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読書感想文2009 part 6

「読書感想文2009」 part6 は、11月〜12月の読書録です。


 ↓ Click NOVEL mark !
コメント  デッドライン (建倉 圭介著、角川文庫)  
  コメント(上)  コメント(下) 作品の紹介 

第二次世界大戦下のアメリカ。 日系2世のミノル・タガワは、日米開戦によりカリフォルニア大学を退学させられる。
しかし、アメリカ軍に志願し、欧州戦線で軍功をあげ、帰国。 ペンシルバニア大学に復学するが、戦争で左目の視力を
失っていた。 貧窮と差別の中、友人の推薦で、軍が大学に依頼したコンピューター開発プロジェクトのメンバーとして
迎えられる。 このプロジェクトで、成果をあげるが、ソ連のスパイの手先として設計図を盗み出した同僚に罪をなすり
つけられ、職を失う。 さらに、スパイによって始末された同僚の殺人の罪まで背負わされ、逃亡の身となる。
ソ連のスパイが、殺人を犯してまで手に入れたかった技術とは何か? この疑問を究明し続け、ミノルは、かつて自分が
かかわっていた仕事が原爆の開発、投下という国家プロジェクトの一部であることを知る。 さらに、場末のダンサー、
エリイの協力を得て、機密プロジェクトのメンバーから、日本への原爆投下が近いことを聞き出す。 日本にこのことを
知らせようと決意したミノルは、生き別れになった息子に会うため日本への密航を企てていたエリイとともに日本をめざす。
という感じで、物語が展開していきます。 このあと、ミノルとエリイは、シアトル、アラスカ、樺太と決死の旅を続けていく
わけですが、原爆の秘密が漏れたことを知ったアメリカ軍も、二人を必死になって追跡します。
日本の領土に入ってからも、降伏を勧めるアメリカ側の情報操作の手先と誤解されるミノル。 なるほど、この頃の日本人、
とりわけ軍部の世界観、アメリカ観は、こうだったのだろうと納得しました。 これに対し、アメリカでも、日本でも、ミノルを
助けてくれたのは、インディアンやアイヌの人たち。 アメリカ国内での日本人差別とともに、彼らの受けた不条理な差別も
丹念に描かれていて。 疾走感だけに頼らない、重みのある、骨太の仕上がりでした。
「本の雑誌」2008年度文庫 国内ミステリー部門:第6位。 07年度「このミステリーがすごい」ベスト10にもランクイン。
上・下巻合わせて、850ページの大作。 僕のオススメ度:8

コメント  オリンピックの身代金 (奥田 英朗著、角川書店)   作品の紹介 

1964年東京オリンピック前夜の東京が舞台。 7月、東大の大学院生、島崎 国男は、秋田の実家から、出稼ぎ中の兄が
蒲田の飯場で急死したとの知らせを受ける。 東京までの交通費すらない兄嫁に代わり、島崎は兄の火葬を済ませ、実家
に遺骨を届ける。 帰郷の途中、寝台車で、香典を盗もうとした村田というスリの老人と知り合う。 帰京後、島崎は兄が
働いていたオリンピックの建設現場で働き始める。 日本全体が、オリンピック開催で湧き上がる中、建設の現場は貧しい
男たちがヒロポンを打ちながら働く、まさに社会の底辺だった、、、。
8月、オリンピックの警備責任者である警視庁幹部の自宅で爆弾テロ事件が発生。 翌週、警察学校でも同様の事件が起こる。
そして、警察の捜査が本格化した矢先、今度は開通直前のモノレール工事現場でも爆発事故が、、、。 公安の指揮下のもと、
刑事部の人員も次々と投入され、大規模な捜査に発展する。 捜査本部の一員である捜査一課の刑事、落合と岩村は、島崎に
容疑者として目をつけるが、公安もすでに彼をマークし始めていた、、、。
こんな感じで物語が動き始め、10月10日のオリンピック開会式まで、ドライブ感たっぷりに進んでいきます。
島崎は、スリの村田を仲間にし、オリンピックを人質に8,000万円の身代金を要求。 警察も、威信をかけて島崎逮捕に奔走
するわけですが、何度も島崎を取り逃がし、開会式当日を迎えます。
この小説は、7月から10月までの一日を切り取り、島崎の視点、警察の視点、島崎の友人の視点で、事件のことが語られていき
ます。 ただし、一日一日が時系列に並んでいるわけではなく、時間が行ったりきたりします。 最初は、ちょっとややこしいな
と思ったのですが、ひとつひとつの事件の謎解きや動機などを過去に遡って読者に解説するスタイルになっているので、読み
進めていくうちに慣れました。 島崎はなぜオリンピックに爆弾テロを仕掛けようとしたのか、、、、、そんな彼の苦悩や思いが
行間から滲み出てきます。 他にも、身代金引き渡しの際の島崎の戦術、島崎と村田の友情、刑事部と公安の確執、そして、
オリンピック開催に沸き立つ時代背景、、、。 ミステリーとしても一級品ですが、他にも読みどころ満載の大作です。
著者の奥田 英朗さんを、またまた凄いと思いました。 2009年度「吉川英治文学賞」受賞。 僕のオススメ度:8.5
「オリンピックの身代金」特設ページは コチラ
コメント  ララピポ (奥田 英朗著、幻冬舎文庫)   作品の紹介 

群像長編とも言えるし、6編の連作短編集とも言える体裁。 都会の片隅で細々と暮らす、パッとしないけど憎めない、そんな
6人の男女が「エロ」いことに手を出し、底なしのトラブルに巻き込まれていくというお話。 主人公の6人は、20代から50代。
引きこもりの売れないフリーライター。 キャバクラ、風俗、AVのスカウトマン。 熟女ものAV女優の専業主婦。 などなど。
誰もが、さえない毎日に突破口を見出そうと変化やチャレンジに足を踏み出すのだけど、共通項は、前述の通り、エロいこと。
最初のうちはいいのだけど、そのうち、取り返しがつかないトラブルに発展してしまうさまをユーモラスに描いています。
僕には、ある意味、報われない人に贈る人間賛歌やエールのように見えました。 エロいシーンは、いっぱい出てくるけど、
奥田英朗さんらしく、ユーモラスに描いているので、味がありました。 ふつうの小説にあきた人におすすめです。
すぐ上↑の「オリンピックの身代金」と同じ著者の作品とは思えませんw  僕のオススメ度:8.2

コメント  延長戦に入りました (奥田 英朗著、幻冬舎文庫)   作品の紹介 

直木賞作家となった奥田英朗さんが小説家としてデビューする前に、雑誌「モノ・マガジン」に連載していたスポーツ・エッセイ。
とは言え、「本格的」なものではなく、「ドキュメンタリー」の要素もなくw  いろんなスポーツを、少し角度をずらして見たら
こんなことが見えてきました、こんな疑問を持ちました、みたいな、著者独特の視点で綴られた34編を収録。
ボブスレーの2番目の選手は何をしているのか?とか、男子レスリングのユニフォームは乳首を見せないようにすべきだ。とか。
基本的には笑わせてくれて、時々、なるほどと感心させられる、そんな感じの作品です。 時代的には90年代なので、懐かしめの
ネタが多いですが、取り扱っているスポーツのジャンルは、さまざま。 肩の凝らない一冊です。 僕のオススメ度:7.5

コメント  クラリネット症候群 (乾 くるみ著、徳間文庫)   作品の紹介 

「マリオネット症候群」と「クラリネット症候群」という2作の中編を収録(二作は関連のない独立した作品です)。
【マリオネット症候群】 SFミステリー。
 女子高生の里美は、バレンタインデーの夜中、目が覚めると身体を何者かに乗っ取られていた。
 里美の身体に乗り移ったのは、バレンタインのチョコを贈って、その日、告白したばかりのサッカー部のキャプテン、
 森川だった。 しかも、森川は、その直前に何者かに殺されていたことがわかり、、、、、、。
 ⇒ この後は、「えっ!」、「えっ?」、「え〜!」みたいなジェットコースター的展開です。 死んだ人の魂が別の
 人の身体に乗り移る、という超常現象を使ってはいるけど、うまくミステリーと融合させていました。 殺人が連続
 する展開なんだけど、殺伐とした雰囲気ではなく。 むしろ、ユーモラスな作風、かな。
【クラリネット症候群】 こちらは、暗号ミステリー。
 高校生の翔太は、母の同棲相手だった、養父のクラリネット奏者、関と同居している。
 ある日、翔太は、高校の先輩で憧れの絵里に近づくために、関のクラリネットを黙って持ち出す。 ジャズ好きの
 絵里は、翔太の狙い通り、翔太に声をかける。 しかし、偶然、通りかかった不良にクラリネットを壊されてしまう。
 その瞬間、翔太は、突然、ド・レ・ミ・ファ・ソ・ラ・シの音が聞こえなくなってしまう、、、。
 家に帰ると、関が、ヤクザに拉致されていた。 関は、クラリネット奏者の木村が偶然、手に入れたヤクザの「何か」を
 隠した場所を示す暗号解読をさせられているらしい。 木村は、ひと月ほど前、海で溺死していた、、、。
 翔太は、関を救出すべく、絵里や隣人たちと協力して、木村の残した暗号解読に挑むが、、、、、、。
 ⇒ ドからシの音が聞こえないという設定を、巧妙に暗号解読に結び付けて、驚きのラストまで読者をぐいぐい引っ張り
 ます。 暗号は、ちょっとマニアックだったけど、作品自体は、ユーモラスな雰囲気でした。
著者の乾くるみさん(ちなみに男性です)は、寡作ながら、一作一作のインパクトが強いミステリー作家です。
本書の他にも「イニシエーションラブ」「リピート」がおすすめです。 僕のオススメ度:8.2

コメント  ゆりかごで眠れ (垣根 涼介著、中公文庫)  
 コメント(上)  コメント(下) 作品の紹介 

中南米、コロンビア・マフィアのボス、リキ・コバヤシ・ガルシア。 35年前、日系移民の子として生まれ、7歳の時、内乱
状態のもと、軍部に両親を惨殺される。 リキは、現地の女性、ベロニカに引き取られ、彼女の息子として育てられる。
10年後、2歳上の兄、ホルへの死をきっかけに、ホルへがリーダーだったギャング団を引き継ぐ。
その後、リキは、明晰な頭脳としたたかな戦略で、国内7大マフィアの中でトップ3の組織をつくりあげる。
その一方で、偶然、知り合った浮浪児の少女、カーサを引き取り、兄を殺された彼女の心の傷を癒すことに心を砕く。
リキは、自分にもしものことがあった場合に備え、7大マフィアの日本での会合に、彼女を伴って来日し、コロンビアで
知り合った老人、竹崎にカーサの将来を託す。 しかし、リキには、あとふたつ難題が待ち構えていた。
ひとつは、反目する組織のタレ込みにより逮捕された配下の殺し屋、パパリト奪還のため、新宿北署襲撃を計画すること。
もうひとつは、パパリトを警察に売った組織のボスを日本での会合の席で始末することだった、、、。
と、こんな感じで上巻が進んでいきます。 上巻は、リキの生い立ち、養母ベロニカとのつながり、カーサとの出会いに
ページが割かれていて、リキの背負っているもの、苦悩や人間らしさを描いています。
一方、下巻は、警察襲撃という、とんでもないクライマックスに向けて、ドライブ感たっぷりに話が進んでいきます。
新宿北署の問題刑事、武田、そして、武田の元愛人の妙子の人生がリキと交差し、物語に厚みを持たせていました。
垣根さんは、ほんとに外れのない作品を送り出す作家だと思います。 僕のオススメ度:8.2

コメント  ギャングスター・レッスン (垣根 涼介著、徳間文庫)   作品の紹介 

渋谷のチーマー100人のリーダーだったアキは、チームを解散し、東南アジアに放浪の旅に出る。 裏の世界に生きる柿沢と
桃井にスカウトされ、やる気があるなら一年後に約束の場所に来るように言われていた。 帰国後、柿沢と桃井の仲間に
加わることになったアキに対して、柿沢と桃井のレッスンが始まる。 裏の戸籍を手に入れ、クルマを改造し、頭と体を鍛え、
ドライビングと射撃の訓練を終えたアキは、いよいよ、本番の舞台に上がるが、、、、、、。
裏の世界の住人と言っても、柿沢も桃井も表の顔を持っており、仕事は年に1度か2度。 しかも、周到な準備をした上で
強奪しても、警察に届けられないような金ばかりを狙います。 頭脳派の柿沢、カーマニアで肉体派の桃井という30代半ば
のプロに鍛えられ、アキが裏の世界の住人になっていくプロセスを描いています。
著者の垣根涼介さんは、僕のお気に入りの作家のひとりです。 僕のオススメ度:8
この物語は、↓下記の「ヒートアイランド」後、「サウダージ」前のアキが主人公。 言うなれば、アキ三部作のパート2に
あたる作品です。 とは言え、この作品だけ読んでも、問題ありません(話は十分通じます)。 個人的には、この三部作は
秀逸のデキなので、まとめて読むことをお勧めしますが(実は、パート1と3の方が2よりもおもしろいし)。
「ヒートアイランド」の読書感想文は コチラ   「サウダージ」の読書感想文は コチラ
コメント  九月が永遠に続けば (沼田 まほかる著、新潮文庫)   作品の紹介 

水沢 佐知子、41歳。 精神科医の雄一郎と8年前に離婚し、高3の息子、文彦と二人暮らしの生活を送っている。
雄一郎は、患者だった亜沙美と再婚し、亜沙美の娘、冬子と暮らしている。 冬子は、亜沙美が、レイプされ、身ごもった
子どもだった。 冬子は、魅惑的な女性に成長し、15歳ながら、何人かのボーイフレンドを周りに侍らせていた。
佐知子は、冬子のボーイフレンドの一人、25歳の犀田(さいだ)と自動車教習所で知り合う。 教官と生徒、そして16歳と
年齢差を超え、二人は関係を結ぶ、、、。 しかし、まもなく、文彦が失踪し、犀田も駅のホームから転落し、謎の死を
遂げる。 佐知子は、パニックに陥るが、冬子に接触し、二つの事件の真相に近づこうとする。 冬子は、雄一郎に内緒で
異母兄と信じる文彦と逢っていたこと、犀田は自分ともみ合ううちにホームに転落したことを佐知子に告白する、、、。
と、あらすじの解説はこれくらいにしておきます。 このあと、事態は、二転三転し、意外なラストを迎えます。
ジャンルとしては、ミステリーに分類されるのでしょうが、ミステリーという枠を超えた作品だと思います。
数少ない登場人物の人間関係の濃密さとか心の奥底に潜む澱(おり)みたいなものに怖さや寒気を感じました。
「本の雑誌」2008年度文庫 国内ミステリー部門:第1位。 2004年度「ホラーサスペンス大賞」大賞受賞作品。
著者はこれがデビュー作とは信じられません。 大人向きのミステリー。 僕のオススメ度:8.2

コメント  レキオス (池上 永一著、角川文庫)   作品の紹介 

西暦2,000年の沖縄。 アメリカ空軍中佐のキャラダインは、ヤマグチ少尉とともに、巨大な魔方陣から伝説の地霊、
レキオスを復活させようと目論んでいた。 キャラダインには、秘密結社「G.A.O.T.U」の沖縄支部のヘッドという顔
もあり、C.I.Aと暗闘を繰り広げていた。 さらに、レキオスに関心を持つ天才科学者、オルレンショーやフェルミ、
時空を超えた霊までがこの騒ぎにからみ、先の読めない展開に、、、。 レキオス復活に向けて、水面下での戦いや
駆け引きが進む中、アメリカ軍兵士と日本人女性の間に生まれた、女子高生デニスは、自分の運命や役割を知らず
に、退屈な日々を生きていた。 ところが、デニスにとり憑き、守護霊となったチルーの頼みを聞いているうちに、
少しずつ、レキオスの核心に近づいていく、、、、、、。
↑というふうに、書いてはみましたが、この物語をちゃんと説明しようと思ったら、この10倍くらいの長さになるでしょう。
いや、10倍書いても、うまく説明できないかも。 とにかくスケールが大きな作品です。 映画的なテイストを持ったSF
という感じでしょうか。 あと。人物造形も秀逸。 骨太の作品なので、日ごろSFを読まない人でも全然OKです。
著者の池上 永一さんの代表作「シャングリ・ラ」のレビューは、「読書感想文2009 part 5」にupしてあります。
こちらの方もどうぞ。 僕のオススメ度:8

コメント  最後の願い (光原 百合著、光文社文庫)   作品の紹介 

計7編からなる連作短編集。 劇団を立ち上げようとしている度会(わたらい)は、これはと目をつけた人物だけを新劇団
「φ(ファイ)」に誘う。 役者はもちろん、脚本家、美術、制作など、役者の風間とともに、次々とスカウトしていくが、どれも
一筋縄ではいかない人物ばかり。 しかも、スカウトの過程で、さまざまな謎や事件に出くわす。
度会と風間は、頭と体を使って、次々と謎や事件を解き明かしていく、、、、、、。
取り上げられている謎や事件は、どれも、よぉく練られていて。 ミステリー・ファンを堪能させてくれる内容でした。
ようやく役者とスタッフが揃い、度会が旗揚げ公演をしようとした矢先、公演会場のシアターで、新たな謎が降りかかります。
ちょっと変則的なスタイルのミステリー。 僕のオススメ度:8
著者の光原 百合さんは、「十八の夏」という傑作も書いています。 こちらの方もオススメです。

コメント  送り火 (重松 清著、文春文庫)   作品の紹介 

表題作(「送り火」)を含む計9編からなる短編集。 もともとは、「別冊文藝春秋」に「私鉄沿線」というタイトルで連載されて
いた作品。 文字通り、新宿から西に向かって東京の郊外を走る私鉄沿線に暮らす人たちの、せつない気持ちを綴った物語。
30代の女性ライター、子どもを亡くした30代の夫婦、40歳の駅員、子どものいない40歳の主婦、、、。 みなそれぞれ、日常の
中に思い出や悲しみやせつなさを抱えて生きている。 時には投げやりにもなるけど、人生を捨てないで生きている。 一見、
幸せではないかもしれない、でも、懸命に生きている人たちへのエールなのかな、とも解釈できる作品でした。
短編集とはいえ、作品はどれも、長編が書けそうな、中身が濃いものばかり。 大人が納得の一冊。 久しぶりに重松さんの
作品を読みましたが、その筆力に改めて感動をおぼえました(マジで)。 僕のオススメ度:8.2

コメント  日曜日たち (吉田 修一著、講談社文庫)   作品の紹介 

表題作(「日曜日たち」)を含む計5編を収録した短編集。 5人の若い男女にとっての、さまざまな、ドラマティックな日曜日
を描いています。 都会の片隅で、もがいたり、悩んだり、泣いたり、、、。 決してハッピーではないけれど、それでも生きて
きた、それでも明日はやってくる。 そんなせつなさがつまった5つの物語。
5つの短編の主人公は異なりますが、すべての作品をブリッジする役割として、小学生の兄弟が登場します。 それぞれの
お話にちらっと出てくるだけなので、単なるブリッジかなと思っていたら、最後のお話で謎が明かされます。 大ドンデン返し
みたいなオチではないけど、せつない話が続いた後の一服の清涼剤みたいな効果をもたらして、5つの物語が静かに幕を
閉じます。 僕のオススメ度:7.5

コメント  ひとり日和 (青山 七恵著、河出書房新社)   作品の紹介 

20歳の知寿(ちず)は、埼玉で母親と二人暮らし。 フリーターをしている。 しかし、母の中国留学をきっかけに、東京で暮らす
遠縁のお年寄り、吟子さんの家に居候することになる。 71歳の吟子さんと20歳の知寿の日々は、たんたんと流れていく。
吟子さんは、若くして夫を亡くしたが、今は、ホースケさんというボーイフレンドとダンスをしたり、食事をしたり、楽しくやっている。
知寿も、2年半付き合っていた恋人と別れるが、すぐに、バイト先で知り合った藤田君と恋に落ちる、、、、、、。
臆病で怠け者の知寿は、母の庇護のもとで、変化の少ない日々を送ってきたわけですが、吟子さんと過ごす春、夏、秋、冬を
通して少しずつ、半ば無意識に前向きになっていきます。 大きな事件が起こるわけではないけど、51歳の年齢差の二人の女性
の間に流れる微妙な空気感がいい味を出していました。 2007年度「芥川賞」受賞。 僕のオススメ度:7.5

コメント  向日葵の咲かない夏 (道尾 秀介著、新潮文庫)   作品の紹介 

ミチオは小学校4年生。 一学期の終業式の日。 欠席したクラスメイトのS君の家に夏休みの宿題を届けに行く。
そこで、彼が見たのは、S君の首吊り死体だった。 ミチオは、あわてて学校にとって返し、担任の先生に事件を告げる。
先生が警察を伴ってS君の家に駆けつけた時には、死体はなくなっていたが、自殺の痕跡が残っていたので、捜査が始まる。
一週間後、ミチオの前にS君が現れる。 S君は、クモに生まれ変わっていた、、、。 S君は、ミチオに、自分を殺した犯人の名前
を告げる。 それから、ミチオは妹のミカと事件解決に乗り出すが、、、、、、。
こうして、事件が幕を開け、それから、怪しい人物や謎がいくつか出てくるわけです。 こっちは、S君の生まれ変わりという設定
以外は、ふつうのミステリーだと思い、読み進めたのですが、、、  最後の方で、「なに、これ!」ということばをこぼしてしまい
ました。 作者は、ある種、実験的なミステリーを書きたかったのかもしれませんが、個人的には、この筆力を、ミステリー本来の
領域でいかしてほしかったなと。 そこまで、設定をいじらなくても、おもしろい作品になったと思うのですが、、、。
「本の雑誌」2008年度文庫 国内ミステリー部門:第2位。 ですが、この作品は、はっきり言って、好き嫌いと理解できる/できない
が、くっきりと分かれてしまうお話です。 僕のオススメ度:6.5

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