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読書感想文2009 part 4
「読書感想文2009」 part4 は、7月〜8月の読書録です。
↓ Click NOVEL mark !
1Q84 (上) (村上 春樹著、新潮社)
作品の紹介
1Q84(イチ・キュウ・ハチ・ヨン) BOOK1 4月-6月。
2009年5月29日発売。 著者7年ぶりの長編。 発売2週間で100万部突破の話題作。
青豆(女性)と天吾(男性)を軸にした24章の構成。 青豆、天吾の章が交互に現れるスタイル。
青豆というのは本名(苗字)。 29歳の彼女の裏の顔は殺し屋。 DV(ドメスティック・バイオレンス)に悩む
女性の夫をアイスピックで瞬殺する技を有している。 彼女は、かすかな違和感をきっかけに、自分がいつの間
にかパラレルワールドに迷い込んだことを確信する。 そして、今までいた1984年とは別の世界を「1Q84」と
名づける(Qは、Qestion markのQ)。 青豆が裏の仕事を始めたきっかけは、表の仕事(スポーツ・インスト
ラクター)で知り合った老婦人に、無二の親友が夫のDVがきっかけで自殺したことを話したからである。
老婦人の娘も同様の理由で自殺していた。 それ以来、青豆は、婦人の依頼で3回、DV癖のある男を暗殺する。
青豆に持ち込まれた4回目の依頼は、宗教法人「さきがけ」のリーダー暗殺だった、、、。
天吾は予備校の数学の講師をしている。 30歳を迎えても、小説家になる夢を捨てきれない。 新人賞の最終
選考には3回残ったが、その先に行けないでいた。 幸い、小松という老練な編集者に目をかけてもらい、細々と
夢をつないでいる。 その小松からまわしてもらった新人賞の予備審査(下読み)の仕事で「空気さなぎ」という
作品に出会う。 「空気さなぎ」は文章こそ稚拙だったが、発想や世界観は群を抜くできばえだった。
しかし、小松は、このままでは新人賞をとれないと判断し、天吾に文章の書き直しを依頼する。
天吾は「空気さなぎ」の作者、17歳の美少女「ふかえり」に事情を説明し、了解を得る。 「空気さなぎ」は
新人賞を受賞し、ベストセラーになる。 しかし、ふかえりは、突然、失踪する。
彼女は、宗教法人「さきがけ」の前身である団体を立ち上げた主宰者の娘だった、、、、、、。
⇒ 上巻(BOOK1)は、青豆と天吾の日常が少しずつ変わりゆくさまを、二人の過去を挿入しながら進んでいきます。
やがて、二人の過去の接点が明らかにされ、「さきがけ」という共通項が浮かび上がってきます。
さらに、「リトルピープル」という謎の存在も登場し、物語後半にかけての波乱を感じさせます、、、。
冒頭は、少し伊坂 幸太郎っぽいかなと思ったのですが、読み進むにつれ、「ああ、村上さんだ」と感じました。
ストーリーテラー健在。 上質な作品です。 僕のオススメ度:8.5
1Q84 (下) (村上 春樹著、新潮社)
作品の紹介
1Q84(イチ・キュウ・ハチ・ヨン) BOOK2 7月-9月。
上巻(BOOK1)同様、青豆と天吾の章が交互に出てくる計24章の構成。
青豆は、老婦人から、さきがけのリーダー暗殺の実行を依頼され、接触に成功する。
天吾は、ふかえりの小説を改稿したことを謎の団体に知られたことに気づく。
さらに、青豆も天吾の最も身近な人物(親友と愛人)が謎の死を遂げる(片方は暗示のみであったが、、、)。
ふかえりは、天吾の部屋に転がり込み、青豆はさきがけのリーダーの話や「空気さなぎ」から、リトルピープルの
存在を確信する。 やがて、天吾も、1Q84年の世界に入り込んだことを自覚し、物語の終焉に近づいていく、、、。
⇒ ネタバレになるので、下巻(BOOK2)の内容は詳しく書かないでおきます。
誰かに「どんな小説?」と聞かれたら、なかなか説明しにくい作品かもしれません(笑)。
暗示も多いし、「リトルピープル」を筆頭に謎の存在もたくさん出てくるし。 でも、作品全体を包み込む空気感や
1Q84年という世界観に、ほとんどの読者が次第に惹きつけられていくと思います。 小説の枠組みやジャンルを
取っ払った次元にある、ふしぎな魅力を持った物語でした。 もっとも、それは著者の卓越した筆力あってのこと
なのですけど。 続編を期待させる終わり方でしたが、はたしてどうでしょう? 僕のオススメ度:8.7
プリンセス・トヨトミ (万城目 学著、文藝春秋)
作品の紹介
「鴨川ホルモー」、「鹿男あをによし」の著者が放つ話題作(2009年3月発売)。
大阪の下町の商店街でお好み焼き屋を営む真田 幸一には、もうひとつの顔があった。 幸一が代表をつとめる
社団法人「OJO」の決算に関し、会計検査院の調査が入った。 毎年、五億もの税金が支給される「OJO」の金の
使い途を明らかにすることを求められる。 会計検査院の切れ者調査官の松平に対し、幸一は、自分のことを
大阪国総理であると名乗る。 幸一たち大阪国の男たち二百万人は、豊臣家の末裔である王女を守る仕事を
四百年もの間、続けていた。 その王女とは、幸一の息子で中二の大輔の幼馴染、橋場 茶子だった。
茶子は、大輔をいじめる中学の上級生、蜂須賀に復讐すべく、蜂須賀の父が組長をつとめるヤクザの事務所
に殴り込む。 そして、その場に居合わせた松平の部下である、会計検査院の鳥居、大輔らとともに警察に
連行される。 茶子が連行されたのは、大阪国の監査、追及に合わせた日本国政府の差し金であると思った
大阪国は立ち上がる。
次々と大阪城に集結する大阪国の男たち。 そんな中、大阪国総理 真田と松平との対決が幕を開ける、、、、、、。
⇒ 前二作のように神や妖怪の類は登場しないものの、ファンタジー色、エンターテイメント色たっぷりの秀作
でした。 ↑のあらすじには書きませんでしたが、なぜ大阪国ができたのか、なぜ大阪国が続くのか、の理由は、
とても説得力のあるものでした。 そして、ラストで明かされる大阪国 vs 日本国の対決の構図もなかなかのもの。
誰が読んでもおもしろいと思いますが、大阪出身者は必読の作品です、これは。 僕のオススメ度:8.5
ナイチンゲールの沈黙 (海堂 尊著、宝島社文庫)
(上)
(下)
作品の紹介
話題になった「チームバチスタの栄光」の著者による田口×白鳥シリーズ第2弾。
「チームバチスタの栄光」は、読書感想文2008 part3 をご参照ください。 前作を読んでいる必要はありませんが、
読んだ方が、この作品を堪能できると思います(個人的には前作から読むことをおススメします)。
【あらすじ】 舞台は関東近郊の地方都市の大学病院。 24歳の看護師、浜田 小夜は、伝説の歌姫、水落 冴子の
ライブに足を運ぶが、冴子が吐血し、小夜の勤務する病院に入院する。 たまたま当直だった田口が冴子の主治医と
なるが、冴子はアルコール漬けで余命わずかだった。 田口は、権力争いに背中を向けて飄々と生きる万年講師の
神経科医であり、本業は患者の愚痴を聞く通称「愚痴外来」が担当だった。 冴子とマネージャーの城崎は、小夜の
歌の才能を見抜き、レッスンを施す。
一方、小夜は本来の担当である小児科で、眼の摘出手術を控えた瑞人のケアに追われていた。 手術の承諾書に
サインをもらうべく、瑞人の父親のもとを訪れるが、襲われ、とっさに大理石の時計で瑞人の父の頭をなぐりつける。
小夜は何事もなかったかのように、病院の勤務に戻った。 翌日、水人の父は殺害の上、解剖され、バラバラにされた
状態で発見される。 警察はやがて、小夜に疑いを向けるが、小夜には完璧なアリバイがあった、、、、、、。
⇒ 前作同様、厚生労働省のキャリアであり、傍若無人の名探偵、白鳥は物語の中盤で登場します。
事件の担当刑事、加納は警察庁から出向中のキャリアで、白鳥の学友という巡りあわせ。 加納も、白鳥同様、傲慢の
かたまりのような人物で、田口は二人に振り回されます。 しかし、冴子のサポートもあり、事件の真相に近づいて
いきます。 タイトルのナイチンゲールとは、看護師の小夜をナイチンゲールにたとえているだけでなく、二人の歌姫、
冴子と小夜を鳥のナイチンゲール(サヨナキドリ =小夜啼鳥)にたとえたものだと思います。 ミステリーとしても、
合格点ですが、今回は、前作よりも登場人物の心の葛藤を味わうべきでしょう。 僕のオススメ度:8
⇒ 著者の海堂 尊(たける)さんの公式サイトは コチラ
「ナイチンゲールの沈黙」公式サイトは コチラ
ジェネラル・ルージュの凱旋 (海堂 尊著、宝島社文庫)
(上)
(下)
作品の紹介
↑でレビューしている「ナイチンゲールの沈黙」の姉妹作品。 同じ病院で、同じタイミングで、起きた別の事件を
描いています。 この作品のみを読んでも、話は通じますが、できれば「ナイチンゲールの沈黙」→「ジェネラル・
ルージュの凱旋」の順で読んだ方がおもしろさがプラスされるはず。
【あらすじ】 大学病院の救急救命センターのトップに君臨するのは、通称「ジェネラル・ルージュ(血まみれの将軍)」、
速水 晃一。 速水と同期の田口は、病院のリスク・マネジメント委員会の委員長を務めている窓際神経科医。
ある日、リスク・マネジメント委員会に速水と業者の癒着を告発する投書が届けられる。 田口は、独自に調査を開始する。
ほどなく、天敵にして名探偵でもある厚生労働省のキャリア、白鳥が登場。 さらに、速水を敵視する勢力もからみ、事件は
混迷を極める。 ついに、田口は友人でもある速水を委員会で尋問するはめになるが、、、、、、。
⇒ 結論から言うと、バチスタ、ナイチンゲール、本作と続く三部作の中でいちばんの出来だと思います。
前二作と違って、殺人事件が起きるわけでもないし、ミステリー色も少なめですが、対照的なクライマックスの2つのシーン
(速水の尋問の場面と大惨事に対応する救急救命の場面)の出来は圧巻でした。 加えて、白鳥の出番も前二作に比べると
少なめだったのですが、それすら気にならない、迫力に満ちたストーリー展開に魅せられました。 僕のオススメ度:8.5
⇒ 著者の海堂 尊(たける)さんの公式サイトは コチラ
「ジェネラル・ルージュの凱旋」公式サイトは コチラ
螺鈿迷宮(らでんめいきゅう) (海堂 尊著、角川文庫)
(上)
(下)
作品の紹介
同じ著者による「バチスタ」シリーズ三部作の外伝的作品。 厚生労働省のキャリアにして名探偵の白鳥は出てきますが、
出番はやや少なめで、大学病院の田口はほとんど出番なし。 代わりと言っては何ですが、白鳥の部下、姫宮が「ジェネラル
ルージュ」に続いて登場します。 舞台は、バチスタ・シリーズと同じ市内にある民間病院です。
【あらすじ】 天馬 大吉は、留年続きで、26歳にして医学部の3回生。 幼馴染で新聞記者の葉子の依頼で、桜宮病院で
潜入捜査を開始する。 桜宮病院は、終末医療を専門にする歴史のある病院だったが、何かと謎の多い病院だった。
葉子の知り合いの義理の息子も、一週間前に桜宮病院の院長を訪問したきり、消息を絶っていた。 天馬は、ボランティア
として潜入に成功するが、新人看護師、姫宮のミスで骨折、裂傷、火傷と次々と災難に見舞われ、入院するはめになる。
天馬が潜入してまもなく、元気だった患者が次々と亡くなっていく。 やがて、白鳥も大学病院からの派遣医師を装い
捜査を開始するが、桜宮病院の院長、双子の娘の副院長もつわもので、なかなか核心に近づけずにいた、、、、、、。
⇒ 「バチスタ」シリーズになじんでいるせいもあるのでしょうが、どうも田口抜きで、白鳥オンリーだと魅力が半減という
感じを否めませんでした。 現在の医療問題にメスを入れる視点に鋭い部分もあったのですが、スケール感、躍動感がやや
不足気味だと感じました。 僕のオススメ度:7.2
⇒ 「螺鈿迷宮」公式サイトは コチラ
反自殺クラブ (石田 衣良著、文春文庫)
作品の紹介
正式タイトルは「反自殺クラブ 池袋ウエストゲートパークX」。 人気シリーズの第5弾。
表題作(「反自殺クラブ」)を含む計4編を収録した連作短編集。
「池袋ウエストゲートパーク」は、池袋のトラブルシューター、マコトを主人公にしたミステリー色もある青春小説。
本作品だけ読んでも、話は通じますが、第一作から読んだ方が世界観がわかり、盛り上がれると思います。
僕は第1作から読んでいますが、テレビともども、IWGP(池袋ウエストゲートパーク)シリーズの大ファンでありまして。
小説とテレビのセットでハマることをお勧めしますw。 小説を読んだのは久しぶりだったのですが、あいかわらず、世界観、
ドライブ感ともにいい感じでした。 この作品の基礎知識に関しては、↓を見てもらった方が早いと思います。
(くどいけど、テレビシリーズのことも書いてあるし)
「池袋ウエストゲートパーク」シリーズの読書感想文⇒1は、コチラ 、
2は、コチラ、
3は、コチラ
僕のオススメ度:8.2
灰色のピーターパン (石田 衣良著、文春文庫)
作品の紹介
正式タイトルは「灰色のピーターパン 池袋ウエストゲートパークY」。 人気シリーズの第6弾(↑作品の続編です)。
表題作(「灰色のピーターパン」)を含む計4編を収録した連作短編集。
↑の5巻を読んだ勢いで、一気読みしてしまいました。 「池袋ウエストパーク」は、初期の頃に比べると、少し落ちついた
作風になってきているのかもしれません。 事件のスケールも少し小さめだし。 しかし、リアル感は増してきている気が
するし、主人公のマコトがよりクールになってきている印象もあり。 主人公も作品も、大人になってきているということ
でしょうか。 この巻は、最後に収められている「池袋フェニックス計画」が出色のでき。 僕のオススメ度:8.2
Gボーイズ冬戦争 (石田 衣良著、文春文庫)
作品の紹介
正式タイトルは「Gボーイズ冬戦争 池袋ウエストゲートパークZ」。 シリーズ第7弾です。
表題作(「Gボーイズ冬戦争」)を含む計4編を収録した連作短編集。
今回は、続けて3巻読みましたが、ほんとに愛すべき作品です。 先入観に縛られずに、もっとたくさんの人に読んで
もらいたいシリーズです。 僕のオススメ度:8.2
血涙(けつるい) (北方 謙三著、PHP研究所)
(上)
(下)
作品の紹介
中国の宋と遼の戦いを描いた名作「楊家将(ようかしょう)」の続編。 正式タイトルは「血涙 新楊家将」。
「楊家将」は、読書感想文2009 part1 をご参照ください。
前作は超おススメです。 ぜひ、前作からお読みください。
【あらすじ】 宋の英雄、楊業(ようぎょう)と息子たちが遼との激戦で戦死してから2年。 楊家を継いだ楊業の六男、六郎と
七男、七郎を中心に楊家軍を再興せよとの命令が帝から下される。
一方、遼の国では、英雄、耶律休哥(やりつきゅうか)将軍が、戦で捕虜とした宋の将校、石幻果(せきげんか)を鍛えていた。
石幻果は、戦の前の記憶をなくしていたが、その正体は、楊業の四男、四郎だった。 記憶をなくしていたことが幸いし、宋の
元将校として遼で生きていくことになる石幻果。 やがて、かつて戦場で命を助けた遼の皇太后、蕭太后(しょうたいごう)の娘、
瓊峨姫(けいがき)と結婚し、耶律休哥の片腕となる。
ほどなく、宋と遼の戦いの火ぶたが切られ、石幻果は実の弟、妹と戦場で対峙する。 しかし、弟、六郎と直接、刃を交えた瞬間、
記憶が蘇り、石幻果として生きていくか、楊四郎として生きていくか、想像を絶する苦悩の日々が幕をあける、、、、、、。
⇒ まさにタイトル通り、石幻果と弟、妹たちの、血の涙が流れんばかりの苦悩、戦いが描かれています。
前作同様、悲しくも熱い作品でした。 前作が主に宋の視点で書かれていたのに対し、今回は遼からの視点で書かれており。
そういう対比も個人的には前作、本作をひとつの物語として俯瞰する際に興味深かったです。
「水滸伝」もいいですが、「楊家将」シリーズも同じくらいおススメです。 僕のオススメ度:8.5
北條龍虎伝 (海道 龍一郎著、新潮文庫)
作品の紹介
16世紀半ばのお話。 織田信長が歴史の表舞台に現れる少し前、関東に覇を唱えるべく、勢力を伸ばしつつあった北條氏の
三代目、氏康が主人公。 北條氏と言っても、鎌倉幕府の執権だった北條氏とは違い、伊勢氏が北條と改姓した「後北條」と
呼ばれる一族です。 総領は、早雲、氏綱、氏康と続いていきました。
【あらすじ】小田原を拠点とし、相模、武蔵と勢力を順調に拡大しつつあった北條氏に危機が訪れる。 氏康が家督を継いで
まもなく、上杉、里見を始めとする関東勢のみならず、甲斐の武田(信玄)、駿河の今川(義元)までもが、北條の敵となる。
氏康の最も信頼する家臣、北條 綱成が三千の兵と守る河越城も、八万五千の兵に包囲され、絶体絶命の危機にあった。
氏康は、綱成を救出すべく、乾坤一擲の策に出る、、、、、、。
⇒ タイトルの龍(氷龍=こおりのりゅう)とは氏康、虎(焔虎=ほのおのとら)とは綱成のこと。 同い年の二人が元服前
から心を通わせ、北條家の将来を支えていく若者たちと成長していくさまをていねいに描いた後、前述のクライマックスへと
話が進んでいきます。 著者の海道 龍一郎さんは、デビュー作「真剣」が名作だっただけに、どうしても期待して読み始めて
しまいます。 この三作目も、秀作だと思いますが、「真剣」を超える出来ではなかったです。 僕のオススメ度:7.8
夏の椿 (北 重人著、文春文庫)
作品の紹介
江戸時代のお話。 立原 周乃介は、旗本の三男だが、家を出て、一人、町人として、長屋で暮らしている。 周乃介は、父の
依頼で、行方不明となった甥の定次郎を捜すことになる。 しかし、定次郎は、何者かに殺されていた。 知り合いの同心や
岡っ引き、町人たちの力を借りて、定次郎殺害の真相を探るうちに、米問屋、柏木屋が事件に大きく関わっていることがわかる。
定次郎は、柏木屋の悪事をさぐるうちに、柏木屋の弟に殺されたのだった。 周乃介は、柏木屋の主人と弟に対決を挑む、、、。
⇒ 前半は、周乃介の捜査がたんたんと描かれている、どちらかと言えば、地味な印象でしたが、中盤以降、事件が動き出して
からは、ぐいぐい引っ張られました。 事件の捜査と並行して描かれる、周乃介の恋愛模様の描写もなかなか。
でも、ミステリーの部分は、意外性がなかったかも。
「本の雑誌」2008年度 文庫 時代小説部門 第1位。 僕のオススメ度:7.5
カラフル (森 絵都著、文春文庫)
作品の紹介
「おめでとうございます、抽選に当たりました」 そう言って、天使が、死んだばかりの魂に人生再挑戦のチャンスを与えた。
こうして、前世で大きなあやまちを犯した魂は、自殺を図った中学三年生、小林 真の体に入り込む。 真は、片思いの少女
の援助交際の現場、母の不倫の現場に絶望して自殺に至ったのだった。 真は、絵の才能こそあるものの、背が低く、友人も
いない。 おまけに成績も悪い。 そんな真の身代わりとして生きることになった魂は、天使にガイドされながら、少しずつ
家族やクラスメイトと打ちとけていく。 前世で自分の犯した過ちに気づけば、もう一度、生まれ変われるというのが、当初、
天使が提示した条件だったが、こちらのミッションは、なかなか前に進まなかった、、、、、、。
⇒ 「こういうオチだろうな」と思っていた通りの結末でしたが、さすがは森 絵都さん。 人物造形も、ストーリー運びも秀逸
でした。 子どもも大人も堪能できる、心がほっこりあたたかくなる作品。
「本の雑誌」2007年度 文庫 恋愛小説部門 第4位。 でも、恋愛色はそれほど強くなかったかも。 僕のオススメ度:7.8
夢の守(も)り人 (上橋 菜穂子著、新潮文庫)
作品の紹介
「精霊の守り人」、「闇の守り人」に続く、大人気、高評価の「守(も)り人」シリーズの第三弾。
本作品だけ読んでも、話は通じますが、第一作、第二作とあわせて読むと、なお盛り上がれます。
「精霊の守り人」は、読書感想文2008 part1 、「闇の守り人」は、読書感想文2008 part2 をご参照ください。
【あらすじ】目に見えない、この世ではないもうひとつの世界「ナユグ」の花は、人々の夢を集め、開花の準備を進めていた。
新ヨゴ皇国に暮らす呪術師のタンダは、眠ったまま目を覚まさない姪を、夢の世界から助け出そうとして、ナユグの花の魔力で
鬼に変えられてしまう。
一方、タンダの幼なじみで、放浪の女用心棒、バルサは、人の心を酔わせる不思議な力を持った歌い手、ユグノと知り合う。
ユグノは、ナユグの花と深い因縁を持つ存在だった。 タンダの悲劇を知ったバルサは、大呪術師、トロガイとともに、タンダを
救うべく、困難に立ち向かう、、、、、、。
⇒ いい意味で日本っぽくないファンタジー色は、本作でも健在です。 親子で読んで視点の違いを楽しむのもいいかも。
「路傍の石文学賞」受賞作。 僕のオススメ度:7.8
制服捜査 (佐々木 譲著、新潮文庫)
作品の紹介
北海道の片隅の駐在所の警官を主人公にした連作短編集。 計5編収録。
川久保は、警察人生の大半を過ごした刑事畑から、突然の辞令で駐在所勤務を命じられる。
彼は、妻と二人の娘と離れ、単身赴任の道を選ぶ。 犯罪とはおよそ無縁に見える帯広のはずれの町で、次々と起こる事件。
本来、捜査権のない駐在の身分でありながら、川久保は独自の視点で事件を追う、、、。
⇒ 横山 秀夫さん、今野 敏さんとともに「警察小説」の大家、佐々木 譲(じょう)さんの作品。
とは言え、警察小説としては、次の点が、いい意味で異質でした。
@県警本部(本作では道警本部)とは離れた立地、A警察内の組織の難しさとは無縁の世界、B駐在による裏の捜査
表の世界で、刑事が解決できない事件も、駐在である川久保が独自の捜査で裏で解決するという、ちょっと「必殺仕事人」にも
通じるようなところもあり。 僕のオススメ度:8
1984年 (ジョージ・オーウェル著、ハヤカワ文庫)
作品の紹介
村上春樹が「1Q84」を書くきっかけを与えた作品。 「1984年」が執筆されたのは1948年。 したがって、発表時点では
近未来小説として書かれたものである。
1984年、世界は3つの超大国が交戦状態にあった。 超大国のひとつ、オセアニア国は、かつてのアメリカ、イギリス、
オーストラリアを中心に構成された国である。 ロンドンで真理省の下級役人として働くウィンストン・スミスは、妻とは
別居中の39歳。 日常生活は、ビッグ・ブラザーが頂点に立つ党が考案した双方向テレビ「テレスクリーン」で完全に
管理され、一時も気を抜けない。 すべての情報はテレスクリーンからの映像と音声で伝えられ、こちらの情報も映像と
音声で筒抜けになる仕組みである。 人口の85%はスラム街に住む貧民(プロレ階級)であり、粛清と密告が繰り返される
一党支配の社会主義の世界であった。 味気ない生活を送るスミスは、党へのささやかな抵抗として、禁止行為である記録
行為(日記)を始める。 やがて、同じ省で働く26歳の女性、ジューリアから愛を告白され、ささやかな幸福を手にする。
しかし、省の上層部の一人、オブライエンのもとで反政府運動を始めることになり、、、、、、。
⇒ 世界的に高い評価を受けている作品です。 しかし、全編を覆う抑圧された世界観とディテールの説明の多さにかなり
苦労しました。 いくら小説とは言え、冷戦後の世界に生きる我々にとって、大国間の戦争、一党支配というのは、少し
リアリティーに欠けるきらいもあり。 あらためて、現代の社会で脅威なのは、(戦争もそうだけど)テロや環境破壊なん
じゃないかと思った次第です。 僕のオススメ度:7
悪いうさぎ (若竹 七海著、文春文庫)
作品の紹介
葉村 晶(あきら)は31歳の女性。 探偵事務所から下請けの仕事をもらい、気ままに生きている。
彼女は、お嬢様系の私立女子高生、ミチルの家出捜査を担当し、なんとか解決する。 しかし、ミチルの友人が殺され、さらに
別の友人2人が行方不明となり、警察と協力しながら捜査を進めるが、事件の裏には、とんでもない秘密が隠されていた、、、。
⇒ ミステリーとしては、かなりのクオリティーだと思います。 しかし、本線以外に話がふくらんでいて、人間関係の把握に多少
苦労するかも。 僕のオススメ度:7.8
切羽(きりは)へ (井上 荒野=あれの著、新潮社)
作品の紹介
セイは31歳。 結婚して4年になる、3歳年上の画家の夫と離島で平和で幸せな日々を送っていた。
セイは島の小学校で保健の先生をしている。 新しい学年が始まる4月、東京から音楽の教師として、石和(いさわ)という男が
赴任してきた。 社交的とは言えない石和とセイの接点は、それほど多くはなかった。 何より、セイと夫との生活に綻びがある
わけでもなかった。 しかし、少しずつ少しずつセイの心の中で石和の存在が大きくなり始める、、、、、。
⇒ タイトルにある「切羽(きりは)」とは、それ以上先へは進めない場所のこと。 本の帯に、そう書いてあるのを見て、袋小路
というか、行き詰まりの不倫を想像していたのですが、、、ドロドロした話ではなく。 でも、考え方によっては、ドロドロするより
せつないかな、とも思いました。 大人の女性向きの恋愛小説でしょうか。
2008年「直木賞」受賞作。 僕のオススメ度:7.5
柳生陰陽剣 (荒山 徹著、新潮文庫)
作品の紹介
17世紀のお話。 柳生一族にして、陰陽師でもある柳生 友景は、日本を朝鮮の属国にすべく暗躍する妖術師を倒すため、
魔族を味方につける。 関ヶ原の戦い、大阪夏の陣で、朝鮮妖術師の陰謀を未然に防いだ友景は、雌雄を決するため、
朝鮮に渡るが、海の向こうでは、さらに過酷な闘いが待ち構えていた、、、、、、。
⇒ 柳生の名は出てきますが、剣より妖術の方が比重が大きかったような気がします。 とは言え、著者の筆力ゆえ、骨太の
歴史小説としても、きっちり成立していました。
「本の雑誌」2007年度 文庫 時代小説部門 第7位。 僕のオススメ度:8
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