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読書感想文2014 part 3
「読書感想文2014」 part3は、5月〜6月の読書録です。
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折れた竜骨(上) (米澤 穂信著、創元推理文庫)
作品の紹介
12世紀末期のお話。 ロンドンから北へ船で三日のところに位置するソロン諸島。
領主、ローレント・エイルウィンのもと、平穏な日々が続いていたが、宿敵デーン人の来襲を察知し、
急遽、傭兵たちを雇うことになる。 しかし、その矢先、領主は、デーン人の暗殺騎士エドリックの
操る魔術によって命を落とす。 領主の娘、アミーナは、エドリックが魔術で人を操り、「走狗
(ミニオン)」にしたて、領主を殺害したことを、エドリックを追ってトリポリ伯国からやって来た
聖アンジブロジウス病院兄弟団の騎士、ファルク・フィッツジョンから知らされる。 しかも、走狗に
仕立てられた者には、殺人の記憶がないという。 アミーナは、ファルクと彼の従士、ニコラの力を
借りて、事件の捜査に乗り出す、、、。 やがて、アミーナは、ニコラからファルクがエドリックの兄
であることを知らされる。 そして、館に20年間に渡って幽閉していた不老不死の呪われたデーン人、
トーステンが忽然と姿を消す、、、、、、。
著者の米澤穂信さんは「インシテミル」のイメージが強いのですが、中世の海外が舞台のファンタジー
色の強い作品を書くとは、ちょっと意外でした。 とはいえ、下巻に向けてミステリーっぽくなっていく
のだろうと思いますが、、、、、、。
「日本推理作家協会賞」受賞作。 「本の雑誌」2014年「国内ミステリー部門」第5位。 オススメ度:8.1
折れた竜骨(下) (米澤 穂信著、創元推理文庫)
作品の紹介
暗殺騎士エドリックの魔術によって殺害されたソロン島の領主、ローレント・エイルウィンの娘、
アミーナは、東方の騎士、ファルクと従者ニコラの力を借りて、殺人事件の捜査を始める。
ファルクは、エドリックの従者に毒を盛られるが、何とか一命をとりとめる。 その矢先、海から
デーン人が来襲する。 首を落とさない限り倒せない呪われたデーンたち相手にソロンの兵や
住民は苦戦するが、傭兵たちの働きにより、デーン人を退却させる。
戦勝の宴の席で、ファルクは、領主暗殺の容疑者8人の動機、アリバイなどを説明し、真犯人を
絞り込んでいくが、、、、、、。
ラストは、思わぬどんでん返し。 緻密な構成の締めくくりにふさわしい展開でした。
下巻は、まさに一級品のミステリー。 お勧めの一作です。
「日本推理作家協会賞」受賞作。 「本の雑誌」2014年「国内ミステリー部門」第5位。
オススメ度:8.3
英雄の書(上) (宮部 みゆき著、新潮文庫)
作品の紹介
森崎友理子は小学五年生。 中学生の兄・大樹が同級生を殺傷し、失踪する。 友理子は、大樹の
部屋にあった古書、「アジュ」から、彼が英雄の書、「エルムの書」に憑かれてしまったことを知る。
友理子は、古書収集家の大叔父の別荘で、古書たちの助けを借り、物語が生まれ、終焉を迎える
「無名の地」に旅立つ。 そこで、無名の地で封印されていた『英雄』であり『黄衣の王』でもある
存在が封印を解き、破獄したことを知る。 大樹は、英雄の負の面である『黄衣の王』が復活する
ための「最後の器」にされていた。 友理子は、大樹を探すべく、無名の地で従者となった「ソラ」、
古書「アジュ」とともに、彼の中学校を訪れる。 図書室で大樹の友人、乾みちるから、いじめに
あっていたみちるをかばったことから、大樹もいじめの対象になっていたことを知る、、、。
著者の数ある才能のひとつ、ファンタジー小説の大作。 上巻だけで400ページのボリューム。
そのまま映画かアニメにできてしまうほどの世界観をもっています。 宮部みゆきさんの作品は、物語
の質が高いのは、言うまでもありませんが、日本語が美しいのがいいです。
子ども向けの作品というわけではないので、大人にもお勧め。 オススメ度:8.1
英雄の書(下) (宮部 みゆき著、新潮文庫)
作品の紹介
大樹の中学校に、突然、黄衣の王の手下の魔物が現れる。 友理子、アジュ、ソラは、まったく歯が
立たず、窮地に立たされるが、颯爽と現れた一人の男が魔物を倒す。 男は、黄衣の王を封印する
「狼」という役割を負っていた。 友理子は、彼を「アッシュ」と名づける。 アッシュは、人間の「狼」
ではなく、「エルムの書」が生まれた物語の世界の「狼」だった。 友里子たちは、アッシュとともに、
彼の物語の世界「ヘイトランド」に旅立つ。 ヘイトランドで、大樹と黄衣の王の手がかりを求め、
友里子たちは、意外な人物に対面する。 そして、いよいよ最終決戦の地、王宮へと向かうが、、、。
予想とは違うエンディングだったけど、まぁ、こういう終わり方もありかな、と思いました。
エンディングのちょっともやもやした気分が、エピローグで晴らされたから。 ちなみに、続編の構想も
あるそうです。 オススメ度:8.1
はるがいったら (飛鳥井 千砂著、集英社文庫)
作品の紹介
両親が離婚し離れて暮らす姉と弟。 完璧主義の姉、園は22歳。 都内で一人暮らし。 デパートの
受付の仕事をしている。 婚約者のいる幼馴染との先のない恋愛にはまっている。
弟の行(ゆき)は、18歳。 生まれつき体が弱く、高1で留年。 やさしいが冷めた性格。 自室で
14歳の寝たきりの老犬、ハルの介護をしている。 高校の同級生で、異性の親友、なっちゃんと
同じ大学に進むはずだった決心が揺らぎ始めている。
行が入院したことをきっかけに園がハルを預かることに。 けれど、園は無言電話や手紙による
嫌がらせを受けていた、、、。
この著者の作品を読むのは3作目ですが、彼女の描く世界観が好きです。 心地よい独特のテンポで
物語を展開していきます。
「小説すばる」新人賞 受賞作。 オススメ度:8.1
一の富 (松井 今朝子著、角川春樹事務所 時代小説文庫)
作品の紹介
正式タイトルは「一の富 並木拍子郎種取帳」。 「並木拍子郎種取帳」シリーズの第一作。
表題作(「一の富」)を含む計5編を収録した連作短編集。
並木拍子郎は、二十歳をこえたばかりの若者。 本名は、筧兵四郎。
北町奉行所の同心の家に生まれたが、兄が家を継ぎ、歌舞伎の作者、並木五瓶に弟子入りする。
五瓶は、芝居の台本づくりの訓練にと、拍子郎に町の噂や出来事を「種取帳」に書き留めるように
命じる。 芝居のネタ集めのために始めた「種取帳」だったが、拍子郎と五瓶の好奇心と推理により、
いつしか「捕物帳」の様相を呈していく。 二人は、奉行所が手を焼く事件や、身の周りで起きた
事件を次々と解決していく、、、、、、。
物語の本線は、拍子郎と五瓶の探偵ぶりですが、五瓶宅の近所の料理茶屋の娘で十八歳のおあさ
と拍子郎との恋の行方も気になるサブストーリーです。 オススメ度:8.1
妻は、くノ一 5 月光値千両 (風野 真知雄著、角川文庫)
作品の紹介
人気シリーズ「妻は、くノ一」の第5作。
平戸藩の雙星(ふたぼし)彦馬の新婚の妻、織江は、幕府お庭番のくノ一だった、、、。
織江は、わずか一ヶ月で姿を消すが、お互い、忘れられずにいた。 江戸に出てきた彦馬は、
前藩主、松浦静山の屋敷で織江に再会するが、変装した彼女に気づかない。 一方、織江は、
自分の役目のことに加え、彦馬の身を案じ、彦馬に会うことを我慢する(4巻までのあらすじ)。
彦馬は、ついに織江の正体を知るが、一足ちがいで彼女は静山の屋敷から姿を消していた。
織江は、お庭番から抜ける決心をし、母、雅江は、全力で織江を支える。 そして、母娘で、
お庭番の頭領、川村との対決に臨むが、雅江が傷を負う。 その場に加勢に駆けつけたのは、
若い頃の雅江を知る意外な人物だった、、、、、、。
物語の展開が加速した感のある第5巻。 今まで、イマイチ共感をおぼえなかった雅江との
距離が縮まったと感じるのは、織江だけではなく、読者も、そうなのでは?
織江の母、雅江が大活躍の巻。 続きが気になる。 6巻も手に入れなければ。
「妻は、くノ一」 1〜4のブックレビューはコチラ。
オススメ度:8.1
燦 2 光の刃 (あさの あつこ著、文春文庫)
作品の紹介
人気シリーズ「燦(さん)」の第二巻。
田鶴藩の筆頭家老、吉倉伊佐衛門の長男、伊月(いつき)、十六歳。 幼いころから、藩主、
長城守常寿の二男、圭寿(よしひさ)の側仕えとして`生きてきた。 伊月には、生まれたとき
に、異能の力を持つ神波(かんば)一族に引き取られた双子の弟、燦(さん)がいた。
燦は、藩主を鷹狩りの際に襲撃し、敵とも思える行動をとるが、伊月に接触してくる。
一方、伊月が仕える圭寿は、兄、継寿の突然の死により、世継ぎとなり、藩の江戸屋敷で
暮らすことに。 伊月は、圭寿とともに、江戸に赴くが、窮屈な日々が待ち構えていた。
世継ぎとして多忙な毎日を送る圭寿は、次期藩主としての自覚は持ちつつも、かねてからの
夢だった戯作を書き上げ、版元、須賀屋に持ち込む。 須賀屋は、伊月と燦の関係をベース
に書き上げた圭寿の作品を評価し、出版できるレベルに書き直すためのアドバイスを与える。
そんな中、伊月の父が密偵として江戸屋敷に送り込んでいた石崎が、伊月に、圭寿の命が
狙われていることを告げる。 しかし、ほどなく、石崎は何者かに襲われ、命を落とす。
そして、燦も、伊月の前に姿を現す、、、。
スケールの大きさを感じた第一巻の期待を裏切ることなく、第二巻も、リーダビリティーの
高い仕上がりになっています。 第三巻にも期待。
「燦」 1 風の刃のブックレビューはコチラ。
オススメ度:8.2
燦 3 土の刃 (あさの あつこ著、文春文庫)
作品の紹介
人気シリーズ「燦(さん)」の第三巻。
伊月が留守の間、圭寿(よしひさ)は何者かに命を狙われるが、燦(さん)が窮地を救う。
まもなく圭寿は、戯作を書き直し、自らの手で、版元、須賀屋に持ち込む。 須賀屋は、圭寿の
作品を絶賛し、出版のメドが立つ。 一方、燦は、須賀屋の主人、天三郎から、須賀屋も神波
(かんば)の一族であること、闇神波が暗躍していることを知らされる。
そして、田鶴藩の藩主であり、圭寿の父である常寿が息を引き取る、、、、、、。
二巻に続いて、抜群のリーダビリティーは健在。 次巻にも大いに期待の持てる仕上がり。
「燦」 1 風の刃のブックレビューはコチラ。
オススメ度:8.2
富子すきすき (畠中 恵著、新潮文庫)
作品の紹介
表題作(「富子すきすき」)を含む計六編を収録した短編小説集。
表題作の主人公は、「忠臣蔵」で有名な吉良上野介の妻、富子。 夫が浅野内匠頭に斬りつけられて
から、夫だけでなく、息子や孫の人生の歯車まで狂い始めたと胸を痛める富子の心中を描いた佳作。
短編集ではありますが、どれも中身の濃い作品ばかり。 長編にできそうな物語がずらりと並んでいます。
まさに時代小説の大御所である著者の熟練さが光る一作。 オススメ度:8.1
いっちばん (畠中 恵著、新潮文庫)
作品の紹介
大人気「しゃばけ」シリーズの第7弾。 表題作(「いっちばん」)を含む計5編を収録。
江戸の大店(おおだな)「長崎屋」の病弱な若旦那、一太郎と妖(あやかし)たちが事件を解決する
時代物ミステリー。 長く続くシリーズですが、飽きが来ないできばえ。 今回もハイレベルな短編が
ずらりと並んだ一冊。
「しゃばけ」シリーズ公式サイトはコチラ。
オススメ度:8.1
妖かし斬り (風野 真知雄著、角川文庫)
作品の紹介
正式タイトルは「妖かし斬り 四十郎化け物始末 1」。 「四十郎化け物始末」シリーズ第一作。
計六編を収録した連作短編集。
月村四十郎、歳は四十代半ば。 妻と二人暮らし。 成人した子どもが二人いる。
元は地方の藩の江戸屋敷に勤めていたが、六年前に派閥争いのとばっちりを受けて浪人になった。
友人の井田清蔵が婿入りした井田道場の師範代を務めながら、用心棒の仕事をしている。
しかし、労咳を患う妻の薬代を稼ぐのがたいへんな毎日。 ある日、よくあたると評判の易者から
「まもなく死ぬ」と告げられ、やけになって、化け物退治の仕事を引き受ける。 依頼主である日本橋の
油問屋に出る巨大な顔と人魂の探索に赴いた四十郎は、それが人のしわざであると見抜き、事件を解決。
しかし、探索のさなか、本物の妖かしに水をかけたり、斬りつけたりした結果、次から次に妖かしたちに
とりつかれることに、、、。 こうして、化け物退治が本業となった四十郎は、妖かしの仕業に見せかけた
事件を次々に解き明かしていく、、、。
四十郎は、颯爽と事件を解決するわけではないけど、そこがまた人間くさくて、いい味出しています。
そんな四十郎を支えるのは、書物好きの知識を生かして、事件を推理する妻のお静。
四十郎の近くにちょくちょく現れる清元の師匠で、いい女の桃千代。 この二人の女性の存在が物語に
厚みをもたせています。
さらに、南町奉行の鳥居耀蔵の弱みとなる書付を友人に託されて命まで狙われる顛末をサブストーリー
に据えるなど、化け物退治の謎解き以外にも読みどころ満載。 オススメ度:8.1
百鬼斬り (風野 真知雄著、角川文庫)
作品の紹介
正式タイトルは「百鬼斬り 四十郎化け物始末 2」。 計四編を収録した連作短編集。
南町奉行の鳥居耀蔵から命を狙われていた件は、北町奉行の遠山の金さんの助けで事なきを得るが、
今度は、金さんの仕事を手伝うことになった四十郎。
本業となった化け物退治の方も、町の評判となり、順調に仕事が舞い込むようになったものの、あい
かわらず、妻のお静の鋭い推理に助けられている。
やがて、お静が「四十郎化け物始末」という戯作を完成させる。
一巻同様、飄々としながらも根は真面目な主人公を軸に、リーダビリティーの高い作品が並んでいます。
脇役たちも、みんな、いい味出しています。 オススメ度:8.1
鬼平犯科帳 12 (池波 正太郎著、文春文庫)
作品の紹介
火付盗賊改方の長官、「鬼平」こと長谷川平蔵の活躍を描いたヒット作。 計7編を収録した連作短編集。
オススメ度:8
鬼平犯科帳 13 (池波 正太郎著、文春文庫)
作品の紹介
火付盗賊改方の長官、「鬼平」こと長谷川平蔵の活躍を描いたヒット作。 計6編を収録した連作短編集。
オススメ度:8
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