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読書感想文2010 part 1
「読書感想文2010」 part1 は、1月〜2月の読書録です。
↓ Click NOVEL mark !
エンド・ゲーム 常野物語 (恩田 陸著、集英社文庫)
作品の紹介
個人的に超オススメの「常野(とこの)物語」シリーズの第3作。
第1作「光の帝国」、第2作「蒲公英(たんぽぽ)草紙」のブックレビューは
コチラ。
とは言え、本作は独立した作品になっているので、この作品だけ(から)読んでもだいじょうぶです。
【あらすじ】常野一族の末裔、拝島(はいじま)暎子は、大学生の娘、時子と二人暮らし。 人間の精神の負の
部分が異形のかたちで現れる「あれ」と闘い続けてきた。 「あれ」を裏返さなければ、自分たちが裏返され、
能力を失うばかりか、魂の抜けたような存在になってしまう。 暎子と同じ能力を持つ人々と「あれ」達は、
さながら「オセロゲーム」のように互いを裏返し続けてきた。
比類なき能力を持った夫は、時子が小学生の頃、「あれ」に裏返されて、失踪したきりだった、、、、、、。
ある日、時子は、暎子の秘書から連絡を受ける。 母が会社の慰安旅行先で倒れ、意識不明の状態であると。
暎子は、命に別条はなかったが、完全に眠り続けていた。 母も「あれ」にやられたのだと直感した時子は、
常野一族で、裏返された人を元通りにする「洗濯屋」火浦に助けを求めるが、、、、、、。
タイトルの「エンド・ゲーム」とは「終盤戦」という意味です。 でも、本作が「常野物語」の完結編というわけでは
なく、(常野一族の一派である)暎子たちの闘いが終盤戦にさしかかったという意味でした。
「常野物語」は、まだ続くそうです。 ちなみに、暎子と時子のお話は、「常野物語」第1作の「光の帝国」にちらっと
出てきます(全10編の短編の内の1編)。 やっぱり、「常野物語」はすばらしい。 おすすめです。
僕のオススメ度:8.2
うそうそ (畠中 恵著、新潮文庫)
作品の紹介
大人気の「しゃばけ」シリーズの第5作。 「しゃばけ」の人物設定や世界観については、コチラ↓をご覧ください。
第1作「しゃばけ」、第2作「ぬしさまへ」のブックレビューは コチラ。
第3作「ねこのばば」、第4作「おまけのこ」は コチラ。
【あらすじ】江戸の大店(おおだな)、長崎屋の若だんな、一太郎は、生まれつき病弱で、旅に出たことがなかった。
心配性の両親が箱根に湯治に出してくれたのもつかの間、妖(あやかし)のボディガードである佐助と仁吉が姿を消す。
異母兄で店の手代、松之助と宿に辿り着くも、今度は侍に誘拐される始末。 さらに、天狗にまで襲われ、湯治どころ
ではなくなるが、一太郎は、やさしい気持ちで、根気よく事件を解決していく、、、、、、。
第1作以来の長編。 このシリーズは、短編でも長編でも、安定したレベルの高さです。 今回、ミステリーの要素は
軽めでしたが、その分、箱根の姫神や雲助たちとの交流がていねいにさわやかに描かれていました。
「しゃばけ倶楽部」も覗いてみては?→ コチラ。
僕のオススメ度:8
神は沈黙せず (山本 弘著、角川文庫)
(上)
(下)
作品の紹介
フリーライターの和久 優歌は、空からボルトが降る超常現象を体験し、天才プログラマーの兄、良輔は、UFOに遭遇する。
良輔は、やがて、人類は、神のシミュレーション(実験)の材料にすぎず、UFOも、超常現象も、すべて、神の仕業である
という仮説をたてる。 良輔は、これらの現象を神から人類へのメッセージであると推測するが、なぜ、神がもっとわかり
やすいかたちのメッセージをとらないでいるのかを解明できずにいた。 やがて、優歌のもとに神の使いが現れ、神が
全人類の前に姿を現すが、、、、、、。
UFO、ポルターガイスト、超能力、超常現象に新たな解釈を与えたエンターテイメント色の強いSFミステリー。
「神」の狙い、「人類」存在の意義、そして「宇宙」の範囲など、我々が一生想像もしないような発想が次々と出てきます。
あらすじだけ読んでると、とんでもない話に思えるかもしれませんが、「神」の存在を科学的に、緻密に証明していくので、
全然、ありえない設定(いかにもフィクション)とは思えませんでした。
圧倒的な情報量についていくのがたいへんですが、大量の情報を集め、再構築した著者に敬意を払い、読破してください。
2004年度「ベストSF」国内編:第3位。 僕のオススメ度:8
心霊探偵 八雲 1・2・3 (神永 学著、角川文庫)
(1)
(2)
(3)
作品の紹介
第1巻「赤い瞳は知っている」は、3つの作品を収録した短編集。 第2巻「魂をつなぐもの」と第3巻「闇の先にある光」は
長編。 2010年2月現在、8巻まで刊行されている人気シリーズ。 今回、3巻をまとめ読みしました。
斉藤 八雲は、赤い左眼を持つ大学生。 左眼は、死者の魂を見ることができる。 刑事の後藤は、八雲が子どもの頃、
実の母親に殺されかけたところを助けた縁で、今も八雲と付き合っている。 しかし、今は立場が逆転して、八雲の
能力を捜査に使わせてもらうため、強い態度に出られない。 同じ大学の小沢 晴香とも、事件がきっかけで知り合うが、
八雲はつっけんどんな態度しかとれずにいる(晴香は八雲に好意を抱き始めるが、、、)。
八雲はお寺の住職である叔父に育てられたが、死者の魂が彷徨うお寺で暮らすことには耐えられず、大学の部室で
寝起きしている。 心を許した相手には、やさしいところもあるが、ふだんは皮肉の連発。 しかし、ひとたび事件と
なれば、霊を見ることのできる力×鋭い推理で、彷徨う魂を救い、事件を解決へと導いていく、、、、、、。
「マンガちっくなミステリー?」と思って読み始めましたが、ミステリーの部分がしっかりしているので、八雲の能力も
荒唐無稽なものに見えませんでした。 作品の中での霊能力とミステリーのバランスがいいからなのでしょう。
著者の神永 学さんの公式サイトの「八雲」コーナー → コチラ。
「読者が選んだ角川文庫theベスト」の総合第2位。 僕のオススメ度:8
刑事の墓場 (首藤 瓜於=うりお著、講談社文庫)
作品の紹介
名古屋郊外にある動坂署は、警察組織で問題を起こした者、上層部から遠ざけられた者が集められた吹き溜まりの
ような所轄署。 大事件が起きても、隣の署に持っていかれる存在意義のほとんどない状態。
そんな動坂署に、警部補に昇進したばかりの雨森が転任してきた。 雨森は自分の異動が間違いであると思いこみ、
刑事課の面々に心を開こうとしない。 一方、他の刑事たちも、変人ばかりでやる気が全く感じられない。
そんな中、たまたま雨森が障害の被害届を受理した女子大生が、数日後、自宅のマンションで殺害される。
第一発見者は雨森自身だった。 早速、動坂署に捜査本部が置かれるが、動坂署の刑事たちは、蚊帳の外に置かれる。
容疑者が二人逮捕される中、動坂署の刑事たちは、独自に捜査を始め、事件の核心に近づいていく、、、、、、。
物語の後半、独自に捜査を始めてからの、動坂署の刑事たちの変貌ぶりがナイスでした。 そして、ラストで明かされる
動坂署の秘密(事件の謎解きとは全く関係ありませんが)にも笑ってしまいました。
肝心の謎解きは、読者といっしょに推理するスタイルではなく、物語終盤で、いきなり作者から犯人を提示される展開
でした(賛否両論あるかもしれません)が、僕個人としては、意外性のある結末だと納得(評価)しました。
「本の雑誌」2009年度 文庫国内ミステリー部門:第6位。 僕のオススメ度:8
同じ著者のおすすめ作品「脳男(のうおとこ)」は コチラ。
「脳男」は、「刑事の墓場」とは全然違うテイストのミステリーですが、「江戸川乱歩賞」受賞の話題作。
銀の犬 (光原 百合著、ハルキ文庫)
作品の紹介
ファンタジー色の強いミステリー。 表題作(「銀の犬」)を含む5つの物語を収録した連作短編集。
時代も国も特定されていませんが、イメージとしては、中世のヨーロッパでしょうか。
この世に未練を残して死んださまよえる魂を、美しい竪琴の調べで、あるべきところに誘(いざな)う、祓いの楽人、
オシアン。 そして、オシアンに付き添い、渉外の役割を果たす少年、ブラン。 二人は、愛する人を忘れられずに
さまよっているいる悲しい魂を、その原因にまで遡り、解放していく、、、。
せつなくて、悲しくて、でも、救いのある、きれいな作品が続いて出てきます。 ファンタジー×ミステリーの要素が
強いのですが、恋愛小説の性格もあり。 ま、小説のジャンル分けに、それほどの意味はないと思うのですが、
ふしぎな世界観を持つ作品でした。 僕のオススメ度:8
同じ著者のおすすめ作品「十八の夏」は コチラ。
林真紅郎と五つの謎 (乾 くるみ著、光文社文庫)
作品の紹介
林 真紅郎は35歳の元法医学者。 一年半前に妻を亡くし、今は何もせずに無為な日々を送っている。
本書は、林 真紅郎が挑む5つの事件を収録した短編集。 小さな事件から殺人事件まで、真紅郎が明晰な頭脳で情報を
シンクロさせてひも解いていきます。 この小説が、ちょっと変わっているところは、「偶然」という要素があちこちに
出てくるところ。 とは言え、作者のご都合主義的な偶然ではなく、事件の謎を深めた、ちょっとした、でも重要な偶然
に真紅郎が気づくというのがポイントになっていました。 僕のオススメ度:7.5
著者の乾くるみさんは、ちょっと変わったミステリー小説を書く人です。
本書よりも、「イニシエーションラブ」や
「リピート」がおすすめです。
あと、「クラリネット症候群」
という作品もあります。
交戦規則 ROE (黒崎 視音著、徳間文庫)
作品の紹介
ROEとは「Rules of Engagement」の略。 本書では、自衛隊の「交戦規則」=「部隊行動基準」のことを指す。
すなわち、有事の際の武器使用条件を定めたもの。簡単に言えば、交戦国から殴られたら、何発殴り返してよいか、どこを
狙ってよいか、というルールのこと。 空自、海自ではROEの発令実績はあるが、陸自には発令実績がない。 この物語は、
陸自初のROEが発令され、陸自が過酷な戦いに挑むさまを描いています。
【あらすじ】日本国内でアメリカCIAと北朝鮮の秘密工作員幹部が裏取引をしている最中に、韓国の諜報機関に拉致されるが、
北朝鮮側に奪還される。 北朝鮮側が日本脱出を図る中、撹乱のために、新潟で北朝鮮の特殊部隊が警察と戦いを始める。
警察は多数の犠牲者を出しながら、北朝鮮軍を鎮圧できず、自衛隊に出動要請が出される。 陸上自衛隊は、直ちに、現地に
集結し、北朝鮮軍と戦火を交える。 一方、防衛庁の本部では、北朝鮮対策のプロであり、対遊撃検討専任班の班長、桂川一尉
が対応に追われていた。 しかし、桂川には、もうひとつ裏の顔があり、韓国側とも秘密裏に連絡を取り合っていた、、、。
前半は、ミステリーの要素もあり、静かな展開ですが、後半は、陸自と北朝鮮軍の死闘をリアルに描いています。
まさに、戦闘、戦闘、また戦闘。 犠牲者の屍を乗り越えて、両軍が懸命に戦うシーンは圧巻です。 しかし、自衛隊の男たち
の矜持や使命感の描き方が秀逸なので、救いのある話として読めました。
著者が自衛隊や北朝鮮のことを丹念にスタディして執筆している姿勢がひしひしと伝わってくる作品。 戦車や飛行機、武器の
型番まで手を抜かずに出てくるので、最初は、少し戸惑うかもしれませんが、物語が骨太なので、読み進めていくうちに慣れる
と思います。 僕のオススメ度:8
サッカーボーイズ 13歳 (はらだ みずき著、角川文庫)
作品の紹介
正式タイトルは「サッカーボーイズ 13歳 雨上がりのグラウンド」。 「サッカーボーイズ 再会のグラウンド」の続編。
桜ケ丘FCでサッカーに明け暮れた遼介は、桜ケ丘中学に進学。 しかし、桜ケ丘FCのチームメイトの何人かは、転校したり、
中学では野球部に入ったり、帰宅部になった。 チームのエース、良は、Jリーグのジュニアユースのチームに合格し、中学
のサッカー部とは次元の違うサッカーを始めていた。 桜ケ丘中学のサッカー部は、3年生が13人、2年生がゼロという変則的
な陣容ということもあり、遼介は、入部早々、公式戦デビューを果たす。 3年生の引退後、遼介は、キャプテンに選ばれ、
新人戦に臨み、市でベスト16の結果を残す。 Jリーグのジュニアユースチームはおろか、市の選抜チームの選にも漏れたが、
遼介は、自分に今できるサッカーを楽しみ、チームを強くすることだけを考えていた。 やがて、帰宅部だった桜ケ丘FC時代
の仲間がサッカー部に入り、3年生との引退試合の日には、Jリーグのジュニアユースチームに残れなかった良もグラウンドに
姿を見せた、、、、、、。
第一作同様、大人も子どもも熱い気持ちにさせてくれる作品。 我が家では、第一作も第二作も親子で読みました。
第一作「サッカーボーイズ 再会のグラウンド」の感想文は コチラ。
僕のオススメ度:8
源助悪漢(わる)十手 (岡田 秀文著、光文社文庫)
作品の紹介
江戸 浅草の御用聞き(岡っ引き)、源助は、強面(こわもて)で巨漢。 捜査の腕前は一流だが、人の弱みにつけこんだ
ゆすりたかりは朝飯前。 とは言え、阿漕(あこぎ)な男ではない。 どこか憎めないところもあり、上役や世間とも折り合いを
つけて、飄々と生きている。 そんな源助の名推理を描いた7編を収録した短編集。 源助は、「現場百回」というタイプでは
なく、手下の平太に聞き込みをさせて、頭の中で事件の謎をさらりと解決する。 実は天才肌の名推理の才能を持ち合わせて
いながら、悪役系のキャラゆえ、読者も、彼の真の実力をつい見逃してしまう。 そんな、ちょっとふしぎな作品でした。
「本の雑誌」2008年度文庫 時代小説部門:第10位。 僕のオススメ度:7.8
赤い密約 (今野 敏著、徳間文庫)
作品の紹介
空手の師範、仙堂は、指導のために訪れたモスクワでテレビ出演することになる。 ところが収録中に、反政府勢力のテロに
遭遇し、通訳とともに人質となる。 仙堂は、監禁された部屋で、テレビ局の記者、アレクサンドロフから1本のビデオテープを
託される。 アレクサンドロフは、テープには、ロシアの政治家とマフィアとの取り引きが記録されており、日本のテレビ局で放映
してほしいと仙堂に依頼する。 仙堂は、無事、脱出に成功するが、アレクサンドロフは、銃撃戦の中、マフィアに殺害される。
帰国後、仙堂は、テレビ局にテープを持ち込み、4局目でやっと放映の糸口をつかむ。 しかし、テープに記録されているのが
何の取り引きなのかわからない限り、放映はできないと言われてしまう。 その直後、仙堂は、テープ奪還を目論むヤクザに
襲われる。 得意の空手で事なきを得たが、ヤクザの襲撃は、これで終わりではなかった、、、、、、。
この後は、ビデオテープを奪還を狙う日本のヤクザ、ロシアのマフィアと仙堂の戦いがスリリングに描いていきます。
250ページの作品。 ストレートな展開で、読みやすいお話でした。 僕のオススメ度:7.5
残照 (今野 敏著、ハルキ文庫)
作品の紹介
東京の台場で、暴走族族同士のけんかの最中、片方のグループのリーダーが刃物で刺されて死亡する。 目撃者の証言により、
捜査本部は、現場から走り去った黒のスカイラインGTの持ち主、風間を追う。 しかし、臨海署(通称ベイエリア分署)の刑事、
安積班長は、風間をよく知る交通機動隊の速水隊長の進言もあり、別の角度から捜査を進める。 ほどなく、新たな事実が判明
するが、いったん、風間を容疑者とした捜査本部の方針を変えるのは、至難の技だった、、、、、、。
安積刑事が活躍する人気シリーズの一冊。 2009年にテレビドラマ化されました。
ベイエリア分署時代の名作としては、「二重標的(ダブルターゲット) 東京ベイエリア分署」があります。
「二重標的」のブックレビューは コチラ。
僕のオススメ度:7.5
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