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読書感想文2009 part 5

「読書感想文2009」 part5 は、9月〜10月の読書録です。


 ↓ Click NOVEL mark !
コメント  シャングリ・ラ (池上 永一著、角川文庫)  
  コメント(上)  コメント(下)  作品の紹介 

近未来のお話。 地球温暖化が進んだ世界は、二酸化炭素の排出量によって、国の経済が大きく影響を受ける
炭素経済の時代になっていた。 50年前の第二次関東大震災によって、首都東京が瓦解した日本は、アトラスと
いう名の空中都市を築き、350万人の市民を移住させていた。 しかし、アトラスに移住できなかった人々は
熱帯雨林と化した地上で悲惨な毎日を送っていた。
新大久保には20万人の難民が暮らすドゥオモと呼ばれる独立都市があった。 ドゥオモを拠点とする反政府ゲリラ
「メタルエイジ」は、北条 凪子が養女の國子に総統の座を譲り、新たな時代に入った。 國子は、まだ18歳という
若さだったが、凪子から帝王学を、育ての親とも呼べるニューハーフのモモコから武術を学び、カリスマ性のある
リーダーとして組織の頂点に立つ。 國子は、難民たちの悲惨な状態を打破すべく、アトラスにゲリラ戦を仕掛ける。
戦いは、凪子のかつての盟友、タルシャンのサポートもあり、勝利をおさめたかに見えたが、、、、、、。
⇒ と、まあ、話の本線は↑こんな感じなのですが、本筋と並行して、國子とともにアトラスの未来に重要な役割を
果たす人物、二人(皇族の美邦と政府軍の草薙)が描かれていて。 さらに、炭素市場を自由に操る天才トレーダー
(香凛)もからみ、物語は、國子の戦いだけでなく、炭素経済の動き、アトラスの謎解きがドライブ感たっぷりに
進んでいきます。 エンタメ色たっぷり、痛快にして新鮮な作品。
この作品は、コミックにもアニメにもなっています(それぞれ別の作者で)。
「本の雑誌」2008年度 文庫 総合 第5位。SF小説部門 第8位。 僕のオススメ度:8.2

コメント  一瞬の風になれ (佐藤 多佳子著、講談社)  
  コメント 1  コメント 2  コメント 3  作品の紹介 

神谷 新二は、神奈川の公立高校の1年生。 中学までは、2つ上の天才サッカー選手である兄に憧れてサッカー漬けの
毎日だったが、無二の親友、一ノ瀬 連に誘われて、高校では陸上部に入部する。 連は、中学の頃から有名な選手
だったが、クラブの人間関係に嫌気がさし、1年間のブランクがあった。 おまけに、偏食で、練習嫌いのため、体力がない。
一方の新二は、練習が苦にならない、体力の塊。 連には及ばないものの、ズブの素人であるにもかかわらず、100mで、
部で2番目のタイムをたたき出す。 天才の連と努力家で未完の大器、新二。 有望な新入生二人を迎え、春野台高校
陸上部は、短距離だけでなく、400mリレーでも、県を突破し、関東大会、そして、インターハイへの可能性が見えてきた。
ところが、、、現実はそんなに甘くなく、、、。
こんなふうにして幕を開ける物語は、新二と連が3年生になり、南関東大会にコマを進めるまでを描いていきます。
顧問の先生や先輩、仲間、後輩たちと厳しいトレーニングに耐えながら、失敗をしたり、悩んだり、怪我をしたり。
そして、恋をしたり、、、。 選手として、男として、先輩として、人間として、少しずつ成長していく新二と連の二人を軸に、
陸上部の仲間とのつながりをていねいに描いていきます。 個性ゆたかな顧問の先生や他校のライバルたちとのやりとりも
みもの。 新二と連の100mだけでなく、後輩二人と走る400mリレーの描写も抜群。 むしろ、読者は400mリレーの方にひき
つけられるのではないでしょうか。 青春小説とかスポーツ小説とかいう枠組みを超えた秀作。 全ての世代の人にお勧め。
全3巻ですが、クライマックスの3巻だけでなく、1巻も、2巻も泣かせますよぉ。
2007年度「本屋大賞」1位! 「吉川英治文学新人賞」受賞。 僕のオススメ度:8.7
「一瞬の風になれ」特設サイトは コチラ
コメント  クレイジーヘヴン (垣根 涼介著、幻冬舎文庫)   作品の紹介 

坂脇 恭一、27歳。 北関東の旅行会社に勤務し始めて半年余り。 退屈な日常をやり過ごし、淡々と生きているように
見えるが、その内側には、狂気が眠っている。 田所 圭子、23歳。 冴えない中年ヤクザ、市原につかまり、美人局の
肩棒をかつぐ毎日。 恭一は盗まれた保険証をもとに市原に金をせびられるが一蹴する。 そして、圭子とも、ある夜、
言葉を交わす。 そして、今度は、市原と圭子がいっしょにいる場面で再会する。 それも、圭子が罠にはめた、恭一の
同僚に代わり、金の支払いを突っぱねるという交渉の場面で。 圭子とわずかだが言葉を交わしていた恭一は、彼女を
好みのタイプだとまで思っていたのに、真の姿に幻滅し、いきなり心の奥底に眠っていた狂気が暴走する。 そして、我を
忘れて市原を殴り、蹴るが、、、、、、。
⇒ タイトルの「クレイジーヘヴン」とは、コカインを溶かした液体の俗称。 作品中で、最初は圭子が、後に、恭一も
手を出し、快楽に溺れます。 でも、やはり、「クレイジーだけど二人には天国」な状態を表している、いいタイトル
だと思います。 著者の本領発揮のバイオレンス色の強い恋愛小説。 男性向きでしょうね、ふつうに考えれば、、、。
僕のオススメ度:8.2

コメント  町長選挙 (奥田 英朗著、文春文庫)   作品の紹介 

どうしようもなくダメに見える、だけど、いつのまにか患者の悩みを解決してしまう神経科医、伊良部が
主人公のシリーズ第三弾。 第一弾は「イン・ザ・プール」、第二弾が「空中ブランコ」(04年の直木賞)。
映画化(松尾スズキさん)もドラマ化(阿部寛さん)もされているヒット作です。 名作なので、第一弾も
第二弾もおすすめしますが、第三弾(本作)だけ読んでも、本作から読んでも、だいじょうぶです。
表題作(「町長選挙」)を含む4編を収録。 前作、前々作とは違い、今回は、実在の人物が伊良部の患者に
なったら、という設定で登場します。 最初の作品が、読売新聞&巨人軍のナベツネさん。 二作目が
ライブドアのホリエモン。 三作目が女優の黒木瞳さん。 もちろん、実名では登場しませんが、誰がどう
みてもわかるようになぞられています。 でも、中身は、もちろん、オリジナル。 三人が伊良部にいじられ
翻弄されながら、伊良部に心を許し、完治していくさまが超ユーモラスに描かれています。
そして、4編目が表題作の「町長選挙」。 この作品は、前3編とは違い、特定の人物を描いているわけでは
ありません。 じゃあ、いつもの路線かというと、そうでもなく。 伊良部が2か月限定で、伊豆大島の近くの
離島の診療所に赴任するという設定です。 折しも、島は、町長選挙の真っ最中。 島を二分する現町長対
前町長の買収合戦。 当然、伊良部も巻き込まれ、、、、、、。
前二作のよさは踏襲しつつ、患者の設定やシチュエーションに工夫を凝らした三作目になっています。
外れなしのお勧めシリーズです。 僕のオススメ度:8.2
「イン・ザ・プール」の読書感想文は コチラ   「空中ブランコ」は コチラ

コメント  ガール (奥田 英朗著、講談社文庫)   作品の紹介 

表題作(「ガール」)を含む短編集。 計5編収録。 主人公は、すべて30代の働く女性。
のんびりした夫と共働きの不動産会社の営業課長。 いつまでも若くはないと悟り始めた広告代理店勤務の女性。
独身の友人がマンションを買ったのをきっかけに、自分もマンション購入を考え始める、生保会社の広報ウーマン。
息子の小学校入学を契機に営業に復帰した自動車メーカー勤務のシングルマザー。 そして、新人の教育係を
まかされた老舗文具メーカーの35歳の女性。
職種も境遇も立場も違う、30代の働く女性たちの奮闘ぶり、悩み、あせり、喜びを優しい目線で描いた佳作です。
肩に力の入ったタッチではなく、むしろユーモラスに、でも、ほろりとくるバランスも秀逸。 タイトルと表紙から
「女性向き」、「OL向き」と判断しがちの作品ですが、決してそうではありません。 男性が読んでも、全然OK。
むしろ、会社勤めの男性が読むべき本かも。 僕のオススメ度:8

コメント  港町食堂 (奥田 英朗著、新潮文庫)   作品の紹介 

最初に。 この本は小説ではなく、新潮社の「旅」という雑誌(僕は読んだことないですが)に連載された
旅のエッセイ集です。 とは言え、直木賞作家然とした格調高い作風ではなく(笑)。 人間味あふれる
自然体の、そして、めちゃくちゃ笑えるエッセイです。 テーマは、日本各地(+韓国)の港町のうまいもの
を堪能すること。 ただ、それだけ。 ふつうだったら、料理へのこだわりとか、素材の描写、味を表現する
ことにページが割かれるはずですが、、、さすがは奥田英朗さん。 旅そのものをすべてビビッドに描写し、
かつ、自分の想いを盛り込むことに成功(大成功)しています。 高知にはじまり、長崎の五島列島、宮城の
牡鹿半島、韓国 釜山、佐渡島、稚内・礼文島への旅、計6編を収録。 しかも、どんなに時間がかかっても、
現地には必ず船で入るという不条理な(?)約束も、奥田さんの毒舌と相まって、この企画を強いものにして
いました。 名物料理はもちろん、旅先での美人ママ、ムカデ、民宿の経営者夫婦、スナックの女の子、隠れ
キリシタンの洞窟、鰻へのこだわり、、、などなど、読みどころ満載の作品です。 奥田英朗さんのファンなら、
絶対に「買い」。 彼のことをもっと好きになると思います。 奥田さんのファンでない人も、港にも旅にも興味
がない人が読んでも、じーんときて、超笑える一作。 僕のオススメ度:8.5 ※雑誌「旅」のサイトは コチラ
コメント  ウランバーナの森 (奥田 英朗著、講談社文庫)   作品の紹介 

1979年夏の軽井沢が舞台。 ジョン・レノンがニューヨークで銃で撃たれて命を落とす前の年を描いた物語。
とは言え、ドキュメンタリーではなく、著者が敬愛するジョンの38歳の夏を想像して書いたフィクションです。
ジョンは、妻のケイコ(=もちろん、オノ・ヨーコのこと)と息子のジュニア(=ショーンのこと)とともに、妻の
実家が所有する軽井沢の別荘で平和な夏を送っていた。 歌を書かなくなって4年の月日が経っていたが、
さまざまなことにいらついて、周りの人たちを傷つけた若いころと違い、心に平穏を得ていた。 お盆の頃、
便秘が原因で通い始めた病院(なぜか心療内科)の帰りに、森の中で、かつて自分が傷つけた人たちの
幽霊に出くわすようになる。 毎日、別の人物が現れ、ジョンのかつての罪を許し、その度、ジョンの心は
癒されていく。 ところが、彼の最大の心の傷である、彼を捨てた母の幽霊が現れ、、、、、、。
⇒「ウランバーナ」とは、サンスクリット語で、「盂蘭盆会(うらぼんえ)」のもとになった言葉。 死者が
この世を訪れるお盆の森でのジョンの心の再生を象徴したタイトルとなっています。 ジョン・レノンをイメージ
して書いた物語なので、ビートルズ・ファンにはお勧め。 しかし、ジョンのことをあまり知らない人が読んでも
だいじょうぶなつくりです。 僕のオススメ度:7.5

コメント  子どもたちは夜と遊ぶ (辻村 深月著、講談社)  
  コメント(上)  コメント(下)  作品の紹介 

D大学工学部の大学院に在籍する天才、木村 浅葱(あさぎ)。 同じ研究室の狐塚 孝太と、孝太を追いかけて
故郷から出てきた2歳年下の月子とは親しいが、ふだんは、深く人と交わることをしない。 自他ともに天才と
認める浅葱が、最優秀賞を信じて疑わなかった2年前の論文コンクールで、謎の人物「i(アイ)」に敗れる。
「i」は、最優秀賞を受賞したが、本名で応募しておらず、最後までその正体を明かすことはなかった。
浅葱には屈辱感だけが残った、、、。
2年後、浅葱は、突然、「i」からのメールを受け取る。 二人でチャットをしているうちに、浅葱のパソコンは
「i」が送ったウィルスに侵され、データをすべて奪われてしまう。 奪われたデータの中には、浅葱の子どもの
頃からの手記が含まれていた。 その手記には、双子の兄、藍(あい)が、母親を殺したこと。 その後、藍と
別々に育てられた児童施設で、浅葱が仲間のなぶり者にされていたことが書かれていた、、、。
しばらくして、「i」から浅葱にメールが届く。 チャットの中で、「i」は、浅葱の兄、藍であることを告白する。
浅葱は、すぐにでも藍に会いたいと申し出るが、藍はすぐに会おうとはしなかった、、、。
その後、藍は、浅葱を強請っている昔の施設の仲間を殺害する、、、。
藍に感謝する浅葱。 しかし、藍は、依然として浅葱に会おうとはせず、自分たちに冷たくした世間への復讐
として、連続殺人に誘う。 兄に感謝し、陶酔している浅葱は、いつものクールでスマートな彼ではなくなり、
「θ(シータ)」というコードネームで殺人鬼と化す、、、、、、。
と、このあたりが、物語の折り返し地点少し前です。 当然、警察が捜査に乗り出すわけですが、世間をあざ
笑うかのように、殺人を重ねる「i」と「θ」。 やがて、事件が、孝太と月子の近くまで及び、、、、、、、。
ここから結末まで、ドライブ感たっぷりに、物語が展開していきます。 ネタばらしはしませんが、ひとことで
言うと、物語全体が「だまし絵」みたいなミステリーです。 物語終盤まで明かされない秘密を知ったとき、
納得がいかない読者もいるかもしれませんが、僕は作品全体のクオリティが高いので、それもよしとしました。
著者の辻村 深月さんは、独特の世界観を表現できる作家です。 彼女の「冷たい校舎の時は止まる」もおススメ
です。 「冷たい校舎の時は止まる」の読書感想文は コチラ
↑(冒頭のリンクボタン)で紹介しているのは新書版ですが、文庫も出ています。 僕のオススメ度:8.2

コメント  夜は短し歩けよ乙女 (森見 登美彦著、角川文庫)   作品の紹介 

一人称の「私」が交互に語りあい、話が進んでいくスタイル。 一方の「私」が、通称「黒髪の乙女」なる、古風な天然
女子大生。 そして、もう一方の「私」が、クラブの後輩である彼女に恋心を抱く、弱気な先輩という設定。
その先輩の「私」は、彼女に接近すべく、彼女の出かける場所で何度も偶然の出会いを装う。 しかし、告白するわけ
でもなく、「奇遇ですね」、「偶然通りかかったものだから」という会話が繰り返されるばかり。 おまけに、みごとな
タイミングで、強烈な邪魔が入る。 そんな二人の恋(?)の行方を、京都を舞台に描いた作品。 春、夏、秋、冬の
4編の構成。 春の夜の先斗町でのとめどない飲み会、夏の古本市&我慢大会、秋の学園祭でのゲリラ演劇、そして、
京都の冬を席捲する風邪の猛威。 全体に、著者独特のファンタジー色を交えながら、個性豊かな登場人物が織りなす
物語は、ふつうの小説に飽きた人におすすめ。 とは言え、ちょっとクセのある文体、トーンなので、好き嫌いは出るかも。
2007年度「本屋大賞」2位! 「山本周五郎賞」も受賞。 僕のオススメ度:8
「夜は短し歩けよ乙女」特設サイトは コチラ
コメント  7月24日通り (吉田 修一著、新潮文庫)   作品の紹介 

海沿いの地方都市に暮らす20代半ばのOL、本田小百合。 自分の生まれ育った街を、リスボンに見立てて、バスの
停留所も、公園も、通りの名前も全部、リスボンの地名で呼ぶのが、彼女の秘かな楽しみだ。 リスボンの地名を
使えば、日々の通勤だって、ジェロニモス修道院前の停留所からバスに乗り、7月24日通りを抜けて、コメルシオ
広場で降り、ガレット通りのオフィスに向かう、なんて具合になる。
小百合は、今の暮らしに不満を持つわけでもなく、かと言って、幸福を感じるでもなく、たんたんと生きている。
彼女の人生におけるアクセントと言えば、4歳年下のイケ面の弟の存在くらいで、自分自身の恋愛には、過大な期待を
抱いていない。 そんな平凡な小百合の日常が高校時代のクラブの同窓会をきっかけに、少しずつ動き出す。
昔、憧れていた先輩の聡史に再会できたのもつかの間、聡史は元彼女で今は人妻(しかも小百合の同僚の妻)となった
亜希子と寄りを戻す。 ところが、亜希子をあきらめた聡史が小百合に接近し、、、、、、。
⇒ じゃあ、小百合は聡史と結ばれて、ハッピー・エンド?なぁんていう単純な物語ではありません。 小百合の弟の
恋愛や、聡史以外の男性との出会いなども描きつつ、賛否両論(?)のエンディングに向かいます。 恋愛小説に
ジャンル分けされる作品なのでしょうが(しかも、女性向きの)、男性でも違和感なく、読めると思います。
この小説は、とにかく、流れが美しいです。 上質の音楽のような感じかな。 僕のオススメ度:8

コメント  女たちは二度遊ぶ (吉田 修一著、角川文庫)   作品の紹介 

11編を収録した短編小説集。 「どしゃぶりの女」に始まり、「殺したい女」、「自己破産の女」、「泣かない女」と
いうタイトルが続いていきます。 タイトルの示す通り、清楚な女性、おとなしい女性が出てくることはあまりなく。
相手の男も、紳士が登場するわけではなく。 じゃあ、とんでもないカップルばかり出てくるのかというと、そうでも
なく。 小説にならないくらい平凡な人物は出てきませんが、若い頃の恋愛って、案外こういうものなのかとも思ったり
しました。 本音の恋愛小説集。 僕のオススメ度:7.5

コメント  神様のボート (江國 香織 著、新潮文庫)   作品の紹介 

音大を卒業し、年の離れたピアノ教授と結婚した葉子は、身をこがすような不倫をする。 相手の男と離れ離れ
になるが、「どこにいても、いつかきっと君を見つけ出す」という男の言葉を信じて生きていくことを決意する。
やがて、妊娠に気づき、不倫相手との子を生み、草子と名づける。 ピアノ教授とも離婚し、幼い草子を連れての、
葉子の旅が始まった。
草子は、ピアノを教えたり、ホステスをしたりしながら、東京のまわり(茨城、千葉、神奈川、埼玉、栃木など)を
転々とする。 ほぼ二年おきに引っ越しを繰り返し、男を待ち続ける葉子に、娘の草子は、幼いながらも、理解を
しめすが、中学生になり、、、、、、。
⇒ この物語は、葉子が35歳、草子が小学3年生のときに始まり、葉子が40歳を超え、草子が高校生になるまでの
7年間を描いています。 自由奔放に見えて、仕事はきちんとこなす。 でも、心の中に静かな恋の狂気を隠して
いる葉子。 母に従い、健気に生きつつも、やがて現実に向き合うようになる草子。 そんな二人のつながりと
バランスが、著者の絶妙なタッチで語られていきます。 僕のオススメ度:7.8

コメント  赤い長靴 (江國 香織著、文春文庫)   作品の紹介 

14の連作短編集。 日和子は、結婚12年目の39歳。 夫の逍三(しょうぞう)と二人暮らし。 子どもはいない。
夫といるときよりも、たとえば、夫の服にアイロンをかけている時に幸せを感じる。 夫は、無口な上に、彼女の
話を聞いているのか聞いていないのかわからない。 話しかけても、「うん」という生返事しか返ってこないこと
にも慣れてしまった。 でも、不幸せというわけでもない。 逍三が日和子をだいじに思い、守ってくれていると
は感じられる。 いつのまにか、夫以外の人間を信じられなくなった自分に気づいたりもする。
そんな女性の心のうちをていねいに描いた作品。 日和子と逍三の距離感とか、二人の間に流れる空気感を
読者が感じ、堪能すればいいのだと思います。 ある意味、新しいかたちの恋愛小説かも。 僕のオススメ度:8

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