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読書感想文2012 part 2
「読書感想文2012」 part2は、3月〜4月の読書録。 なぜだか短編集が多くなりました。
↓ Click NOVEL mark !
阪急電車 (有川 浩著、幻冬舎文庫)
作品の紹介
宝塚から西宮北口を結ぶ、わずか八駅の阪急今津線を舞台にした連作短編集。
宝塚から西宮北口へ向かい、折り返して、宝塚に戻る16の物語を収録。
電車の中で始まる恋、電車の中で終わる恋。 電車の中で決心すること、学ぶこと。
高校生、大学生、OL、主婦、シニアの女性。 それぞれの喜びやせつなさを乗せて走る車内と周辺の街で
起こる小さなできごとをていねいに紡いだ物語。 女性が主人公のお話が多いですが、男性にも違和感なく
読めるはず。 著者の有川 浩さんは「図書館戦争」シリーズや自衛隊三部作(「塩の街」、「空の中」、「海の底」)
が有名ですが、こういうお話を書いてもすばらしいデキ。 もっとも、どの作品にも、底流に流れているのは、人の
やさしさやまっすぐさ、人を想うときのせつなさだったりしますが、、、。
2011年映画化。 オススメ度:8.5
ビブリア古書堂の事件手帖 (三上 延著、メディアワークス文庫)
作品の紹介
正式タイトルは「ビブリア古書堂の事件手帖〜栞子さんと奇妙な客人たち〜」。
北鎌倉の古本屋、ビブリア古書堂を舞台にした四編の連作短編集。
一編ごとに、一冊の古書をめぐる謎を解き明かしていくスタイル。
大船に住む大輔は、大学を卒業したばかり。 就職が決まらず、実家にいる。 一年前に亡くなった祖母の
古本「漱石全集」をビブリア古書堂の若き店主、栞子に鑑定してもらったことがきっかけで、栞子の店で働く
ことになる。 栞子は、ふだんは物静かな女性だが、本の話題になると、一転、饒舌になる。 一方の大輔は
本がきらいではないが、本を読めない肉体派。 足を怪我して入院中の栞子と店を切り盛りする大輔が協力
して古本にまつわる謎を解き、事件を解決していく、、、。
読書好き、本好き、ミステリー好きの方には、ぜひおススメの一冊。 続編も出ています。
「本の雑誌」2011年度文庫 総合:第1位、国内ミステリー部門:第9位。 オススメ度:8.2
傍聞き(かたえぎぎ) (長岡 弘樹著、双葉文庫)
作品の紹介
表題作(「傍聞き」)を含む四編を収めたミステリー短編集。
それぞれが50ページくらいの短編にもかかわらず、中身の濃いハイレベルなミステリーがつまった一冊。
人の心の弱さ、脆さ、そして人を信じることの難しさを秀逸に描いた作品が続きます。
ミステリーファンには絶対におススメの作品。 表題作は2008年 日本推理作家協会賞 短編部門受賞。
「本の雑誌」2011年度文庫 国内ミステリー部門:第1位。 オススメ度:8.2
デンデラ (佐藤 友哉著、新潮文庫)
作品の紹介
山奥の貧しい村で70歳を迎えた斎藤カユは、村の掟に従い、山に捨てられる。 お山参りで死んで極楽浄土に
行けると信じていたカユだったが、老婆たちに命を救われる。 カユが連れて行かれたのは「デンデラ」という
名の村で、山に捨てられた老婆たちが49人暮らしていた。 デンデラは、30年前に山に捨てられた三ツ屋メイと
いう100歳の老婆を長とし、自給自足の生活を営んでいた。 カユがデンデラの一員となったのは、折りしもデン
デラの半数以上を占める襲撃派が村を襲う直前だった。 しかし、デンデラに突然、熊の親子が現れ、蓄えていた
食料の半分を食われ、何人もの老婆が犠牲になる。 老婆たちは熊と戦う決意をし、何とか小熊を仕留めるが、
犠牲者はさらに増え、追い打ちをかけるように疫病が蔓延し、デンデラの人数はどんどん減っていく。
それでも熊を倒すために壮絶な戦いを続ける老婆たち。 70歳になるまでものごとを深く考えないで生きてきた
カユは、自分の定めるべき大目標を模索し、それを見つける、、、、、、。
姥捨て山の話かと思いきや、読み進めていくと、メインは、熊と老婆たちの壮絶な戦いの物語でした。 さらに
老婆たちの派閥争いやカユの心の葛藤などを丹念に描いた佳作。 ふつうの小説に飽きた人におススメします。
「本の雑誌」2011年度文庫 総合:第7位。 オススメ度:8
ジョーカー・ゲーム (柳 広司著、角川文庫)
作品の紹介
計5編を収録した連作短編集の体裁をとった作品。
昭和12年、元スパイだった結城中佐は陸軍にスパイ養成学校、通称「D機関」を設立する。
陸軍師範学校や陸軍大学ではなく、民間の一流大学から候補者を集め、12名を選抜。
参謀本部で行われてきたクラシックな諜報活動とは一線を画した画期的な訓練を開始した。
すなわち、爆薬や無電の扱い方、飛行機の操縦法、数か国語の外国語の習得にはじまり、
哲学、金庫破り、ダンス、変装、女性の口説き方などである。
厳しい訓練を乗り越えた怪物たちは、イギリスや中国など、それぞれの任地に散っていき、
次々と成果をあげていく、、、。
スパイ養成学校という設定、そして、陸軍にいながら軍隊の信条を真っ向から否定する
結城のクールさの描写が秀逸でした。 ふつうのミステリーにあきた人におすすめ。
「日本推理作家協会賞」、「吉川英治文学新人賞」受賞。 2009年「本屋大賞」第3位。
「本の雑誌」2011年度文庫 国内ミステリー部門:第2位。
第2弾、第3弾も刊行されシリーズ化。 オススメ度:8
くまちゃん (角田 光代著、新潮文庫)
作品の紹介
表題作(「くまちゃん」)を含む計7編の連作短編集。
ジャンルとしては、恋愛小説なのだけれど、失恋がテーマのいっぷう変わった作品。
第一話で女性をふった男性が、第二話で別の女性にふられ、第三話では、その女性がちがう男性に
ふられるという感じで、第七話まで続いていきます。 つまり、一人の人物が二話続けて登場する
リレー形式の連作短編。
相手に別れを告げる前の「心のゆれ」が絶妙に描かれています。
タイトルの「くまちゃん」は第一話でふられる女性が恋人を呼ぶ時の愛称。 くまのトレーナーやTシャツ
を着ていたことがきっかけでそう呼ぶようになります。
「本の雑誌」2011年度文庫 総合:第6位。恋愛小説部門:第2位。 オススメ度:8.2
深川にゃんにゃん横丁 (宇江佐 真理著、新潮文庫)
作品の紹介
計六編を収めた連作短編集。
深川の裏店(うらだな)「喜兵衛店」の雇われ大家の徳兵衛、書役の富蔵、店子のおふよは五十半ばの幼馴染。
三人は、岡っ引きの岩蔵とともに、住人たちの悩みをいっしょに解決したり、成長の手助けをする毎日。
心あたたまる、著者お得意の人情話がテンポよく続く秀作。
「本の雑誌」2011年度文庫 時代小説部門:第7位。 オススメ度:7.8
陰陽師 夜光杯ノ巻 (夢枕 漠著、文春文庫)
作品の紹介
九編を収めた短編集。 ロングセラーの「陰陽師」シリーズの十一作目。
平安時代の京を舞台に、希代の陰陽師、安倍晴明と親友の源博雅が神や物の怪などを相手に、人知を超えた
ふしぎな事件を解決していく物語。
世界観が秀逸で、風情もあって、ミステリーとしても一級品。 一度読みだすとクセになります、たぶん。
オススメ度:8
楊令伝 10 坡陀の章 (北方 謙三著、集英社文庫)
作品の紹介
北方「水滸伝」(全19巻)の続編。 「楊令伝」は全15巻。
金の完顔成、撻懶、斡離不の軍が宋の都、開封府を陥落させ、帝以下三千名を捕虜として金に連行する。
金はかつて宋の宰相だった張邦昌を帝とし、楚を建国する。 一方、南京応天府の留守(長官)である宗沢は、
かつての宋帝の弟、康王を推戴し、宋の存続を試みる。 康王推戴の動きは裏で青蓮寺が糸をひいていた。
青蓮寺は、李富、李師師以下が南京応天府郊外の村に本拠地を移していた。
宋禁軍の将軍だった劉光世、岳飛、張俊、そして地方軍の韓世忠は、開封府近郊で軍閥のようなかたちで領地を
治めていた。 そんな中、楚の帝、張邦昌が開封府を脱出し、南京応天府に逃げ込む。
梁山泊では、国づくりの基盤が整備されていた。 楊令の命を受けて、西夏から西域に至る交易の道を調査に
出かけた杜興も、耶律大石と話をまとめ、梁山泊に帰還する。 上青と武松も、西域に向かう。 上青は西域に
残り、商人の人脈をつくりあげることになった。
金の前帝、阿骨打の庶子、斡本(オベン)が十万の大軍を率いて南下する。 北京大名府に拠る六万の張俊の
軍と交戦し、張家軍を北京の城郭に押し込める。 続いて、隆徳府の三万の岳飛の軍とぶつかるが、崩せず、
開封府に向かう。
韓成は、遼の簫珪材のもとを訪れ、西夏の皇太子、李仁孝への書簡を依頼する。 書簡を携え、韓成は西夏の
李仁孝、丞相の李憲光に謁見し、西域との交易への協力を求める。
開封府に駐屯した金の斡本の軍は南下の動きを見せる。 南京応天府で宋の帝に推戴された康王は、劉光世に
守られ、南京を脱出する。 致死軍の隊長、侯真が求婚した徐絢は、王宮に入り込んでいたが、康王の南京脱出
の混乱の中で命を落とす。
公孫勝は、子午山の王進の庵を訪れ、秦明の息子、秦容を、梁山泊に加えるべく連れだす。 しかし、秦容を伴い、
公孫勝が向かったのは梁山泊ではなく、西夏の韓成のもとだった。
李俊は、かつての梁山泊の本拠地、梁山湖に拠る旧宋の水軍に大打撃を与える。
大きな戦が終わり、新生梁山泊の基礎固めと、大戦後の金と宋の動きを描いた巻でした。 比較的静かな展開でしたが、
物語が次の段階に向かう予感を感じさせます。
「楊令伝」公式サイトはコチラ。
「水滸伝」1〜4 ブックレビューはコチラ。
「水滸伝」5〜19 ブックレビューはコチラ。
「楊令伝」1〜4のブックレビューはコチラ。
「楊令伝」5〜7のブックレビューはコチラ。
「楊令伝」8〜9のブックレビューはコチラ。
オススメ度:8.2
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