祐著、小学館文庫)
作品の紹介
「千里眼」シリーズの第三弾。 話としては、第二弾「千里眼 ミドリの猿」の後編という
位置づけです。 ※「ミドリの猿」は「読書感想文2006(6)」をご参照ください。
前作のラストで、中国が日本に宣戦布告するという危機を生み出した敵、メフィスト・
コンサルティングに捕らわれた天性のカウンセラー、岬 美由紀。 彼女を救出するために
盟友のカウンセラー、嵯峨と刑事の蒲生が東京湾の無人島に向かう。 二人は、ようやく
ヘリコプターで美由紀を発見するが、そのヘリは三人を乗せて、中国に向かう・・・・・・。
「千里眼」シリーズは、主人公の美由紀が元航空自衛隊の戦闘機パイロットという設定で
あり、心理学を軸にしながらも、スケールの大きな事件に立ち向かう彼女の姿を描いて
います。 この作品も、アクションたっぷりで、エンターテイメント色の強い映画的な
仕上がりになっています。 僕のオススメ度:8
後催眠 (松岡 圭祐著、小学館文庫)
作品の紹介
「催眠」シリーズの第二弾。 でも「催眠」の数年前を描いています。
25歳の絵美子は、かつて神経症と診断されたが、精神科医 深崎の熱心な治療により、
いったんは完治した。 しかし、ある事件をきっかけにふたたび神経症に戻りそうに
なってしまう。 そんなとき、数年ぶりに深崎が絵美子を訪ね、サポートする。
だが、深崎は食道癌に冒され、余命いくばくもない状態だった・・・・・・。
ラストは、けっこうびっくりします。 僕は、なるほどねと許せたけど、納得いかない
人もいるかもしれませんね。 僕のオススメ度:7
読書感想文2006-(6)へ
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