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読書感想文2009 part 1
「読書感想文2009」 part1 は、1月〜2月の読書録です。
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陽気なギャングの日常と襲撃 (伊坂 幸太郎著、角川文庫)
作品の紹介
人気を博した「陽気なギャングが地球を回す」の続編。 今回は、前半が主人公四人に一人ずつ
スポットをあてた短編(×4)。 そして、後半が四人組の襲撃という構成。 まさにタイトル通りの
つくりになっています。 一見、前半が主人公の日常、後半がメインディッシュの襲撃事件と思う
かもしれませんが、そこは天才的構成力有する伊坂さんだけあって、すべての短編と後半がさりげ
なく、そしてみごとにつながっています。
前作を読んでいなくてもだいじょうぶですが、主人公四人のキャラが売りの作品ですから、できれば
前作とあわせて読むことをお勧めします。
⇒ 喫茶店のマスターで演説の達人、響野(きょうの)。 人間嘘発見器の公務員、成瀬。 超正確な
体内時計を持つ雪子。 そして、スリの天才、久遠(くおん)。 四人の裏の顔は、銀行強盗。
首尾よく銀行強盗には成功するが、成瀬は、そのとき銀行に居合わせた若い女性に見覚えがあった。
翌日、成瀬は、その女性が自分の部下の婚約者であり、銀行強盗の最中に誘拐されたことを知る。
四人組は、その女性を救出する計画を立てるが、事態は二転三転し、救出の難易度があがっていく。
しかし、成瀬のリーダーシップと周到な計画のもと、襲撃が始まる、、、、、、。
⇒ 伊坂作品の中では、少し異質かもしれません。 他の作品に比べてライトな感じというのもありますが、
上述したように、主人公のキャラと会話を楽しむ要素が強いからです。 特に、響野のキャラは、読者の
誰からも愛され、あきれられ、次はどんなめちゃくちゃな会話で笑わせてくれるんだろうと期待せずには
いられないと思います。
⇒ 前作「陽気なギャングが地球を回す」感想文は、読書感想文2005-part6をご参照ください。
今回も前作に劣らないナイスな仕上がりでした。 僕のオススメ度:8.5
グラスホッパー (伊坂 幸太郎著、祥伝社)
作品の紹介
鈴木は2年前に最愛の妻を交通事故で亡くした。 しかし、それは不慮の事故ではなく、非合法な薬物などを
ビジネスにしている会社社長の息子、寺原にわざと轢かれた酷いものだった。 鈴木は、仕事を辞め、妻の
復讐のために、寺原の会社に潜り込む。 しかし、鈴木の目の前で、寺原は交通事故であっけない最期を
迎える。 しかも、不慮の事故ではなく、誰かに背中を押されて、、、、、、。
⇒ 鈴木は、会社の命令で、寺原を押した男の後を追う。 男を尾行し、その男、槿(あさがお)とコンタクトを
とることに成功するが、槿にコトの核心を確かめることをできずにいた。
一方、通称「鯨」と呼ばれる殺し屋、「蝉」と呼ばれる殺し屋も、それぞれのいきさつで、槿を追うことになる。
三人と殺し屋と鈴木が迎える結末とは、、、、、、。
⇒ 久しぶりに伊坂 幸太郎を読みました。 あいかわらず、すごい作家だなあと感心した次第です。
今回の作品も、体温は低いんだけど、スリリングなスピード感は損なわれていないし、伊坂作品特有の
仕掛けやサプライズもちゃんと用意されてるし。 かつて、伊坂作品の帯に担当編集者のこういう
ひとことが記されていました。「小説、まだまだいけるじゃん!」。 伊坂 幸太郎は、まさに、そういう
気持ちにさせてくれる作家だと僕も思います。 僕のオススメ度:8.5
楊家将(ようかしょう) (北方 健三著、PHP文庫)
(上)
(下)
作品の紹介
10世紀後半の中国のお話。 北漢は、北に遼、南に宋という大国の脅威にさらされていた。
しかし、凡庸な帝や廷臣のもと、弱体な禁軍は攻勢をかけてきた宋に対し、なす術もなかった。
そんな北漢にあって、楊家(ようか)だけは、軍人としての矜持を持ち続け、厳しい鍛錬を繰り返し
最強の軍をつくりあげていた。 楊家の長、楊業は、最後まで帝を支えようとするが、その帝にさえ
裏切られ、宋に帰順する。 宋の帝は、聡明な人物であり、楊業の帰順を心から歓迎してくれたが、
宋もまた、外様の将軍に風当たりが強く、文官と武官の対立が絶えない国だった。
⇒ 楊業は、長男の延平はじめ七人の男子に恵まれ、その全員が個性豊かな有能な将軍に育っていた。
やがて、宋の帝は、前帝の悲願でもあった、遼南部の燕雲(えんうん)十六州奪還のため、遼に大軍を
さし向け、宋と遼の戦いが幕を開ける。 楊家軍は、宋軍の中でも抜きんでた働きを見せるが、遼の
「白き狼」と称される揶律休哥(やりつきゅうか)が最強の騎馬軍で行く手を遮る。
⇒ 宋と遼の戦いは、一進一退を繰り返し、宋の帝が自ら遼の領内に攻め入る決戦の時を迎える。
が、遼の間者の謀略で、宋軍と帝は絶体絶命の窮地に立たされる。 しかし、楊業は怯むことなく、
軍人としての誇りをかけて、最後の決戦に挑む、、、、、、。
⇒ 全編、熱い作品です。 楊業や息子たち、そして敵の揶律休哥、宋の先帝の息子、八王など、登場
人物がみんなほんとうに生き生きと描かれていて、作品全体に膨大な「気」を放っていました。
著者の北方さんは「水滸伝」、「三国志」など数々の名作を世に出されていますが、この「楊家将」も
すごい作品だと思います。 もっと売れてもいいはずの名作。 外れなしのお勧めです。
2003年「吉川英治文学賞」授賞作。「本の雑誌」2006年度文庫総合部門:第2位 僕のオススメ度:9.5
震度0(ゼロ) (横山 秀夫著、朝日文庫)
作品の紹介
阪神淡路大震災の前日、N県の県警本部 警務課長が失踪する。 警察庁から出向で来ているキャリア組の
本部長、警務部長は、県警の頭脳であり、自分たちの懐刀の失踪に愕然とする。
しかし、警務課長の身を案じるのではなく、不祥事に発展の可能性のある事件の隠蔽に躍起になる。
捜査は、いつの間にか、県警生え抜きの刑事部長とキャリアの警務部長の対立、権力闘争に姿を変え、
周囲のキャリア、準キャリア、ノンキャリア幹部を巻き込んでいく。
自分たちの利害や縄張り意識から捜査に必要な情報を共有しない幹部たち。 そんな中、警備部長だけは
阪神淡路大震災への応援部隊編成に心を砕きながら、冷静な目で事件を見つめていた。
幹部たちの対立で捜査が進展しない中、事件の真相を握る人物が現れ、、、、、、。
⇒ 横山 秀夫さんの警察小説は、ほんとに緻密で骨太だと思います。 とは言え、今回は、警察官にエールを
送るようないつものスタンスとは趣を変え、警察内部の権力闘争を、これでもかというくらい生々しく描いて
います。 ある意味、警察幹部たちの人間性を通して人間の弱さやずるさを描いた作品とも言えるのでは。
横山ファン、警察小説好きの人は、迷わず「買い」です。 僕のオススメ度:8.5
扉は閉ざされたまま (石持 浅海=いしもち あさみ著、祥伝社文庫)
作品の紹介
大学時代のクラブの先輩、後輩6人、そして、メンバーの妹を含む7人が同窓会に集まった。
会場は、東京・成城のペンション。 メンバーの一人、安東の祖父が建てた洋館を改造した歴史のある建物だった。
7人は、再会を喜び、祝杯をあげる。 しかし、夕食前、各自が自室で休息をとっている間に、メンバーのリーダー
格の伏見(30歳)が、後輩の新山を殺害する。 伏見は、あらかじめ立てた計画通り、新山を眠らせ、浴室で溺死
させた。 仕上げに、部屋の内側からドア・ストッパーをかけたように見せかけ、密室を完成させる。
残りのメンバーは、夕食に現れない新山を、疲れて眠りこんでいるだけだと思い、部屋の外から呼びかけるが、扉は
閉ざされたままだった。 新山を起こすことをあきらめ、メンバーたちは、夕食をとり、酒を飲むが、いつまで経っても
起きてこない新山のことが気になり始める。 そして、メンバーの中で最年少の優佳(ゆか)が、鋭い推理を働かせ、
犯人の伏見を追い詰めていく、、、、、、。
⇒ と、まあ、ネタバレみたいに、ストーリーを紹介しましたが、全然、ネタバレじゃないんです。
この作品は、「刑事コロンボ」や「古畑任三郎」みたいに、事件(殺人)が最初に起こり、探偵が犯人のトリックを
見破るプロセスに重点を置いているわけですから。
その他にも、探偵(優佳)と犯人(伏見)の過去、殺人の動機など、読みどころ満載です。
2006年度「このミステリーがすごい」:第2位。 「本格ミステリ・ベスト10」:第2位。 僕のオススメ度:8
サッカーボーイズ (はらだ みずき著、角川文庫)
作品の紹介
正式タイトルは、「サッカーボーイズ 再会のグラウンド」。 タイトル通りのサッカー小説です。
遼介は、千葉の少年サッカークラブ、桜ケ丘FCに所属する小学6年生。 誰よりもサッカーが好きで、練習熱心
のかいあって、5年生までは、トップ下のポジションで、キャプテンというチームの中心的存在だった。
しかし、6年生になり、みんなの投票で、副キャプテンとなり、しかも、強豪チームから加入したライバルの出現で、
ボランチにまわることが多くなった。 ゲーム中も、思うような動きができず、監督の峰岸からも怒られ続ける。
⇒ そんな時、峰岸監督が妻の病気を理由にチームを去ることになり、後任に、峰岸の友人、木暮が就任する。
木暮は、「サッカーを楽しもう」が口癖であり、のびのびとした指導を試みる。 チームのエースストライカー
でキャプテンの星川は、勝つことにこだわるが、もともと強くなかったチームは連敗のトンネルに入ってしまう。
新監督、木暮の対応はシンプルだった。 「勝ちたければ、自分たちよりも弱いチームとやればいい」。
こうして、弱いチームを相手に練習試合を続けるうちに、チームは、自分たちのサッカーに磨きをかける。
そして、地元開催のカップ戦で3位の好成績をあげ、小学校最後の大会に臨むことになった。
しかし、対戦相手は、前回、県大会で完敗した地元最強のチームに決まり、、、、、、。
⇒ 大ヒット小説「バッテリー」(こちらは野球の話)同様、子どもだけではなく、大人が読んでもおもしろい
作品だと思います。 僕の場合は、息子がまさにサッカーボーイだったので、少年サッカークラブ特有のエピ
ソードや楽しさ、苦労話のシーンひとつひとつにうなずきながら読み進めました。
⇒ さて、物語は、後半、少年たちと大人たちの、それぞれの「再会」を軸にしながら、遼介たちの最後の試合
のシーンでクライマックスを迎えます。 たまには、こういう熱い話を読むのもいいのでは?
「本の雑誌」2008年度文庫総合部門:第10位 僕のオススメ度:8
一枚摺屋(いちまいずりや) (城野=じょうの 隆著、文春文庫)
作品の紹介
一枚摺(いちまいずり)とは、今で言う「新聞」のようなもの。 江戸では「瓦版」と呼ばれていた。
徳川 慶喜の大政奉還前夜の大坂を舞台にしたお話。
⇒ 大坂の草紙屋、阿波屋与兵衛は、本業を妻にまかせ、一枚摺づくりに精魂を傾けていた。
若いころは、大塩 平八郎の乱にも加わり、幕府への反骨精神の表れとして、一枚摺にこだわり続けた
与兵衛だったが、齢(よわい)六十を前に、一枚摺への執着に陰りが見えていた。
一方、息子の文太郎は、戯作が売れ始め、家にもほとんど帰らない放蕩三昧。 とうとう父の与兵衛から
勘当を言い渡され、四年が過ぎていた。
⇒ ある日、文太郎は、町で店の使用人、定吉と出会い、久々に酒を酌み交わした後、偶然、米屋の打ち壊し
の現場に出くわす。 文太郎は、事件のあらましをまとめ、父の一枚摺の原文にと定吉に託す。
与兵衛は、文太郎の書いた記事を一枚摺にし、世に出すが、奉行所に捕えられてしまう。 そして、三日後、
拷問の末、非業の死を遂げる。
⇒ 文太郎は、与兵衛の死に責任を感じ、父の遺志を継いで、一枚摺を始める。 そして、父の死の裏にある
真相を探る決心も固める。 とは言え、店で堂々と一枚摺を販売するわけにもいかず、潜りで仕事をスタート
することになった。 文太郎は、父の一枚摺を支えた浪人、彦馬や店の使用人たち、かつての恋人、糸に助け
られ、危ない目に遭いながらも、したたかに一枚摺を続けていく。 そして、とうとう、父の死の真相に近づく
糸口が見えたが、、、、、、。
⇒ ジャーナリズムの萌芽、幕府崩壊を描いた歴史小説としても秀逸でしたが、文太郎が父の死の真相に迫る
プロセスも、ミステリー仕立てになっていて、ダブルで楽しめました。
⇒ 前に読んだ、江戸時代の広告代理店のお話(「完四郎広目手控」 高橋 克彦著)同様、時代は違えども、
業界の話には、やはり惹かれるものがありますね、僕は。
2005年「松本清張賞」受賞作。「本の雑誌」2008年度文庫時代小説部門:第4位 僕のオススメ度:8
プリズンホテル 2・秋 (浅田 次郎著、集英社文庫)
作品の紹介
「プリズンホテル」全四巻の二作目です。 前作(「プリズンホテル 1・夏」)を読んでいなくても、
問題はありませんが、できれば第一巻から読むことをお勧めします。
「プリズンホテル 1・夏」のブックレビューは、「読書感想文2008 part6」をご参照ください。
⇒ 昔気質の任侠、木戸 仲蔵がオーナーである奥湯元あじさいホテルは、任侠団体専用ホテル。
通称「プリズンホテル」と呼ばれている。 従業員も、木戸組の構成員。 しかし、ヤクザな経営を
しているのではなく、サービス第一のしごくまっとうなホテル。 支配人もシェフも名門ホテルから
出向で来ている。
⇒ そんなプリズンホテルに、案内所の手違いで警視庁 青山署が慰安旅行で訪れる。 しかも、
まずいことにオーナーの舎弟、大曾根一家も鉢合せ。 さらに、マネージャーを殺そうと企む、
売れない元アイドル歌手。 そして、オーナーの甥で、売れっ子作家の孝之助や指名手配のインテリ
強盗までやって来て。 今にも何かが起こりそうな雰囲気。 折しも、青山署と大曾根一家の宴会が
わずか襖一枚で仕切られた大広間で幕を開けた、、、、、、。
⇒ 第一作に続き、笑いあり涙ありの展開でした。 わずか一泊二日のできごとが、400ページに
ぎっしりと凝縮されていて。 第一作とは、ひとあじ違う趣向で読者を堪能させてくれました。
個人的には、第一作よりも登場人物の人間味を深堀りした印象を持ちました。 僕のオススメ度:8
プリズンホテル 3・冬 (浅田 次郎著、集英社文庫)
作品の紹介
「プリズンホテル」全四巻の三作目。 今回、雪深いプリズンホテルにやってきたのは、カタギの
連中ばかり。 とは言え、ワケありな面々が揃った。 救急センターに勤続20年の看護師、マリア。
患者を安楽死させた医師。 自殺のために冬山にやってきたが、死にきれなかった中学生。 その
中学生を助けた天才アルピニスト。 そして、オーナーの甥の売れっ子小説家、孝之助を追ってきた
リストラ寸前の編集者。
⇒ というふうに、一巻、二巻で描かれたヤクザの世界とはひと味違った世界を描いたわけですが、、、
さすが浅田 次郎さんだと思いました。 まず、ヤクザを登場させないという発想の転換に超ビックリ。
三巻でマンネリに陥らないようにとの考えだったのかもしれませんが、作品の設定というか出発点に
メスを入れてまで、カタギの人たちだけで描ききることにこだわったのだから、もうそれだけですごいです。
⇒ あとは、、、 オーナーの意外な一面や、孝之助と愛人、清子との関係の変化といった、サービス要素
も盛り込まれていて。 今回もあっという間に読み切りましたが、全4巻の内では、ややパワー不足でしょうか。
ということで、、、僕のオススメ度:7.8
プリズンホテル 4・春 (浅田 次郎著、集英社文庫)
作品の紹介
「プリズンホテル」全四巻の完結編。 清子と結婚した孝之助は、清子の連れ子、美加もかわいがり、
平穏な暮らしを満喫していた。 そんな中、日本最高の権威を持つ「日本文芸大賞」にヤクザ小説と
恋愛小説がダブルでノミネートされる。 孝之助は、すぐさま義母の富江に電話を入れる。 富江は
ノミネートの快挙を喜んでくれたが、電話の後、姿をくらましてしまう。 富江を必死に探す孝之助。
やがて、富江はプリズンホテルにいるのではないかと考え、日本文芸大賞発表の瞬間を迎える場としても
最適であるとの理由から、家族でプリスンホテルに向かう。
⇒ 一方、府中刑務所から52年の刑を終えて出所したヤクザ、小俣 弥一は、借金で首のまわらない中小
企業の社長、楠堀と知り合う。 小俣は、兄貴分の子分(木戸 仲蔵)が経営するプリスンホテルに向かう。
⇒ 他にも、売れない女優と子役の娘、支配人の息子の担任、孝之助を取り巻く編集者の面々、そして、
オーナーの弟分、大曾根一家がプリズンホテルに集まる。 いつものように、ひと波乱、ふた波乱があり、
いよいよ、日本文芸大賞の瞬間を迎える、、、、、、。
⇒ あ〜、もう終わっちゃうのか、、、と考えながら、最終巻である四巻を読み進めました。
続けようと思えば、もっと続けられたのだろうけど、納得のラストも用意されていて。 惜しまれながら
終わるという、ある種の潔さも感じました。 もっとも、著者は、まだまだ書きたいものが他にたくさん
あったのでしょうけど。 ちなみに、この作品は、著者にとって、最初の単行本の刊行直後に第一巻を
書き始め、二巻、三巻、四巻は、「地下鉄(メトロ)に乗って」、「蒼穹の昴(そうきゅうのすばる)」、
「鉄道員(ぽっぽや)」などの名作と並行して、書き進めたのだそうです。
全四巻、十分に堪能させていただきました。 僕のオススメ度:8.5
弥勒(みろく)の月 (あさの あつこ著、光文社文庫)
作品の紹介
江戸の小間物問屋の若おかみ、おりんが川に身を投げた。 女房の自殺に納得がいかない主人、遠野屋
清之介は、同心 木暮 信次郎と岡っ引き 伊佐治に再調査を依頼する。
信次郎は、女房の死に顔色ひとつ変えない清之介に違和感を覚えながらも、伊佐治とともに捜査を始める。
しかし、おりんの最期の姿を見かけた商家の主人、屋台の主人が次々と謎の死を遂げ、事件は混迷を深めて
いく。 信次郎と伊佐治が最後に辿り着いた「闇」の結末とは、、、、、、。
⇒ 物語は、武士から商人となった清之介の抱える「闇」をちらつかせながら、自分を持て余して仕事に、
人生に倦んでいる信次郎が、清之介を挑発するやりとりを軸に進んでいきます。 読者から見たら、どちらも
若いのに「食えない奴」に見えてしまうわけですが、人間味のある伊佐治が二人の間に入り、緩衝材的な役割
を果たしていました。
⇒ 大ヒット小説「バッテリー」の作者、あさの あつこさんが初めて挑んだ時代小説。 ミステリーとしての
出来もハイレベルでした。 でも、、、結末がやるせないと思う人もいるかも。
本の雑誌 2008年度 文庫 時代小説部門:第2位 僕のオススメ度:7.5
孤虫症(こちゅうしょう) (真梨 幸子著、講談社文庫)
作品の紹介
会社の本好きの人からもらった本。 「エログロですけど、よかったらどうぞ」と言われて、読み始めた
わけですが、、、。 確かに、エログロでした。 でも、ミステリー小説として、ちゃんと成立していたので、
それほどエログロは気にならなかったです。 あと。歌野 昌午さんや乾 くるみさん、伊坂 幸太郎さんの
作品にも通じる「だまし絵」的な構成もあり、これも、この作品の魅力になっていました。
⇒ タイトルの「孤虫症」とは、寄生虫が体内で繁殖する病気のこと。 全世界的に14例(でも日本で6例)
しか症例のない珍しい病気なのですが、この病気をネタに、女性の悪意や怖さ、悲しさを描くことに成功
していると思いました。 病気が病気なだけに、時には、ホラー的な雰囲気も醸し出しており。 いやはや
なかなかインパクトの強い作品でした。
⇒ 上にも書いたように、作品全体が「だまし絵」的な構造になっているので、ネタバレになる可能性もあり、
「あらすじ」を書くのが難しいです。 かんたんに言ってしまうと、以下のようなお話です。
⇒ 東京郊外の町に暮らすセックス依存症の人妻は、自宅とは別のアパートで、夫以外の複数の男性と
不倫を続けていた。 しかし、相手の男性が、次々と身体全体に小さな瘤(こぶ)ができる奇病で死んでいく。
やがて、彼女の身体にも異変が現れ、、、、、、。 と、まあ、これくらいにしておきます。
第32回「メフィスト賞」受賞作。 僕のオススメ度:7.5
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