|
HOME |
り ん |
かなう |
Mama |
T . T |
Family |
---|
読書感想文2014 part 6
「読書感想文2014」 part6は、11月〜12月の読書録です。
↓ Click NOVEL mark !
凸凹(でこぼこ)デイズ (山本 幸久著、文春文庫)
作品の紹介
東京 九品仏の弱小デザイン事務所「凹組(ぼこぐみ)」。 メンバーは3人。 10年前の
創立時のメンバー、大滝と黒川。 30すぎの男性。 そして、22歳の凪海(なみ)。
遊園地の大キャンペーンのコンペで、凪海の描いたキャラクターが採用される。
しかし、凹組創立時のメンバーでありながら、10ヶ月で袂を分かった醐宮(ごみや)が率いる
デザイン事務所「QQQ」との共同作業が条件だった。 醐宮は、凪海にQQQに転職するように
勧めるが、大滝の出した結論は、凪海のQQQへの出向だった、、、。
↑というのが第一章。 そして、第二章は、こういう感じ↓。
10年前。 デザインの専門学校を卒業した大滝は、バイト先のデザイン事務所で美大生のバイト、
黒川と醐宮と知り合う。 黒川は、巨漢、風呂ぎらい、夜行性の天才肌。 黒川と大学の同級生
の醐宮は、小柄だけど、美貌あふれる社交的な女性。 大滝は、醐宮に一目ぼれ。 徐々に
親しくなるが、同僚、友人の域を越えられずにいた、、、。
これ以降、第三章は凪海、第四章は10年前の大滝を軸に物語が進んでいきます。
凪海の「現代編」は、遊園地のキャンペーンが進んでいく中で、醐宮との距離が縮まるけれども、
大滝と黒川との凹組での仕事が自分の居場所だと思う凪海の様子を描いています。
大滝の「過去編」は、黒川と醐宮の大学卒業を期に、三人で凹組を立ち上げ、奮闘する大滝たち
三人組とともに、進展しない大滝の片思いも描かれています。
そして、第五章は、どんでん返しに次ぐどんでん返しの後の大団円。 一級品のエンターテイメント
お仕事小説でした。
凹組のその後を描いた短編「凸凹ホリデー」も同時収録。
著者の「お仕事小説」の代表作「ある日、アヒルバス」のブックレビューは
コチラ。
おススメ度:8.2
カイシャデイズ (山本 幸久著、文春文庫)
作品の紹介
舞台は、東京 東中野の社員50人弱の内装会社、ココスペース。
40代の営業マン、高柳。 30代で設計部のデザイナー、隅元(すみもと)。 20代、施工監理部の
現場監督、篠崎。 3人は、チームで仕事をすることが多い。 まじめで、お行儀がいい社員では
ないが、顧客思いで、仕事に誇りと愛情を持つ、憎めない面々である。
そんな3人組の喜怒哀楽を描いた8編の連作短編を収録。 飲食店のオープン、リニューアルの
裏側をエンターテイメント色豊かに仕上げた(↑上記作品と同じ著者による)お仕事小説。
3人組の仕事を見守る就活中の女子大生を描いた短編「シューカツデイズ」も同時収録。
おススメ度:8.2
ハッピー・リタイアメント (浅田 次郎著、幻冬舎文庫)
作品の紹介
財務省のノンキャリア、樋口は、56歳で早期退職。 官舎を追い出され、妻、息子、娘は、
それぞれ一人暮らしを始める。 退職金の大半は、残りの家族の手に渡り、樋口の手元に
残ったのは、500万。 おまけに、妻からは離婚を催促されている。
37年間、陸上自衛隊に勤務した、叩き上げの自衛官、大友、55歳。 定年を迎える彼は、
統合幕僚長の陸将から呼び出しを受け、再就職先を斡旋される。
樋口と大友は、ともに、JAMS(全国中小企業振興会)に再就職。 しかし、勤務先は神田
分室。 JAMSは、中小企業が銀行から借り入れをするときに保証人となって、支援することを
業務としているが、メインの業務は、新宿本部で行われており、神田分室の仕事は回収不能
となった不良債権をながめているだけ、、、。 事実上、仕事はないが、自由な時間は膨大
にある日々を手に入れたかに見えた二人だったが、理事の秘書兼庶務の立花葵と意気投合し、
債権の回収を始める。 やがて、膨大な金額を回収することに成功するが、、、。
前半はおもしろかったけど、後半の展開は、ちょっとリーダビリティーが落ちたかも。
とはいえ、さすがは著者の作品といったところ。 おススメ度:7.8
SOSの猿 (伊坂 幸太郎著、中公文庫)
作品の紹介
家電量販店の店員、二郎は、30代半ば、独身。 かつて、絵を学ぶため、イタリアに
留学したが、悪魔祓いを習得し、帰国。 帰国後、絵は描かず、本業のかたわら、引き
こもりの若者相手に悪魔祓いを交えたカウンセリングをしている。 二郎は、母の友人
の娘、「辺見のお姉さん」から、彼女の息子、眞人の引きこもりの相談を受け、眞人が
引きこもりになった原因を調べ始める、、、、、、。
システム開発会社で品質管理の仕事をしている五十嵐、40歳。 徹底した論理的、合理的
思考の男。 ある日、自社が開発した株の発注システムにより誤発注事故を起こした証券
会社に真相解明の調査に出向く。 ある日、彼の前に孫悟空が姿を現す、、、。
二郎の物語と五十嵐の物語が交互に出てくる構成。 やがて、二人の物語が交差し、ひとつ
になり、孫悟空とともに、問題を解決していきます。
あいかわらずの伊坂ワールド全開。 作中にさらっと出てくるものごとの考え方のなかみ、
描写も秀逸。 しかしながら、伊坂作品第二期のもやもや感、肩透かし感もあり、第一期が
なつかしいと思う読者も多いのでは? ちなみに、本作は、五十嵐大介さんの漫画「SARU」
(小学館)と対になった作品(らしい)です。 おススメ度:7.7
ニート (絲山 秋子著、角川文庫)
作品の紹介
駆け出しの小説家、廻橋(めぐりばし)。 彼女の元恋人、読元は、失業後、ニート
になった。 彼女が金銭援助をし、再就職したが、3ヶ月しか持たず、読元は、再び
ニートに逆戻り。 見かねた廻橋は、彼を自分の部屋に引き取るが、ニート脱却が
できない。 そんな彼女と彼のふしぎな関係を描いた二編を含む計5編の短編集。
この著者は、ほんとうに文章がうまい。 そして、自分の色を持っています。
数々の文学賞受賞も納得。
「本の雑誌」2008年度 文庫「恋愛小説部門」第3位。 ちなみに、同部門の第1位は、
同じ著者の「袋小路の男」。
「袋小路の男」のブックレビューは
コチラ。 おススメ度:8.1
銀行総務特命 (池井戸 潤著、講談社文庫)
作品の紹介
計8編の連作短編を収録。
メガバンクの帝都銀行で、行内の不祥事処理を任されている総務部特命担当の指宿修平。
顧客名簿流出、行員のAV出演疑惑、裏金づくりなどの問題に指宿は立ち向かう。
ミステリー仕立ての企業小説。 クオリティーは高いのですが、次から次へと出てくる
不祥事。 主人公、指宿のポジのイメージよりも、不祥事のネガのイメージが強い印象。
大学生が読んだら、銀行に就職するのがいやになっちゃうだろうな、、、。
2014年ドラマ化。 おススメ度:7.9
沈むさかな (式田 ティエン著、宝島社文庫)
作品の紹介
湘南の鵠沼海岸の中華料理店でバイトを続ける高校2年の矢野イズミ。
彼の父は、かつて有望な水泳選手だったが、国際舞台で活躍することができず、
競技生活を終えた過去があった。
2年前、ボランティアでコーチをつとめていたスイミングスクールで新薬の人体実験を
したとマスコミから攻撃されたあげく、1年前、通勤途中に心筋梗塞であっけなくこの
世を去った。
イズミは、かつてスイミングスクールで仲間だった加部英介に再会する。 英介は、
イズミの父の死には裏があると告げる。 イズミは、中華料理店のバイトをやめ、夏休み
を利用して、逗子のサーフショップに住み込みながら、スキューバダイビングを習得する
ことになった。 そして、夜は、父の死の真相を探るため、かつて父がコーチをつとめて
いたプールの事務長だった男が支配人となったクラブのキッチンで働く。
その直後、英介は海で謎の死をとげ、ショップの店員の女性、中華料理店の常連だった
フリージャーナリストの男とともに、父が勤務していた企業の闇に迫る、、、。
青春 × ミステリー × ダイビング小説。 そこそこおもしろいとは思ったけど、500ページ
の大作でもあり、読むのにちょっと疲れる作品。 オチもイマイチ共感できず。
第1回『このミステリーがすごい!』大賞優秀賞受賞作。 おススメ度:7.3
探偵倶楽部 (東野 圭吾著、角川文庫)
作品の紹介
VIP専用の調査機関「探偵倶楽部」の活躍を描いた連作短編集。 計5編を収録。
クールにスマートに何事件を解決する男女二人組。 捜査過程を描くのではなく、
事件の描写と、探偵倶楽部の調査レポートをメインにした構成。
事件のトリックは一級品。 だけど、探偵倶楽部の二人組がクールすぎて、やや
物足りない印象。 おススメ度:8
目下の恋人 (辻 仁成著、光文社文庫)
作品の紹介
表題作(「目下の恋人」)を含む、愛と恋を描いた10編を収録した短編集。
できるだけ先入観なしに読んだけど、長編に比べると、著者の女性ファン向けの
作品なのかな、という印象が強かったです。
表題作は、2002年、著者自身が監督をつとめ映画化(表題作と、本作に収められた
別の作品を合体したような作品)。 おススメ度:7
ゆんでめて (畠中 恵著、新潮文庫)
作品の紹介
大人気で大定番「しゃばけ」シリーズの第9弾。 表題作(「ゆんでめて」)を含む計5編を収録。
江戸の大店(おおだな)「長崎屋」の病弱な若旦那、一太郎と妖(あやかし)たちが事件を解決
する時代物ミステリー。
今回は、ちょっと変わった趣向をこらした一巻。 第一話が四年後の話。 第二話が三年後と
続き、第五話が現在のお話という、時を遡っていく構成。 第五話に出てくる分岐点(左=ゆんで、
右=めて)でどちらを選ぶかで四年後の未来が変わったというつくり。 第五話の最後に出てくる
どんでん返しに驚くこと必至。 恋あり、ミステリーあり、友情ありのバライティー豊かな構成。
「しゃばけ」シリーズ公式サイトはコチラ。
おススメ度:8.2
春風ぞ吹く (宇江佐 真理著、新潮文庫)
作品の紹介
正式タイトルは「春風ぞ吹く 代書屋五郎太参る」。5編の連作短編を収録した長編。
幕府小普請組の村椿 五郎太、二十五歳。 御家人とは言え、お役目がなく、手習い所時代の
友人の水茶屋で代筆の仕事をしている。 頼まれるのは、もっぱら恋文ばかり。
幼馴染の十九の娘、紀乃を嫁にもらいたいのだが、無役を理由に彼女の父が許さない。
そんな中、降ってわいた紀乃の縁談が流れ、五郎太は、紀乃も自分のことを想ってくれて
いることを知る。 かくなる上は、幕府の「学問吟味」に合格し、仕事を得て、紀乃と祝言を
あげるべく、五郎太は、一心不乱に受験勉強を始める。
そんな五郎太に目をかけ、応援してくれる師匠たちのおかげで、受験勉強にいそしむが、
紀乃とつまらないことでけんかをしてしまう始末。 はたして、五郎太の恋と試験の結果は
いかに、、、というお話。
物語に出てくる人物で、五郎太を応援しないのは、紀乃の父くらい。 まじめで不器用だけれど、
まっすぐな心根の五郎太を支える周りの人たちの心根の描写が、あたたかく、じ〜んときます。
特に、五郎太を導く二人の師匠の過去のエピソードが感動もの。
時代小説のジャンルで、私のいちばんのお気に入りの一人である著者の新たな名作にめぐり
会えて、読後の満足感、充実感も大。 おススメ度:8.6
春朗合わせ鏡 (高橋 克彦著、文春文庫)
作品の紹介
若き日の葛飾北斎である春朗(しゅんろう)が主人公。 計7編を収録した連作短編集。
春朗は、売り出し中の32歳の絵師。 妻子はいるが、気ままな一人暮らし。
絵を描くかたわら、北町奉行所 筆頭与力、仙波一之進の捜査の手助けもしている。
春朗は、ある事件の捜査がきっかけで知りあった元役者の蘭陽と意気投合し、次々と
難事件を解決していく、、、、、、。
さすがは高橋克彦さん。 軽快な作風ながらも、ミステリーの部分は、かちっとした構成。
さらに、主人公の脇をかためる人たちの人物造形が最高。 全作、一級品のできばえ。
本作には、仙波が主人公の「だましゑ歌麿」、仙波の妻、おこうが主人公の「おこう紅絵暦」
という姉妹作があります。 こちらの二作もおすすめ。 二作のブックレビューは
コチラ。
個人的には、三部作でいちばんのお気に入りかも。 おススメ度:8.5
読書感想文2014-(4)へ
(5)へ
2015-(1)へ
T.Tのページへ
トップページへ