コメント HOME コメント り ん コメント かなう コメント Mama コメント T . T コメント Family


コメント コメント コメント コメント   コメント コメント コメント コメント コメント コメント

読書感想文2006 part 5

「読書感想文2006」 part5 は、秋の読書録です。


 ↓ Click NOVEL mark !
コメント  名もなき毒 (宮部 みゆき著、幻冬舎)   作品の紹介 

日本有数の大企業、今多コンツェルンの会長の娘婿、杉村は36歳。 結婚を機に義父の
会社の社内報の編集の仕事をしているが、経営にタッチするわけではなく、妻と幼稚園児の
娘と平凡だが幸せな暮らしを謳歌している。
彼の職場は、アルバイトの女性、原田に手を焼いていた。 さまざまな問題を起こし、結局、
原田は解雇されるが、その後も、公私に渡って、かつての上司である杉村に嫌がらせを繰り
返していた。 対応に悩んだ杉村は、原田の以前の勤め先の社長の紹介で、かつて原田を
調査したことのある私立探偵を尋ねるが、その際、女子高生の美知香に出会う。
美知香は、首都圏で連続発生している青酸カリ連続無差別殺人事件の4人目の犠牲者の老人の
孫だった。 その後、原田は、美知香の世話を焼くうちに、殺人事件の核心に巻き込まれていく。
タイトルの「名もなき毒」って、どういう意味なんだろう?と思って、読み始めました。
↑の原田も、殺人事件の犯人も、自分の心の中に宿る「毒」をうまく御しきれないで、事件を
起こしてしまった、ということが物語のラストでわかり、とても納得しました。
ミステリーなのですが、トリックの巧妙さを味わうというよりも、一見、理解しがたい犯人の
「毒」、そして「動機」を深く掘り下げた秀作です。 僕のオススメ度:8.5
同じ主人公、杉村の、一年前の私立探偵なみの活躍を描いた「誰か〜somebody〜」という作品も
出ています。 本書とあわせて読まれてみては?と思います。 
→ 「読書感想文2005(5)」をご参照ください。
コメント  ニシノユキヒコの恋と冒険 (川上 弘美著、新潮文庫)   作品の紹介 

ニシノユキヒコ。 ハンサムで清潔感がある。 甘え上手。 礼儀正しい。 やさしい。
するするっと女の子に近づき、あっという間におとしてしまう。 でも、悪気のない
フタマタをかけて、女の子たちを愛する確信も愛される確信も持てないまま、ふられて
しまう悲しい男。 この作品は、そんなニシノユキヒコを、付き合った女性の視点から
綴った10編からなる連作短編集。 彼の10代から50代までの、ふしぎなラブ・ストーリーの
数々を描いています。 僕のオススメ度:8

コメント  風に舞いあがるビニールシート (森 絵都著、文藝春秋)   作品の紹介 

表題作(「風に舞いあがるビニールシート」)を含む、計6編の高レベルの短編集。
表題作は、国連難民高等弁務官事務所(UNHCR)に10年間勤めている女性、里佳のお話。
里佳は、UNHCRの上司のアメリカ人、エドと結婚するが、彼は紛争地域を飛び回り、年に
1週間ほどしか日本で過ごすことができない。 エドは、難民キャンプの人たちの命も、
尊厳も、ささやかな幸福も、ビニールシートみたいに簡単に舞いあがり、もみくちゃに
なって飛ばされていくのを、黙って見過ごせない使命感を強く持っていた。
二人の結婚生活は7年で終わりを告げ、2年後、エドはアフガンで難民の少女の命を救うために
凶弾に倒れる。 彼の死から立ち直れずにいる里佳。 そんな彼女を一人の記者が取材で
訪れ・・・・・・。
悲しいけど、痛いけど、救いのある話です。 里佳がエドの最期の瞬間の様子を知り、
再生を予感させるラストは、ほんとうにじーんと来ました。
他にも、わがままなケーキ店オーナーの女性に振り回される秘書の悲哀、保健所で処分
されそうな犬を引き取り、夜はホステスとして働く主婦、夜間の大学でレポートの代筆を
頼まれる伝説の社会人学生の話など、シチュエーションのまったく違う物語が妙にバランス
よく収録されています。 どれも、日々の生活を懸命に生きる人たちへの愛情に満ちた
お話です。 2006年「直木賞」受賞作。 僕のオススメ度:9

コメント  その日のまえに (重松 清著、文藝春秋)   作品の紹介 

表題作(「その日のまえに」)を含む計7編の短編集。
7編の内、「その日のまえに」、「その日」、「その日のあとで」の3作は、連作短編。
「その日」とは、20年間連れ添った妻がなくなる日。 「その日のまえに」は、余命
一年と宣告された妻と夫が、「その日」に向けての準備(こころの準備も含めて)を
進めていくお話。 夫も妻も、パニックになったり、取り乱したりしないのだけど、
それがかえってせつなくもあり、悲しくもある。
表題作を含む上記3編以外の作品も、余命3ヶ月を宣告された中年サラリーマンの一日、
癌を告知された母一人、子一人の家族の物語など、「死」に向き合った作品が収め
られています。 僕のオススメ度:8.5

コメント  阿弥陀堂だより (南木 佳士著、文春文庫)   作品の紹介 

少年時代を信州の山奥の村で過ごした孝夫は、東京で高校時代に美智子に出会う。
大学を卒業した孝夫は編集者に、美智子は医師になり、二人は結婚する。
孝夫は小説で新人賞を受賞したことをきっかけに仕事を辞め、小説家をめざす。
美智子は医師として順調な道を歩むが、流産をきっかけに心のバランスを崩して
しまう。 40歳を過ぎ、二人は孝夫の生まれ故郷の村で人生の再スタートを切る
ことになり、そこで、村の先祖を祀る阿弥陀堂に暮らす老婆、そして声を失った
村役場の娘に出会う・・・・・・。
小説家として大成できなかった孝夫、心のバランスを失った美智子が、山あいの村で
こころを再生していく姿が、やわらかく清々しく描かれています。 こころ温まる
なかなかの名作。 僕のオススメ度:8.5

コメント  完四郎広目手控 (高橋 克彦著、集英社文庫)   作品の紹介 

江戸時代末期のお話。 今で言う広告代理店と新聞社を兼ねたようなビジネスの
広目屋(ひろめや)。 物語の主人公、完四郎は、旗本の次男でありながら、武士を捨て、
上野の広目屋に居候しながら、しごとを手伝っている。 平時は全く役に立たないが、
大仕事が入ったり、難事件に出くわしたら、ものすごい働きをする。
そんな完四郎と瓦版のコピーライター、仮名垣 魯文(ろぶん)の二人が、怪事件、難事件
を次々と解き明かす12編の連作短編集。 ミステリー系だけじゃなく、怪談系、人情系など
さまざまなジャンルのお話を楽しめます。 僕のオススメ度:8.5

コメント  完四郎広目手控 天狗殺し (高橋 克彦著、集英社文庫)   作品の紹介 

↑「完四郎広目手控」の続編。 同じく12編の連作短編集。
前作から3年後のお話。 完四郎と魯文は、風雲急を告げる幕末の京都の様子を探るため
坂本 龍馬とともに旅立つ。 京都に向かう東海道、京の町、そして、帰りの中山道でも、
完四郎の名推理は冴え渡る。 僕のオススメ度:8

コメント  出口のない海 (横山 秀夫著、講談社文庫)   作品の紹介 

甲子園の優勝投手、並木は、大学野球でも期待されていたが、肩の故障で、
活躍の場を失っていた。 しかし、魔球の完成を夢見て、練習を続ける。
やがて、太平洋戦争が開戦。 並木は海軍に身を投じ、やがて、人間魚雷
「回天」の乗組員に志願する・・・・・・。
戦争に疑問を持ちながらも、海の特攻隊に志願し、国と家族と恋人を守る
ために、自らの「死」と向き合う主人公の苦悩がていねいに描かれていて、
心がえぐられるような気持ちになりました。 痛いけど、こういう作品にも
向き合わないといけないですね、時には。 僕のオススメ度:8

コメント  あしたはうんと遠くへいこう (角田 光代著、角川文庫)   作品の紹介 

関東近郊の温泉町で生まれ育った一人の女性の17歳から32歳までの15年間を描いた
恋愛小説。 15年間の間に、相手の男性は何人か替わるわけだけど、主人公の女性は
いつも全力投球で恋愛をする。 時には、その姿をおろかだと思えるくらいに・・・。
甘い恋愛小説というよりも、恋愛の戦いの記録みたいな作品です。 僕のオススメ度:8

コメント  UNKNOWN (古処 誠二著、講談社ノベルズ)   作品の紹介 

舞台は、東海に位置する自衛隊基地。 ある日、隊長室の電話機から盗聴器が発見された。
事件を究明すべく、東京からエリート調査官が派遣される。 彼は、基地の若手隊員を
アシスタントにして、犯人を追い詰めていく・・・。 事件としては、盗聴器を仕掛けた犯人を
探すというシンプルなものだけど、自衛隊という独特の世界の中で、かなりの制限を受け
ながら調査を進めていくプロセスが精緻に描かれています。 なかなかの読み応え。
第14回「メフィスト賞受賞」の本格ミステリー。 僕のオススメ度:8

コメント  藩校早春賦 (宮本 昌孝著、集英社文庫)   作品の紹介 

江戸時代後期のお話。 舞台は東海のわずか三万石のある小藩。
16歳の若者三人が、身分の違いを越えて、親友として付き合い、さまざまな事件に
巻き込まれながらも、友情を深め、成長していく様を描いた物語。
若者三人のまっすぐな心持ちがほんとうに清々しい。 そして、彼らを取り巻く
大人たちが、厳しいながらも、温かい目で三人を見守る姿も心地いい。
読後感が抜群にいい、さわやかな作品。 7作の連作短編。 僕のオススメ度:8.5

コメント  夏雲あがれ(上・下) (宮本 昌孝著、集英社文庫) コメント(上) コメント(下)    作品の紹介 

↑「藩校早春賦」の続編。 ↑を読んでいなくても、読めるけど、できれば「藩校早春賦」を
読んでから、この作品を読んで欲しい。 その価値は十分にあります。
この作品は、「藩校早春賦」から六年後のお話。 主人公の三人が、藩の江戸屋敷で藩主暗殺を
目論む闇の勢力に立ち向かう様を描いています。 前作は、短編集であり、青春小説のテイスト
だったのですが、この作品は、長編であり、ミステリー色が強くなっています。
いろんな困難は訪れるけど、やっぱりハッピー・エンド。 前作同様、清涼感のある作品にしあがって
います。 時代小説になじみのない人にもおすすめ。 なかなかのデキです。
本の雑誌「おすすめ文庫2005年度」総合 第5位。 僕のオススメ度:8.5

コメント  魔性の子 (小野 不由美著、新潮文庫)   作品の紹介 

私立の進学校に通う高校2年の高里。 彼は幼い頃、1年間、失踪したが、その頃の記憶を
すべて失っていた。 失踪から戻った後、彼をいじめた者は、怪我をしたり、事故にあったり、
ということが続く。 やがて、高里は、学校や近所からも気味悪がれ、家族の中でも孤立する。
以来、ずっと孤独だった高里を、教育実習で母校を訪れた広瀬は、懸命に理解しようと努め、
かばい続ける。 しかし、高里のまわりで、次々と原因不明の事故が続き、やがて、死者も
出てしまう。 周りの生徒やマスコミは、高里を責める。 しかし、高里の意思とは関わりなく、
事故は続発し、その凄惨さもエスカレートしていく・・・・・・。
ファンタジー系のホラー小説。 数々の事件の犯人は高里ではない。 だとすれば誰なのか。
やがて、広瀬は、それが、この世のものではないものの仕業だと突き止めるが、なかなか核心に
近づけない。 しだいに、高里は失踪した1年の記憶を取り戻すが・・・・・・。
一見、独立したような小説に見えますが、実は、著者の人気シリーズ「十二国記」の外伝的作品です。
もちろん、この作品だけ読んでも、全然OKですが、下記の「十二国記シリーズ」と併読すると、
おもしろさ倍増です。 僕のオススメ度:7.5
「風の海 迷宮の岸」: 高里が失踪中の1年の前半を描いた作品。 彼の正体が明らかになります。
 → 「読書感想文2006 part 1」をご参照ください。
「黄昏の岸 暁の天」: 高里が失踪中の後半と失踪後の(十二国の)世界を描いた作品。
 → 「読書感想文2006 part 2」をご参照ください。
コメント  サウダージ(盛田 隆二著、角川文庫)   作品の紹介 

サウダージ。 それは、失ったものを懐かしむ、さみしく、そしてやるせない感情。
日本人の父とインド人の母との間に生まれた裕一、27歳。 両親は離婚し、父は20歳も年下の
女性と再婚。 しかし、二人の関係はうまくいっていない。 父にはフィリピン人の愛人がいる。
裕一は、人材派遣の管理のしごとに忙殺されながらも、パキスタン人の友人や日系4世の女の子
などと関わって生きている。 裕一の周りの人々は、それぞれみんなが故郷に対して喪失感にも
似た懐かしさを抱きながら懸命に、そしておおらかに生きている。 この作品は、そんな裕一と
裕一の両親(父と継母)、友人たちの1週間を描いています。 僕のオススメ度:7.5

コメント  アリア系銀河鉄道(柄刀 一著、光文社文庫)   作品の紹介 

正式タイトルは「三月宇佐見のお茶の会 アリア系銀河鉄道」。
表題作(「アリア系銀河鉄道」)を含む計5編の連作ミステリー短編集。
紅茶好きの初老の科学者、宇佐見博士が、ある時は、時空をさかのぼり、ノアの方舟の謎に
迫り、ある時は、銀河鉄道で旅をしながら、友人の死の謎を解く。
ファンタジー色が強いけど、ミステリーのレベルは高いです。 ただ、作風の好き嫌いは、かなり
個人差があると思います。 僕のオススメ度:7

コメント  警察小説競作 「決断」
(逢坂 剛/佐々木 譲/柴田 よしき/戸梶 圭太/貫井 徳郎/横山 秀夫著、新潮文庫)
  作品の紹介 

6人のミステリー作家の警察小説、短編6編を集めた作品集。
警察小説を集めているとは言え、犯人側から描いた作品もあり、軽妙な作品からシリアスなお話
まで幅広いラインナップで読者を飽きさせない構成になっています。
この作品集が気に入ったら、↓の「鼓動」も呼んでみてください。 僕のオススメ度:7.5

コメント  警察小説競作 「鼓動」
(大沢 在昌/乃南 アサ/永瀬 隼介/今野 敏/白川 道著、新潮文庫)
  作品の紹介 

↑の「決断」と姉妹作。 5人の作家による警察小説の短編5編を収録した作品。
20ページの短い作品(大沢 在昌「雷鳴」)から168ページの中編(乃南 アサ「とどろきセブン」)
まで、長さも内容もタッチもバラエティに富んだ構成です。 ハードボイルドもあれば、交番勤務の
警官の日常を描いた軽いタッチの作品もあり。 警察小説というよりも、ミステリー小説短編集
くらいの気持ちで読んでも違和感ないはずです。 僕のオススメ度:7.5

コメント 読書感想文2006-(1)へ   コメント-(2)へ   コメント-(3)へ   コメント-(4)へ   コメント T.Tのページへ   コメント トップページへ
1 1 1 1 1 1 1 1 1 1 1 1 1 1 1 1 1 1 1 1 1 1 1