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読書感想文2008 part 6
「読書感想文2008」 part6 は、11〜12月の読書録です。
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オー・マイ・ガアッ! (浅田 次郎著、集英社文庫)
作品の紹介
ラスベガスのカジノを舞台にした笑いと涙のエンターテイメント小説。
共同経営者に裏切られ、同棲中の恋人にも逃げられた、いいかげんな中年男、大前 剛(47歳)。
一流企業の高給とりだった元バリバリのキャリアウーマン、梶野 理沙(32歳)。
妻子と別れ、今は孤独なベトナム戦争の英雄、ジョン・キングスレイは初老に差しかかっている。
理沙は、ベガスに旅行に来たまま、不法滞在を続け、今は娼婦として暮らしている。
稼いだ金は、家賃とカジノに消えていくむなしい毎日。
会社が倒産寸前の剛は、500万円をカジノですったら死のうと思って、ベガスにやって来た。
そして、ジョンも、勲章を質草にして手にした5,000ドルで勝負すべくカジノを訪れる。
⇒ ある日、3人はハイ・レートのスロットマシンの並びの席に偶然居合わせる。
剛がトイレに立ったすきに、彼のスロットにジョンがコインを入れ、理沙がボタンを押したら、
なんと、5,400万ドルの大当たり(ジャックポット)。
3人は、互いに賞金受け取りの権利を主張して譲らない。 しかも、カジノのルールで、山分けも
許されない。 ところが、賞金を支払うはずのスロットマシンの経営企業の元オーナーが会社の
金を使い込んで、手元に金がないという始末。 実は、このオーナー、元々はベガスを牛耳っていた
マフィアの大ボスで、「払う金がないのなら、受取人を消せばいい」という恐ろしい考えを思いつく。
⇒ そんなこととも露知らず、3人は、賞金を山分けする奇策を思いつく。 一方、スロットマシン
会社の現オーナー(マフィアの大ボスの息子)は、偶然、ベガスを訪れることになった、ホテルの
経営者で、中東の大金持ちから金を引き出そうと考え、事態は、ますます混沌としていく、、、、、、。
⇒ なんて感じで、物語の折り返しを迎えます。 ここから先は、元マフィアの親子、中東の大金持ち、
ホテルの支配人、ロートルの殺し屋、そして、主人公3人の、しっちゃっかめっちゃっかな駆け引きや
冒険が展開されていきます。 しかも、(読者の)笑いの連続の中、、、、、、。
⇒ 最後に余談を二題。 まず、主人公、大前 剛の名前ですが、カタカナで書くと、オーマエ・ゴオ。
アメリカ人が聞くと「オー・マイ・ゴッド」に聞こえるというしくみ。 そして、理沙の苗字、梶野も
「カジノ(casino)」というしかけです。
そして。 この作品は、ベガスのカジノやホテルのことが随所で語られており、ガイドブック顔負けの
著者のベガス通ぶりがうかがいしれました(取材したのではなく、ほんとにベガスの常連だとのこと)。
僕の抱く浅田 次郎さんのイメージとは違っていたので、ちょっと意外でしたが。 僕のオススメ度:8
プリズンホテル 1・夏 (浅田 次郎著、集英社文庫)
作品の紹介
小説家、木戸 孝之介はヤクザ小説がヒット中の35歳。偏屈な男。
愛人は、ヤクザの元情婦。 たったひとりの肉親である叔父も現役の大物ヤクザである。
孝之介自身は、ヤクザを毛嫌いしていたが、父の法事で再会した叔父からホテルに招待される。
叔父がオーナーになった「奥湯元あじさいホテル」は、名前とは似ても似つかぬ、ヤクザ団体
専用のホテルだった。
⇒ 孝之介は、愛人の清子を伴って、通称プリズンホテルに出かける。 ホテルには、叔父を
慕うヤクザの一家が逗留していたが、定年直後のフルムーン旅行夫婦や一家心中目前の家族も
たまたま宿泊することになる。 そして、出所直後で仮釈放中の謎のヤクザ。 一流ホテルから
出向を命じられた熱血支配人、オカルト趣味のある一流シェフなど、、、プリズンホテルにひと
くせもふたくせもある人々が集うことになった、、、。
⇒ 浅田 次郎さんお得意の、笑いと涙がつまった作品。 読みやすい短編スタイル。
春・夏・秋・冬の四部作ですが、続編も読んでしまいますね、きっと。
この小説は、テレビ化されただけでなく、Vシネマにも漫画にもなりました。
僕のオススメ度:8
警察庁から来た男 (佐々木 譲著、ハルキ文庫)
作品の紹介
札幌の北海道県警本部とお膝元の大通署を舞台とした警察小説。
タイ人女性の人身売買にまつわる犯罪。 薄野(すすきの)のバーで起きた殺人事件。
当然、事件として扱われていなければならない案件が闇に葬られたことに目をつけた警察庁から
ひとりの監察官がやって来た。 30代半ばのキャリア、藤川は、たたきあげのベテラン監察官、
種田を伴い、たった二人で道警本部に乗り込んできた。 そして、半年前に道警の不正を告発し、
今は、閑職に追いやられた元刑事の津久井を協力者として指名する。
⇒ 同じころ、津久井の元同僚で大通署の刑事、佐伯は、薄野の殺人事件被害者の父親が、ホテルで
部屋荒らしにあった事件を担当。 部屋を荒らしたのは、物盗りの仕業ではなく、事件に深入り
するな、という警告であると直感した。 佐伯は、薄野の事件が殺人ではなく、事故として処理
されたことに疑問を持ち始める。
⇒ ほどなく、佐伯は、津久井と情報を交換し、監察官、藤川とは別ルートで事件の捜査を始めるが
事件の背後に近付くにつれ、事件の根が深いことを知る。 藤川、津久井ルート、そして、佐伯の
ルートで進む捜査がやがて交差し、事件の意外な黒幕を追い詰めていく、、、、、、。
⇒ 同著者による名作「笑う警官」に続く、道警シリーズ第2弾(とは言え、前作を読んでいなくても
だいじょうぶ)。 前作もよかったけど、この作品もなかなかです。 とは言え、個人的には、前作の
方が好み、というか、お勧めですね。 前作「笑う警官」のブックレビューは、「読書感想文2008 part1」
をご参照ください。 僕のオススメ度:8
魔岩伝説 (荒山 徹著、祥伝社文庫)
作品の紹介
19世紀初め、江戸時代のお話。
江戸幕府と朝鮮の親善使節であるはずの朝鮮通信使には、幕府の存続を揺るがすような秘密が
隠されていた。 この秘密を探るべく、幕府の目付、遠山 景晋(かげみち)の息子、弱冠19歳の
景元が対馬から朝鮮に渡る。 景元を先導するのは、朝鮮の娘、春香(チュニャン)。
春香は、兄の金 翔伯とともに、朝鮮国内で朝鮮通信使廃絶を実現すべく、活動していた。
⇒ 景元、春香は、金 翔伯のもとをめざすが、幕府側の追手(柳生一族の卍兵衛=ばんべえ)、
そして、朝鮮政府の将軍、妖術師が二人の行く手を遮る。
苦難の末、景元は、金 翔伯と同志のもとに辿り着くが、朝鮮通信使の真の目的を知らされ、愕然
とする。 そして、金 翔伯、春香からとんでもない依頼を受けることになり、、、、、、。
⇒ ファンタジー小説の要素(魔人や妖術など)も出てきますが、なかなかどうして、骨太な歴史
小説です。 ストーリーの組み立てがしっかりしているから、朝鮮通信使の真の目的や徳川家の
秘密など、多少 荒唐無稽な要素が出てきても、気にならないで読めました。 それと、主人公の
景元こそ、若き日の「遠山の金さん」の姿なのですが、背中の桜吹雪がどうして彫られたか?という
おまけまで出てきて。 エンターテイメント色もたっぷりでした。
「本の雑誌」2006年度 時代小説 文庫部門 第2位。 僕のオススメ度:8.5
となり町戦争 (三崎 亜記著、集英社文庫)
作品の紹介
ある日、突然、となり町との戦争が始まった。 しかし、それは、町の広報紙に掲載された小さな
お知らせに記されているだけだった。 平凡なサラリーマンの「僕」は、自分の住む町ととなり町
の変化を探そうとしたが、戦争の片鱗すら感じることができなかった。
そんな中、「僕」のもとに、町役場から偵察員の任命書が届く。 通勤途中に車で通過するとなり町
の様子を記録して提出するだけの単調な任務が始まった。 しかし、相変わらず、戦争が起こって
気配はどこにもない。 けれども、町の広報紙には、戦死者の数が記されている。 ますます謎が
深まる中、「僕」のもとに新たな任命書が届く。 新しい任務は、となり町に潜入し、偵察員として
生活することだった。 しかも、町役場で戦争業務を担当する女性と偽装結婚をし、夫婦として暮らす
という手の込んだものだった。 相変わらず、見えないところで戦争が続いているようだが、「僕」の
周りで戦闘が起こることはなかった。 しかし、「僕」の正体がとなり町にバレてしまい、、、、、、。
⇒ いっさい戦争シーンを描かずに、戦時下の町と人々、そして「僕」の心の揺らぎを描ききった作品。
最初は、そのうち、戦争が見えてくるだろうと思いながら、ミステリーを読むときのような心持ちで
読み進めるのだけど、気がつくと、物語も戦争も終わっていました。という感じ。
「見えない戦争」という表現手法はアリなんだとも思うけど、個人的には、なんだか釈然としなかった
のも事実。 2004年度「小説すばる新人賞」受賞作。 僕のオススメ度:7
無事、これ名馬 (宇江佐 真理著、角川文庫)
作品の紹介
江戸時代のお話。 町火消し「は組」の頭、吉蔵は55歳。 古女房のお春、娘のお栄、娘婿の由次郎、
そして、孫娘のおくみと下町で慎ましく暮らしている。 そんな吉蔵のもとを、武家の息子、太郎
左衛門が訪れ、「頭、拙者を男にしてください」と頼み込んだ。 火事場での吉蔵の男ぶりを偶然目に
した太郎左衛門が、自分の意気地のなさを鍛えてくれるのは吉蔵しかいない、と見込んでのことで
あった。 かくして、55歳の吉蔵と7歳の太郎左衛門の師弟関係が結ばれた。 そして、吉蔵の娘で
25歳のお栄が師弟の二人を温かく見守る。 吉蔵とお栄のおかげで、太郎左衛門は、少しずつ少しずつ
弱気の虫が影を潜めていく。 しかし、お栄は、かつての恋人から言い寄られたり、痴呆が始まった
近所の老人の世話を焼いたり、今は商人の囲われ者になった旧友の心の拠り所になるべく努力をしたり、
忙しい日々を送っていた。 そんな中、「は組」にとってもお栄にとっても大事件が降りかかる、、、。
⇒ この物語を表から見たら、吉蔵と太郎左衛門のふれ合い、そして、太郎左衛門の成長が主軸の話に
なるのでしょう。 けれど、僕は、むしろ、お栄という女性の、母として、妻として、女として、人としての
凛々しい生きざまに感銘を受けました。
あと、余談ですが、江戸の町火消しについてやたらと詳しくなりました(笑)。
「本の雑誌」2008年度 時代小説 文庫部門 第10位。僕のオススメ度:8
上と外(上・下) (恩田 陸著、幻冬舎文庫)
(上)
(下)
作品の紹介
楢崎 練(れん)、14歳。 母とは赤ん坊の頃に死に別れ、父の再婚相手、千鶴子も、異母妹、千華子を
もうけたものの、離婚。 考古学者の父、賢は、現在、遺跡発掘のため、中米のG国に長期滞在中。
練は、祖父母と伯父家族と同居している。 しかし、年に一度、夏休みは、賢と練の父子、千鶴子と
千華子の母子が1週間、いっしょに過ごすことになっていた。
今年は、父、賢の滞在先であるG国に、千鶴子、千華子とともに向かった練は、父の案内でマヤの遺跡
見物を満喫していた。 しかし、ヘリコプターで遺跡巡りをしていた最中にクーデターが発生。
練は、千華子とともに、ヘリからジャングルに落下。 なんとか一命を取り留めたものの、未開の
ジャングルで過酷な生活が始まる。 一方、賢と千鶴子は、新政府の人質となり、首都に拘束される。
練と千華子は、ジャングルの遺跡で、ニコという名の少年に出会い、助かったかに見えたが、千華子を
人質にとられてしまう。 ニコに悪意はなかったが、練は、千華子の身柄を返してもらう交換条件として
とんでもない儀式への参加を余儀なくされる、、、、、、。
⇒ 上・下巻あわせて1,000ページの大作です。 ミステリー小説というよりも、冒険小説の要素が強い
作品。 ある意味、映画的と言えるかもしれません。 ↑の儀式は、ネタバレになるので書けませんが、
けっこうハラハラドキドキの展開を堪能できるのでは? 恩田 陸ファンなら迷わず、買いの作品でしょう。
僕のオススメ度:8
麦の海に沈む果実 (恩田 陸著、講談社文庫)
作品の紹介
北海道の広大な湿原にある名も知れぬ学校。 そこは、世間とは隔絶された環境で、ワケありの
子どもたちを預かる全寮制の施設だった。 3月に新学年が始まるふしぎな学校に、14歳の理瀬が
転校してきた。 通常、転入生の受け入れは3月1日と決められているのに、理瀬が来たのは2月の
最後の日。 2月の最後に来た生徒は学園に災いをもたらすという伝説がはびこる中、理瀬はまわり
から好奇の目で見られる。 そんな中、生徒が次々と死んでいく。 明らかな殺人もあれば、事故か
殺人かわからないケースもあったが、理瀬と仲間たちは、すべて殺人だと確信していた。
ある時は男性、ある時は女性に姿を変える、ひとくせもふたくせもある校長。 死んだはずなのに
学園の中をさまよう男装の女生徒。 理瀬たちは事件の核心に近づいていくが、、、、、、。
⇒ 若い恩田 陸ファンには、圧倒的な支持を受けている作品です。 でも、個人的には、もっとすごい
恩田作品(「光の帝国」や「蒲公英草紙」など)があると思うのですが、、、。 若い人向きの作品と
決めつけるつもりはありませんが、そういう側面もあるのでは? 僕のオススメ度:7.5
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