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読書感想文2007 part 4

「読書感想文2007」 part4 は、7月〜9月の読書録です。


 ↓ Click NOVEL mark !
コメント  天空への回廊 (笹本 稜平著、光文社文庫)   作品の紹介 

エベレスト山頂近くにアメリカの軍事衛星が墜落した。 墜落のショックで雪崩が発生。
日本人クライマー、真木 郷司は、何とか難を逃れるが、別ルートで登山中の親友、マルクは
命は取りとめたものの、片足を失う。 真木は、休む間もなく、アメリカから衛星回収の
仕事を依頼される。 しかし、その衛星は、宇宙での役目を終えた無害の鉄の塊ではなく、
世界を破滅に追い込む恐ろしい秘密が隠されていた・・・・・・。
事件は、その後、軍事衛星を狙う謎の勢力対アメリカという構図を軸に、中国やロシアも
巻き込んだ問題に発展していきます。 真木の衛星回収作業も、命の危険に何度もさらされ、
感動のラストまでハラハラの連続です。 650ページ、読み応え十分の骨太な作品。
  「本の雑誌」 2004年度おすすめ文庫 「国内ミステリー部門」ベストテン。
僕のオススメ度:(9に近い)8.5

コメント  クライマーズ・ハイ (横山 秀夫著、文春文庫)   作品の紹介 

1985年夏、群馬の地方紙の社会部記者、悠木は、広告部の同僚、安西とロッククライミング
に挑戦することになっていた。 悠木が安西との待ち合わせの場所に向かうべく、社を出ようと
した、まさにその時、日航機墜落の第一報が入る。 悠木は、直ちに、日航機事故の全権デスク
に任命され、不眠不休の紙面づくりが始まった。 一方、安西も、悠木との待ち合わせ場所に
向かう直前、街角で倒れ、救急車で病院に運ばれていた・・・・・・。
未曾有の大惨事報道の中、悠木は、社内の権力争いや、上司たちの回顧主義に翻弄されます。
何度も何度もくじけそうになりながらも、新聞記者として、男として、立ち向かっていく悠木の
揺らぎと心意気を見事に描いています。 そして、倒れたまま、植物状態となってしまった安西の
発した最後の言葉の意味を悠木が考えていくミステリーとしての組み立てもナイスでした。
2003年「週刊文春」傑作ミステリー・ベストテン 第1位。 僕のオススメ度:8.5

コメント  標(しるべ)なき道 (堂場 瞬一著、中公文庫)   作品の紹介 

30歳のマラソンランナー、青山は優勝経験こそないものの、出場するレースは必ず完走。
そして、常に上位入賞という実力の持ち主。 そんな彼と大学の同級生二人がオリンピック
出場をかけて走る選考マラソンが目前に迫っていた。 しかし、ある日突然、青山のもとに
かかってきたドーピングを勧める電話がきっかけで彼は調子を崩してしまう・・・・・・。
青山にドーピングを持ちかけた謎の男は「絶対に検出されないんです」と巧妙に彼を誘います。
きまじめがとりえの彼は、即座に誘いを断わりますが、度重なる誘いのうちに、さすがの青山も
心が揺らいでいくプロセスが精緻に描かれていました。 そして、圧巻は、何と言っても、物語
終盤のマラソンの描写。 最後まで青山が勝つのか、ライバルが勝つのか、予断を許さぬ展開が
臨場感いっぱいに続きます。 スポーツ小説ですが、ミステリーのエッセンスも加わり、なかなか
読み応えがありました。 僕のオススメ度:8

コメント  姑獲鳥(うぶめ)の夏 (京極 夏彦著、講談社文庫)   作品の紹介 

昭和27年のお話。 東京のとある病院にまつわる噂が流れる。 夫は一年半前に密室から失踪。
そして、妻は妊娠20ヶ月を過ぎても、出産の兆候がないという・・・。 その奇怪な妊婦の姉、
涼子は、探偵、榎木津に妹の夫の調査を依頼する。 榎木津、彼の後輩で小説家の関口、そして、
古本屋にして陰陽師の中禅寺らが失踪した夫の捜索、長期妊娠の謎に挑むが、、、、、、。
600ページを超える大作。 呪われた家系や民間伝承、そして、ミステリーなどを巧みに紡いだ
秀作。 ハマる人は、ハマる作風かも。 僕のオススメ度:8

コメント  どんなに上手に隠れても (岡嶋 二人著、講談社文庫)   作品の紹介 

売り出し中の新人歌手が白昼堂々とテレビ局のスタジオから誘拐された。 犯人は身代金として
一億円を要求する。 所属事務所や誘拐された新人歌手の両親が、一億円の金策で途方に暮れて
いたとき、その新人歌手の出演CMのクライアントが身代金を肩代わりすると申し出た。
そのクライアントは、この誘拐事件を最大限に利用して、新製品をセンセーショナルに売り出す
前代未聞の作戦を考えていたのだ。 そして、いよいよ身代金の引渡しが決行される・・・・・・。
わりとすいすい読めるミステリーです。 犯人が明かされるまでは、テンポのよい展開であり、
随所に謎が織り込まれていて、読者を飽きさせないつくりになっていると思いました。
ただ、個人的には、犯人の正体と動機がちょっと納得しかねるところもあり、、、でした。
そんなわけで、僕のオススメ度:7.5

コメント  卵のふわふわ (宇江佐 真理著、講談社文庫)   作品の紹介 

サブタイトルは「八丁堀喰い物草紙・江戸前でもなし」。 表題作(「安堵 卵のふわふわ」)を含む
計6編の連作短編集のかたちをとっているが、むしろ6章だての小説にちかいつくり。
八丁堀に住む、北町奉行所同心、椙田(すぎた)正一郎の妻、のぶは24歳。 娘の頃、憧れのまと
だった正一郎と結婚できたのはよかったが、夫との関係は冷え切っていた。 6年間、子どもに恵まれ
なかったせいもあるが、夫には結婚を約束しながら果たせなかった女の面影が見えるのだ。
このままでは離縁もやむを得ないと悩むのぶを慰めてくれるのは、51歳の舅、忠右衛門だった。
忠右衛門は、博学だが、子どものようなところもあり、とらえどころのない男だが、なぜか心休まる
存在だった。 そして、「喰い物覚え帖」をつけるのが愉しみなくらい、珍しい食べ物には目がなかった。
しかし、忠右衛門の願いもむなしく、我慢の限界を超えたのぶは実家に戻ってしまう・・・・・・。
のぶと正一郎の夫婦の行方も気になりますが、この小説の見所は、何と言っても、忠右衛門の人物造形
だと思います。 僕のオススメ度:8

コメント  室の梅 (宇江佐 真理著、講談社文庫)   作品の紹介 

サブタイトルは「おろく医者 覚え帖」。 表題作(「室の梅」)を含む計4編の短編集。
江戸時代のお話。 北町奉行所の検屍役、美馬 正哲(しょうてつ)は「おろく医者」と
呼ばれている。 「おろく」とは、死体のこと。 彼は、もっぱら死人を相手にする医者なのだ。
一方、恋女房のお杏(きょう)は、産婆を生業としている。 死に向き合う夫と、生に向き合う妻
が力を合わせて、下町で起こる難事件、怪事件を解決していく・・・。 僕のオススメ度:8

コメント  深川恋物語 (宇江佐 真理著、集英社文庫)   作品の紹介 

江戸時代のお話。 深川を舞台にした6編の恋物語を収録。
せつない恋、耐える恋、むなしい恋、勇気の恋、哀しい恋、因縁の恋。
そんなさまざまな恋を紡いでできた珠玉の短編集です。
2000年度「吉川英治文学新人賞」受賞作。 僕のオススメ度:8

コメント  仇花 (諸田 玲子著、光文社時代小説文庫)   作品の紹介 

江戸時代はじめのお話。 北条家残党の浪人を父に持つお六は、父の先輩の娘、お勝が家康の
側室になり栄華を極めたのを目の当たりにし、自分も同じ道を歩もうと決意する。
十三歳になったお六は、お勝のもとに奉公にあがることになり、家康に近づく機会をうかがう。
そして、いよいよ家康と対面することになり・・・・・・。
結果として、お六は、家康最後の側室となるわけですが、血の繋がらない兄への想いも捨てがたく、
その想いを振り払うべく、痛々しいまでに、権力に固執します。 家康の寵愛を受け、前途洋々に
見える彼女の心は、それでも満たされることはなく、やがて、家康は病の床についてしまいます。
著者の諸田 玲子さんは、宇江佐 真理さんとともに、僕のお気に入りの時代小説作家です。
僕のオススメ度:8

コメント  千里眼 メフィストの逆襲 (松岡 圭祐著、小学館文庫)   作品の紹介 

人気の「千里眼」シリーズの5冊目。 エピソード4の前編です(※エピソード4の後編は、
「千里眼 岬美由紀」)。
新潟で13歳の少女が突然行方不明になった。 北朝鮮による拉致の可能性が高いと判断した
自衛隊は、戦闘機パイロット、岬 美由紀に出撃命令を出す。 美由紀は、北朝鮮の戦闘機、
潜水艦、工作員の乗る船をあと一歩というところまで追い詰めるが、米軍の介入もあり、
少女は連れ去られてしまう。 この事件の後、美由紀は、自衛隊を退職し、カウンセラー
としての日々を送っていた。
4年後、北朝鮮の人民思想省のエリート工作員、リ・スギョンが岬 美由紀の前に現れた。
リ・スギョンは、美由紀の過去や気持ちを次々と看破し、美由紀の動揺を誘う。
一方、かつて、美由紀を死の間際まで苦しめた世界的企業のメフィスト・コンサルティング
グループも、美由紀の患者の周りに姿を見せ始める。 リ・スギョンとメフィスト、ふたつの
敵が同時に出現し、美由紀の緊張は極限に達する・・・・・・。
いつもの「千里眼」に比べて、状況説明が多く、ドライブ感が少し損なわれているような印象
を受けました。 僕のオススメ度:7.5

コメント  千里眼 岬美由紀 (松岡 圭祐著、小学館文庫)   作品の紹介 

「千里眼」シリーズ、エピソード4の後編(※エピソード4の前編は↑「千里眼 メフィストの逆襲」)。
北朝鮮の工作員、リ・スギョンが突然、警察や美由紀たちの前から姿を消した。 その直後、
4年前、新潟で拉致されたと思われていた少女が発見される。 少女は、なんと、リ・スギョンに
救出されていた。 しかも、北朝鮮ではなく、日本国内から・・・。 リ・スギョンは、少女を
救出した後も、美由紀たちの前に姿を現すことなく、N.Yに飛ぶ。 美由紀も彼女の後を追うが、
N.Yでは、未曾有の大惨事が二人を待ち構えていた・・・・・・。
物語は、後半くらいからドライブがかかり、N.Yからアフガニスタンに舞台を移し、美由紀が躍動
します。 そして、納得のエンディングへ・・・。 
今回の「千里眼」エピソード4は、これまでの「千里眼」よりも、美由紀の弱さや迷いを描き、後半の
クライマックスまで抑え気味の展開でした。 設定も、北朝鮮がらみということもあり、エンタメ性
よりもストーリー性が重視されている印象を受けました。 僕のオススメ度:8

コメント  不思議島 (多島 斗志之著、創元推理文庫)   作品の紹介 

瀬戸内海の伊予大島という小島を舞台にしたミステリー。
伊予大島で生まれ育った26歳の中学校教師、ゆり子は、12歳の時、誘拐され、近くの島に
置き去りにされた過去を持っていた。 誘拐犯が明らかにならないまま、15年の時が流れていた。
彼女は、島に赴任してきた、診療所の医師、里見と付き合うようになる。 里見は、ゆり子を誘って、
近隣の小島巡りに出かける。 その際、ゆり子は、かつて自分が置き去りにされた島を前にして、
気分が悪くなるが、やがて、自分の過去と向き合う決意をし、里見とともに、15年前の事件の真実に
近づいていく。 しかし、事件の核心に近づけば近づくほど、彼女の気持ちが揺らいでいく・・・。
登場人物も限られ、比較的閉じられた世界の中で、奥行きの深い作品に仕上げられていると思いました。
読後感はちょっとせつなかったですが。 僕のオススメ度:7.5

コメント  国境 (黒川 博行著、講談社文庫)   作品の紹介 

関西のヤクザを手玉にとった詐欺師を追って、ヤクザの桑原と建設コンサルタントの二宮が
北朝鮮へと旅立つ。 北朝鮮。 そこは、想像を絶する世界だった。 経済が破綻したばかり
でなく、腐敗が横行し、人心が疲れきった国で、桑原と二宮は必死に詐欺師を追う。 
最初のチャレンジはすんでのところで、ターゲットを取り逃がし、二人は、再度、北朝鮮の
土を踏むことを決意するが、それは、一度目を遥かに上回る地獄への旅立ちだった・・・・・・。
桑原と二宮の凸凹・疫病神コンビが、北朝鮮という国家体制に挑むサスペンス大作です。
北朝鮮という国の真実にかなり迫った、ていねいな取材も、もうひとつの見所だと思います。
820ページ。 読み応えのある骨太の大作。 僕のオススメ度:8

コメント  てとろどときしん (黒川 博行著、講談社文庫)   作品の紹介 

表題作(「てとろどときしん」)を含む計6編の警察小説集。 サブタイトルは「大阪府警
捜査一課事件報告書」。 軽妙な大阪弁の名コンビの刑事二人が時には足で、時には頭で
閃きで、市井の事件を解決していきます。 著者の黒川 博行さんは、クオリティーの高い
ミステリーや警察小説を次々に送り出している安定力のある作家です。 僕のオススメ度:7.5

コメント  天下騒乱 鍵屋ノ辻(上)(下) (池宮 彰一郎著、角川文庫)  

コメント(上) コメント(下) 作品の紹介 

江戸時代初期のお話。 家康死後、老中 土井 利勝(家康の隠し子)は、徳川幕府の基盤を
固めるべく、粉骨砕身の働きを続けていた。 しかし、一人の浪人が起こした刃傷沙汰が
旗本と地方外様大名家との確執を生み、さらに、その浪人の息子が起こした事件がもとで
事態はさらに混迷を極める。 大久保彦左衛門を筆頭とする江戸の直参旗本衆と中国の外様
大名、池田家との対立は、もはや、幕府のトップ、土井 利勝の出馬なくして解決しないところ
まで来ていた。 カタチの上では、旗本がかばう河合親子に対する池田家家臣、渡辺 数馬の
敵討ちであるが、旗本 vs 池田家の代理戦争を解決すべく、土井 利勝に事態の収拾を託された
のが、渡辺 数馬の義兄であり、柳生 十兵衛の弟子の、剣豪 荒木 又右衛門であった。
又右衛門は、土井 利勝、柳生 十兵衛の陰なる支援を得ながら、義弟、妻の願い、藩の期待を
一身に背負い、本懐成就に向けて、粘り強く突き進む。
武士の生き様を描いた秀作です。 又右衛門の男ぶりには脱帽です。
「本の雑誌」 2006年度おすすめ文庫 「時代小説部門」 第3位。 僕のオススメ度:8

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