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読書感想文2011 part 3
「読書感想文2011」 part3は、5月〜6月の読書録です。
↓ Click NOVEL mark !
ちんぷんかん (畠中 恵著、新潮文庫)
作品の紹介
大人気「しゃばけ」シリーズの第6弾。 表題作(「ちんぷんかん」)を含む計5編を収録した連作短編集。
江戸でも有数の大店(おおだな)、長崎屋のひとり息子、一太郎は生まれついての病弱。
祖母が妖(あやかし)だったせいか、家に住みつく妖や町の妖たちともなかよく付き合い、身の回りで
起こるふしぎな事件を解決していく。 若だんな、一太郎のお守り役兼ボディガードは、佐助、仁吉の
超強力な妖コンビ。 日頃は、長崎屋の手代として働いているが、ひとたび事が起これば、大活躍。
今回は、一太郎が死にかけて三途の川まで行っちゃったり、異母兄の松之助に縁談が持ち上がったり。
あいかわらず、一気読みさせてくれる安定感抜群の出来でした。 次作も必ず買います。
「しゃばけ」についてよくわかんないと言う人はコチラをどうぞ。
僕のオススメ度:8.2
犬身(けんしん) 上・下 (松浦 理英子著、朝日文庫)
(上)
(下)
作品の紹介
地方タウン誌の編集者、八束 房恵、30歳。 自分のことを「性同一性障害」ならぬ「種同一性
障害」であると自認し、魂の半分が犬で、いつか犬になりたいと願っていた。
房恵は、かつて取材した陶芸家の玉石 梓を理想の飼い主と考え、梓の飼う老犬、ナツをこよなく
愛していた。 ある日、バーのマスター、朱尾が房恵に「犬にしてやるかわりに魂をよこせ」という
契約を持ち出す。 朱尾は、この世のものではなく、狼の化身だった。 朱尾と契約を交わし、子犬
に姿を変えた房恵は、ナツの死後、梓の飼い犬「フサ」となり、至福の生活を手に入れる。
梓は、フサにとって、理想の飼い主だったが、彼女の母と兄は、梓を苦しめる存在でしかなかった。
フサは、梓に寄り添い、母と兄から守ろうとするが、やがて、梓の秘密を知ることになる、、、。
設定は、SFめいていますが、意外とすんなり受け入れることができ、違和感なく読み進めることが
できました。 好き嫌いは分かれるかもしれないけど、ハイクオリティーの作品だと思います。
犬に対するあたたかさ、好意、愛情があふれている一作。 犬好きの人なら、ぜひどうぞ。
「本の雑誌」文庫 2010年度 総合:第1位。 2008年「読売文学賞」受賞。 僕のオススメ度:8
海の底 (有川 浩著、角川文庫)
作品の紹介
横須賀のアメリカ軍基地開放のイベント当日、突如、巨大なザリガニが大量に上陸し、人々に襲いかかる。
パニックの中、湾内に停泊中の海上自衛隊潜水艦「きりしお」の艦長は乗員の夏木と冬原とともに、逃げ
遅れた子どもたちの救出に向かう。なんとか13人の子どもたちを艦内に避難させることに成功するが、艦長は
犠牲になってしまう。夏木、冬原と、高3の望を筆頭に13人の子どもたちとの避難生活が始まる。
一方、神奈川県警 警備部の警部、明石は、決定の遅い上層部に代わり、半ば、独自の判断で、次々と策を
繰り出していた。中でも、明石の同期、滝野が指揮する機動隊は、市内に押し寄せるザリガニの群れから市民
を避難させるために身を挺した働きを見せる。
まもなく、警察庁からキャリアの烏丸(からすま)が現地の対策本部に着任。明石との二人三脚で、巨大ザリガニ
への防衛線を構築するとともに、ザリガニの正体究明、自衛隊の出動画策を図る。
SFというか、空想小説なのですが、すごくリアリティーがあり、一気読みしてしまいました。
リアリティーを感じたのは、人の心をきちんと描けているからだと思います。巨大ザリガニ vs 人間という単純な
構図ではなく、潜水艦に避難した子どもたちの心情、政府、アメリカ軍を相手に難局を乗り越える明石の葛藤など
登場人物の内面をていねいにフォローしていたので、よりいっそう感情移入してしまいました。
「塩の街」、「空の中」に続く、著者の「自衛隊三部作」の第三弾。とはいえ、この三部作は独立した作品なので、
どれから読み始めても、ひとつだけ読んでも、だいじょうぶ。 僕のオススメ度:8.2
イレギュラー (三羽 省吾著、角川文庫)
作品の紹介
村が水害にあい、家族とともにふもとの町で避難所生活を送る蜷谷(になたに)高校 野球部の
選手たち。 一方、避難先の町の圭真(けいしん)高校、通称K高 野球部は、甲子園出場を果たす。
K高 野球部の青年監督、結城は、かつて自分を甲子園に導いてくれた蜷谷高校の監督、大木に
再会し、二校の合同練習が始まる。 蜷谷高校のエース、コーキは、持ち前の剛速球でK高に立ち
向かうが、打ち込まれ、猛練習を開始する。 大木の指導のもと、ジャイロボールを会得したコーキ
率いる蜷谷高ナインは、夏の甲子園予選に出場するが、いきなり強豪校と対戦することになる、、、。
田舎の高校生(蜷谷高)と町の高校生(K高)との交流を軸に、被災に向き合う蜷谷高ナインと村の
人々の心情を描き切った秀作。 野球エリートのK高バッテリーとイレギュラー=規格外の蜷谷高
バッテリーの友情の描き方が秀逸。 野球好きでない人にもオススメ。
「本の雑誌」文庫 2010年度 エンターテインメント部門:3位。 僕のオススメ度:8
魔球 (東野 圭吾著、講談社文庫)
作品の紹介
昭和39年(1964年)のお話。 千葉県の開陽高校は、天才ピッチャー須田 武志の入部により、無名校
から一転、春の甲子園出場を決める。 惜しくも優勝候補にサヨナラ負けを喫するが、武志が最後に
投げた一球は、キャッチャーの北岡が捕れない「魔球」だった、、、、、、。
同じ頃、地元の東西電機では、時限爆弾が仕掛けられ、続けて、社長が誘拐される事件が起こる。
そして、北岡、武志のバッテリーが、続けて殺害される、、、、、、。
東西電機の事件と北岡、武志の殺人事件。 一見、何のつながりもなさそうに見える二つの事件が
やがて交差し、刑事たちは、20年近い過去の不幸なできごとにたどりつく、、、、、、。
東野圭吾さん初期の作品(1988年)。 孤高の天才、武志のストイックさが印象的でした。
せつなく悲しいストーリーですが、ミステリーとしては一級品。 野球好きでない人にもオススメ。
僕のオススメ度:8
人質カノン (宮部 みゆき著、文春文庫)
作品の紹介
表題作(「人質カノン」)を含む計7編の都市型ミステリーを収録した短編集。
大作家 宮部みゆきさんのイメージで、この作品に大がかりな犯罪やスケール感を期待してはいけません。
短編集ということもあるのですが、どちらかというと、都会の片隅で起こる、日常の延長線上にある、ちょっと
したミステリーを描いています。 犯罪と呼べる事件が出てくるのは、コンビニ強盗を描いた表題作のみ。
あとの6編は、事件とは呼べないようなできごとを、筆者の筆力でミステリーに仕立てています。
ライトなミステリーがお好きな方、宮部さんのファンには、おすすめ。 僕のオススメ度:7.5
センチメンタル・サバイバル (平 安寿子著、角川文庫)
作品の紹介
大学時代からのバイト先である画材屋で、卒業後も、なんとなくフリーターを続ける24歳のるか。
ところが、父が出雲の実家で家業のそば屋を継ぐことになり、48歳・独身のキャリアウーマンの叔母、
龍子(りゅうこ)と同居することになる。
付き合っていた男と恋人関係を解消するものの、ずるずる友だちでいる始末。 そんなふわふわした
るかに、叔母は、時にはやさしく、時には厳しく、人生論をぶちかます。
一方、るかの母は、夫(るかの父)との関係に限界を感じ、プチ家出し、るかと龍子のもとにころがり
こむ。 やがて、るかの前に無骨な左官屋の男が現れ、るかに心境の変化が、、、、、、。
著者自身のあとがきで「平は男性読者を視野に入れていない。あしからず」とことわった上で、
女性読者に「るかや龍子叔母たちが繰り広げる茶飲み話の輪に入って、同じようにあーだこーだ
口をはさんでいただきたい」とコメントしています。 確かに、女性同志の会話が、この作品のキモに
なっているわけですが、男目線で覗き見するのもおもしろいかも。 僕のオススメ度:7.2
他人事(ひとごと) (平山 夢明著、集英社文庫)
作品の紹介
表題作(「他人事」)を含む計14編を収録した短編集。
ミステリーのフレーバーとホラーの雰囲気をまとった異色の作品集。
非日常的な悪夢としか言えないできごとが、たたみかけるように続きます。
救いのない、徹底した狂気、不運、残虐さ、不条理が続くので、正直言って、読むのをやめようかとさえ
思いました。 まさに「闇」の小説。 怖いもの見たさくらいの気持ちだったら、読まない方がいいですよ。
覚悟して読むべし。
「本の雑誌」文庫 2010年度 国内ミステリー部門:ベスト10作品。 僕のオススメ度:7.5
埋もれ火 (北原 亞以子著、文春文庫)
作品の紹介
計9編を収録した時代小説短編集。
幕末を駆け抜けて死んでいった男たちを愛した女たちが各話の主人公。
再婚後もなお坂本龍馬の妻として明治を生き抜いた、お龍(りょう)。
龍馬が世に出る前、江戸で、彼との結婚に憧れた、道場の娘、佐那子。
龍馬を巡る二人の女を対比した二編に始まり、続いては、新撰組局長 近藤勇を愛した二人の女を対照的に
描いています。他にも、高杉晋作の墓を守り続ける、うのなど、幕末を、愛する男と生き抜いた女たちが明治
維新後、必ずしも幸せではなかったせつなさを描いた秀作。タイトルの「埋もれ火」は、愛する男を失った後も
男を想う女の情を表現しています。 僕のオススメ度:7.8
酔って記憶をなくします (石原 たきび著、新潮文庫)
作品の紹介
「mixi(ミクシィ)」内のコミュニティー「酔って記憶をなくします」に寄せられた、数多くの酒にまつわる失敗談の
中から、選りすぐりの173編を収録。
この本の紹介文の冒頭に書かれている「酔っ払い、それは奇跡を起こす生き物」というフレーズが最高。
酔っぱらって、交番のおまわりさんにプロポーズする人。居酒屋のトイレで逆立ちの練習を始める人。
いきなり侍ことばで話し出す人。洗面器にワインを注いで犬に飲ませる人。おぉ、ビバ酔っ払い。
反面教師になどまったくならず、自分は「まだ、まし」と思いつつ、酔っ払いたちに共感をおぼえていまいました。
「本の雑誌」文庫 2010年度 エンタメノンフィクション部門:ベスト10作品。 僕のオススメ度:7
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