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読書感想文2007 part 5
「読書感想文2007」 part5 は、10月〜12月の読書録です。
↓ Click NOVEL mark !
サウダージ (垣根 涼介著、文春文庫)
作品の紹介
両親と共に、生まれ故郷、ブラジルから日本にやってきた耕一には、ろくな人生が待って
いなかった。 成人し、裏の世界に生きる柿沢にスカウトされるが、彼の人間性が災いし、
仕事をすることなく、解雇されてしまう。 それ以来、耕一は、柿沢から仕込まれたスキル
を生かし、生活に困らない程度の金を裏の世界で稼いでいた。 ある日、コロンビア出身の
売春婦、DDと出会い、自分でも不思議なくらい、彼女に引きずられていく。
一方、渋谷のストリート・ギャングのヘッドだったアキは、耕一が柿沢のもとを去った後、
柿沢にスカウトされる。 アキは、柿沢の仲間、桃井の指導のもと、順調にスキル習得を
進めていた。 そして、和子という年上の彼女にも恵まれる。
やがて、耕一が入手したヤクザとマフィアの麻薬の取り引きの情報をもとに、アキは柿沢、
桃井とともに、耕一と組んで裏金奪取のヤマに向かうが・・・・・・。
耕一とアキという対照的な若者の動き、視点を交互に繰り返しながら、ストーリーが進んで
いきます。 この二人の対比に、それぞれの恋人の女性の対比が掛け算され、物語に厚みを
もたらしていると思いました。 しかし、この作品のクライマックスは、なんと言っても、終盤の
裏金強奪計画。 耕一とアキは、無事、金を手にし、恋人との幸せな日々に戻っていくことが
できるのでしょうか・・・・・・。
名作「ヒートアイランド」の続編とも言える作品。 「ヒートアイランド」は、アキの渋谷時代
を描いており、柿沢とチェイスを繰り広げます。 でも、この「サウダージ」から読み始めても
話は通じるのでご心配なく。 僕のオススメ度:(9に近い)8.5
誰もわたしを倒せない (伯方 雪日著、創元推理文庫)
作品の紹介
後楽園遊園地の園外のゴミ箱近くで若い男の死体が発見される。 その後まもなくして、ホテルで
初老の男が自殺した。 捜査を進めていくうちに、死体は人気覆面レスラーのもの。 自殺した
男は、そのレスラーを、子どもの頃、施設から引き取った男だと判明する。
初老の男は、レスラーを殺してから自殺したのか? それとも、二人を殺した犯人が別にいるのか?
所轄の刑事、三瓶と城島がさらに捜査を進めようとした矢先、上層部から他殺の線での捜査にストップ
がかかる。 六年後。 プロレス団体の専務が自殺する。 再び、三瓶と城島が他殺の線も含めて
捜査しようとするが、またもや上層部からストップがかかる。 そして、さらに一年後・・・・・・。
↑というふうに、プロレスの世界を舞台にしたミステリーです。 でも、プロレスのことを知らなくても、
全然OKです。 むしろ、そのほうが新鮮に読めるかもしれません。
↑のあらすじでは、触れていませんが、単純な連続殺人ミステリーではなく、プロレス vs 格闘技という
構図や、犯人の出生を巡る秘密など、懐の深い作品に仕上がっています。 僕のオススメ度:8
武者とゆく (稲葉 稔著、講談社文庫)
作品の紹介
江戸時代のお話。 熊本藩の支藩、肥後宇土藩の桜井 俊吾は、火事で妻子を失い、失意の
うちに、江戸屋敷で剣術指南役を務め始めた。 心の傷が癒えたのもつかの間、今度は主人が
横領の罪で改易となり、俊吾も職を失う。 とは言え、剣術の腕で藩主の覚えがめでたかった
こともあり、江戸の外れに鄙びた屋敷をもらい、子どもたち相手の手習い所を始める。
俊吾は川の近くで拾った子犬を武者と名づけ、平和でつましい暮らしを送っていた。
ある日、川で流されていた若い女、お鶴を助けたことによって、彼の暮らしは一変する。
お鶴は、養女で入った先の商家で、養父母を強盗に殺された上、誘拐された途中で逃げ出して
来たのだった。 やがて、お鶴を追う男と俊吾との闘いが幕を開ける・・・・・・。
読後感さわやかな作品です。 四十を過ぎ、剣術の腕を生かすこともなくなった実直な男、
俊吾が川で拾ったふたつの命、武者とお鶴とまっすぐに生きていく様が心に響きます。
「本の雑誌」2006年度おすすめ文庫「時代小説部門」第9位。 僕のオススメ度:8
天国への階段(上・中・下) (白川 道著、幻冬舎文庫)
(上)
(中)
(下)
作品の紹介
北海道 浦河の小さな牧場主の息子として育った柏木は、隣接する大牧場の娘、亜木子と将来を誓い
合っていた。 しかし、柏木の父の牧場が亜木子の父の牧場に吸収されるや否や事情は一変する。
父はこの世を去り、亜木子も父の牧場の窮地を救うために東京の貸しビル業者、江成のもとに
嫁いでいく。 すべてを失った柏木は、失意の内に故郷を捨て、東京に向かう。
30年近い月日が流れ、柏木は貸しビル会社を始め、いくつかの企業を傘下に置く新進気鋭の企業
オーナーとして、政界進出も狙えるくらいの成功を収めていた。 一方、亜木子は、娘の未央だけが
生きがいの、不毛な結婚生活を送っていた。 亜木子の夫、江成は与党議員とはなったが、自身の
会社は、借金だらけ。 しかも、会社を窮地から立ち直らせるために娘の未央に消費者金融会社の
社長の息子との見合い話を持ちかけていた。
柏木は、亜木子を奪った江成に復讐すべく、江成と同じ選挙区からの立候補の準備を進め、未央の
縁談阻止の工作も始める。 しかし、過去に犯した罪が彼の前途に影をさし始める・・・・・・。
上巻、中巻、下巻、合わせて1,300ページを超える大作です。 物語は、柏木の復讐劇だけではなく、
過去の過ちが原因で連鎖的に続いていく殺人事件をからめて進んでいきます。 柏木の復讐劇の行方、
殺人事件の行方、そして、亜木子、未央親子と柏木との絡みなど、多層的に綴られる展開は長さを
感じさせない秀逸なつくりになっています。 僕のオススメ度:8
後宮小説 (酒見 賢一著、新潮文庫)
作品の紹介
17世紀はじめのお話。 舞台は中国っぽい架空の国。
皇帝が崩御し、新しい王の後宮をつくるため、国の各地で女性選びが始まる。
14歳の田舎娘、銀河は楽な暮らしを夢見て、この選抜に応募。 無事、都の後宮入りを
果たす。 そして、入宮準備のための女大学での課程を経て、彼女に与えられた地位は
なんと正妃の座だった。 しかし、銀河がその地位を射止めたのは、彼女の美貌でも
女大学での成績でもなかった・・・・・・。
物語は、その後、反乱軍との戦いに発展し、銀河も戦うわけですが、救いのあるラストが
用意されています。 それにしても。 なんだか不思議な小説でした。 タイトルとあら
すじだけで判断すると、歴史小説だと思ってしまうでしょうが、実は、この作品、1989年
第1回「日本ファンタジーノベル大賞」大賞受賞作なのです。 妖精や魔法が出てくるだけが
ファンタジーではありません。 この作品を読んで、「ああ、こういうファンタジーもあるん
だな」と思えますよ、きっと。 まさに、大人のおとぎ話。 僕のオススメ度:7.5
カウント・プラン (黒川 博行著、文春文庫)
作品の紹介
表題作(「カウント・プラン」)を含む計5編のミステリー短編集。 表題作は「日本推理作家協会賞」
の短編部門賞 受賞作品(96年)です。
視界に入ったものを数えずにいられない工員、死体の臭いで死因がわかる葬儀屋、若い女性の
捨てたゴミ袋をあさることが趣味の用務員。 それぞれの短編に出てくるのは、そんなふうに、
かなり変わった、あぶない男たち。 そして、ちょっと変わった犯罪を、ふつうの刑事たちが
地道な捜査で紐解いていきます。 僕のオススメ度:8
千里眼の死角 (松岡 圭祐著、小学館文庫)
作品の紹介
世界各国で突然の人体発火現象が多発する。 天才カウンセラー、岬 美由紀の同僚である
嵯峨は、イギリスで、王族を人体発火の危機から救う。 やがて、美由紀も加わり、事件の
原因を探っていくと、一連の事件は、世界を裏から牛耳ろうとしている、謎の結社 メフィスト・
コンサルティングの陰謀であることが明らかになっていく・・・・・・。
元凶がわかったとは言え、メフィストの暴走を止められない世界各国の首脳たちを尻目に
美由紀が立ち上がるが・・・・・・。
人気の「千里眼」シリーズの8冊目(エピソードとしては6作目)です。
「千里眼」シリーズのファンにとっては、一連のメフィスト・コンサルティング三部作の
最終章とも言うべき、見逃せない作品です。
あいかわらず映画的なエンターテイメント性たっぷりの仕上がり。 ドライブ感も健在です。
僕のオススメ度:8
千里眼 The Start (松岡 圭祐著、角川文庫)
作品の紹介
小学館で12作を刊行し、大人気となった「千里眼」シリーズが角川文庫に版元を移した
新シリーズ第1作。 ちなみに、2007年秋、シリーズ売り上げは500万部を越えたそうです。
物語は、主人公の天才カウンセラー、岬 美由紀の航空自衛隊時代から始まります。
彼女は命令を無視して、大地震に見舞われた離島に救難へリを飛ばしたことが原因で自衛隊
を辞めることになる。 査問会議でのカウンセラー、笹島の心理分析に大きな疑問を感じた
美由紀だが、被災地で巡り会った献身的なカウンセラーに感化され、自らもカウンセラーに
なる道を選ぶ。 天性の才能に加え、自衛隊で動体視力に磨きをかけた美由紀は、人の表情
から心理を読み取る能力を発揮し始める。 そして、三流フリーライターが予言した飛行機の
墜落事故を、ライターの写真の表情から真実だと見抜く。 事故を防ぐべく、さっそくライター
に接触しようとした美由紀に大きな危機が訪れる・・・・・・。
新シリーズとしての仕切り直し第一作という意味合いもあったのでしょうが、いつものメンバー
も出てこないし、事件のスケールも(従来と比べて)小さく、ちょっとこじんまりした印象を
受けました。 エンタメ性も後退したような感じ。 今後に期待でしょうか。 僕のオススメ度:7.5
Separation - 君が還る場所 (市川 拓司著、アルファポリス文庫)
作品の紹介
高校生のとき、同級生だった悟と裕子は、卒業を控えたころに付き合い始める。 しかし、大学は、
東京と地元に別れ、遠距離恋愛に。 20歳の頃、裕子は妊娠し、悟は結婚を決意するが、両親は
猛反対。 赤ちゃんも流産してしまう。 それでも、二人は就職を機に、親の反対を押し切って結婚。
失ってしまった赤ちゃんと再び会える日を楽しみにし、幸せな日々を過ごしていた。
ところが、ある日、裕子の身体に信じがたい変化が訪れる。 何と身体が若返り始めたのだ。
裕子の身体は、高校生だった頃の姿を通り越して、こどもの頃の彼女に近づいていく・・・・・・。
確かにあり得ない設定ではあります。 しかし、謎の奇病とかではなく、物語の中盤で語られる挿話、
そして、終盤で明らかにされる(日記の中での)裕子の告白によって、若返りの現象に意味を持たせる
ことに成功している、と思いました。 それにつけても、せつない話ではありましたが・・・・・・。
市川さんのデビュー作。 僕のオススメ度:7.5
<負け組>の戦国史 (鈴木 眞哉著、平凡社新書)
作品の紹介
小説ではありません。 学術書というほどではありませんが、歴史を扱った新書です。
タイトル通り、戦国時代の「負け組」の軌跡や敗因を解説した内容です。
僕は、なぜか、戦国時代や明治維新の「負け組」に昔から興味があり、この本も
新聞の書評欄で紹介されていたのを目にして、「タイトル買い」してしまいました。
戦国時代の歴史が好きな人にはオススメです。 僕のオススメ度:7.5
蝦夷(えみし)の古代史 (工藤 雅樹著、平凡社新書)
作品の紹介
↑と同じく、小説ではなく、歴史系の新書です。
高橋 克彦さんの「火怨(かえん)」という小説を読んで以来、8世紀末から9世紀初頭に
かけての東北地方の歴史(坂上田村麻呂が出てくる時代です)に興味を持つようになりました。
とは言え、この本では、古代から平安時代までを扱っています。 ↑の本よりも、さらにマニ
アックな内容です。 「蝦夷」を「えみし」と読める人にはオススメ(笑)でしょうか。
僕のオススメ度:7
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