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読書感想文2013 part 1
「読書感想文2013」 part1は、1月〜2月の読書録です。
↓ Click NOVEL mark !
とんび (重松 清著、角川文庫)
作品の紹介
昭和37年、瀬戸内海に面した町の運送会社で働く28歳のヤスさんは、妻の美佐子の妊娠に幸せをかみ
しめていた。やがて生まれた男の子は、小林旭にちなんで、アキラと名付けられる。
家族三人の生活は、つつましいながらも、幸せいっぱいだったが、アキラが3歳の夏、アキラをかばって、
事故で美佐子が命を落とす。
ヤスさんは、仕事も子育ても一生懸命がんばる。親友とその家族、飲み屋の女将と常連、取引先の社長、
同僚、近所の人たちに支えられ、アキラは勉強もスポーツもできる少年に成長する。
不器用で照れ屋のヤスさんは、時として言葉が足りなかったり、時として思ってもいない言葉を口にして
アキラとすれ違うこともあったが、父と息子の絆は、根っこの部分では揺らぐことはなかった。
やがて、アキラは、東京の大学に進学し、そのまま東京の出版社に就職する。数年後、結婚し、アキラも
父となる、、、。
武骨で、不器用で、照れ屋で、筋の通らないことが許せない、昭和の父を描いた名作。
ヤスさんは、いい父親なのですが、母を早くに亡くしたアキラを見守る人たちが、母親がわり、父親がわり
として、ヤスさんとアキラを支えます。彼ら、彼女らの心根のやさしさも見どころ。
角川文庫 読者投票 「感動する作品」部門:第1位。 2013年ドラマ化。 オススメ度:8.2
おおかみこどもの雨と雪 (細田 守著、角川文庫)
作品の紹介
花は、大学2年生のとき、運命の恋をする。 誠実でやさしい彼は、天涯孤独の花にとってかけがえのない
存在となる。 しかし、彼は、おおかみ男だった、、、。
彼の告白を聞いても、花は、彼と生きていく決意をする。 やがて、雪という女の子と、一つ違いの雨という
男の子が生まれるが、彼は、突然、この世を去る、、、。
一人残された花は、時々おおかみに変身する子どもたちに頭を痛めながらも、健気に子どもたちを育てる。
しかし、都会暮らしに限界を感じ、彼のふるさとで田舎暮らしを始める。 野山に囲まれた恵まれた環境の
中で、雪はのびのびと育つが、雨は内向的な性格のままだった。
やがて、子どもたちは小学校に進学。 雪は、野性が抜けて、人間の女の子らしくなっていくのに対して、
雨は、物静かながらも、徐々に野性の血が目覚めていく、、、、、、。
2012年7月映画化。 映画がヒットし、あまりにも評判がいいので、思わず、原作を手にとりました。
小説も、映画の細田監督が書いていたので、、、。 とは言え、個人的には、この作品は、映画で観たほうが
いいのだろうなぁと思いました(なんとなくですけど)。 いろいろと考えさせられ、全編、愛情にあふれた
すばらしい作品であるとは思いますが。
「ダ・ヴィンチ」BOOK OF THE YEAR 2012 小説ランキング:第17位。 オススメ度:7.5
さびしい女神 (仁木 英之著、新潮文庫)
作品の紹介
正式タイトルは「さびしい女神 僕僕先生」。「僕僕先生」シリーズの第四作。
美少女仙人、僕僕と弟子で人間の青年、王弁の奇想天外な旅を描くファンタジー。
旅の途中で危機を救った苗(ミャオ)族の姫、蚕(さん)嬢と双子の兄弟、引飛虎(いんひこ)、推飛虎(すいひこ)
とともに、僕僕一行は、彼らの故郷、峰麓苗に向かう。
蚕嬢は、峰麓苗に豊かな水をもたらすために神を祭る巫女だったが、戒めを破ったために、蚕の姿にされて
しまい、水源が枯れかかっていた。 王弁は、解決策を探るべく神の社に向かい、旱(ひでり)の女神、魃(ばつ)に
出会う。 魃は、その力があまりにも強大であるため、父である黄帝により、峰麓苗に封印されていた。
王弁は、魃が暮らせる場所を探すために、かつて魃と戦った古の神に会いに行く、、、、、、。
本作では、王弁が主人公で、僕僕は、終盤でやっとステージにあがるという趣向です。 とは言え、作品のクオリ
ティーは高く、シリーズ最高のデキだと評価するファンもいるのでは?
長く付き合いたいと思える本シリーズの次回作に期待大です。
「僕僕先生」シリーズ1〜3のブックレビューはコチラ。
オススメ度:8.5
あるキング (伊坂 幸太郎著、徳間文庫)
作品の紹介
東北のプロ野球チーム、仙醍(せんだい)キングスは、最下位が定位置の弱小チーム。
そんなチームの大ファンである夫婦が男の子を授かる。 将来、息子が仙醍キングスで活躍することを
夢見る両親は、その子を、王求(おうく)と名付けた。
王求は、体格に恵まれただけでなく、ストイックな姿勢で野球に取り組む。 小学校の頃には、天才の
片鱗を十分に見せ始めるが、同時に、彼を孤独な存在にしていく。
やがて、父親が王求のために殺人を犯し、彼のプロ入りの夢は消えたかに見えたが、テスト入団で晴れて
キングスの一員となる。 プロでも圧倒的な打撃を見せる王求だったが、運命の時が近づいていた、、、。
いつもの伊坂作品とは、ちょっと違うテイストですが、著者独特の軽妙なタッチや不思議な世界観は健在。
この作品は、シェークスピアの「マクベス」をうまく取り込んでいて、有名な「Fair is foul, and foul is fair」という
フレーズが何度も出てきます。 「フェア」と「ファウル」が(本来の意味以外に)野球用語でもあるところが
おもしろいというか、うまいなぁと思いました。
「ダ・ヴィンチ」BOOK OF THE YEAR 2012 文庫ランキング:第20位。 オススメ度:7.8
アウトバーン (深町 秋生著、幻冬舎文庫)
作品の紹介
正式タイトルは「アウトバーン 組織犯罪対策課 八神瑛子」。
上野署の刑事、八神瑛子、36歳。 三年前に結婚間もない夫を亡くし、妊娠四ヶ月だった瑛子も流産してしまう。
それ以来、彼女は人が変ったように捜査に打ち込み、暴力団との情報交換も厭わないハードな刑事となった。
署内ではエース級の活躍を見せているが、キャリア組の署長は、瑛子のことを危険分子と見なしている。
上野署管内で、千波組組長の娘の女子大生が刺殺され、続いて、中国人女性が刺殺される。
千波組でも犯人を追っており、若頭補佐の戸塚が瑛子に接触を図る。 瑛子は裏社会に生きる中国人の女性実業家
の協力で事件の核心に少しずつ近づいていくが、ハードな局面が次々と訪れる、、、。
よく練られた構成。 シリーズ化にも納得。 オススメ度:8.2
蒼林堂古書店へようこそ (乾 くるみ著、徳間文庫)
作品の紹介
14編を収録した連作短編集(名作ミステリの紹介コラムも14編収録)。
ミステリ専門の蒼林堂古書店の店長、林 雅賀、39歳。店で100円以上の売買をしてくれた客にコーヒーを
ふるまうサービスをしている。日曜日にはコーヒー目当てで常連客が集う。店長の高校の同級生、大村 龍雄。
蒼林堂古書店と同じ商店街の電器店の息子、柴田 五葉、高校一年生。そして、小学校の新米教師、茅原
しのぶ、24歳。やがて、柴田の高校の同級生、木梨 潤一も常連の仲間に加わる。
5人は、日曜の午後、ミステリ談義をしたり、日常の謎の謎解きをして、盛り上がる。
一年後、茅原しのぶが、ずっとしかけていたメッセージの謎が明らかになり、、、、、、。
人気の「ビブリア古書堂の事件手帖」と同じジャンルの作品と思いきや、「ビブリア」のように古書にまつわる
事件の謎解きを描いた作品ではありません。話は、蒼林古書堂の中でしか進んでいきません。ミステリ好きの
5人の会話が、この作品の中心であり、謎解きも、ライトなものが中心。斬新なミステリを次々と書いてきた
著者が、肩の力を抜いて書いたライトなライトなミステリ作品。
各編の後に出てくる名作ミステリ紹介コラムは、ミステリ好きの人には、とても参考になるはず。
オススメ度:7.5
るり姉(ねえ) (椰月 美智子著、双葉文庫)
作品の紹介
高1のさつき、中3のみやこ、小6のみのりの三姉妹は、母の妹、るり子が大好きである。
天真爛漫で、豊かな感性を持ち、子ども好きで、感激屋のるり姉(ねえ)。
母とは4歳しか違わないが、るり子叔母さんではなく、るり姉(ねえ)と呼ぶ。
しかし、るり姉が突然、重い病にかかり、入院する、、、、、、。
物語は、5つの章だてで、第一章がるり子が発病した夏、第二章が発病前の春、第三章が前年の冬、
第四章が前年の秋、そして、第五章が四年後の春を描いています。
語り手は、章ごとに三姉妹とるり子の夫、そして、三姉妹の母という構成。
笑いと涙と愛と感動がいっぱいつまった佳作。読後感もすごくよかったです。
「本の雑誌」2009年度上半期エンタメ部門:第1位。 オススメ度:8
私たちの屋根に降る静かな星 (楡井 亜木子著、ハルキ文庫)
作品の紹介
りりかは35歳。 29歳で結婚した夫を若い女にとられ、離婚を決意。 人生をやり直すべく、故郷で
仕事探しと家探しを始める。 そんなりりかに救いの手を差し伸べてくれたのは、高校時代の友人、
武藤だった。 武藤は、りりかに仕事を紹介してくれたばかりか、一緒に住まないかと誘ってくれた。
一瞬、とまどいを覚えたものの、武藤の高校時代の友人、桜庭も、りりかと同じような経緯で同居して
いると知り、りりかは、武藤の好意に甘えることにする。
こうして、武藤の祖父が残してくれた三階建ての一軒家で、男二人女一人の共同生活が始まる。
武藤は、高校時代と同様、りりかにやさしく接してくれた。 離婚の傷みは、まだ心に残っていたが、
武藤の明るさがりりかのこころをほぐし、生きる自信と勇気を取り戻していく。
もう一人の同居人、桜庭は塾で英語の講師をしており、りりかと武藤よりも4歳上の物静かな男。
りりかは、最初、桜庭に歓迎されていないのではないかと心配になるが、倒れた時に介抱してもらった
ことがきっかけになり、次第に打ち解けていく。
お互いを思いやり、三人がこよなく愛する酒が潤滑油になり、ふしぎな共同生活は順調に進んでいく。
しかし、武藤も、桜庭も、心に小さくはない闇を抱えていた、、、、、、。
トレンディな男女の共同生活を描いた小説ではありません。 一見、社交的な武藤が、不器用なりりかと
桜庭をサポートするという役回りに見えるけど、そんな単純な図式でもなく。 男女間に友情は成立する
のかという永遠のテーマを声高にうたっているわけでもなく。 ともすれば壊れそうな心を持った三人が
お互いを思いやる心根をやわらかく描いた物語でした。 個人的には、かなり共感できたお話。
「本の雑誌」2012年度文庫 恋愛小説部門:ベスト10作品。 オススメ度:8.2
なでしこ御用帖 (宇江佐 真理著、集英社文庫)
作品の紹介
江戸、八丁堀の町医者、麦倉洞雄の娘、お紺は17歳。 父の手伝いをし、患者からは「なでしこ」と
呼ばれている。 楚々とした外見で、気持ちのやさしい娘だが、言いたいことははっきり言う。そして
めっぽう酒に強く、正義感も強い。 岡っ引きをしていた祖父の血を受け継いだのか、町の事件に
首を突っ込んでしまう。 そして、鋭い感性で事件を解決に導いていく。
そんなお紺が同時に二人の男から求婚され、悩んだ末に彼女が出した結論とは、、、、、、。
六編の連作短編集の体裁をとった作品。
まっすぐな心根の主人公、そして、お紺をやさしく見守る家族、なじみの岡っ引き、金蔵。
小さな事件やさざ波は起こるけれど、人が人を想い暮らしていけることの幸せがあふれ出す作品。
主人公のなでしこことお紺は、宇江佐 真理さんの名作「斬られ権佐」の孫という設定。
「斬られ権佐」を読んでいなくても、だいじょうぶですが、この本を読んだ後でもいいので、ぜひ手にして
ほしい一作です。
「斬られ権佐」のブックレビューはコチラ。
「本の雑誌」2012年度 文庫 時代小説部門:第10位。 オススメ度:8.2
漂泊 (堂場 瞬一著、中公文庫)
作品の紹介
正式タイトルは「漂泊 警視庁失踪課 高城賢吾」。シリーズ第四作。
失踪課の刑事、高城は、部下と飲んだ帰りに火事に巻きこまれる。 現場検証で、火災現場であるバーから
二人の死体が見つかる。 一人はバーのマスターで、もう一人は、身元不明だった。 しかも、マスターは、
撲殺され、身元不明の死体も、背中を刺されていた。 やがて、身元不明の死体は、作家の藤島のものである
可能性が高まる。 捜査を進めていくと、藤島は、住居を引き払い、カードも携帯電話も解約し、預金もすべて
おろしていたことがわかる。 しかし、死体は藤島ではなく、藤島の高校時代の友人、村上のものだった。
村上は、20歳で新人賞をとり、デビューしたが、その後、小説を書けなくなり、現在は、食品会社に勤める
サラリーマンをしていた。 しかも、事件のあったバーで、藤島と会っていた。
やがて、藤島には、難病の恋人がおり、彼女の口座に全財産を移していたことが明らかになる、、、。
地に足がついた作品。 とは言え、地道な捜査が作品の本線で、警察小説好きな人向けの作品かも。
構成はしっかりしていたんだけど、ややドライブ感に欠ける印象。 オススメ度:7.2
交渉人 爆弾魔 (五十嵐 貴久著、幻冬舎文庫)
作品の紹介
「交渉人」遠野 麻衣子シリーズの第二作。
警視庁 広報課の警部、遠野 麻衣子の携帯電話に「シヴァ」と名乗る男から連絡が入る。
シヴァは、十年前に地下鉄爆破テロ事件を起こした「宇宙真理の会」の教祖、御厨 徹の釈放を要求する。
「交渉人」としての経歴がある麻衣子に、警視庁との交渉にあたるよう指示した。そして、麻衣子の目の
前で銀座の交番を爆破。警官一名が犠牲になる。
警視庁は、神尾副総監の指示のもと、直ちに長谷川刑事部長を本部長とする捜査本部を設置。麻衣子も
特殊犯捜査係の島本警部とともに捜査本部に加わる。捜査本部では、直ちにシヴァの捜索を開始。同時に
都内の警官数千人を動員し、訓練の名目で、爆弾の捜査に取りかかる。
麻衣子の撮影した、シヴァと思われる不審人物の写真により、シヴァは、宇宙真理の会の脱会者、高橋
隆也であることがわかるが、まもなく高橋の死体が発見される。捜査本部は、高橋を自殺を判断し、事件
終結を宣言するが、高橋はシヴァではなく、ほんとうのシヴァが大規模な爆破を計画していた、、、、、、。
ミステリーとしては一級品。読み応えがありました。しかし、第一作と比べて「交渉人」の真髄を描く見どころ
が少ないように感じました。 オススメ度:8
剣客商売 二 辻斬り (池波 正太郎著、新潮文庫)
作品の紹介
名作「剣客商売」シリーズの第二作。 表題作(「辻斬り」)を含む計七編を収録した連作短編集。
徳川十代将軍、家治の時代のお話。 稀代の剣の名手、秋山小兵衛は60歳。 表向きは気ままな隠居の
日々。 息子の大治郎は25歳。 剣客商売の道を歩み始めたばかり。
そんな親子が、悪者を懲らしめたり、人助けをしたり、事件を解決したりするさまを描いた物語。
老中、田沼意次の庶子、佐々木三冬の紹介で、粂太郎が大治郎の初めての弟子となる。 続いて、大治郎は
田沼家でも剣を教えることになる。 一方、小兵衛は、退屈しのぎと言いながら、好奇心をおさえることができず
あちらこちらのめんどうに首を突っ込んでいく、、、。
「剣客商売」のブックレビューはコチラ。
オススメ度:8
剣客商売 三 陽炎の男 (池波 正太郎著、新潮文庫)
作品の紹介
「剣客商売」シリーズの第三作。 表題作(「陽炎の男」)を含む計七編を収録した連作短編集。
秋山小兵衛の息子、大治郎も次第に剣客らしくなっていきます。 そして、佐々木三冬の憧れの対象も、次第に
小兵衛から大治郎にうつっていくのですが、当の大治郎は、それには気づいていない様子。
「剣客商売」のブックレビューはコチラ。
オススメ度:8.2
剣客商売 四 天魔 (池波 正太郎著、新潮文庫)
作品の紹介
「剣客商売」シリーズの第四作。 表題作(「天魔」)を含む計八編を収録した連作短編集。
ますます頼もしくなる大治郎の姿が印象的な巻。 もちろん、父の小兵衛の剣客ぶりは健在。
「剣客商売」のブックレビューはコチラ。
オススメ度:8.2
剣客商売 五 白い鬼 (池波 正太郎著、新潮文庫)
作品の紹介
「剣客商売」シリーズの第五作。 表題作(「白い鬼」)を含む計七編を収録した連作短編集。
大治郎の気持ちも次第に三冬に傾いていくが、そのことを、まだ三冬は知らない。 そんな折、三冬に
縁談が持ち込まれる。 小兵衛は、息子のためにひと肌脱ごうとする、、、、、、。
「剣客商売」のブックレビューはコチラ。
オススメ度:8
剣客商売 六 新妻 (池波 正太郎著、新潮文庫)
作品の紹介
「剣客商売」シリーズの第六作。 表題作(「新妻」)を含む計七編を収録した連作短編集。
三冬が抜け荷の事件に巻き込まれ、誘拐される。 父、小兵衛が不在の中、大治郎は、愛する三冬を無事
救出する。 三冬の父、田沼 意次から「三冬を嫁にもらってほしい」と懇願され、ついに大治郎は三冬と
結ばれる。 ここまで(一巻〜六巻)の中で、いちばんおもしろいと思った巻。
「剣客商売」のブックレビューはコチラ。
オススメ度:8.5
剣客商売 七 隠れ蓑 (池波 正太郎著、新潮文庫)
作品の紹介
「剣客商売」シリーズの第七作。 表題作(「隠れ蓑」)を含む計七編を収録した連作短編集。
大治郎に二人目の弟子ができる。 二十五歳の笹野 新五郎は、大治郎のもとに来たばかりのころは殺気が
みなぎっていたが、修行を重ねるうちに、殺気が消えていく。 しかし、密かに新五郎の命を狙う者たちがいた。
小兵衛が事の始末をつけ、新五郎は、晴れやかな心持ちで、剣の道に生きる決意をする。
七巻に続き、父の章も、息子の章も、読み応えのある話が詰まった巻。
「剣客商売」のブックレビューはコチラ。
オススメ度:8.2
剣客商売 八 狂乱 (池波 正太郎著、新潮文庫)
作品の紹介
「剣客商売」シリーズの第八作。 表題作(「狂乱」)を含む計六編を収録した連作短編集。
三冬が妊娠する。 小兵衛や弟子の新五郎は、それに気付くが、当の大治郎のみ気付かぬ始末。
表題作「狂乱」は、強すぎるがゆえに周りからうとまれ、孤独に陥る男の悲劇を描いた一作。
小兵衛が、その胸中を思いやり、手を差し伸べるが、一足遅く、せつない最期を迎える。
「剣客商売」全十六巻の折り返しまで来ました。やっと折り返しというより、あっという間に読んで
しまったという感じ。
「剣客商売」のブックレビューはコチラ。
オススメ度:8.2
剣客商売 九 待ち伏せ (池波 正太郎著、新潮文庫)
作品の紹介
「剣客商売」シリーズの第九作。 表題作(「待ち伏せ」)を含む計七編を収録した連作短編集。
表題作「待ち伏せ」は、大治郎が親の敵(かたき)と間違えられて、襲撃されるところから始まる。
当然、襲撃は失敗に終わるが、大治郎は、自分が間違えられた人物、佐々木を突き止める。
しかし、佐々木は、意外な人物の身代わりとなり、敵として追われていた、、、。
若き日の小兵衛を描いた異色の一話「或る日の小兵衛」も収録。
「剣客商売」のブックレビューはコチラ。
オススメ度:8.2
剣客商売 十 春の嵐 (池波 正太郎著、新潮文庫)
作品の紹介
「剣客商売」シリーズの第十作。 シリーズ初の長編。
大治郎の名を騙(かた)り、辻斬りを繰り返す頭巾の男。 犠牲者は、田沼意次と松平定信の家臣ばかり。
大治郎は、外出を禁じられ、小兵衛は、さっそく御用聞きの弥七と手下の徳次郎の力を借りて、捜査を
始める。 やがて、大治郎の嫌疑は晴れるが、田沼意次と対立する松平定信は、大治郎の身柄を引き渡す
よう執拗に要求する。 小兵衛を慕う道場主たちも捜査に協力し、次第に事件の核心に近づいていくが、、、。
いつもは飄々としている小兵衛も、今回ばかりは、苦悩の色を隠せず、途方に暮れることもしばしば。
緊迫感のある展開ではあったけど、物語全体を覆うトーンは、やや重苦しいものでした。
「剣客商売」のブックレビューはコチラ。
オススメ度:8
剣客商売 十一 勝負 (池波 正太郎著、新潮文庫)
作品の紹介
「剣客商売」シリーズの第十一作。 表題作(「勝負」)を含む計七編を収録した連作短編集。
大治郎と三冬の間に男の子が生まれ、小太郎と名付けられる。 大治郎の剣客としての評判も高まり、
旗本の子弟七名が門人となる。
表題作の「勝負」は、大治郎に勝てば仕官がかなう相手と試合することになり、父の小兵衛からも
妻の三冬から、負けてやるように言われ、とまどう大治郎を描いた一作。
「剣客商売」のブックレビューはコチラ。
オススメ度:8
剣客商売 十二 十番斬り (池波 正太郎著、新潮文庫)
作品の紹介
「剣客商売」シリーズの第十二作。 表題作(「十番斬り」)を含む計七編を収録した連作短編集。
表題作の「十番斬り」は、死期を迎えた剣客が、世話になった村への恩返しにと、無頼浪人を一掃
すべく最後の力を振りしぼるという話。助太刀をする小兵衛の剣も冴えわたる。
他にも、敵同士の二人の友の間で揺れる大治郎の葛藤を描いた「逃げる人」、小兵衛がかつて成敗
した旗本の息子との縁を描いた「罪ほろぼし」など、秀作揃いの巻。
「剣客商売」のブックレビューはコチラ。
オススメ度:8.5
剣客商売 十三 波紋 (池波 正太郎著、新潮文庫)
作品の紹介
「剣客商売」シリーズの第十三作。 表題作(「波紋」)を含む計五編を収録した連作短編集。
表題作の「波紋」は、またしても大治郎が命を狙われた事件の顛末を描いた佳作。
他にも、旧友を想う小兵衛の心根のすばらしさを描いた「夕紅大川橋」を収録。
「剣客商売」のブックレビューはコチラ。
オススメ度:8
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