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読書感想文2015 part 1
「読書感想文2015」 part1は、1月〜2月の読書録です。
↓ Click NOVEL mark !
神様のカルテ2 (夏川 草介著、小学館文庫)
作品の紹介
信州 松本にある24時間365日対応の病院に勤務する内科医、栗原 一止(いちと)。
結婚1年の山岳カメラマンの妻、榛名や上司、同僚に支えられ、不眠不休の毎日を送っている。
四月、東京の病院から新任の医師、進藤 辰也が着任する。 進藤は、一止と大学時代の
同級生で「医学部の良心」と呼ばれたほどの男だった。 しかし、進藤は、正規の勤務時間が
終わるとさっさと帰宅し、休日の呼び出しにも応じない、、、。 やがて、一止が、そのわけを
突き止め、事態が好転したのもつかの間、今度は、一止の上司である副部長の内藤が病に
倒れる。 一止は、進藤とともに内藤の治療を行うが、、、、、、。
第一作に続いて、涙なしには読めない作品。 人が人を想う尊さ、人と人のつながり、崇高な
生き方が、美しく描かれています。 まだ2015年は始まったばかりだけど、2015年読了作品の
中で、まちがいなくベスト10に入るであろう一作。
「神様のカルテ1」のブックレビューはコチラ。
第一作に続き、本作も2014年、映画化。
2011年「本屋大賞」第8位。 オススメ度:8.8
know (野崎 まど著、ハヤカワ文庫)
作品の紹介
舞台は2081年の京都。 人造の脳葉「電子葉」を人体に埋め込むことが義務付けられ、
PCやモバイルがなくても、瞬時に情報収集、通信が可能になった。
内閣府情報庁で情報審議官として働く御野(おの)・連レルは、28歳にして、情報庁の
中心人物として、仕事をこなしているが、一方で醒めている自分を自覚している。
14歳のころ、「電子葉」の開発者、京都大学の道終(みちお)・常イチ教授に一週間、
教えを受けて、大きな志を持った自分を見失いそうになっていた。
ある日、連レルは、プログラムの中に、失踪中の道終・常イチが残したメッセージを発見
し、14年ぶりに恩師と再会する。 道終・常イチは、14歳の娘、知ルのことを連レルに託す。
知ルは、「電子葉」の能力をはるかに超えた「量子葉」を持っていた。 すなわち、彼女は
世界最高の情報処理能力を持つ人間だった、、、。
連レルは、知ルに導かれるまま、世界が変わる4日間の扉を開ける、、、、、、。
設定もプロットも世界観も、すごく新鮮な一作。 ラストは、少しせつなかったけど秀逸。
まさに21世紀型の作家という印象。
「本の雑誌」2013年「SF部門」文庫:第7位。 オススメ度:8.2
下町ロケット (池井戸 潤著、小学館文庫)
作品の紹介
大田区の町工場、佃製作所の社長、佃航平、43歳。 かつて宇宙科学開発機構でロケット
の主力部品の開発を担当していたが、打ち上げは失敗に終わる。 父の死をきっかけに
7年前に家業を継ぐが、離婚。 娘を引き取るが、娘ともうまくいっていない。
会社は、航平が指揮する製品開発で順調に業績を伸ばしていたが、ライバル企業から理不尽
とも言える特許侵害で訴えられる。 訴訟されたことによるイメージ悪化で、次々と取引先を
失い、資金繰りに窮する。 そんなピンチのさなか、国産ロケットを開発する大企業が、佃製作所
が特許を保有する技術を買収すべくコンタクトをとってくる。 特許を売却すれば、会社を救う
ことはできるが、航平は、悩みぬいた末、あえて困難な道を選ぶ、、、、、、。
さすがは、直木賞受賞作品。 読み応え十分の作品。 でも、欲を言えば「半沢直樹シリーズ」や
「ルーズヴェルトゲーム」を知る前に、本作を読みたかった、というのが偽らざる感想。
銀行の意地の悪さ、大企業の横暴など、本作とイメージがかぶるパターンを事前に知っていた
だけに、やや新鮮味に欠けたことも事実。
2011年「直木賞」受賞作。 オススメ度:8.2
ようこそ、わが家へ (池井戸 潤著、小学館文庫)
作品の紹介
倉田太一、52歳。 横浜市北部のニュータウンで妻、大学生の息子、高校生の娘と暮らす
まじめな銀行員。 一年前から中堅企業、ナカノ電子部品に出向している。
ある夏の日、倉田は駅のホームで割り込みをする男を注意する。 その日の深夜、家の花壇
が踏み荒らされ、数日後、郵便ポストには瀕死の子猫が投げ込まれ、車が傷つけられていた。
倉田は、執拗なストーカーに対抗すべく、監視カメラを設置する、、、。
一方、出向先でも、営業部長の不正に疑惑を抱き、追求するが、その度に巧妙にかわされ、
逆に窮地に追い込まれていく、、、。
公私ともにトラブルを抱えた倉田は、家では家族とともに、会社では部下とともに奮闘し、
両方の問題に立ち向かう、、、。
おもしろいけど、ストレスがたまる作品。 倉田の味方もいるけど、ふたつの問題の相手の
意地の悪さが度を越えていて、、、。 オススメ度:8
戸村飯店 青春100連発 (瀬尾 まいこ著、文春文庫)
作品の紹介
大阪の下町、住ノ江にある庶民的中華料理店「戸村飯店」。 長男のヘイスケは、高3。
見た目もやることもスマート。 次男のコウスケは、高2。 単純な性格、熱血漢の人気者。
見た目も性格も好みも違う兄弟は、同じ部屋で暮らしながらも、話すこともほとんどない。
1章・3章・5章がコウスケのお話。 2章・4章・6章がヘイスケのお話。
コウスケは、クラスメイトの岡野を想い続けているが、なかなか告白できない。 大学に
進学する気はなく、店を継ぐものだと漠然と考えている。
ヘイスケは、小説家になると言い、卒業後、東京の専門学校に入学するが、かねてからの
計画通り、1ヶ月で退学し、気ままなフリーター生活を始める。 そして、専門学校の講師で、
8歳年上のアリさんと付き合い始める。
物語は、高3になったコウスケ、専門学校をやめたヘイスケの1年間を描いています。
東京と大阪で離れて暮らすことになった兄弟2人が自分を見つめ直すプロセスの描き方が秀逸。
コウスケは、岡野に告白できるのか、店を無事、継げるのか、、、。
ヘイスケとアリさんの恋の行方は、、、。 ヘイスケの将来は、、、。
リーダビリティー抜群の青春小説。 主人公2人の大阪弁が、いい味出しています。
関西人には、絶対おススメの一作。 「坪田譲治文学賞」受賞作。 オススメ度:8.2
優しい音楽 (瀬尾 まいこ著、双葉文庫)
作品の紹介
表題作(「優しい音楽」)を含む計3編を収録した短編集。
表題作「優しい音楽」は、こういうお話 ↓ 。
設計事務所勤務の23歳、永居タケル。 ある朝、駅のホームで女子大2年の鈴木千波に声を
かけられ、毎朝話をするうちに付き合い始める。 デートの後、タケルは千波を家まで送っても、
なかなか両親に会わせてくれない。 やがて、千波の両親に会う日が訪れ、タケルは、千波が
両親に会わせなかった理由を知る、、、。
2作目は、不倫相手の男の娘を預かることになった27歳の女性のお話。
3作目は、元大学教授のホームレスと過ごす同棲カップルの年末年始のお話。
3作とも、物語の設定が抜群。 人のやさしさや思いやり、いとしさがあふれる一冊。
読むと、やさしい気持ちになれますよ、きっと。 オススメ度:8.1
強運の持ち主 (瀬尾 まいこ著、文春文庫)
作品の紹介
ルイーズ吉田、23歳。 本名、吉田幸子。 職業、占い師。 短大を卒業して就職した会社を
半年で辞め、占い師に弟子入り。 1年前から独立。 転職直後に出会った公務員の通彦と同棲を
始めて3年。 通彦と付き合うようになったのは、占いで、彼が類まれなる強運の持ち主とわかった
から。 だけど、その兆しは、いっこうに現れない、、、。
そんなルイーズ吉田の占い師としての日々、通彦との生活を描いた一冊。 占い師のリアルがわかり
やすく、おもしろく描かれています。 主人公のキャラづくりにも好感。 オススメ度:8
地下街の雨 (宮部 みゆき著、集英社文庫)
作品の紹介
表題作(「地下街の雨」)を含む計7編を収録した短編集。
恋愛、ホラー、サイコ、SFなどさまざまなジャンルのフレーバーをまとったミステリー作品集。
さすがは宮部みゆきさん。 どの作品も、リーダビリティーばつぐん。 いつもの宮部さん
とは少し違うアングルのミステリーを堪能できます。 オススメ度:8
張り込み姫 (垣根 涼介著、新潮文庫)
作品の紹介
正式タイトルは「張り込み姫 君たちに明日はない3」。表題作(「張り込み姫」)を含む計4編を収録。
人気シリーズ「君たちに明日はない」シリーズの第3作。
村上真介、35歳。 企業の人事部の依頼を受けて、リストラ候補の社員たちに退職を勧めるリストラ
請負人。 かつて退職を勧めた8歳年上の女性、陽子と付き合っている。
本作で真介が対峙するのは、英会話スクール講師の女性(28歳)、旅行代理店の営業マン(33歳)、
自動車の整備士(33歳)、出版社のゴシップ誌記者の女性(28歳)。
リストラする側にいながらも、リストラ候補たちの心を思いやる真介。 今回は、彼の友人も思わぬ
ところで活躍します。
シリーズとしては人気を博しているし、私自身もお気に入りではありますが、第1作ほどのインパクト
がなくなってきたのも事実。 第5作で完結とのこと。
第一作のブックレビューはコチラ。
第二作のブックレビューはコチラ。
2010年ドラマ化。
オススメ度:8.2
隻眼の少女 (麻耶 雄嵩著、文春文庫)
作品の紹介
母が父に殺され、その父を自分で殺してしまった大学生の種田静馬。 警察は、父が事故死
したものと処理したため、逮捕は免れたが、自殺する場所を求め、信州の山奥の温泉宿を訪れる。
そこで、15歳の少女の殺人事件に遭遇する。 被害者は村の生き神様、スガル様の後継者で、
首を切断され殺されていた。 静馬は、殺人犯と疑われるが、見事な推理で彼を救ったのは、
水干姿の17歳の隻眼の少女、御陵(みささぎ)みかげ。 名探偵であった亡き母の跡を継ぐべく、
元刑事の父の手ほどきで探偵としての修行を積んでいた。 静馬は、みかげの助手見習いとして、
彼女と共に被害者の一族が住む屋敷へ向かうが、第二、第三の殺人が待ち受けていた、、、。
ようやく難事件を解決するみかげ。 しかし、18年後に同じ現場で悪夢を再現するような事件が
起こり、、、、、、。
500ページの大作。 第一部が1985年、第二部が2003年のお話。
ミステリーとしては、おもしろかったけど、ちょっと現実感がない物語というのが全体的な印象。
第一部はともかく、第二部の展開とオチは、いい意味(意外性)でも、悪い意味(共感できない?)
でも、読者を驚かせたのでは? 個人的には、第二部がせつなすぎた印象。
2011年「日本推理作家協会賞」と「本格ミステリ大賞」をダブル受賞した話題の作品。
2014年「本の雑誌」文庫「国内ミステリー部門」第2位。 オススメ度:8
悪の教典(上) (貴志 祐介著、文春文庫)
作品の紹介
東京 町田の私立高校の英語教師、蓮実聖司、32歳。 問題児の多い2年4組の担任。
頭脳明晰にして、さわやかな容貌と弁舌で女子を中心に生徒たちからの人気はNo.1。
しかし、蓮見は、子どもの頃から殺人を犯してきた反社会的人格障害(サイコパス)だった。
学校の教員、生徒の情報を収集し、自分の想い通りに事を運ぶために利用する。
担任を務めるクラスの目障りな生徒を退学に追い込んだり、同僚教師を脅迫したり。
自分と関係を持った女子生徒のことに気づく可能性のあった教師を飲酒運転に見せかけて
懲戒免職に追い込んだり。 さらには、蓮見の正体に薄々気づきつつあった教師を殺害したり。
すべては蓮見の思い通りに進んでいた、、、、、。
主人公、蓮見の人物造形が秀逸。 リーダビリティーもばつぐん。 上巻にして、この激しさ
なら、下巻は、いったいどんな展開になるのやら、、、。 怖いもの見たさの下巻に続く、、、。
2011年度「山田風太郎賞」受賞、「このミステリーがすごい」国内編 第1位。 週刊文春「ミステリー
ベスト10」国内部門 第1位。 早川書房「ミステリが読みたい」国内総合 第2位。「本屋大賞」第7位。
「直木賞」候補作。 「吉川英治文学新人賞」候補作。 2012年映画化。 オススメ度:8.3
悪の教典(下) (貴志 祐介著、文春文庫)
作品の紹介
いっさいの証拠を残さず、犯罪を重ねる蓮見。 しかし、蓮見を疑う生徒が3人いた。
そのうち、一人は蓮見に殺されるが、行方不明として処理される。 残された2人は、警察に相談
するが、証拠がまったくないため、取り合ってもらえなかった、、、。
そして、文化祭の準備で、2年4組の生徒が全員、学校に泊まる日、未曾有の恐怖が生徒たちを
襲う、、、、、、。
下巻は、まさに一気読み。 冷静に考えると、リアリティーのない事件なんだけど、フィクション
としての完成度が高く、ぐいぐい物語の中に引き込まれる強さのある作品。
2011年度「山田風太郎賞」受賞、「このミステリーがすごい」国内編 第1位。 週刊文春「ミステリー
ベスト10」国内部門 第1位。 オススメ度:8.3
バイバイ、ブラックバード (伊坂 幸太郎著、双葉文庫)
作品の紹介
星野一彦、年齢は30歳前後。 プレイボーイではないが、いいなと思った女性に交際を申し込む。
それが高じて、今も、5人の女性と並行して付き合っている。 ところが、借金が膨らみ、相手を
怒らせてしまい、「あのバス」に乗せられることになる。 星野は「あのバス」に乗せられるまでの
2週間、ホテルに軟禁されることになり、監視役として繭美が送り込まれる。 繭美は、190cm、200kg
で、ブロンズの髪を持つ巨漢の女性。 常に威圧的な態度で、相手を怒らせる言動をものともしない。
星野は「あのバス」に乗せられる前に、5人の女性たちにお別れを言わせてほしいと繭美に懇願し、
なぜか、繭美が星野と結婚するという設定で女性たちを訪問することになる、、、。
この物語は、星野と繭美が5人の女性たちのもとを訪れ、別れ話を切り出し、女性たちのトラブルや
悩みに一肌脱ぐというお話です。
著者らしい、ちょっとふしぎな設定に読者を引きずりこみ、独特の世界観の中で、最後まで高いリー
ダビリティーで引っ張っていきます。 オススメ度:8
やなりいなり (畠中 恵著、新潮文庫)
作品の紹介
大人気「しゃばけ」シリーズの第10作。 表題作(「やなりいなり」)を含む計5編を収録。
江戸の大店(おおだな)「長崎屋」の病弱な若旦那、一太郎と妖(あやかし)たちが事件を解決
する時代物ミステリー。
今回は各話の冒頭に江戸時代の料理レシピを収録。 しかしながら、お話としては、あいかわらず
高水準はキープしつつも、前作(第9作)よりややパワーダウンの印象。 次作に期待。
「しゃばけ」シリーズ公式サイトはコチラ。
オススメ度:8
玄治店(げんやだな)の女 (宇江佐 真理著、幻冬舎文庫)
作品の紹介
日本橋の玄治店(げんやだな)と呼ばれる路地で小間物屋を営むお玉は、29歳の元花魁。
三年前に身請けされた小間物問屋の主人の店が傾き、縁が切れる。 お玉のまわりには、
妹分のような芸者、隠居の囲われ者、料理屋の娘、自分の家の女中の4人がいて、お互いに
励ましあって生きている。 ある日、お玉は、浪人で手習い所の師範をしている26歳の武士、
青木陽蔵に出会う。 いつしか二人は惹かれ合うが、お玉は、身分違いの恋と自分に言い
聞かせ、一歩を踏み出せずにいた。 そんな中、お玉のまわりの女たちにも、さまざまな
事件が起こる。 やがて、青木が三重・津の藩に仕官が決まり、、、、、、。
お玉を中心に健気に生きる女たちの姿、つながり、思いやりを描いた、心温まる佳作。
派手さはないけれど、じーんとくる作品。 オススメ度:8
おはぐろとんぼ (宇江佐 真理著、実業之日本社文庫)
作品の紹介
正式タイトルは「おはぐろとんぼ 江戸人情堀物語」。
表題作(「おはぐろとんぼ」)を含む計6編を収録した短編集。
江戸の市中にある「堀」(八丁堀、薬研堀など)で暮らす人々の喜び、悲しみ、せつなさ、
希望などを描いた作品。 いつもながら、著者の宇江佐さんの人情話は、安定度ばつぐん。
泣いて、笑える一作です。 オススメ度:8
涙堂 (宇江佐 真理著、実業之日本社文庫)
作品の紹介
正式タイトルは「涙堂 琴女癸酉日記(ことじょきゆうにっき)」。
同心、高岡靫負(ゆきえ)が、お役目の途中、何者かに斬殺される。 妻の琴は、
侍を捨てて浮世絵師と売り出し中の息子、賀太郎と日本橋通油町で同居を始める。
幼なじみで医師の清順や絵草紙屋の伝兵衛、夫の手下(小者)として働いていた
汁粉屋の伊十と親しみ、日常のできごとを日記にしたためていくうちに、夫の死
の謎が解けてくる、、、。
著者お得意の人情系のよさも出ているのですが、ミステリー部分が複雑なわりには
やや地味な印象を受けました。 オススメ度:7.9
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