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読書感想文2010 part 3

「読書感想文2010」 part3は、5月〜6月の読書録です。

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コメント  まほろ駅前多田便利軒 (三浦 しをん著、文春文庫)   作品の紹介 

東京南西部、神奈川県と隣接するまほろ市(おそらく町田のこと)の駅前で便利屋を営む多田 啓介。
脱サラのバツイチ。 ある日、多田は高校時代の同級生、行天 春彦と再会する。 高校時代の行天は、
ルックスはいいのに、完璧な無口だった。 しかし、時を経て、彼は饒舌で飄々とした男に変身していた。
その日から、行天は、多田の事務所兼住居に転がり込み、男二人の共同生活が始まる。
二人の元に舞い込む依頼は、時としてトラブルがらみ。 チワワを預かる仕事だったのに、依頼主が夜逃げ
して、飼い主をさがすことなったり。 塾帰りの子どもを家まで送り届ける仕事だったのに、この子が覚醒剤
の運び屋で、売人に襲われたり。 でも、行天との生活で、奥底で閉じていた多田の心にも変化が、、、。
武骨に見えるけど、細やかな神経の持ち主、多田。 何も考えないで自由に生きているように見えて、ここぞ
という時に核心をつく発言をする行天。 物語は、二人の対比を楽しみながら、便利屋の仕事を眺めるように
読み進められるような構成です。 そして、後半では、二人が抱えていた秘密が解き明かされ、、、。
この物語は、ひらひらと漂うように生きる行天に多田の心が再生されていくお話でもありました。
三浦しをんさんは、ほんとにいろんな作風の小説を書けるのだと、改めてびっくりの一作。
2006年度「直木賞」受賞作。 僕のオススメ度:8.2

コメント  ジウU (誉田 哲也著、中公文庫)   作品の紹介 

正式タイトルは「ジウU 警視庁特殊急襲部隊【SAT】」。全三巻の第二巻。「ジウT 警視庁特殊班捜査係【SIT】」
の続編。 捜査一課で誘拐事件を担当する特殊班捜査係【SIT】2係で同僚だった門倉美咲と伊崎基子が主人公
の新タイプの警察小説。
【あらすじ】基子の活躍で少女の誘拐事件は解決したが、主犯の中国人青年「ジウ」は現場におらず、恋人とも
いえた雨宮も犯人に射殺されてしまう。 巡査から巡査部長に昇格はしたものの、SITからSATに異動してわずか
2カ月半で上野署の交通課に異動となる。 一方、美咲は、碑文谷署の刑事として、基子とともに事件解決の功績
が認められ、SITへの復帰を進められるが、所轄にとどまり、ジウ事件解決をめざすことになる。
美咲は、少女誘拐事件で逮捕した犯人、竹内を取り調べて行くうちに、新たな誘拐事件に辿り着く、、、、、、。
基子は、フリーライターの木原と単独でジウの捜査を開始。 ついにジウと遭遇する、、、、、、。
こうして、美咲と基子の二人は、それぞれの立場で、「新世界秩序」という謎の存在に関わって行く。
新世界秩序を操る闇の老人、ミヤジ。 彼はジウの原点にも立ち会っていた、、、、、、。
第二巻は、美咲と基子の視点、行動の合間に、ミヤジの半生の記録とも言うべき独白が挿入されています。
ジウは一巻よりは出てきたけど、相変わらず出番は少なく、、、。 さあ、あと一巻。ちなみにVのサブタイトルは
「新世界秩序」です。 シリーズ第1弾「ジウT」のブックレビューは コチラ。  僕のオススメ度:8

コメント  ストロベリーナイト (誉田 哲也著、光文社文庫)   作品の紹介 

警視庁捜査一課の警部補、姫川玲子。 高校生の時に、ある事件の被害者となり、警官を志す。 ノンキャリアで
ありながら、27歳で警部補に昇格。 29歳の現在、4人の部下を持つ主任である。 玲子は、独特のインスピレーション
で事件の核心に最短距離で近づく直感型の刑事であり、上層部も彼女に一目置いている。
身体中が切り刻まれ、ビニールシートに包まれた死体が発見された。 現場近くのため池からも、同様の死体が見つかる。
捜査を進めるうちに、被害者はいずれも、毎月第二日曜日に外出していたという共通点にたどりつく。 やがて、二人の
外出の目的が「ストロベリーナイト」という謎のイベントであることがわかり、玲子がまたもインスピレーションを働かせ、
事件の核心に近づくが、黒幕は意外な人物だった、、、、、、。
↑で紹介している「ジウ」の著者、誉田 哲也さんの作品。 「ジウ」同様、女性が主人公の警察小説も、なかなかいいじゃ
ないと思わせるできばえです。 物語終盤のどんでん返しの連続もナイス。 僕のオススメ度:8.2

コメント  ソウルケイジ (誉田 哲也著、光文社文庫)   作品の紹介 

↑上記「ストロベリーナイト」に続く警部補 姫川玲子シリーズの第二弾。 とは言え、独立した作品になっているので、
この作品だけ読んでもだいじょうぶ。 この物語は「ストロベリーナイト」の四ヶ月後のお話です。
多摩川の土手に放置された車から男性の左手首が発見される。 鑑識の結果、この手首は、小さな工務店を営む高岡の
ものであることがわかる。 高岡の借りていたガレージは、血の海になっており、殺人事件として捜査が開始される。
死体が見つからないまま、捜査は進められ、高岡の過去が次第に浮かび上がってくる。 やがて、胴体部分が発見され、
高岡のものだと鑑定されるが、、、、、、。
前作「ストロベリーナイト」が現代的、猟奇的なテイストだったのに対して、今回は、地道に生きてきた男の過去を追う
綿密な捜査を描いています。 とは言え、主人公のキャラが立った、小気味良い展開は健在。 僕のオススメ度:8

コメント  贄(にえ)の夜会 上・下 (香納 諒一著、文春文庫)  
コメント(上) コメント(下) 作品の紹介 

犯罪被害者の会に出席した20代の女性二人が殺害される。一人は両手首を切断され、一人は頭蓋骨を割られていた。
被害者の一人、目取真 南美の夫、渉は、遺体確認の直後、自宅から身分の割れるものをすべて持ち出し、姿を消す。
渉の正体は、プロのスナイパーだった。さらに、被害者の女性二人が事件当日 出席したセミナーの講師をつとめた
弁護士、中条は、19年前、14歳の時に4件の殺人を犯していた、、、。
警視庁捜査一課の刑事、大河内は、中条を疑うが、中条には完璧なアリバイがあった。一方、目取真 渉の行方も
つかめないままとなっていたが、公安に目取真の捜査から手を引くよう要請される。
事件打開のため、大河内は、19年前、中条の精神鑑定を担当した大学教授の教え子の女性とコンタクトをとり、彼女
から、中条をマインドコントロールしていた人物がいるのではないかとの情報を得る。
そんな折、目取真 渉が、神戸で暴力団の組長を射殺。そして、冒頭の事件の被害者の女性の切り取られた手首の写真
がネットで公開される。さらに、中条の元交際相手だった女性弁護士も殺害され、、、、、、。
とまあ、怪しい元殺人犯の弁護士、彼を操っていた謎の人物、プロのスナイパー、そして捜査一課の刑事と、三つ巴
ならぬ四つ巴の戦いがドライブ感いっぱいに展開する硬派なミステリーです。
犯人 vs 警察という構図の作品に比べて、やや複雑な筋書きですが、作者がうまく話を整理してくれていたので、
混乱せずに最後まで読み進むことができました。上下巻あわせて800ページを超える大作。
「本の雑誌」2009年度文庫「国内ミステリー部門」第9位。 僕のオススメ度:8

コメント  夢見る黄金地球儀 (海堂 尊著、創元推理文庫)   作品の紹介 

「チーム・バチスタの栄光」三部作でおなじみの海堂 尊さんの作品。 舞台は、同じ関東のはずれ桜宮市で、「ナイチン
ゲールの沈黙」の主役(浜田 小夜)も少し出てくるけど、医学とは関係のないクライム・ノベル。
1988年、「ふるさと創生一億円」で桜宮市がつくった「黄金地球儀」は、市の水族館で公開されていた。
時は流れて、2013年。 物語の主人公、平沼 平介は、大学院を中退し、父親、豪介が経営する鉄工所で営業部長におさ
まっている。 天才物理学者である豪介のつくりだす装置は、画期的なものばかりだが、経営に疎いため、利益があがら
ない。 黄金地球儀の盗難防止装置も市の発注で制作したが、契約書の詰めがざるで、警備まで担当されられるはめに。
そんな折、平介の大学時代の悪友、ガラスのジョーこと、久光 譲治が8年ぶりに姿を現した。 ジョーは平介に黄金地球儀
強奪を持ちかける。 悩んだ末、計画に乗ることにした平介だったが、市との契約は、地球儀の警備のみならず、盗難に
あった場合の補償まで含まれていた。 八方ふさがりになった平介だったが、奇策を思いつき、地球儀強奪作戦を実行に
移す。 しかし、次々と難問やサプライズが起こり、、、、、、。
全体的に、コメディータッチのクライム・ノベルのつくりになっています。 平介とジョーの二人は、「チーム・バチスタ」の
田口と白鳥を連想させたりして(ジョーは白鳥ほどのキレ者ではないけど)。 それなりのレベルの作品とは思うのですが、
どうも「チーム・バチスタ」三部作の印象が強くて、比べてしまいます。 「チーム・バチスタ」で初めて著者の作品に触れて
他の作品に手を出した人の多くは、そう思うのでは? 僕のオススメ度:7.5

コメント  ほかならぬ人へ (白石 一文著、詳伝社)   作品の紹介 

表題作(「ほかならぬ人へ」)と「かけがえのない人へ」というふたつの中編を収録。
【ほかならぬ人へ】宇津木 明生(あきお)は、名家に生まれたが、優秀な二人の兄と違い、自分は生まれそこなった
と考えて生きてきた。 子どもの頃からの許嫁ではなく、自分の選んだ相手との結婚を反対され、家との縁を切る。
しかし、家を捨ててまで結婚した妻は、昔の恋人の離婚を機に、明生との暮らしに見切りをつけようとする。
そんな時、明生を公私にわたって支えてくれたのは、職場の上司、東海さんだった。 東海さんは、明生より6歳上の
バツイチの女性課長。 仕事はできるが、自他ともに認めるほど、容姿にめぐまれていなかった。
やがて、明生は東海さんに惹かれ始めるが、、、、、、。
【かけがえのない人へ】みはるは、資産家の家に生まれた、28歳の電気メーカーOL。 エリートの同僚との結婚が
決まったとたん、かつての上司、黒木との関係を再開する。 黒木は、みはるの婚約者とは正反対の、野性味あふ
れる雑草のバツイチ男。 みはるは、婚約者に対する不義に走る自分を理解できないまま、黒木との関係を続ける。
結婚には何の希望を抱いていないと自分に言い聞かせながらも、黒木の方を愛している自分に気づかないふりを
続けていくが、、、、、、。
どちらも、恋愛小説誌「Feel Love」に掲載された作品です。 ジャンルとしては、恋愛小説になるのでしょうが、うわ
ついた恋愛ではなく、読者も考えさせられるようなケースを描いていました。
2009年度「直木賞」受賞作。 僕のオススメ度:8.2

コメント  ホノカアボーイ (吉田 玲雄著、幻冬舎文庫)   作品の紹介 

1999年、サンフランシスコの芸大を卒業した玲雄(れお)は、両親とハワイ島に旅行する。 そこでホノカアに
すっかり魅せられる。 ホノカアは、1920年代、30年代の建物が立ち並ぶゆったりと時間の流れる町だった。
夏に再びホノカアを訪れた玲雄は、大学院を休学し、ホノカアシアターという映画館で働く決心をする。
この作品は、24歳の青年がホノカアで過ごした4か月を日記のように、エッセイのように描いた私小説。
83歳の日系人のおばあちゃん、ビーさん。86歳で現役の床屋さんのみつえさん。シアターのオーナーのドクター。
玲雄が一目ぼれしたアイスクリーム屋のアルバイト、マライア。 彼は、驚くほどゆったりと流れる時間の中で
かけがえのない人たちと出会い、忘れられない思い出を得る。 しかし、やがて、別れの日がやってくる、、、。
この作品は2009年に 映画化 されました。  僕のオススメ度:7.5

コメント  恋って恥ずかしい (島村 洋子著、講談社文庫)   作品の紹介 

正式タイトルは「恋って恥ずかしい 家族善哉2」。 「家族善哉」の続編です。
大阪の主婦、咲子は、高校生の時、大恋愛の末、妊娠。 高校を中退し、娘、美佐緒と息子、新哉を育てる。
子育てが一段落した先子は、もう一度、高校生活をやり直そうと決意し、猛勉強。 自分が通っていた高校に合格するが、
なんと娘と同じクラスに、、、。 という感じの騒動を描いたのが「家族善哉」(パート1)。
パート2は、その後、母の看病で留年した咲子が、今度は、息子と同じクラスになってしまい、、、というところから始まり
ます。 咲子の息子、新哉は、姉とは正反対の性格。 どちらかというと目立たない男の子。 そんな新哉が、東京からの
美人転校生、瑛子に恋をした。 しかし、瑛子は美佐緒の片思いの相手、上沢君と付き合い始める。 それでも、瑛子の
ことをあきらめきれない新哉。 そんな新哉が、ある日、瑛子から声をかけられ、やがて、デートを重ねる仲に。
しかし、瑛子は有頂天の新哉に冷水を浴びせるようなお願いをする。 それでも、瑛子の願いに応えようとする新哉だったが、
両親や教師まで巻き込む大騒動に発展する、、、、、、。
第一作同様、ナイスな大阪ストーリーでした。 パート1を読まなくても問題ないですが、この作品の世界観をパート1でつか
んでから、パート2に入った方がおもしろさ倍増だと思います。 大阪弁が苦手でなければ、おススメです。
「家族善哉」(パート1)のブックレビューは コチラ 。  僕のオススメ度:8

コメント  40 翼ふたたび (石田 衣良著、講談社文庫)   作品の紹介 

表題作(「翼ふたたび」)を含む7編を収録した連作短編集。
吉松は40歳。 先輩に誘われ、大手の広告代理店を辞めるが、その先輩と折りが合わずに独立する。
銀座の小さな制作プロダクションのオフィスに間借りして、プロデュース業を始めるが、仕事のない日が過ぎていく。
しかし、彼が始めたブログをきっかけに、少しずつ仕事の依頼が入り始める、、、、、、。
吉松に入る依頼は、元IT社長の更生のサポートだったり、引きこもりの青年を部屋から出すことだったり。
はたまた、大学の同級生の離婚の立ち会いだったり。 広告やプロデュースとは、ほど遠いものでありながら、40歳
という年齢を「終わりの始まり」ととらえていた吉松の毎日は「新たな始まり」を迎える。
石田 衣良さんの作品はいくつか読んでいますが、この作品は、名作「池袋ウエストゲートパーク」を少し連想させ
ました。 けれど、トラブルの解決がちょっとあっけない印象も受け、、、。 その分、物足りなさが残ったかも。
あ、でも、ラストはよかったです。 この作品は「週刊現代」に連載されていました。 僕のオススメ度:8

コメント  阿修羅 (梓澤 要著、新人物文庫)   作品の紹介 

奈良時代のお話。 聖武天皇の皇后、藤原光明子(こうみょうし)の妹、多比能(たひの)が後妻として入った
葛城王(橘 諸兄=もろえ)の息子、泉王(後の橘 奈良麻呂)。 葛城王と多比能が同じ母から生まれた異父兄妹
のため、泉王は幼いころから、奇異な目で見られてきた。 しかし、成長した泉王は、母から出生の秘密を聞かされ、
自分が父、葛城王の実子でないことを知る。 それからの泉王は、大学にも入り、父の片腕となるべく努力を続け、
天皇から叙位(従五位下)されるまでになる。 やがて、官位を独占する藤原氏の有力者たちが疫病で次々と病死し、
葛城王は右大臣に昇進、橘諸兄と名乗る。 いったん、勢力が衰えたかに見えた藤原氏だったが、皇后の甥、仲麻呂が
台頭し、朝廷を思いのままに私物化し始める。 その後、橘諸兄は、左大臣に昇進するが、もはや、朝廷の実権は、
皇后と仲麻呂のものであり、諸兄も奈良麻呂も忸怩たる思いを抱いたまま、政務にあたるしかなかった。
奈良麻呂は、反藤原、反仲麻呂勢力を結集し、クーデターを企てようとするが、主要人物の理解を得られないまま、
いたずらに日々が過ぎて行った。 しかし、下級官吏たちの熱い想いに動かされ、もう一度、反乱を起こすことを
決意するが、、、、、、。
タイトルの「阿修羅」は、泉王の幼馴染の仏師が、苦悩に満ちた十三歳の彼をモデルに阿修羅像をつくったというエピ
ソードと、戦いの神、阿修羅となり、仲麻呂に立ち向かう奈良麻呂の姿をさしたものだと思われます。
歴史の上では、奈良時代最大の反乱の首謀者としてされる橘奈良麻呂が反乱を起こすに至った道のりを著者は独自の
視点で小説というかたちにすることに成功したと言えるでしょう。 戦国時代や江戸時代に比べるとなじみの薄い奈良
時代の物語ですが、著者がていねいに歴史をなぞってくれているので、それほどとまどうことなく、」読み進められる
と思います。 「本の雑誌」2009年度文庫「時代小説部門」第4位。 僕のオススメ度:7.8

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