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読書感想文2006 part 3

「読書感想文2006」 part3 は、初夏の読書録です。


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コメント  黄色い目の魚 (佐藤 多佳子著、新潮文庫)   作品の紹介 

悟とみのりは鎌倉の海辺の高校のクラスメイト。 とは言え、ほとんど口をきいたこともない。
ところが、美術の時間、偶然、悟はみのりの顔を描くことになる。 それ以来、悟は封印していた
絵ごころに火がつき、無性にみのりを描きたくなる。 でも、それは恋愛感情からくるものでは
なかった。 一方、みのりは、徐々に悟のことが気になり始め・・・・・・。
自分が物心つく前に両親が離婚した悟。 彼は10歳のころに一度だけ会った亡き父の描いた絵と
絵に向かうこころを忘れられないでいた。 家庭の中では浮いた存在のみのり。 友だちとも
器用に付き合っていけるほうでもない。 そんな彼女の心の支えは、イラストレーターの叔父
だった。 彼女は叔父になつき、叔父もそんな彼女に甘えていた。 
父の記憶を振り払えない悟。 小さいころから好きだったサッカーも、絵も、本気になった結果、
ダメだとわかるのが怖くて、本気になれずにいた。 みのりはみのりで叔父と叔父の描くイラストが
この世のほとんどすべてだった。 だけど、悟がみのりの絵を描き始めたことで、二人の新しい
時間が始まっていく。 とてもナイーブに、そして不器用に・・・。
高校生の恋愛ものかと思って軽く見てはいけません。 なかなかどうして。まっすぐな気持ちと
痛いくらいのせつなさが絶妙に交錯する一級品の物語です。
  「本の雑誌」おすすめ文庫2005年度 総合 第4位。 僕のオススメ度:9

コメント  龍時(リュウジ)03-04 (野沢 尚著、文春文庫)   作品の紹介 

日本初の本格的サッカー小説「龍時(リュウジ)」の第3部にして最終巻。
16歳でスペインのプロ・サッカーリーグ、リーガ・エスパニョーラへの入団を果たしたリュウジは、
チームのスーパー・サブとしてまずまずの活躍をみせていた。
そんな彼を、アテネ・オリンピックの日本代表監督、平義が大会直前になって召集した。
規律を重んじる理論派監督に召集された意図が読みきれない中、チームは何とか予選リーグを勝ち
上がり、準々決勝でスペインと対決することになる・・・・・・。
第1部、第2部は、スペインでのリュウジの苦労と活躍、成長を描いていましたが、この第3部は、
アテネ・オリンピックに焦点を絞って書かれています。 これまで、その奔放で熱い性格ゆえ、
日本の組織サッカーを理解し切れなかったリュウジ。 一時はスペインへの帰化まで考えた彼が
日本のために戦い、自分なりに日本サッカーを理解していきます。 そして、理論派監督が
リュウジを召集した真相や、監督と彼の妻との秘密、そしてリュウジを遠くから見守る父など
物語の懐を深くするエピソードも満載。 とは言え、この小説の売りは、何と言っても、リアルな
試合描写と選手の心理。 サッカー好きなら、ぜひ第1部から読んで欲しい作品。僕のオススメ度:9
「龍時 01-02」→ 読書感想文2005(3)をご参照ください。
「龍時 02-03」→ 読書感想文2005(5)をご参照ください。
コメント  ワイルド・ソウル (垣根 涼介著、幻冬舎文庫) コメント(上) コメント(下)   作品の紹介 

1960年代初頭、外務省はブラジルへの移民政策に積極的に推進していた。
その結果、4万人以上の人が夢を求めて、ブラジルへと旅立った。 しかし、アマゾン流域の
入植地で彼らを待ち構えていたのは、夢とは程遠い現実だった。 
痩せた土地。 大雨や洪水。 マラリアなど命に関わる病気。
次々と入植地で命を失う人たち。 そして、逃げ出したものの、職がなく、見知らぬ国で
最下層まで落ちていく人たち。
40年の時を経て、日本政府と外務省に復讐すべく、元移民の男と彼らの息子たちが行動を
開始する。 彼らはわずか4人で、入念な準備を経て、ついに日本の地を踏んだ・・・・・・。
ブラジル移民という社会的な問題を根っこのテーマに据えつつ、推理小説としても超一級品の
仕上がりとなっています。
いや、ほんとに骨太で強い小説。 06年上半期に読んだ本の中で、まちがいなくベストです。
2004年 「大薮春彦賞」、「吉川英治文学新人賞」、「日本推理作家協会賞」受賞。
僕のオススメ度:9

コメント  椿山課長の七日間 (浅田 次郎著、朝日文庫)   作品の紹介 

大手デパートの婦人服売り場の椿山課長(46歳)は、夏のバーゲンのスタート直前に
過労死してしまう。 この世とあの世の中継地点で、もう一度、現世に戻り、妻やこどもに
別れを告げたいと懇願し、その願いは特例として承認されるが、、、現世に戻った彼の
仮の姿は39歳の美女。 しかも、残された時間は3日間。 果たして彼は目的を達する
ことができるのか・・・・・・。
物語は、椿山課長を軸に、彼と同時に一時的に現世に戻ったやくざの組長、そして、
7歳の男の子の話がパラレルに進んでいき、やがて交差します。 この世とあの世の
中継地点の描写がまずおもしろい。 そして、現世に戻った椿山と上記の二人の奮闘も
ユーモアたっぷり、愛情たっぷりに描かれています。 僕のオススメ度:9

コメント  風味絶佳 (山田 詠美著、文芸春秋)   作品の紹介 

表題作(「風味絶佳」)を含む計6編の短編集。 著者のことばを借りると「日頃から敬意を
払ってきた」「肉体の技術をなりわいとする人々」から「滲む風味」を表現した恋愛小説集。
どこにでもある恋愛が描かれているわけではないけど、ありえない恋愛が描かれている
わけでもない。 (登場人物たちは)恋愛に浮かれているわけでもないし、もがき苦しんで
いるわけでもない。 そんなバランスの中で、著者が紡ぐ世界は、まさにどれもが風味絶佳。
かなりレベル(クオリティー)の高い作品だと思います。 僕のオススメ度:8.5

コメント  斬られ権佐 (宇江佐 真理著、集英社文庫)   作品の紹介 

江戸時代のお話。 権佐は、仕立て屋の長男。25歳。 しかし、仕立て屋のかたわら
南町奉行所の与力の下働きをしている。 彼の身体には88箇所の刀傷がある。
5年前、惚れた女性を守るために身体を投げ出したときに受けた傷だ。
彼が命をかけて守った女性は一歳年上の町医者。 権佐は彼女の必死の看護で何とか
一命をとりとめる。 やがて、二人は結婚し、こどもにも恵まれた。 そして、不自由な
身体のリハビリも兼ねて、与力の小者として働き始める・・・・・・。
表題作(「斬られ権佐」)を含む、計6作の連作短編集。 捕り物帖という側面もあるけれど、
権佐と妻の究極の恋愛小説という側面も強いです。 泣かせます。
「本の雑誌」おすすめ文庫2005年度 時代小説部門:第5位。 僕のオススメ度:8.5

コメント  空中庭園 (角田 光代著、文春文庫)   作品の紹介 

東京郊外のニュータウンの団地で暮らす四人家族。 父と母は三十代後半。 二十そこそこで
できちゃった婚。 娘は高校生。 息子は中学生。 家族は、何の秘密も持たないオープンさ
がモットーだと合意しているのだが・・・・・・。
物語は、娘、父、母、祖母、息子の家庭教師、息子の六人の視点で進んでいきます。
それぞれが語り手となった短い章立ての構成(計6章)です。 一見、何の秘密もない、オープンな
家庭。 でも、それは母親の幻想であり、家族は個人個人、大きな秘密や思いを抱えて、表面上は
たんたんと暮らしています。 その秘密が、物語が進むにつれて、明かされていくプロセスや構成が
ほんとにみごと。 笑えない秘密やぞっとする過去など、家族という役割の下に隠されたある種の
暗部を、筆力豊かな筆者がみごとに描ききっています。 僕のオススメ度:8.5

コメント  格闘する者に○(まる) (三浦 しをん著、新潮文庫)   作品の紹介 

可南子は大学四回生。 漫画の編集者になりたくて出版社を受験する。 しかし、元来、マイペースな
ためにいかんせん準備不足。 しかも、文学部の友だちも就職に対して真剣味が足りない。 そんな
彼女は、無事、出版社に就職が叶うのか・・・・・・。
可南子の就職活動を軸に、彼女と書道家の老人とのふしぎな恋愛、そして政治家の父の後継者問題
など、読者を飽きさせないしかけがいろいろ出てきます。 そして、何より文章が軽快。 ストーリーの
テンポもいい。 三浦しをんさんの作品は「ロマンス小説の七日間」に続いて2冊目だったけど、なかなか
おもしろい作家さんだと思います。 僕のオススメ度:8.5

コメント  板谷バカ三代 (ゲッツ板谷著、角川文庫)   作品の紹介 

東京・立川に暮らす板谷家の報復絶倒のおバカぶりを描いたコラム集。
ビデオデッキにトーストを差し込むおばあちゃん。 糖尿ヘラクレスと自ら名乗る父。
そして、祖父の遺体を前に「ところで、じいちゃんの源氏名は?」と聞く息子(次男)。
この本のすごいところは、そのすべてが実話であるところである。 でも、この本の救いは、
そんな家族のおバカぶりを愛情たっぷりに描いた長男の目線だと思う。
疲れてる人にオススメ。 まちがいなく超笑えます。 僕のオススメ度:8

コメント  夜市(よいち) (恒川 光太郎著、角川書店)   作品の紹介 

表題作(「夜市」)ともう一編(「風の古道」)を収録。 どちらの作品も人間が足を踏み入れる
ことのできない世界を描いた幻想的な作品。 「夜市」は、若さや才能など人間界では手に入らない
ものを売る夜の縁日のお話。 主人公は弟と引き換えに野球の才能を手に入れるが・・・・・・。
「風の古道」は、神や死者や妖怪のための道、古道に迷い込んだ少年のお話。 どちらもホラー小説
と銘打たれているけれども、気持ち悪さや恐ろしさよりも不気味さ、不思議さを描いた作品。
第12回日本ホラー小説大賞受賞作。 僕のオススメ度:8

コメント  グッドラックららばい (平 安寿子著、講談社文庫)   作品の紹介 

片岡家の家族四人と、それを取り巻く人々の二十年間の物語。 信用金庫の庶務課長の父。
倹約家のただのいい人。 長女は高三。 次女は中三。 長女が高校を卒業した日。 母が家出した。
まるでちょっと出かけてくるみたいなノリで父の会社に電話して姿を消した。 家族は、母がすぐに
帰ってくるだろうと思っていたが、母は帰って来なかった・・・・・・。
それから母は、家族と連絡をとりながらも、放浪生活を続けます。 そして、父も、娘二人も、母の
家出を受け止めて、それぞれが、それぞれのやり方で、けっこうたんたんと生きていくのです。
家族四人の人物描写が秀逸なのはもちろん、四人を取り巻く登場人物たちも、みんなユニークで、
最後まで飽きさせない展開でした。 かなりありえない話のはずなんだけど、なんだか妙にリアリティも
あって、「あ。こんな人いそう」とか「こんなことある、ある」なんて思いながら読んでしまいました。
「本の雑誌」おすすめ文庫2005年度 総合:第1位! 僕のオススメ度:8

コメント  青空チェリー (豊島 ミホ著、新潮文庫)   作品の紹介 

表題作(「青空チェリー」)の他に、「ハニィ、空が灼けているよ」、「誓いじゃないけど僕は思った」の計3編
を収録。 予備校の屋上からラブホテルのノゾキをする男女を描いた「青空チェリー」。 「ハニィ、空が灼け
ているよ」は、突然、中東の戦争に巻き込まれた中、恋人である大学教授と離れ離れになって実家の田舎町で
過ごす女子大生と幼なじみの男の子のお話。 そして、「誓いじゃないけど僕は思った」は、中学時代の同級生
の女の子を忘れられない大学4年生の男の子の物語。 どの物語も、ちょっとした設定(日常とのシチュエーション
のずらし方)が絶妙です。 会話もリアル感、いい感じのテンポ。 若い読者、それも、女の子向きに書かれた
小説かと思うけど、僕が読んでも、十分おもしろかったです。 この作家の他の作品も読んでみたくなりました。
「本の雑誌」おすすめ文庫2005年度 恋愛小説部門:第3位。 僕のオススメ度:8

コメント  時生(トキオ) (東野 圭吾著、講談社文庫)   作品の紹介 

難病の息子の臨終を間近に控え、夫は妻に語りかける。 今から二十年以上前に、自分は息子に
会ったことがあるのだと・・・・・・。
臨終間近の時生が二十年以上前の若者の身体を借りて、二十三歳だった父の前に現れ、無軌道
だった父の人生を正していく物語です。 当時、父が付き合っていた女性がある事件に巻き込まれ、
父といっしょに事件を解決していくという作者得意のミステリーの要素も織り込まれています。
そして、赤ん坊の頃、養子に出されたことをわだかまりに思い、きちんとした人生を送れない、
若き日の父を息子(=時生)がサポートする、という逆転の構図もみごとに描かれています。
約530ページの力作。 僕のオススメ度:8

コメント  ぶらんこ乗り (いしい しんじ著、新潮文庫)   作品の紹介 

画家の母。額縁をつくる父。料理の上手な祖母。そして、3つ違いの弟。
彼女は弟の話が好きだった。 弟はぶらんこが好きだった。 弟は4歳の頃からノートに
いろんな話を書き綴った。 しかし、6歳の頃、声を失う。 それから、弟は動物の話を
理解できるようになり、庭のブランコでいろんな話を書き始める・・・・・・。
ハッピーなできごとで彩られた物語ではないけど、とても懐かしい気持ち、いとおしい
想いがこみ上げてくる作品です。 僕のオススメ度:8

コメント  麦ふみクーツェ (いしい しんじ著、新潮文庫)   作品の紹介 

小さな港町で育った少年「ねこ」は、町の楽団のリーダーの祖父、数学者くずれの父と平和に
暮らしていた。 やがて、町の楽団はめきめき実力をつけ、少年は、都会の音楽学校へと
旅立つのだが・・・・・・。
児童文学としても高い評価を受けた作品。 大人が読んでも、絶対おもしろいと思います。
つらいできごとも描かれているけれど、こころを洗われるような読後感が残るはず。
2003年「坪田譲治文学賞」受賞。 僕のオススメ度:8

コメント  プラスティック (井上 夢人著、講談社文庫)   作品の紹介 

結婚間もない二十代半ばの主婦、向井洵子は、出張中の夫の帰りを待っていた。
夫の帰りを待つ間に覚えたてのワープロで日記をつけはじめるが、彼女のまわりで次々と奇妙な
できごとが起こる。 そして、彼女は何者かに殺害され・・・・・・。
単純な殺人事件を描いたミステリーではありません。 殺人のトリックではなく、物語全体に
張り巡らされた仕掛けにいつ気づくかが、この作品を読む楽しみのひとつでしょう。 
僕は、5分の1くらい読み進んだ時点で、ピンときましたが、謎は残りました。 そして、最後の
最後で「なるほどね」と脱帽しました。 作者はわざとある程度は謎に気づかせて、自分のペースに
ひきずりこみ、物語の最後で小気味よく出し抜いてくれました。 僕のオススメ度:8

コメント  顔〜FACE〜 (横山 秀夫著、徳間文庫)   作品の紹介 

23歳の婦警、平野 瑞穂は、かつては鑑識課に所属し、犯人の似顔絵を描いていた。 しかし、警察の
権威を守るため、似顔絵の改ざんを命じられ、精神のバランスを崩す。 半年間の休職後、広報の仕事に
就くが、元の職場に戻りたい気持ちを強く抱いていた・・・・・・。
男社会の警察の中で失敗を重ねながらも、警察官として成長していくヒロインの姿を描いた警察小説。
ミステリーとしても完成度高いです。 さすがは横山さん。 僕のオススメ度:8

コメント  楽園のつくりかた (笹生 陽子著、角川文庫)   作品の紹介 

東京の有名私立に通う中二の優は、エリートになることを目標に勉強第一だった。
ところが、突然、父の実家に引っ越すことに。 しかも、彼が通うことになったのは、
同級生が3人しかいない村の分校だった。 そして、これまでとは、180度違う同級生
たちとの学校生活が始まる・・・・・・。
大人もこどもも楽しく読める作品。 ラストがいいです。みごとです。
2003年「産経児童出版文化賞」受賞。 僕のオススメ度:7.5

コメント  シルエット (島本 理生著、講談社文庫)   作品の紹介 

好きだったのに別れてしまった恋人を想いながらも、今は大学生と付き合っている女子高生の
お話。 彼女の同級生だった元恋人は、女性のからだに一種の嫌悪感を持つ男の子だった・・・。
話題の作家、島本 理生さんが高校生の時に書いた作品。 同世代の人に読んでもらいたいと作者
自らが「あとがき」で書いているのが納得できる空気感でした。
表題作(「シルエット」)を含む計3編の恋愛小説を収録した短編集。
「本の雑誌」おすすめ文庫2005年度 恋愛小説部門:第4位。 僕のオススメ度:7.5

コメント  MOMENT (本多 孝好著、集英社文庫)   作品の紹介 

ある病院で清掃員のバイトをしている大学四年生の神田君。 彼はひょんなことから病院に
伝わる「必殺仕事人」の役割を引き受けてしまう。 必殺仕事人というのは、余命いくばくも
ない患者の最後の望みをなんでも叶えてやるのが、その役割だった。 彼は、患者たちの
さまざまな願いを次々と叶えていくのだが・・・・・・。
とは言え。 神田君にお願いをする患者たちにも、秘密があったりで、単純なストーリーには
なっていません。 青春小説とミステリー小説の真ん中みたいなテイスト。 僕のオススメ度:7.5

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