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読書感想文2008 part 1

「読書感想文2008」 part1 は、1月〜2月の読書録です。


 ↓ Click NOVEL mark !
コメント  精霊の守り人 (上橋 菜穂子著、新潮文庫)   作品の紹介 

30歳の女用心棒、バルサは、偶然、新ヨゴ皇国の第二皇子 チャグムの命を助けたことが
きっかけで、王妃から息子の命を守って欲しい、と頼まれる。
チャグムは、百年に一度、人間の身体に卵を産みつける水の精霊の卵を宿したせいで、
自分の父である皇帝からさえ命を狙われることになったが、まだ10歳の少年だった。
バルサは、チャグムを連れて王宮を出、逃亡の旅に出るが、皇帝の追っ手は二人のすぐ
そばに迫っていた。 さらに、水の精霊の卵を食べる土の精霊までがチャグムを狙って
いるということがわかり、二人の逃亡の旅は過酷さを極めることになる・・・・・・。
⇒ 児童文学賞を受賞してはいますが、『本の雑誌』の文庫総合部門で1位を獲得している
ことからわかるように、大人が読んでも十分堪能できる「物語」です。 著者が、そもそも
大人向けとか子ども向けということを意識して書いているわけではないとコメントされて
いるのもうなづけます。 あと。 単純に「ファンタジー」系とジャンルわけすることの
意味もない作品だと思いました。 人物造形もすばらしく、戦闘シーンのドライブ感もなか
なかのもの。 続編を読むことに決めました。
『本の雑誌』おすすめ文庫 2007年度版 総合:第1位。
第34回 野間児童文芸新人賞 、第44回 産経児童出版文化賞 ニッポン放送賞
第25回 巖谷小波文芸賞、第23回 路傍の石文学賞 など、数々の賞を受賞。
人気の「守(も)り人」シリーズの第一作。 僕のオススメ度:8

コメント  ツ、イ、ラ、ク (姫野 カオルコ著、角川文庫)   作品の紹介 

舞台は京都の外れにある小さな町。 主人公、隼子(じゅんこ)の小学校2年生から34歳までの
恋、友だち、こころ、痛み、自由さ、不自由さを8章立てで描いています。
とは言え、隼子だけにフォーカスをしているのではありません。 特に序盤は、隼子の同級生の
女の子、男の子の視点がリレーの如く移り変わっていくスタイル。 恋愛小説として紹介される
ことの多い作品ですが、群像劇的な側面も持ち合わせています。 しかし、中盤以降は、隼子に
す〜っとピントが合って、彼女の心の悲鳴が聞こえるようなせつない恋が読者に押し寄せてくる
のです。 中学生にして、心がちぎれるような恋に落ちていく隼子の描写は圧巻です。
若い人向きの作品と思われるかもしれませんが、大人(の男女とも)にもぜひ読んでもらいたいです。
『本の雑誌』おすすめ文庫 2007年度版 恋愛小説部門:第7位 僕のオススメ度:8.5

コメント  笑う警官 (佐々木 譲著、ハルキ文庫)   作品の紹介 

札幌のマンションの一室で22歳の婦人警官の死体が発見される。 死因は絞殺。
容疑者として浮かび上がったのは、彼女の恋人の警官、津久井という男。 津久井は、一年前に
覚醒剤と拳銃で裏金をつくって逮捕された問題警部の部下だった。 事件は、折りしも、北海道
議会が警察の腐敗を追及すべく、津久井を参考人として召喚した矢先のできごとだった。
道警上層部は、議会での津久井の証言を封じるという思惑も手伝い、彼の射殺命令まで発令する。
しかし、道警キャリアの強引な津久井抹殺と捜査のやり方に疑問を持った、所轄署の刑事、佐伯は、
かつて共に命を懸けて仕事をした津久井を救うべく、仲間の警官を集め、非公式の捜査を始める。
津久井の証言を翌朝に控え、佐伯たちは、津久井を匿いながら、真犯人を逮捕する、という前代
未聞の難問にチャレンジする・・・・・・。
⇒ 佐伯の行動開始から津久井の喚問までの12時間のできごとを440ページでじっくり描いた作品
です。 でも、ゆっくりとしたテンポではなく、ドライブ感のある展開で、ラストまでいっきに読ませて
くれます。 佐伯たちのチームには、天才もカリスマもいないけど、抜群のチームワークとねばりで
タイムリミットまでせいいっぱい闘います。 読後感もなかなか。
『本の雑誌』おすすめ文庫 2007年度版 国内ミステリー部門:第6位
『本の雑誌』おすすめ文庫 2007年度版 警察小説部門:第6位 僕のオススメ度:8.5

コメント  深追い (横山 秀夫著、新潮文庫)   作品の紹介 

表題作(「深追い」)を含む計7編の警察小説短編集。 横山さん得意の警察小説のジャンル
なので、安定感たっぷりのハイ・クオリティーなラインナップです(もっとも、彼は警察小説に
限らず、群を抜いたレベルの作品を発表され続けていますが・・・)。 警察小説と言っても、
刑事(ばかり)が主人公というわけではありません。 今回の7編の中に、刑事が主人公の作品も
ありますが、むしろ刑事以外の警察官(人事や生活安全課、副署長など)の話が中心です。 
職務に忠実でありながらも、警察官だってふつうの人間と同じような悩みもあるし、サラリーマン然
としているところも多い、なんてことをミステリーの流れの中で自然に描写していきます。 
一見、警察の暗部も描いているようにも見えるのだけど、実は、現場は一生懸命、警察官独特の
使命感で動いている。 そんなエールのような作品なのかなとも感じました。 僕のオススメ度:8

コメント  異邦の騎士 (島田 荘司著、講談社文庫)   作品の紹介 

20代の半ばを過ぎた記憶喪失の男が19歳の女、良子と知り合い、同棲を始める。
二人は、貧しいながらも、幸せな日々を送っていた。 しかし、良子が隠し持っていた、男の免許証
の住所がきっかけで、男の過去が徐々に明かされていく。 自分の過去を知った男は、運命を呪い、
自らの過去の清算するために立ち上がるが・・・・・・。
⇒ 主人公の記憶喪失のモヤモヤ感が物語全体を支配している作品です。 真実=過去をつかめそうで
つかめないもどかしさ。 そして、真実を操る見えざる手。 ある男の記憶喪失をとりまく犯罪ミステリーと
して読み応えのある作品に仕上がっていると思います。 ただ、真実に納得できるかどうかという部分に
関しては、個人差があるかもしれません。 僕のオススメ度:7.5

コメント  幸福な食卓 (瀬尾 まいこ著、講談社文庫)   作品の紹介 

中二になる直前の春休み最後の日、佐和子の父は「今日で父親をやめる」という宣言をする。
母は、父と仲違いしたわけでもなく、離婚したわけもでもないが、近所で別居中。
兄は、兄で、将来を嘱望された天才児だったが、高校を卒業して、農業を始めていた。
そんな、少し変わっているけど、一見、問題のない佐和子の家族の数年間を描いた作品です。
父が仕事をやめて、大学入試に向けて取り組む姿。 兄がちょっと変わった恋人にふりまわ
されるさま。 母がマイペースで今の生活を楽しんでいる様子。 そんな日々の描写がみごと
です。 そして、佐和子にも彼氏ができるのですが・・・・・・。
⇒ ネタばれではないので書いてしまいますが、実は、佐和子の父は、彼女が小学生のときに
自宅で自殺を図ります。 幸い、佐和子が救急車を呼んで、一命をとりとめるのですが、結局、
そのときのショックが原因で、母は家を出ることになり、佐和子も(父が自殺を図った)梅雨
どきになると、心身のバランスを崩すようになります。 
それでも、家族四人が今のそれぞれの生活を平穏に送っているわけですが、なんか無意識に
消化しきれない過去と向き合っているギャップが行間ににじみ出ていて。 そのせつなさとか
バランスが、この作品の魅力のひとつでもあるのかなと思いました。
一見、ありえない家族を描いているように見えるかもしれないけど、なかなかどうして。
そこは、著者の筆力で違和感なく読ませてくれます。 不思議感が絶妙のバランスで配合された
佳作だと思います。 2005年「吉川英治文学新人賞」受賞作。
『本の雑誌』おすすめ文庫 2007年度版 総合:第8位 僕のオススメ度:8.5

コメント  脳男 (首藤 瓜於著、講談社文庫)   作品の紹介 

連続爆破犯を追って、アジトに踏み込んだ警察が目にしたのは、犯人と争う一人の男だった。
犯人は取り逃がすが、警察は、現場で犯人といた男、鈴木 一郎を拘束した。 鈴木は、新たな
爆弾の在り処を警察に告げる。 このことで一転、鈴木に共犯としての疑いが高まる。
警察は、根気よく鈴木を尋問するが、取調べは進展せず、彼の戸籍も別人のものであることが
わかる。 やがて、裁判の弁護側から鈴木の精神鑑定の申し出があり、医師、鷲谷 真梨子が
鈴木の鑑定を担当することになる。 精神鑑定が進むにつれ、真梨子は驚愕の事実を知る。
鈴木は、生まれつき感情を持たない男だった・・・・・・。
真梨子が鈴木の秘密にたどり着いたのもつかの間、今度は、連続爆破犯により、鈴木が精神鑑定
のために収容された病院に爆弾が仕掛けられる。 次々に爆弾が爆発し、パニックに陥る病院。
真梨子は、鈴木、警部の茶屋とともに、真犯人と対峙することになるが・・・・・・。
⇒ まず、鈴木という男の設定がみごとだと思いました。 感情がない、という症例は医学的には
存在するのだそうですが、真梨子がその秘密にたどり着くまでのプロセスそのものが一級のミス
テリーとして仕上がっています。 その上、最後の真犯人との対決の描写も一級品。 いつもの
ミステリーとは一味ちがった、新しいかたちのミステリーに接した気分にさせてくれた作品。
2000年度「江戸川乱歩賞」受賞作。 僕のオススメ度:8

コメント  迅雷 (黒川 博行著、文春文庫)   作品の紹介 

社会からはぐれた男三人が金儲けを思いついた。 それは、ヤクザの親分を誘拐し、身代金を
せしめるという計画。 最初の計画は無事成功し、しばらくして二回目の計画を実行にうつす。
二度目のトライでも、大物ヤクザの誘拐に成功し、うまくいくかに見えたが、仲間のひとりが
相手につかまる。 大金を手にするはずの計画が、一転、人質交換をするはめになるが、相手も
くせもので、なかなか一筋縄ではいきそうもいない・・・・・・。
⇒ そんな感じで、ピンチを迎える男二人が、だんだん度胸もすわってきて、やがてヤクザと堂々と
渡り合うようになります。 人質交換も知恵比べ、だましあいを経て、消耗戦を向かえ、男二人が
勝負に出るさまが痛快に描かれています。 僕のオススメ度:8

コメント  墨攻(ぼくこう) (酒見 賢一著、新潮文庫)   作品の紹介 

紀元前の中国、戦国時代のお話。 当時、孔子の儒教とともに隆盛を誇っていた墨子教団。
彼らは、非戦・非攻を説くだけでなく、城の防御戦まで請け負う実戦的なプロの集団でもあった。
墨子教団が味方するのは、いつも弱者、つまり攻められる側。 それゆえ、彼らの技術や理論は
強国をも凌ぐレベルにまで引き上げられていた。 そんな教団に、またもや地方豪族から救援の
依頼が持ち込まれた。 任地の梁の小城に単身向かった革離(かくり)は、わずか4,500人の村人
たちを指揮し、篭城戦のために完璧な準備を整える。 そこへ強敵 趙の大軍20,000が押し寄せ、
いよいよ戦いの火蓋が切られた・・・・・・。
⇒ 物語は、この戦の最後までを描いています。 ↑のあらすじを読むと、長編と思われるかも知れま
せんが、実は140ページの作品。 我々がこれまであまりなじみのなかった墨子の思想や、その
実戦的な側面もとてもわかりやすく描かれています。 歴史もの、中国のお話(は苦手)という
先入観を捨てて、読みさえすれば、物語にどんどん引き込まれていくと思います。 
主人公の革離のストイックなんだけど、血の通った人間味、鋭利な頭脳の描写も、この作品の
大きな魅力でした。 92年の「中島敦記念賞」受賞作。 僕のオススメ度:8

コメント  アナン、(上)(下) (飯田 譲治/梓 河人著、講談社文庫)  

コメント(上) コメント(下) 作品の紹介 

記憶喪失の流(ながれ)は、10年間続けたホームレス生活に終止符を打つべく、東京に
初雪が降った日、自らの命を絶とうと決めた。 ところが、ゴミ置き場で偶然赤ん坊を
見つけたことから彼の生活が一変する。 流は、その男の子の赤ちゃんに「アナン」と
名づけ、まわりのホームレスたちに助けながら、子育てを始めた。 しかし、アナンが
拾った子どもだということがばれて、流とアナンは、地方の海辺の町に移り住む。
タイル職人として、仕事を見つけた流は、仕事と育児に励んだ。 やがて、アナンは、
色とりどりのタイルを使った作品をつくりはじめる。 アナンは、その才能を理解し、
協力する人たちのあたたかい気持ちに支えられ、ますます才能を開花させていく・・・・・・。
⇒ アナンの才能は、芸術だけではなく、人々の苦しい気持ちを聞いてあげる心の窓と
しての役割でも発揮されます。 そんなアナンのもとには、年齢やタイプを超えて様々な
人たちが集まり、アナンはまわりの人たちに心の幸せをもたらしていきます。 何だか
「無償の愛」の連鎖が紡がれた物語のように思いました。 僕のオススメ度:8

コメント  二島縁起 (多島 斗志之著、創元推理文庫)   作品の紹介 

四国の今治で34人乗りの海上タクシーを営む寺田は44歳。 東京でのサラリーマン生活と
家庭生活に終止符を打ち、7年が過ぎた、、、、、。 
寺田の本拠地、今治の近くに数百年も前から対立している二つの島があった。
図らずも、二島の対立と殺人事件に巻き込まれた寺田は、事件の捜査を進めるうち、
真実に近づいていくが、同時に、犯人から命を狙われることになる・・・・・・。
⇒ ジャンル的にはミステリー小説なのでしょうが、冒険小説的なフレーバーもあり、瀬戸内海の
水軍の歴史を事件の謎に活かしていたり。 クライマックスはけっこう映画的だったり。
読み応えもあり、けっこう楽しめました。
『本の雑誌』おすすめ文庫 2006年度版 国内ミステリー部門:第8位 僕のオススメ度:8

コメント  彼女はたぶん魔法を使う (樋口 有介著、創元推理文庫)   作品の紹介 

38歳の私立探偵、柚木は元刑事。 妻と10歳の娘とは3年前から別居中。
そんな柚木のもとに、警察時代の上司(年下だがキャリア組)で現在、愛人である冴子の紹介で
仕事の依頼が舞い込んだ。 ひき逃げ事件の犠牲者である女子大生の姉、香絵から事故の
真相を解明してほしいという依頼だった。 香絵は、妹が殺されたのではないか、と疑念を
抱いているらしい。 早速、事件の捜査を始めた柚木は、事件の真相に徐々に近づいていくが、
事件の鍵を握る人物が殺害され、しかも意外な事実を知ることになる・・・・・・。
⇒ 主人公、柚木は一見、ハードボイルド探偵なのですが、美女と別居中の妻には弱い男。
しかも、事件の捜査で柚木に関係する女性はすべて美女ばかり。 とは言え、現実感のない話
ではなく、ストーリーの色づけとしてほどよい効果を出しています。 そして、肝心のミステリー
としての出来ばえもなかなかのもの。 この探偵、柚木の物語は、その後、シリーズ化され、
好評を博しているとのことです。 僕のオススメ度:7.5

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