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読書感想文2014 part 2
「読書感想文2014」 part2は、3月〜4月の読書録です。
↓ Click NOVEL mark !
私を知らないで (白河 三兎著、集英社文庫)
作品の紹介
中学二年の夏の終わりに、黒田慎平は、父の転勤で横浜郊外の中学に転校する。 クラスには、
新藤ひかりという美少女がいた。 ひかりは、祖母と二人暮らしで、極貧生活を送っているが、
ファッションにも気を遣う好奇心旺盛の女子。 しかし、クラスでは「キヨコ」と呼ばれ、仲間はずれ
にされていた。 慎平は、ひかりが気になってしかたなかったが、クラスを仕切るグループのメンバー
の一人、アヤと付き合うことになる。 冬休み明けに、東京から転校してきた高野三四郎は、慎平と
友だちになり、ひかりとも付き合うようになる。 人気者の高野と付き合うようになり、ひかりに対する
風当たりも弱まったかに見えたが、やがて高野が登校拒否になり、その原因がひかりにあるかのような
噂が流れる。 それでも、ひかりを守ろうとする慎平も、危うい立場に追い込まれるが、文化祭で
ひかりが起死回生の策をとり、慎平だけでなく、ひかりも立場を回復する。
ストーリーは、この後、高野の不登校の秘密、慎平の出生の秘密、ひかりの秘密を描き、ラストまで
一気読必至。 ちょっとふしぎな世界観のリーダビリティー抜群の作品。 伊坂幸太郎さんがデビュー
したときのような期待感を感じさせる作家かも。 オススメ度:8.2
スリープ (乾 くるみ著、ハルキ文庫)
作品の紹介
テレビ番組「科学のちから」の人気リポーター、14歳の羽鳥亜里沙は、2006年2月、冷凍睡眠装置の
研究をする「未来科学研究所」を取材するために、つくば市に向かう。 撮影の休憩中に、つい好奇心
から立ち入り禁止の地下5階に入りこんだ亜里沙は、冷凍保存された遺体を見てしまう、、、。
地下5階にやってきた所長の八田は、「何も見ていない」と言う亜里沙を責めることもなく、高解像度
スキャナーに入れ、試し撮りをする。 しかし、撮影中、亜里沙は心肺停止状態になり、あせった八田は
亜里沙を冷凍睡眠装置に入れる。 とは言え、完全に蘇生する技術は確立されておらず、事件は秘密裡
に処理され、30年の月日が流れる、、、。
事件から30年後の2036年、亜里沙とともに「科学のちから」でレポーターをつとめていた戸松鋭二は、
未来科学研究所の副所長になっていた。 鋭二は、ノーベル物理学賞を受賞するほどの科学者になって
おり、亜里沙を完全に蘇生する技術を秘密裡に研究していた。 鋭二は、ついに亜里沙の蘇生に成功し、
亜里沙とともに失踪する。 44歳の鋭二と14歳のままの亜里沙は、叔父と姪として、江幡と名乗り、品川
の隠れ家に身を移す、、、。
一方、大統領情報調査室は、陸軍情報本部国家公安部とともに、失踪した鋭二の捜査をするために、
未来科学研究所に赴く。 陸軍で捜査担当に指名されたのは、亜里沙、鋭二とともに「科学のちから」で
レポーターをつとめていた鷲尾まりん一尉であった。 まりんは、捜査を始めるとすぐに、亜里沙が蘇生
したことをつかむが、大統領情報調査室に報告することなく、独自にかつての親友の捜査を始める、、、。
、、、という感じで話は進んでいくのですが、さすがは、超トリック巧者の著者だけあって、物語は想像も
できない展開を見せます。 終盤、トリックの真相がわかったときには、放心状態。 一級品のミステリー
でありながら、一級品のSFでもあり、恋愛小説でもある佳作。 オススメ度:8.2
カラット探偵事務所の事件簿2 (乾 くるみ著、PHP文芸文庫)
作品の紹介
シリーズ第二作。 7編を収録したミステリー短編集。
謎解き専門の探偵事務所としてスタートしたものの、一ヶ月に一本ペースの依頼しかこないカラット探偵
事務所。 とはいえ、所長の古谷は、資産家の三男で、事務所も実家の持ちビルに入ってるので、まったく
あせりがない。 古谷の高校の同級生で、助手の井上も、前職の新聞記者時代とはうって変わった安穏とした
日々を受け入れている。 しかし、ひとたび依頼が舞い込むと明晰な頭脳と洞察力で瞬時に事件を解決する。
第一作同様、肩のこらない仕上がり。 とても読みやすくて、好感の持てる作品。 クオリティーは第一作より
上がっているかも。
シリーズ第一作のブックレビューはコチラ。
オススメ度:8.1
写楽(上) (島田 荘司著、新潮文庫)
作品の紹介
正式タイトルは「写楽 閉じた国の幻」。上下巻の上巻。
東大に入ったものの、大学院は私立。 その大学で江戸美術を教える講師の仕事にありついたものの、
今ひとつぱっとしなかった佐藤。 28歳で大手商社の重役の娘で、川崎の準ミスだった女性と結婚するが、
夫婦仲は冷え込んでいた。 佐藤の唯一の希望だったひとり息子も、いっしょに六本木に出かけたときに、
ビルの回転ドアに挟まれて、死なせてしまう。
失意の佐藤は、大阪の図書館で見つけた一枚の絵をきっかけに、出版社の常世田とともに、江戸時代の
浮世絵師、写楽の正体解明の仕事を始める。 息子の事故の調査委員会のメンバー、東大教授の片桐
(超美貌の女性)も佐藤に協力し、少しずつ写楽の核心に近づいていく、、、、、、。
写楽は、1794年に突如登場し、わずか10ヶ月しか活動せずに、忽然と姿を消した謎の絵師。 写楽の作品
以外に、その人物に関する記録もほとんど残されていません。
上巻は、「現代編T」、「江戸編T」、「現代編U」の三章仕立て。 「江戸編」では写楽を世に出した板元、
耕書堂の蔦屋重三郎、作家の山東京伝、絵師の葛飾春朗(後の北斎)などが登場。 「現代編」が写楽の
正体探しを緻密に描いているのに対し、「江戸編」は短く(480ページ中40ページ)、写楽周辺の人々の人物
紹介のような位置づけ。 「ゴッド・オブ・ミステリー」と称される著者が構想20年の時を経て、送り出した作品
だけあって、骨太の大作。 本好きには、まちがいなくお勧めの一作。
「このミステリーがすごい!」2011年版第2位。「ミステリが読みたい!」2011年版第3位。
「本の雑誌」2014年度文庫「国内ミステリー部門」第3位。 オススメ度:8.2
写楽(下) (島田 荘司著、新潮文庫)
作品の紹介
写楽の正体探しの仕事は、佐藤の閃き、片桐教授の献身的な協力によって、大詰めを迎える。
一方、1794年の江戸では、春朗が持ち込んだ一枚の絵に衝撃を受けた蔦屋重三郎は、絵の作者
のもとを訪れ、役者絵をかいてくれるよう依頼する、、、。
こうして、蔦屋のプロデュースにより、写楽の役者絵が世に出るわけですが、、、写楽の正体は、
これまでの常識を覆す人物。 それは、読んでのお楽しみ、ということで、、、。
ミステリー小説と歴史小説のカップリングのような構成ながら、まったく違和感なく、読み進める
ことができました。 写楽の正体に関しては、夢のある推理で、個人的には納得。
下巻は、「江戸編U」、「現代編V」、「江戸編V」、「エピローグ」という構成。
「現代編V」が210ページ、「江戸編V」が140ページ。
さらに著者自身の「後書き」、「オランダ商館長の江戸参府日記」(著者訳)と続きます。
「このミステリーがすごい!」2011年版第2位。「ミステリが読みたい!」2011年版第3位。
「本の雑誌」2014年度文庫「国内ミステリー部門」第3位。 オススメ度:8.3
掏摸(スリ) (中村 文則著、河出文庫)
作品の紹介
天才的なスリ、「僕」は、友人の誘いで強盗の手伝いをし、500万の大金を手にする。
しかし、この強盗を仕切った闇社会の大物、木崎に再会し、難易度の高いスリの仕事を3件依頼される。
木崎の依頼は、強制的なものであり、もとより断るという選択肢のない「僕」は、難題に立ち向かう。
しかし、その難題の先に待ち受けていたものは、、、、、、。
主人公「僕」のスリの仕事と木崎のミッションを縦糸に、「僕」とある少年、その母親との交流を横糸に
ストーリーが進んでいきます。 海外で翻訳され、評価も高い作品。 ミステリー小説の側面もあるけど、
どちらかというと、現代文学・純文学好きの人におすすめの作品かな。
2010年「大江健三郎賞」受賞作品。 2011年「ウォールストリートジャーナル」のベスト小説十作に選出。
「ロサンゼルタイムズ文学賞」のミステリー・スリラー部門最終候補作品。
「本の雑誌」2014年度文庫「国内ミステリー部門」第4位。 オススメ度:8
愛娘にさよならを (秦 建日子著、河出文庫)
作品の紹介
正式タイトルは「刑事 雪平夏見 愛娘にさよならを」。 テレビと映画で大ヒットした「アンフェア」シリーズの
原作第四弾。
警視庁捜査一課で検挙率No.1を誇る警部補、雪平夏見は、バツイチ。 元夫は、殺人犯の犠牲となった。
娘の美央は元夫の両親に引き取られ、会うことはおろか、電話で声を聞くこともできない。
ある事件で銃撃戦の末、重傷を負った雪平は、左腕に麻痺が残り、警務部監査官室に異動になる。
監査官室の上司、島津の家に、同僚とともに夕食に招待された雪平は、島津の家から出るときにすれ違った
不審な男が気になり、引き返す。 果たして、男は、島津夫妻を惨殺した後であり、雪平は犯人に立ち向かうが
拳銃を携行しておらず、左腕が麻痺した状態であるため、犯人を取り逃がす。
雪平は、捜査一課の元同僚、安藤とコンビを組み、事件の捜査を開始する。 しかし、その矢先、またしても
殺人事件が続けて発生。 犯人は、ある少女が書いた手紙に操られたかのように、殺人を犯していた、、、。
雪平と安藤は、一見無関係に見える被害者たちのつながりを見つけ、6年前に起きた少女の溺死事故にたどり
着く。 事故で死んだ娘の義理の父、門田は、次は自分が殺される番だとおびえていた、、、、、、。
ついに犯人を特定した捜査本部は、大胆な作戦を立て、犯人逮捕に乗り出すが、、、、、、。
連続殺人事件がメインストーリー、そして、雪平が愛娘、美央の親権を取り戻すべく動き始める姿がサブストー
リーとして描かれています。 メインスト―リーの方は、トリックも構成もリーダビリティーが高いデキなのですが、
サブストーリーの方はせつないお話でした。
シリーズ第三弾「殺してもいい命」のブックレビューはコチラ。
ちなみに、上述の、雪平が重傷を負った銃撃戦
というのは、第三作のラストシーンのことです。
オススメ度:7.9
つばくろ越え (志水 辰夫著、新潮文庫)
作品の紹介
正式タイトルは「つばくろ越え 蓬莱屋帳外控」。 シリーズ第一作。
幕末の頃のお話。 飛脚問屋の主を隠居した蓬莱屋勝五郎は、複数の飛脚がリレーのように運ぶ
のではなく、一人の男が最後まで運ぶ「通し飛脚」という新しいスタイルの飛脚問屋を始める。
「通し飛脚」は、大金、秘密を要するもの、人任せにできない荷などを運ぶ。 「通し飛脚」をつとめるのは、
飛脚としての経験が長く、並外れた脚力と度胸を持った男たち。
そんな「通し飛脚」たちの光と影、矜持や人情を描く、四編を収めた中編集。
飛脚という仕事にスポットをあてたのが新鮮。 もともと筆力のある著者だけに、リーダビリティーの高い
ユニークな時代小説に仕上がっています。 オススメ度:8.1
引かれ者でござい (志水 辰夫著、新潮文庫)
作品の紹介
正式タイトルは「引かれ者でござい 蓬莱屋帳外控」。 シリーズ第二作。
表題作(「引かれ者でござい」)を含む計三編を収録した中編集。
第一作に続き、男たちは金や荷物を運ぶだけではなく、事件に巻き込まれ、命の危険にも晒される。
けれど、逃げ出さず、目の前で困っている人たちを助けるために懸命に働く。 そんな通し飛脚たちの
男前な活躍を描いた佳作。 第一作よりハードボイルドさがアップ。 クオリティーもアップ。
熟練の著者のチカラが冴え渡る新シリーズ。 続編に期待。
「本の雑誌」2014年度文庫「時代小説部門」第1位。 オススメ度:8.2
深尾くれない (宇江佐 真理著、新潮文庫)
作品の紹介
鳥取藩士、深尾角馬は短躯ゆえの反骨心から剣の道に精進してきた。 藩の剣法指南役も勤め、藩主から
も一目置かれる置かれる存在になった。 しかし江戸出仕の間、姦通した妻と相手の男を斬り捨てる。
後妻として迎えたかのとの間に、ふきという娘をもうけるが、角馬が江戸出仕の折、かのも姦通をおかす。
角馬は、またしても、かのと相手の男を斬り捨て、周囲を脅かす。 かのは、角馬に斬られる間際に、自分
よりも、庭に咲く「深尾くれない」と呼ばれる深紅の牡丹を愛した角馬に恨み言を残す。
角馬は、自分の流派を発展させ、弟子たちが育ったのを見届け、近隣の村に居を移し、地方役人としての
暮らしを始める。 このとき、角馬が五十歳、ふきが二十歳であった。 やがて、ふきは、村の富農の
次男と恋仲となり、これを知った角馬が男との父のもとを訪れる、、、、、、。
著者の作品にしては、陰のイメージが強い異例の作品。 姦通した二人の妻を二度、斬り捨てるという一面も
ありながら、ふだんの角馬は狂気をまとっているわけではなく、むしろ武士らしい武士として描かれています。
物語の結末にせつなさを感じるか、清々しさを感じるかは読者次第でしょうか。 オススメ度:7.9
火城(かじょう) (高橋 克彦著、角川文庫)
作品の紹介
佐賀藩士の五男として生まれた栄寿は、十一歳のとき、佐賀藩主の侍医である佐野常微(つねみ)の養子となる。
医師として将来を嘱望されていた栄寿は、二十五歳のとき、藩主、鍋島直正の命を受け、京都、大坂、江戸に
留学し、蘭学と化学を修める。 外国の脅威、開国の必要性を痛感していた栄寿は、佐賀藩で蒸気船を建造する
ことを決心する。 1851年、二十九歳の栄寿は長崎に戻る途中、かつての師である京都の蘭学者、広瀬元恭のもと
に立ち寄り、門人である化学者の中村奇輔、蘭語の専門家、石黒寛二を佐賀藩に同行したいと依頼する。
さらに当代一の発明家、「からくり儀右門」こと田中儀右門まで、蒸気船の雛型を完成させた後、栄寿のもとで
蒸気船づくりに参加する確約をとりつける。 進取の気質に富んだ藩主、鍋島閑叟(直正)のもと、栄寿たちは、
蒸気船づくりに邁進する。 1855年、栄寿たちは、オランダの軍艦で海軍士官の教育を受け始まる。
オランダの教練を受けながら、栄寿は、田中儀右門らと蒸気機関車の雛型づくりにとりかかる。 やがて、藩主、
鍋島閑叟にお披露目し、造船機械の購入と工場建設にもとりかかる。 そして、いよいよ蒸気船づくりに向けて
新たな奮闘の日々が始まる、、、、、。
幕末のころ、佐賀藩が日本でいちばんの技術力を有していたことを初めて知りました。 栄寿と彼のもとに集う
技術者たちの熱い志を描いた佳作。 ↑では触れなかったけど、井伊直弼の家臣、長野主馬と栄寿との親交も
読みどころのひとつ。 オススメ度:8
鬼平犯科帳 10 (池波 正太郎著、文春文庫)
作品の紹介
「鬼平犯科帳」シリーズの第10巻。 火付盗賊改方の長官、「鬼平」こと長谷川平蔵の活躍を描いたヒット作。
10巻は、全7編を収録した連作短編集。 あいかわらず、高レベルの安定感。 まさに時代小説の醍醐味を
味わえる一品。 オススメ度:8
鬼平犯科帳 11 (池波 正太郎著、文春文庫)
作品の紹介
「鬼平犯科帳」シリーズの第11巻。 全7編を収録した連作短編集。 オススメ度:8
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