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読書感想文2015 part 3
「読書感想文2015」 part3は、5月〜6月の読書録です。
↓ Click NOVEL mark !
初恋ソムリエ (初野 晴著、角川文庫)
作品の紹介
人気の「ハルチカ」シリーズの第二作。
幼なじみのチカとハルタは、高校で再会し、部員5人と廃部寸前だった吹奏楽部を1年で建て
直し、部員を17人まで増やす。 中でも実力のある吹奏楽経験者たちの身に起きた事件を解決し、
入部まで持ち込んだ功績が大きかった。 しかし、チカもハルタも部の顧問の草壁先生(男性)
に片思い中という奇妙な三角関係に悩んでいる、、、(ここまでが第一作)。
2年に進級したチカとハルタは、新入部員6人を確保し、いよいよ目標である全国コンクールに
向けて始動する。 さらなるトラブルが2人にふりかかるが、なんとかクリアし、ハイレベルな
吹奏楽経験者たちに入部してもらうことに成功する、、、。
群を抜くリーダビリティー。 人物造形もグッド。 一気読みのおもしろさ。
第一作を読んでから4年が経ち、この第二作を手にしたわけですが、第一作より大幅にパワー
した印象。 青春小説としても、ライトなミステリー小説としても、超一級品。
シリーズ第一作「退出ゲーム」のブックレビューはコチラ。
オススメ度:8.6
有頂天家族 (森見 登美彦著、幻冬舎文庫)
作品の紹介
京の狸の名門、下鴨家。 狸界の頭領、総一郎亡き後、四人の息子たちは成長するにつれ、
それぞれ父親の器量の一部分しか受け継がれていないことがわかる。
次の狸界の頭領を決める選挙に長男、矢一郎が立候補するが、父の弟、夷川(えびすがわ)
早雲が立ちはだかる。 三男、矢三郎も、兄を助け下鴨家復権をかけて奮闘するが、さまざま
なトラブルに巻き込まれる。 やがて、父の死の真相が明らかになり、いよいよ次の頭領を決める
日を迎える、、、、、、。
えっ、狸のお話?と思うかもしれませんが、主人公の矢三郎はじめ、母親や兄弟たちは、ふだん
人間の姿をしているので、ふつうの小説に近い感覚で読み進められます。
とはいえ、カエルに姿を変えて隠遁生活を送っている次男の矢二郎、落ちぶれた天狗の赤玉
先生、人間でありながら天狗の能力を身につけた美女、弁天など、ファンタジー色豊かなキャラ
クターもたくさん登場。 笑って、しんみりして、感動できる大作。
2008年度「本屋大賞」第3位。 2013年アニメ化。 オススメ度:8.5
きつねのはなし (森見 登美彦著、新潮社文庫)
作品の紹介
表題作(「きつねのはなし」)を含む計4編を収録。
表題作は、古道具屋でバイトを始めた大学生が、きつねの面をめぐり、幻想的な体験をすると
いうお話。 この世のものではない力を持つ古道具屋の顧客、天城に翻弄され、やがて恋人が
失踪するが、古道具屋の女主人、ナツメが彼を救う、、、。 全編を覆う幻想的なイメージは、
不気味ではあるけれど、リーダビリティーの高い作品。
表題作以外の3編も、幻想的でダークサイドを描いた作品がラインナップされています。
そして、ゆるやかではあるけれど、4つの作品はつながっています。 オススメ度:8
年下の男の子 (五十嵐 貴久著、実業之日本社文庫)
作品の紹介
乳業メーカー 広報課勤務の川村晶子、37歳。 マンションを購入したものの恋人はいない。
マンションの契約翌日、新製品の健康ドリンクのフリーペーパーに価格が印刷されていないことが発覚。
配布を翌日に控え、晶子は、ピーアール会社の23歳の契約社員、児島と徹夜シール貼り作業を敢行。
やがて児島が晶子に告白。 14歳の年齢差に、晶子は最初、とりあわなかったが、やがて児島への愛に
気づき、交際をスタートするが、、、、、、。
女性向きのお話かもしれません。 でも、男性が読んでも、おもしろいはず。 物語のラストも爽快感が
あってグッド。 それにしても、著者の五十嵐さんは、ミステリーから時代物、恋愛小説まで、ジャンルを
問わない作家で、読むたびに驚かされます。 オススメ度:8.1
沖で待つ (絲山 秋子著、文春文庫)
作品の紹介
表題作(「沖で待つ」)を含む計3編の短編を収録。
「沖で待つ」は、東京の大学を出て就職で福岡に着任した同期の男女の友情を描いたお話。
入社後まもなく男性は地元の女性と結婚。 数年後、女性も埼玉に転勤。 何年かして、男性も東京に
転勤になり、再会した二人は、ある約束をする。 やがて、不慮の事故で男性が亡くなり、女性は約束
を果たすべく、男性の部屋に侵入する、、、、、、。
総合職として住宅設備メーカーで働いていた著者の喜怒哀楽が詰め込まれた作品。
表題作は2005年度「芥川賞」受賞作。 オススメ度:8
卵の緒 (瀬尾 まいこ著、新潮文庫)
作品の紹介
表題作(「卵の緒」)と「7's blood」の2編を収録。
表題作は、18歳で母となった君子と育生の親子の物語。 育生が4年生のときに始まり、6年生までを
描いています。 育生が5年生のとき、君子は3歳年上の上司、朝井に恋をする。 朝井は、君子と育生
との夕食のときを重ね、育生が6年生になるころ、君子と結婚する。 やがて、君子が妊娠し、育生に
とてもたいせつな秘密を打ち明ける、、、、、、。
「7's blood」は、高3の七子と小6の七生(ななお)の異母姉弟(きょうだい)の物語。
七子の母は、七生の母が傷害の罪で刑務所に入ったことを知り、なかば強引に七生を引き取る。
七生は、7年前に亡くなった七子の父の愛人の子どもだった。 七子の母は、七生を引き取って5日後に
入院し、異母姉弟だけの生活が始まる。 2人は徐々に心の距離を縮めていくが、数ヵ月後、七子の
母が亡くなる。 七子と七生は、2人だけの生活を続けるが、、、、、、。
二作とも、人と人の絆のすばらしさを描いた秀作。 読むと、きっとやさしい気持ちになれます。
表題作は2001年度「坊ちゃん文学賞」大賞受賞作。 オススメ度:8.2
ALONE TOGETHER (本多 孝好著、角川文庫)
作品の紹介
柳瀬は不登校児のフリースクールでバイトをしている21歳。 3年前、入学して数ヵ月後に医大を
退学した。 ある日、医大の教授から呼び出しを受け、教授の自宅を訪れる。 教授は、自分が
安楽死させた女性の14歳の娘を守ってほしいと柳瀬に依頼する。
柳瀬は、その娘、立花サクラと会うが、彼女は、守ってもらう必要などないと突き放す、、、。
柳瀬は、他人の波長とシンクロする特殊な能力でサクラの心を読もうとするが、それも気づかれる。
とは言え、2人の距離は、少しずつ縮まり、教授の願いに応えられるかと安心した矢先、サクラが
失踪する、、、。 柳瀬は、ある確信を得て、サクラのもとへ向かう、、、。
著者らしい繊細なつくりだけど、全編、さみしい雰囲気が漂っており、主人公とサクラの再生も、
救いとしてやや弱いかも。 オススメ度:7.8
とっても不幸な幸運 (畠中 恵著、双葉文庫)
作品の紹介
計6編を収録した連作短編集。
新宿にある「酒場」という名のお店が舞台。 オーナー店長の洋介は35歳。
再婚した妻に先立たれ、中2の義理の娘、のり子と暮らし始めた。
店は、連夜、クセモノの常連客たちでにぎわっている。 そんな洋介たちのもとに、のり子が
100円ショップで買った「とっても不幸な幸運」という名の缶を持ち込んだ、、、。
のり子、「酒場」のアルバイト、常連客たちが、その缶を開けると、今は亡き母の幻影、思い出
の曲、昔の親友の姿など、さまざまなものが現れる、、、。
洋介の最初の結婚と養父とのエピソードを綴った最終話は、かなりのできかと思ったけど、
残りの5話は、ふつうのレベル。 最終話だけでもひとつの小説になるのになあ、、、。
「しゃばけ」シリーズの著者によるファンタジー的ミステリー。 オススメ度:7.5
笑う招き猫 (山本 幸久著、文春文庫)
作品の紹介
駆け出しの漫才コンビ、アカコとヒトミ。 2人は28歳。 大学の同級生で、2年前にコンビを結成。
初ライブはまったく受けずに大失敗。 しかし、マネージャーの永吉に支えられて、少しずつ力を
つけ、NHKの新人発掘番組で勝ち抜きを続ける、、、。
著者お得意の「お仕事小説」の第一作。 リアリティーとフィクションのバランスが絶妙な感じ。
アカコとヒトミのその後は、本作の一年後に出版された短編集「はなうた日和」(文庫版)に少し
出てきます。 「はなうた日和」のブックレビューはコチラ。
「小説すばる新人賞」受賞作にして、著者のデビュー作。 オススメ度:7.7
プロメテウスの涙 (乾 ルカ著、文春文庫)
作品の紹介
35歳の精神科開業医の涼子のもとに、小学校時代の親友、小百合が9歳の娘、あや香を伴って
訪れる。 あや香は、突発的な原因不明のトランス状態に悩まされていた。 涼子は、大学時代
の親友でアメリカで医師として活躍する祐美に助言を求める、、、。
同じ頃、祐美は、バージニア州の医療刑務所で不死の死刑囚、S16と出会う。 S16は、過去、何回
かの死刑執行でも死ななかった、、、。 祐美は、身体中に転移したガンに苦しむS16と向き合う
うち、S16の安楽死を試みるが、いずれも失敗に終わる、、、。
涼子は、あや香と同じ症状を発症した患者を調べた海外の研究者から詳細なデータを入手し、祐美
と共有する。 2人は、過去の患者のデータに驚くべき共通点を見出す。 さらに、祐美は、S16との
つながりにもたどり着き、急遽、帰国。 そして、涼子、あや香、小百合を伴って、アメリカのS16
のもとへ向かう、、、、、、。
ミステリーのつもりで読み始めたら、ホラー・ミステリーでした。 発想は悪くないと思うのだけれど、
読者の何割がフィクションとして受け入れられたか、やや疑問。 オススメ度:7.5
夕霞の女 (千野 隆司著、宝島文庫)
作品の紹介
正式タイトルは「神楽坂化粧暦 夕霞の女」。
表題作(「夕霞の女」)を含む計4編を収録した連作短編集。
江戸日本橋の商家の娘、登世(とせ)は、十九で武家に嫁ぐが、五年間、子宝に恵まれなかった。
一年前、実家の店がつぶれ、仕送りがなくなったことが原因で離縁を言い渡される。
登世は、地回りの親分をしている叔父の口利きで神楽坂の女郎屋「夕霞」で女中の仕事を始め、
化粧の腕で、店の女たちを美しく変身させていく。 そして、女たちに降りかかる問題を次々と
解決し、過去を振り切り、今の境遇で生きていく気持ちをかためる。 気がつくと、登世の心には
いつしか、同じ店で働く男衆の定松がすんでいた。 定松も、登世と同様、なにか過去の事情を
抱えて生きていた、、、、、、。
決して強い人間ではないけど、懸命に新しい人生を生きようとする主人公の心根の描き方が秀逸。
もしかしたら、シリーズ化されるかも。 オススメ度:8
君微笑めば (風野 真知雄著、角川文庫)
作品の紹介
正式タイトルは「君微笑めば 姫は、三十一 3」。 人気シリーズ「姫は、三十一」の第三作。
平戸藩の元藩主、松浦静山の娘、静湖(せいこ)。 才色兼備の姫ながら、縁談相手が病気になったり、
事故にあったりで、二十四を最後に縁談が途絶え、三十一になってしまった。 ところが、行きつけの
飲み屋の主人から「今年は三十八万四千年に一度のモテ年になる」と予言される。 はたして、静湖の
まわりの旗本、役者、同心、学者、戯作者、大店の主人などが、次々と彼女に好意を寄せ始める、、、。
蔵前の札差、薩摩屋の蔵から三千両が盗まれる。 犯人は、近頃評判の義賊、怪盗一寸小僧。
同じ頃、静湖の友だちで三十一の多歌子姫が、謎の暗号とともに駆け落ちするという書置きを残して姿を
消す、、、。 静湖は、独特の勘とひらめき、彼女に好意を寄せる男たちの協力により、ふたつの事件を
無事解決するのだが、、、肝心の恋のほうは、一向に進展を見せない、、、。
事件は解決する。 好意を寄せる男は増えていく。 けれど、これはと想う男はいない。
三十一にしてぜいたくな悩みというふつうの枠にとらわれず、自由なこころで生きていく静湖の心根が
この作品の魅力なのかもしれません。
「姫は、三十一 2」のブックレビューはコチラ。
オススメ度:7.8
妖談さかさ仏 (風野 真知雄著、角川文庫)
作品の紹介
正式タイトルは「耳袋秘帖 妖談さかさ仏」。 人気シリーズ「耳袋秘帖」の第四作。
「耳袋」とは、江戸の南町奉行、根岸肥前守が怪異な事件を綴った随筆の名前。
仏像専門の大盗賊「仏像庄右衛門」は、処刑直前に、手下の助けで脱獄に成功する。
根岸は、自由の身になった庄右衛門が次に狙う寺と仏像を特定すべく、家来の宮尾、同心の椀田などと
ともに、捜査を進める、、、。 一方、捜査と並行して、芸者の逆さ吊りの死体、逆さにした仏像を拝む宗教
など、ふしぎなことに遭遇する根岸たち。 これらは、庄右衛門の事件とつながるのか、、、。
いよいよ事件の核心に近づいた根岸は、庄右衛門の脱獄には、根岸の失脚をも企む闇の力が働いている
ことを知る、、、、、、。
大きな謎、小さな謎が次々と出てくる著者お得意の展開。 シリーズとしての安定感もグッド。
シリーズ第二作「妖談かみそり尼」のブックレビューはコチラ。
オススメ度:8
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