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読書感想文2017 part 6

「読書感想文2017」 part6は、11月〜12月の読書録です。

 ↓ Click NOVEL mark !
コメント  本日は、お日柄もよく (原田 マハ著、徳間文庫)   作品の紹介 

お気楽な27歳のOL、二ノ宮こと葉。 幼なじみで片思いの相手、今川厚志の結婚披露宴で、
伝説のスピーチライター、久遠久美のスピーチに感動する。 こと葉は、親友の披露宴の
スピーチのため、久美に弟子入りする。 久美の指導のおかげで、出色のスピーチができて
ほっとしたのも束の間、こと葉のスピーチを聴いていた社長が彼女を創立80周年プロジェクト
に異動させる。 このプロジェクトをサポートすることになったのが大手広告代理店の和田。
彼は業界で話題のコピーライターであり、同じくコピーライターとして売り出し中の厚志の
ライバルでもあった。 やがて、厚志が野党第一党の幹事長だった亡き父の遺志を継いで
衆議院選に立候補することになり、こと葉は、会社を辞めて厚志の選挙を手伝うことにする。
野党第一党のスピーチライター、久美とこと葉の前に立ちはだかるのは、首相の遠縁である
和田。 和田は厚志と同じ選挙区の与党議員のブレーンとして隙のない働きを見せる。
新妻の流産という苦難を乗り越え、懸命に選挙戦を戦う厚志は、こと葉のサポート、和田の
正義感によって見事当選を果たす。 和田への想いに気づくこと葉。 そして、久美は、新たな
活躍の場を求めて、アメリカに旅立つ、、、、、、。
著者の代表作「楽園のカンヴァス」に勝るとも劣らぬ傑作。 ことばの力、深さを改めて考え
させられる。 ことばを扱っている分、個人的には、本作の方が好み。 感涙必至。
オススメ度:8.7

コメント  カミングアウト (高殿 円著、徳間文庫)   作品の紹介 

コインロッカーに衣装を預けて三人の異なる人格を演じる17歳の女子高生、さちみ。
ロリィタ趣味を隠し、普通のOLを演じながら、新たな出会いを待つ29歳のリョウコ。
彩りのない毎日に倦み、ネットで知り合った男と会うことなった38歳の専業主婦、史緒。
結婚に踏み切れないまま歳を重ね、墓を買おうと考え始めている46歳の会社員、井原。
44年間、亭主関白な夫に尽くし、夫の定年を機に離婚を考えている63歳の主婦、初恵。
みんなそれぞれ家族や同僚に言えない秘密を抱えている。 そんな5人の関係が交差
し始め、化学反応を起こし、それぞれのカミングアウトの時を迎える、、、。
設定が秀逸。 自分自身の秘密を持て余し、カミングアウトできないまま、自分を追い
こんでいく5人をエンターテイメント色たっぷりに描いた傑作。 徐々に明かされていく
5人の関係も、ドライブ感たっぷりに描かれていて、リーダビリティーもばつぐん。
第一回「エキナカ書店大賞」第1位。 オススメ度:8.4

コメント  64(ロクヨン) 上 (横山 秀夫著、文春文庫)   作品の紹介 

D県警警務部広報室の広報官、三上義伸警視、46歳。 警察生活28年のほとんどを刑事
として過ごし、今も刑事部復帰を目論んでいる。 私生活では一人娘のあゆみが三か月前
から失踪中で、妻の美那子は精神的にまいっている。
記者クラブと交通事故加害者の匿名問題でもめる中、警察庁長官の視察が決定する。
視察の目的は、昭和64年に発生した県警史上最悪の「翔子ちゃん誘拐事件」、通称「ロク
ヨン」の被害者宅を訪問するというパフォーマンス。 しかし、被害者の父親、雨宮から
長官のの訪問は拒絶される。 記者たちは取材を拒否。 窮地に立たされた三上は、被害者
の父親がなぜ長官の訪問を拒否するのか捜査し始める。 自身が「ロクヨン」の担当だった
三上は、事件の担当だった刑事たちに直接、聞き込みを始めるが、刑事部長から緘口令が
徹底されており、とりつく島がない。 しかも、三上と同期で警務部の調査官、二渡も、三上
同様、「ロクヨン」関係者から聞き込みを続けていた。 やがて「幸田メモ」というキーワード
を知った三上は、当時の担当刑事に揺さぶりをかけ、ついに事件の裏に隠された刑事部の
重大なミスを知る。 それは、誘拐犯からの脅迫電話を録音に失敗するという信じられない
失態だった。 良心の呵責に耐えられなくなった幸田刑事は、当時の刑事部長に事実を知ら
せる報告書、通称幸田メモを上げるが、以来14年間、歴代の刑事部長たちによって、隠蔽され
続けていた、、、。 真実を知った三上は、再び、雨宮を訪問。 被害者の焼香をし、自然と
涙が頬を伝う。 この涙を見た雨宮は、警察庁長官の訪問を承諾する。
警察小説の雄である著者の久々の作品。 主人公、三上の葛藤が痛いくらいに描かれ、ぐい
ぐい話に引きこまれていく。 三上が次に起こす行動は何か。 二渡の謎の行動、そして警察庁
長官視察の真の狙いは何か。 下巻まで一気読みで突入。
2013年度「このミステリーがすごい!」国内編:第1位。 週刊文春 2012年「ミステリーベスト10」
国内部門:第1位。 2013年「本屋大賞」:第2位(ちなみにこの年の第1位は「海賊と呼ばれた男」)。
このほか、数々の文学賞で上位ランキング入りの名作。 オススメ度:8.3

コメント  64(ロクヨン) 下 (横山 秀夫著、文春文庫)   作品の紹介 

三上は、ついに刑事部と警務部との対立の原因を知る。 それは、D県警 刑事部長の席を
キャリアに明け渡すということだった。 刑事部と警務部の対立は深刻さを増し、三上は
両者の狭間で葛藤するが、どちらかの部署に加担するのではなく、事件の被害者に目を向け、
広報官としての職務を全うするという第三の選択肢を選ぶ。 やがて、刑事部のリークに
よる警務部の失態が新聞各紙で同時多発的にスクープとして掲載される。 三上は、記者
クラブで自らの進退を賭けて信念を語り、警察庁長官視察の取材を承諾させる。
長官視察の前日、「ロクヨン」に酷似した誘拐事件が発生。 しかし、警務部は捜査本部
から外され、三上も捜査本部に足を踏み入れることさえできない。 マスコミと報道協定を
結ぶにも、刑事部は被害者の氏名はおろか、最低限の情報しか出さない。 長官視察は中止。
三上は前線で指揮を執る捜査一課長の松岡からようやく被害者の氏名を聞き出し、記者会見
をセッティングする。 しかし、会見場に現れたのは、刑事部長ではなく、キャリアの捜査
二課長、落合だった。 被害者の名前すら知らされず、会場に送りだされた落合にまともな
会見ができるはずもなく、怒号がうずまく。 三上は事態を収拾すべく、再び松岡のもとへ
向かう。 身代金の受け渡しの時間が迫る中、松岡は三上を指揮車に同乗させ、捜査状況を
すべて見せる。 三上は、事件の進捗を20分遅れで記者会見場に伝えていく、、、。
やがて、松岡の示唆で三上は事件の犯人、そして「ロクヨン」の犯人にたどり着く、、、。
さすがは、警察小説の第一人者の渾身の作にして、数々の賞を総なめにした一作。
骨太であり、構成も見事の一言。 リーダビリティーも半端なく秀逸。 ミステリーの歴史に
残る一作。 迷わず、買い。
作品の特設サイトはこちら。 2016年映画化。  オススメ度:8.6

コメント  花まんま (朱川 湊人著、文春文庫)   作品の紹介 

表題作を含む計6編を収録した短編集。
昭和30年代〜40年代の大阪の下町を舞台に、子どもたちが体験したふしぎな体験、
せつない想いを描いた佳作。 幻想的でファンタジー系の作品も味わい深い。
2005年「直木賞」受賞作。 オススメ度:8.1

コメント  和菓子のアン (坂木 司著、光文社文庫)   作品の紹介 

梅本杏子、18歳。 150cm、57kg。 進学にも就職にも踏み切れないまま、高校を卒業。
雨宿りで入ったデパ地下で、アルバイト募集の貼り紙を目にして、和菓子舗みつ屋で
働き始める。 見た目はスマートな大人の女性、でも中身はおっさんの店長、椿。
イケメンなのに、中身は乙女系男子の店員、立花。 そして、見た目はかわいいのに
元ヤンの大学生アルバイト、桜井。 三人の個性的な同僚に恵まれ、やがて「アン」と
呼ばれるようになった杏子は、和菓子の奥深さ、販売のやりがいに目覚めていく、、、。
構造的には「お仕事小説」なんだけど、お客さんの言動から店長や立花が謎解きを
していくというミステリー要素も満載。 他にも、和菓子の蘊蓄やデパ地下の裏側など
読みどころもいろいろ。 個人的には立花の乙女キャラの人物造形がお気に入り。
オススメ度:8.2

コメント  もじゃもじゃ (渡辺 淳子著、光文社文庫)   作品の紹介 

大阪の小さな運送会社で事務として働く明美、28歳。 これまで付き合ったのは、ろく
でもない男ばかり。 市の無料結婚相談所に登録するも、いい出会いに恵まれない。
そんな中、結婚相談所から24歳のクリーニング店の店員、浩二を紹介される。
浩二は、もじゃもじゃ頭で牛乳好きの小太りの男。 悩んだ末に浩二との交際を断り、
別の男と交際を始めるが、やはり浩二のことが忘れられない、、、。
第一章が明美の視点、第二章が浩二の視点、そして第三章が結婚相談所の所長、
大栗の視点で話が進んでいく。 コミカルさとまじめさと人情話のバランスがグッド。
「小説宝石新人賞」受賞作を改題した作品「私を悩ますもじゃもじゃ頭」を収録。
2015年「本の雑誌」文庫 恋愛小説部門:ベスト10作品。 オススメ度:8

コメント  ふくわらい (西 加奈子著、朝日文庫)   作品の紹介 

書籍編集者の鳴木戸 定、25歳。 幼いころから、ふくわらいに夢中で、今でも他人の
顔のパーツを想像で入れ替える特技を持っている。
5歳で母を亡くした定は、冒険家で作家の父と世界中を旅して、人肉を食べる経験をする。
12歳のとき、ワニに襲われて絶命した父の火葬の際にも、父の肉を口にする。
友人もなく、恋愛経験もない定の話し相手は、かつての乳母、テーこと悦子だけだった。
まわりからロボットのようだと揶揄されながらも、定は、ひきこもりの作家、文壇の大御所、
中年プロレスラー作家相手に、そつなく仕事を進めている。
そんな中、街で偶然出会った盲目の男性に愛を告白され、編集部の後輩女性と友人となり、
定の定の毎日が少しずつ変わり始める、、、、、、。
まともな人が出てこない、強烈に独特な世界観をまとった作品。 好きか嫌いかは別として
ものすごく記憶に残る一作。 ただ、読了しない人もいるかも。
第1回「河合隼雄物語賞」受賞作。 紀伊國屋書店スタッフがおススメする「キノベス!2013」
1位。 2016年「本の雑誌」文庫 エンターテインメント部門:第7位。 オススメ度:8

コメント  悼む人(上) (天童 荒太著、文春文庫)   作品の紹介 

不慮の死を遂げた人々を悼むため、全国を放浪する坂築静人、32歳。
バツイチで、昔ながらの取材と記事にこだわる一匹狼の契約記者、蒔野、39歳。
末期癌に冒され、自宅で死を迎える準備をする静人の母、巡子、58歳。
夫のDVから逃れ、再婚したのも束の間、新しい夫から殺してくれと頼まれ、殺害。
四年の刑期を終えて、出所したばかりの倖世、28歳。
蒔野は、取材中、静人のことを知る。 やがて、静人の行為に反感を抱きつつも、
興味を抑えられなくなり、身辺を調べ始める。 そして、ついに静人の自宅を訪ね、
巡子と対面する、、、。
静人の妹、美汐は、静人の放浪と悼む行為が原因で一方的に婚約を破棄され、
シングルマザーになるという決意をする。 巡子は美汐をあたたかく見守り、静人
の帰りを待つ。 静人の従兄弟、怜司は巡子との結婚を
倖世の肩には、自らが手にかけて殺した夫、朔也が亡霊となってとりついている。
出所後、倖世は静人の行為に疑問を抱きつつも、やがて、彼と行動を共にし始める。
上巻は六章仕立て。 蒔野、巡子、倖世の順で一章ずつ二順する。
世界観が独特な作品。 静人に感情移入はできないものの、作品の世界に少しずつ
引きこまれていく感じ。
作品の特設サイトはこちら。  2009年「直木賞」受賞作。 2015年映画化。 オススメ度:8

コメント  悼む人(下) (天童 荒太著、文春文庫)   作品の紹介 

蒔野は、静人の影響を受け、事件で亡くなった被害者の生前の人となりを好意的に
とらえた記事を書くようになる。 この記事は、一時的に読者の支持を受けるが、
やがて支持を失う。 若いころから反目し合っていた父親の最期を看取ることを
かたくなに拒んできたものの、通夜と告別式を父の愛人、理々子とともにすませ、
遺骨を引き取る。 まもなく、蒔野に恨みを持つチンピラと少女から暴行を受け、
生き埋めにされるが、少女の最後の良心により、間一髪で救出される。
巡子は、来たるべき死に向けて、冷静に計画的にその時を迎える準備を進めていた。
夫、鷹彦の妹で無二の親友であるみのりに別れを告げ、両親の墓参りもすませる。
やがて、娘の美汐が、自宅で出産することを決意。 孫の出産までなんとか生き延び
ようと心を強く持つ。
倖世は、数か月、静人と行動を共にしていた。 やがて、静人は倖世を通して、朔也
の亡霊と会話する。 いったんは倖世と行動を共にすることを終わりにしようとするが、
まもなく二人は結ばれる。 そして、今度は、倖世の方から静人と別れ、自分も悼む人
になる決意をする、、、。
静人の実家では、いよいよ巡子の最期のときと美汐の出産のときが近づいていた、、、。
世の中の評価も高く、ひじょうに上質の作品であると思う。 リーダビリティーも高い。
しかし、終始、主人公を客観的に見ながら読み進めたのも事実。 感情移入できたら、
いい作品だと言うつもりはないが、この作品にシンクロできる人とそうでない人の
分かれ目は、そこにあるのではないかと思う。
下巻は四章。 蒔野、巡子、倖世の順で一章ずつ、そして、最終章はエピローグの
かたちで巡子の最期を描いている。
作品の特設サイトはこちら。  2009年「直木賞」受賞作。 2015年映画化。 オススメ度:8.1

コメント  聖域捜査 (安東 能明著、集英社文庫)   作品の紹介 

警視庁に入庁以来、地域課と交通課勤務だったが、刑事として活躍する夢を抱き続けた
40歳の結城警部が着任したのは、生活安全特捜隊。 刑事の象徴である捜査一課から
は軽く見られてしまう部署。 しかし、55歳の警部補、石井に支えられ、生活安全特捜隊
第二班12名を率いて奮闘する。 計5編を収録した連作短編集。 シリーズ第一作。
結城らが扱う事件は、援助交際、美人局、ゴミ屋敷、下着泥棒、散骨、DV、ぼったくり
バー、偽札など多彩。 しかも、事件と事件が意外な展開で結びつくという著者お得意
の構成も秀逸。 オススメ度:8.1

コメント  境界捜査 (安東 能明著、集英社文庫)   作品の紹介 

生活安全特捜隊第二班の班長、結城と部下の刑事たちの活躍を描いた連作短編集。
計4編を収録したシリーズ第二作。
結城警部は、警視庁生活安全特捜隊の班長に着任して2年目。 ベテラン警部補、石井、
中堅の巡査部長、小西、そして、新人の女性刑事、寺町らを率いて、多様な犯罪の捜査に
多忙な毎日。 家庭を顧みる時間にも恵まれない。
麻薬、ペットの死体遺棄、児童ポルノ、賭博。 第一作に続き、作中に登場する事件は、
これまでの警察小説、特に捜査一課が舞台の警察小説とは違って、かなりユニーク。
しかも、それぞれの事件の背後に別の事件もからんでいて、作品の奥行きもあり。
リーダビリティーも秀逸。 シリーズ化にも納得。 オススメ度:8.2

コメント  伴連れ (安東 能明著、新潮文庫)   作品の紹介 

「撃てない警官」、「出署せず」に続く柴崎警部シリーズの第三作。
綾瀬署 警務課の課長代理、柴崎警部。 キャリアの女性警視、坂元署長、たたき上げの
助川副署長のもと、事務方であるにも関わらず、事件の捜査にかりだされる日々。
本作も、柴崎の深い洞察力と緻密な捜査により、次々と事件が解決に向かう。
この巻では、柴崎は新人女性刑事の高野とコンビを組んで捜査に向かう。
そして、本庁に復職する話が持ち上がるが、元の企画課ではなく、広報課勤務だった。
柴崎は釈然とせず、断る気になるが、同時に今の仕事へのやりがいにも気付く。
高野という、ちょっと変わった刑事と柴崎とのコンビぶりが、この巻の見どころ。
上記の結城警部シリーズとともに、この柴崎警部シリーズも、引き続き読み続けたい上質
の作品。 第二作のブックレビューはこちら。  オススメ度:8.2

コメント  あなたの本 (誉田 哲也著、中公文庫)   作品の紹介 

表題作を含む計7編を収録した短編集。 SFあり、ファンタジーあり、ミステリーあり。
さまざまなジャンルを詰め合わせたバラエティ豊かな短編集。 この著者の短編集って
めずらしいと思う。 個性的な作品が揃っていたけど、ブラックなオチが多かったという
印象。 オススメ度:7.8

コメント  フォルトゥナの瞳 (百田 尚樹著、新潮文庫)   作品の紹介 

幼い頃に家族を火事で失い、施設で育った木山慎一郎、28歳。 友人も恋人もいないが、
社長の遠藤に気に入られ、腕のいい自動車塗装工として黙々と働いている。
しかし、突然、他人の死を視る能力を手に入れ、死を間近にした人を救おうとする。
まもなく、木山と同じ能力を持つ医師、黒川と知りあう。 黒川は木山に人の運命に干渉
しないように忠告する。 さらに、木山は、黒川から、この能力を使って人の命を救うと、
自分の寿命が短くなることを教えられる。
やがて、木山は遠藤の計らいで、独立。 そして、能力を使って、命を救ったことがきっかけ
で、携帯電話ショップの店員、葵との交際が始まる。 葵との交際は順調だったが、近々、
大きな列車事故で多数の死者が出ることを知ってしまう。 なんとか事故を未然に防ごうと
思い悩む木山は大きな決心をする、、、。
主人公のやさしすぎる性格に感情移入できないところもあったけど、リーダビリティーは秀逸。
ラストはせつない。 そして、物語の最後の最後に明かされる事実に賛否両論の「えーっ!」
の声があがると思う。 オススメ度:8

コメント  凍原 (桜木 紫乃著、小学館文庫)   作品の紹介 

正式タイトルは「凍原 北海道警釧路方面本部刑事第一課・松崎比呂」。
釧路湿原で自動車セールスマン、鈴木洋介の他殺死体が発見される。 鈴木の眼は青く、
それを隠すために黒のカラーコンタクトをしていた。
釧路方面本部 刑事一課の松崎比呂、30歳。 松崎はベテラン刑事の片桐とともに鈴木の
ルーツを捜査する。 松崎と片桐は、鈴木の祖母、キクが第二次世界大戦の終戦時、樺太
から引き揚げていた過去にたどり着く。 しかし、釧路郊外で暮らしているはずの彼女は
別人だった、、、。
一人の女性の人間ドラマとしては佳作であるけど、ミステリーとしてはやや物足りず。
殺人の動機にイマイチ感情移入できなかった。 オススメ度:7.7

コメント  海の翼 (秋月 達郎著、PHP学芸文庫)   作品の紹介 

正式タイトルは「海の翼 エルトゥールル号の奇蹟」。
1985年、イラン・イラク戦争が開戦から5年が経過。 イラクのアダム・フセインがイラン
領空を通過するすべての航空機を無差別攻撃すると宣言。 日本が自衛隊も民間機もイラン
に救援に出せない中、イランには300人以上の邦人が取り残されていた。 しかし、トルコの
首相も、イラン駐在トルコ大使も、自国民を全員救出するメドが立たない中、日本のために
救援機を出す英断を下す。 首相も大使も悩むことなくさらりと「エルトゥールル号の恩返し」
と口にする。
1890年、明治天皇に謁見すべく親善使節団としてトルコの軍艦エルトゥールル号が派遣される。
日本で歓迎を受け、トルコへの帰途につくが、和歌山県串本の対岸、紀伊大島沖で座礁、沈没
する。 島民たちは悪天候の中、危険を顧みず、乗組員たちの救助にあたる。 乗組員600名の
うち、69名を救助、200名余りの遺体を回収。 さらに遺品の回収、埋葬まで献身的に行う。
明治天皇も事態を重視し、海軍の軍艦二隻で生存者をトルコまで送り届けるよう指示する。
この厚意にトルコ皇帝も感激し、欧米列強との条約で禁止されていた外国船の海峡通過を強行。
さらに、同行していた新聞記者、野田が士官学校の教官として日本の思想、文化を教育する。
野田は体調を崩して職を辞すが、野田の盟友、山田が後任を務める。
野田と山田は、教鞭をとるかたわら、日本海軍、秋山真之の依頼で南下を図るロシアの動向を
探り続ける。 そして、1904年、山田と彼の教え子ケマル(後のトルコ共和国初代大統領)の
情報が功を奏し、日露戦争に勝利する。 トルコ国民にとっては、日本がトルコの宿敵ロシア
に勝利したことは、エルトゥールル号に続き、日本に感謝する大きなできごととなった。
イラクの無差別攻撃が始まろうとする中、テヘランの日本大使館も懸命にイラン脱出の飛行機
のチケットを手配するが確保できたのは123名分のみだった。 残りの在留邦人215名全員が
トルコからの救援機に乗れれば問題なかったが、トルコからの救援機2機の定員は552名。
しかし、イラン脱出をはかるトルコ人は600人以上いた、、、。
危険な事態にも関わらず、トルコ航空のパイロットも乗務員たちも、日本人救出のためにイラン
に向かうことを躊躇う者はいなかった。 やがて、トルコの救援機がテヘランに到着。
トルコ人たちは、日本人215名に救援機の席を譲る。 救援機に乗れなくなった300人は恨み言
ひとつ言わず、車でトルコに向けて出発する、、、。
そして、1999年、死者17,000人を超える大惨事となったトルコ北西部の大地震に対して、日本
政府は最大限の支援を行う。 そして、1990年当時、トルコのおかげで命からがらイランから
脱出した日本人、そしてイランの日本大使館員たちも、懸命に募金活動を行っていた、、、。
エルトゥールル号事件の基本的な知識しか持ち合わせずに読み始めたら、その後の日露戦争、
イランイラク戦争での脱出劇へと話が続き、ひじょうに奥行きのあるノンフィクションであることに
驚き、感動。 期待値以上の掘り出し物。 人に薦めたくなる作品。 オススメ度:8.5

コメント  僕僕先生 零 (仁木 英之著、新潮文庫)   作品の紹介 

大人気の「僕僕先生」シリーズのスピンアウト的な作品。 シリーズで描かれている時代の
遠い過去、僕僕が生を受けたばかりのころを描いている。
この世界の産み主である老君が最初に創り上げた三聖、黄帝、炎帝、そして西王母。
三聖は、天地を創り、神仙、次に人間を創り出し、この世を発展させていた。
炎帝は、水を司る神、拠比を人間の姿に変え、料理をつくる仙人、僕僕を拠比の相棒とする。
やがて、拠比と僕僕は、炎帝の命を受け、老君が天地開闢に用いた宝具「一」を探す旅に出る。
人間の姿になり、仙人の力を十分に発揮できない拠比を助けながら、僕僕一行は、探し物が
得意な神仙、導尤のもとをめざす、、、。
シリーズ本編の洒脱さ、爽快感、ドライブ感には及ばず。 本編の続きが早く読みたい。
シリーズ第五作、第六作のブックレビューはこちら。  オススメ度:7.8

コメント  雪まろげ (宇江佐 真理著、新潮文庫)   作品の紹介 

正式タイトルは「雪まろげ 古手屋喜十 為事覚え」。 シリーズ第二作。
表題作を含む計六編を収録した連作短編集。
浅草で古着屋を営む喜十、おそめ夫婦。 子宝に恵まれなかったが、店先に捨てられていた
赤ん坊の捨吉を養子にし、つつましく、つつがなく暮らしている。
喜十の店には、北町奉行所 隠密廻り同心の上遠野がたびたび訪れ、やっかいな仕事を依頼
する。 いやいや引きうける喜十だが、いつのまにか問題を片付けていく、、、。
捨吉の成長に目を細める喜十とおそめ夫婦が微笑ましい。 さらに、捨吉のきょうだいのその後
も描かれ、懸命に生きながらも思い通りにならない人生の難しさにせつなさを感じる。
シリーズ第一作のブックレビューはこちら。   第一作同様、一級品の人情話、そして謎解き。
オススメ度:8.2

コメント  夜鳴きめし屋 (宇江佐 真理著、光文社文庫)   作品の紹介 

父親が亡くなり、本所の古道具屋「鳳来堂」を継いだ長五郎。 伯父の質屋に勤めていた
経験を生かそうと励んだがうまくいかず、深夜営業の居酒見世、夜鳴きめし屋に衣替えして
十年。 いっしょに店を始めた母も亡くなり、一人で店を切り盛りしている。
長五郎は、二十八歳にして独身だが、十年前は芸者のみさ吉と恋仲だった。
しかし、みさ吉は商家の隠居に身請けされ、まもなく男の子を産む。
月日は流れ、みさ吉の旦那が亡くなり、息子を連れて、元の店に戻り、再びお座敷にあがり
始める。 長五郎は、みさ吉の息子、惣助を自分の息子ではないかと気をもむ、、、。
  やがて、惣助が長五郎の店に来るようになり、伯父の質屋に勤めることになる。
みさ吉との仲もぎくしゃくしていたが、まもなく惣助が長五郎の息子であることがわかる。
それでも、長五郎は、惣助に自分が父親であると明かすこともできず、みさ吉に求婚すること
もできず、悶々とした毎日を送っていた、、、、、、。
長五郎のまわりを囲む芸者、友人、店の客たちの表情が目に浮かぶ作品。 著者は、いつも
ながら、はずれなしの人情ものを書いてくれる。
長五郎の今は亡き両親、音松とお鈴の若いころを描いた「ひょうたん」の続編的な作品。
とはいえ、本作から読んでも問題なし。 「ひょうたん」のブックレビューはこちら
オススメ度:8.1

コメント  アラミスと呼ばれた女 (宇江佐 真理著、講談社文庫)   作品の紹介 

長崎の出島でオランダ語通詞として働く田所平兵衛の娘、お柳は、自らも通詞になりたいと
考え、オランダ語、英語、フランス語の勉強に励んでいた。 そんな折、平兵衛が江戸で
世話になった榎本円兵衛の息子、釜次郎(後の榎本武揚)が長崎に研修に訪れる。 お柳は
おさな心に釜次郎に淡い恋心を抱く。 江戸に戻った釜次郎は、数年後再び長崎を訪れるが、
すぐさまオランダへの留学に旅立つ。 釜次郎の留学中、平兵衛は攘夷派に暗殺され、お柳は
母と共に江戸に向かう。 十八歳になっていたお柳は芸者として働き始め、二年後、留学から
戻り、幕府の軍艦頭に出世した釜次郎と再会する。 釜次郎は結婚していたが、お柳に横浜の
フランス軍事顧問団の通詞の仕事を依頼、お柳は二つ返事で引き受ける。 しかし、女性の
通詞は雇えないため、お柳は男装して仕事を始め、やがて「アラミス」と呼ばれるようになる。
時代は風雲急を告げ、大政奉還、江戸城無血開城を経て、討幕軍が東に向かう。 釜次郎は
幕府の海軍副総裁として、開陽丸をはじめとする艦隊を率いて、仙台藩に赴く。 フランス軍事
顧問団も本国への引き揚げが決まるが、大尉のブリュネと一部の下士官たちは釜次郎と行動を
共にする。 そして、お柳も釜次郎の許しを得て、開陽丸に乗り込む。
仙台では、大鳥圭介、土方歳三も合流するが、藩は議論の末、帰順と決し、釜次郎は再び艦隊
を率いて蝦夷地に向かう。 お柳は、ついに釜次郎と結ばれる。
幕府軍は、箱館、松前、江差と進撃を続けるが、開陽丸を座礁させて失う。 1869年、幕府軍は
蝦夷共和国を建国し、釜次郎が総裁に選出される。 官軍は反撃を開始し、江差、松前を奪還
する。 同じころ、お柳は妊娠し、つわりに悩まされていた。 ブリュネは敗戦を悟り、陣を離れる
ことを釜次郎に告げる。 釜次郎は承諾し、お柳を連れて行ってくれるようブリュネに依頼する。
母のもとに戻ったお柳は女児を出産する。 やがて、釜次郎の命を受けた側近の大塚がお柳の
もとを訪れ、お柳と娘、母のために働く。 お柳は大塚と共に、寿司屋を始める。
新政府の黒田清隆の懸命の助命嘆願運動が実り、釜次郎は三年近い獄中生活の後、赦免される。
釜次郎は黒田の依頼により、新政府に加わり、北海道開拓使を経て、海軍中将となる。
さらに、ロシアとの千島・樺太交換交渉の全権大使の大任も果たす。
その後、お柳の娘は釜次郎の援助でミッション系の私立の女学校を卒業し、結婚した外交官の夫
とともに、イギリスに渡る。 釜次郎は政府の要職を歴任。 お柳は長崎に旅立つ、、、。
まず、幕末の時代の女性通訳という設定に感心。 物語の主人公、お柳を通して描かれる榎本武揚
の人となり、そして、波乱万丈の半生も読みごたえ十分。 リーダビリティーも高得点。
オススメ度:8.2

コメント  戦国名臣列伝 (宮城谷 昌光著、文春文庫)   作品の紹介 

紀元前の中国。 七大国が秦によって統一されるまでの戦国時代。 激動の時代を生きた
十六人の名臣を描いた短編集。
越の范蠡、秦の商鞅、燕の楽毅、楚の屈原など、個性豊かな人物をラインナップ。
横山光輝さんの「史記」コミック版に刺激を受け、春秋戦国時代の小説、宮城野昌光さん
の作品に初挑戦。 「史記」の入門書としても最適。 オススメ度:8

コメント  侠骨記 (宮城谷 昌光著、講談社文庫)   作品の紹介 

表題作を含む計四編を収録した短編集。
「侠骨」とは「他人の救済と自己の理想の貫徹のための犠牲の精神」のこと。
表題作は、隣国斉の脅威から魯を守るために奮闘する曹かいの物語。
曹かいは、魯の若き王、同に見出され、軍略の才を存分に発揮する。 斉の王、小白の
信任厚き宰相、管仲を相手に丁々発止の駆け引きで立ち向かう、、、、、、。
他の三編も、「史記」の世界を堪能できる、読み応えのある佳作。 オススメ度:8.1

コメント  沈黙の王 (宮城谷 昌光著、文春文庫)   作品の紹介 

表題作を含む計五編を収録した短編集。
表題作は、中国で初めて文字を創造した商(殷)の武丁を描いた作品。
他にも、夏、商(殷)、周の時代を舞台にした佳作をラインナップ。
「史記」の世界を描く宮城谷作品も三作目。 少しずつ世界観に慣れてきた感じ。
北方謙三さんの「大水滸」シリーズや「三国志」とは、ひとあじ違ったテイストを
愉しみながら、読み進めている感じ。 今のところ、短編ばかりを読んでいるので、
読後に人物の名前が残らないことが多い。 膨大な「史記」の世界をマクロに理解
していけば、それぞれの作品をもっとおもしろく読めるようになると思う。
オススメ度:8

コメント  孟夏の太陽 (宮城谷 昌光著、文春文庫)   作品の紹介 

表題作を含む計四編を収録した短編集。 いずれの作品も、春秋時代の大国、晋の
重耳に仕えた趙衰以来、宰相として晋を支え続けた趙氏の当主の物語。
表題作は、趙衰の息子、趙盾が、王に推戴した夷皐が暗愚の王であり、暗殺され
そうになる。 しかし、窮地を脱し、亡命しようとするが、まもなく王が暗殺される。
趙盾は、王の暗殺という汚名を背負い、国の安定を優先する、というお話。
やがて、晋が滅び、魏、韓とともに趙という国ができるまでの物語。
一族の長い歴史の中で何度も危機が訪れるが、歴代の当主の英断により窮地を切り
抜けていく。 オススメ度:8

コメント  玉人 (宮城谷 昌光著、新潮文庫)   作品の紹介 

表題作を含む計六編を収録した短編集。 ミステリーも交えた六つの恋物語。
妖艶な女性、まっすぐな女性、たおやかな女性。 さまざまな美しさを持つ女性たちと
それに惹かれる男たちの物語。 有名な人物が出てくるわけではないけど、バリエー
ション豊かなラインナップに一気読み。 オススメ度:8

コメント  介子推 (宮城谷 昌光著、講談社文庫)   作品の紹介 

晋の北部の山間の村で育った介推は、晋の公子、重耳の家臣、先軫と知り合い、
重耳の舅、咎犯に仕える。 三年後、咎犯の推挙で介推は重耳の直臣となる。
やがて、秦と晋の戦が始まる。 秦が勝利し、重耳の弟である晋君、夷吾が捕虜
となる。 重耳が晋君になると思われたが、夷吾は晋に戻る。 重耳が身を寄せる
孤氏の村に暗殺者が入り込み、重耳は斉への亡命を決意する。 介推のかつての
親友、石承は、夷吾のもとで出世し、重耳の命を狙っていた。 重耳に従って斉へ
向かう途中、介推は、石承の義理の妹、喜杳に十年以上の時を経て再会する。
介推は、喜杳を妻にする決心をし、迎えに行くが、一足違いで、石承に連れ去られる。
苦難の末、斉にたどり着いた重耳は、厚遇され、桓公の娘を妻とする。
やがて、桓公が亡くなり、重臣たちは、重耳を斉から脱出させる。 晋に戻る途上、
夷吾が亡くなり、太子が即位する。 重耳は、宋、秦を経て、いよいよ晋に帰国する。
ようやく重耳が晋君に即位することになるが、介推は重耳のもとを去る、、、、、、。
心根のまっすぐな栄光なき忠臣の物語。 重耳の苦難もていねいに描かれている。
けど、ほんの少しだけ物足りなかった印象。 オススメ度:7.8

コメント  伍子胥 (伴野 朗著、徳間文庫)   作品の紹介 

伍子胥(ごししょ)は、謀臣の讒言により、父と兄を一度に失う。 廃嫡された楚の
元太子、熊建とともに、宋に亡命、まもなく、名宰相、子産を頼って、鄭に向かう。
しかし、熊建は晋の頃公の誘いに乗り、晋に亡命。 その後、鄭に攻め込む手引きを
するため、鄭に戻るが、定公の知ることになり、誅殺される。 伍子胥は、熊建の子、
熊勝、従者の呂飛とともに逃げのび、子産の友である呉の季子の元に向かう途中、
孫武(孫子)に匿われる。 その後、季子に会うことができたが、季子は伍子胥の
目的が楚への復讐であることを見抜き、自らは関わりを避け、呉の軍事を司る姫光
に引きあわせる。 まもなく、呉王、僚にも謁見が許されるが、王の前で、姫光から
伍子胥の目的は楚への復讐であることを暴かれる。 伍子胥は、姫光の発言の裏に
自らが呉王になる野望があることに気づき、姫光に仕えることになる。
伍子胥は姫光のために、周到に呉王、僚の暗殺の準備を進める。 やがて、伍子胥
の父と兄の敵、平王が死去。 喪中の楚を攻めることに反対の季子を中原視察に送り
出し、僚の太子、慶忌を衛に留学させる。 さらに、僚の弟二人を楚に出陣させ、姫光
は病と称して、呉に留まる。 はたして、僚の弟二人は楚で苦戦。 姫光は僚に出陣を
申し出、館での出陣を祝う宴会に僚を招く。 席上、刺客の専諸が僚を仕留め、姫光の
クーデターが成功。 かくして新たな呉王、闔廬(こうりょ)の治世が始まる。
衛では、父を暗殺された慶忌が二千の精鋭を募り、呉に向けて出陣する。 しかし、
伍子胥が放った刺客、要離が慶忌暗殺に成功。 慶忌軍は衛に戻る。
呉軍は、さらに慶忌の異母弟である公子二人の軍を撃破、呉の地に凱旋する。
楚は、熊建の子、熊勝を連れ去る。 楚の新王、昭王は、熊勝を白の地に封ずる。
やがて、呉は、蔡と唐を味方に引き入れ、満を持して、楚に攻め込み、大勝する。
十七年の時を経て、悲願を遂げた伍子胥は、仇敵、平王の墓を暴き、死体に鞭を打つ。
呉軍は闔廬自らが楚の地に留まり、占領を続ける。 間一髪、楚を逃れた昭王は隋の地
に落ちのび、伍子胥のかつての親友、申包胥に迎えられる。 申包胥は、昭王の祖父で
ある秦の哀公に助勢を願い出る。 秦は五万の兵で楚に攻め入る。 闔廬の弟、夫概は
軍規を犯し、秦軍に攻め込むが潰走し、呉に逃げ帰る。 時を同じくして、闔廬が留守の
呉の地に越王、允常の軍が攻め込んでいた。
呉に逃げ戻った夫概は謀反を起こし、独立を宣言。 闔廬は孫子を従えて、急遽、呉に
戻る。 伍子胥は、闔廬に楚の守りを任されるが、申包胥の軍略に敗れ、楚の地を放棄、
呉に向かう。 楚では昭王が王位に復位する。
呉では、孫子の軍略のもと、闔廬と公子の波と夫差の軍が夫概軍を破り、呉城に入城。
夫概は昨日まで的だった楚の昭王のもとに逃げ込む。
呉では、波が亡くなり、夫差が太子となる。 越では、王、允常が亡くなり、勾践が後を継ぐ。
闔廬は、この機に乗じて、出陣。 しかし、越の奇計に嵌り、戦中の負傷がもとで亡くなる。
勾践は、闔廬の後を継いだ夫差に戦いを挑むが、大敗し、降伏する。 勾践は、謀臣、
范蠡の言に従い、再起の機会を待つ。 夫差は、范蠡の仕掛けた謀略に陥り、越ではなく、
北進の策をとり、伍子胥を遠ざけるようになる。 夫差は、斉に軍を進めるが、それは呉滅亡
の始まりだった、、、、、、。
500ページを超える大作。 ひとときも気を抜けない春秋時代の世を生き抜いた男の生きざま
をていねいに描いた一作。 この時代を描いた作品にしては、わりと読みやすかったのが救い。
オススメ度:8

コメント  ものがたり史記  (陳 舜臣著、朝日文庫)   作品の紹介 

下記の「ものがたり水滸伝」同様、「史記」のエッセンスをわかりやすく一冊(200ページ)
にまとめた作品。 計14編を収録した短編小説集の体裁。
殷が滅び、周が衰えた後の春秋戦国時代を動かした人々の物語。
晋の重耳、呉の伍子胥、越の范蠡、楚の屈原、趙の蘇秦、秦の張儀、呂不韋、その他
始皇帝、項羽、劉邦、司馬遷などを取り上げている。
ページ数が少ないため、あくまでも「史記」の中心人物たちの功罪の概略を語るに留めて
いるが、「史記」に触れ始めたばかりの人が読むのには最適の一冊。 上述の宮城谷昌光
さんの「戦国名臣列伝」と併せて読むとよいかも。 オススメ度:8

コメント  ものがたり水滸伝  (陳 舜臣著、朝日文庫)   作品の紹介 

壮大な「水滸伝」を一冊(350ページ)にまとめた作品。 個人的に思い入れが強い作品
ということもあり、「ものがたり」というタイトルにも惹かれ、古本で購入。
「水滸伝」には70回本、100回本、120回本とあるが、本作は70回本をもとに書かれている。
原作に忠実で、「水滸伝」入門書にはぴったり。 ページ数の制限の中で、ひじょうにわかり
やすく書かれているけど、長い長いストーリーを一冊に収めた感があるのは否めない。
原作から離れた創作が多いものの、読み物としては北方「水滸伝」がいいなぁ、やはり。
オススメ度:7.7

コメント  岳飛伝 12 瓢風の章  (北方 謙三著、集英社文庫)   作品の紹介 

南宋水軍の総帥を解任された韓世忠が、またしても梁山泊の交易用の大型船を撃沈する。
李俊は、狄成と項充に長江で陸上の南宋軍の砦を急襲するように命じ、自らも出撃。
ついに韓世忠の基地としている島を特定する。 まもなく水軍総帥、張朔の命を受けた
上級将校、桑仁が李俊の指揮下に入り、韓世忠と交戦。 李俊自らが韓世忠を討ち果たす。
辛晃は、南宋の南方攻略の拠点、景朧から二万の兵を前線の砦に出し、土塁に点在する
一万と合わせて三万の兵で、梁山泊・岳家軍に備える。
金の皇太子、海陵王が燕京の五万の禁軍のうちから二万の兵を引き連れ、会寧府に入る。
蕭R材はただちに会寧府周辺の物流を止める。 兵糧を携えず進軍してきた禁軍は会寧府の
糧食を食いつくす。 金軍総帥、ウジュは七千の兵で二万の禁軍を会寧府から追いやった。
その直後、蕭R材が宮廷から呼び出される。 宮廷では合刺が崩御し、海陵王が帝に即位、
烏禄が皇太子となっていた。 蕭R材は物流の再開を請け負い、北の地に向かう。
南方では、秦容が三千の兵を出動させ、小梁山でも三千の兵を組織。 岳家軍三千も、現地の
兵一万を指揮する潘寛とともに梁岳道の北に兵を進める。 秦容は、土塁や小規模の砦を
難なく撃破し、一万の兵が籠る砦の前方に着陣する。 南宋軍は、辛晃自らがさらに一万五千
の兵を率いて出撃する。 秦容はわずか百の兵のみを率いて景朧に向かう。 景朧の手前で
三千の梁山泊召集兵、梁山泊・岳家軍の六十の高山兵、そして岳家軍の孟遷が率いる五百
の騎馬隊と合流。 まず高山兵が南宋軍の砦城に侵入し、門を開けたところで、梁山泊・岳家軍
が突入。 五千の南宋軍を圧倒し、三千余りを俘虜とする。 秦容は木造の砦城を燃やし、石で
建てなおしたものを北進の拠点とする。
南の地でも、岳家軍三千、潘寛軍一万、そして秦容の副官、桓翔の軍三千が辛晃軍四万五千
と戦いを始める。 やがて、潘寛の兵千五百と孟遷の騎馬隊五百が梁山泊軍三千が守る景朧
の砦城の城外で駐留を開始する。 秦容は、南宋軍の三つの砦のひとつを守る上級将校、石信
を討つ。 辛晃は、岳飛、桓翔、潘寛の軍に対峙。 秦容は、千の兵を率いて、小梁山に向かった
三千の南宋軍を追う。 小梁山では四千の兵が黄鉞に率いられて、辛晃軍の上級将校、童健と
戦っていた。 やがて、秦容が着陣し、童健を倒す。 辛晃軍は、岳飛、桓翔、潘寛の軍と戦い
ながら南下し、梁岳道まで達するが、秦容が五千の兵を率いて駆けつけ、降伏する兵が続出する。
張朔は、李俊に桑仁、高威をつけ、南宋水軍に占領されたままになっている沙門島の奪還を
依頼する。
秦檜の手先の忍び、劉正が李師師の命を狙う。 燕青は、劉正に挑み、相討ちの末、劉正を倒す。
燕青は、自殺した李師師の最期を見届け、静かに自らの最期のときを迎える。
梁山泊・岳家軍は、二万の辛晃軍の兵を俘虜とし、使役にあたらせる。 しかし、辛晃の死体は
見つからなかった。 潘寛軍は、一万から三万に増員することが決まる。
李俊と秦容の巻。 梁山泊水軍、そして南方の梁山泊・岳家軍の躍動が生き生きと描かれた一冊。
大水滸シリーズファンには、李俊と秦容の活躍がたまらなかったのでは。 オススメ度:8.2

コメント  岳飛伝 13 蒼波の章  (北方 謙三著、集英社文庫)   作品の紹介 

金の新王、海陵王は、金軍一万を京兆府に入れる。 かつて史進や秦容が王進に教えられ、
今も、宣凱の母をはじめ梁山泊に縁のある者たちが暮らす子午山に対し、金は税をかけ、
徴兵まで始める。 海陵王の挑発に対し、宣凱は、史進に出動を命じる。
李俊は、狄成、桑仁、高威、項充を従えて、沙門島奪還に向けて進発する。 李俊の軍は
二十五艘、対する南宋軍は三十五艘と陸上兵力五千だった。 開戦早々、李俊軍は南宋
水軍の指揮官の首を獲り、敵に壊滅的被害を与える。 南宋軍は五艘のみが沙門島に
帰還し、梁山泊軍を迎え撃つ。
史進は、三千の遊撃隊で、金の禁軍一万を緒戦で蹴散らす。 京兆府からさらに一万の兵
が出撃するが、史進、葉敬、耿魁は兵力差をものともせず進撃を続け、京兆府に達する。
兵をさらに東に進め、金軍を徹底的にたたく。 逃げ去った海陵王にかわり、ウジュが一万
の兵を率いて出てきたところで、史進は兵をひく。
岳飛は、息子の崔達、岳雷に一千の兵を預け、景朧に向かわせる。 遅れて自らも二千の
兵を率いて、景朧の砦城に入る。 砦城には小梁山の兵、三千も駐屯していた。
沙門島では李俊が敵の罠を見破り、孫二娘の養子、源太が決死の覚悟で罠を無力化する。
戦はいったん膠着状態に入るが、李俊自らが狄成と共に決死隊を率いて、敵の宿舎と兵糧
庫を燃やす。 まもなく、敵は降伏し、李俊は瓊英のいる十三湊に向かう決意をする。
小梁山からは、景朧から北に侵攻する志願兵五千が進発し、砦城での調練を始める。
秦容自身も南宋への侵攻を決意する。
金では、海陵王が禁軍を六万に増強する。 そして、南宋への親征にウジュの麾下である
沙歇と阿刺の各二万の軍も従軍するよう要請する。
南宋軍は大理との国境に三万の軍を駐留させていた。 岳飛は孟遷、呂敦のみを連れて、
南宋領内に入り、南宋内の岳家軍の代表者と作戦会議を行う。 やがて、秦容も景朧の砦城
に到着し、岳飛と南宋出撃の戦略を話し合った。
金は、禁軍六万、沙歇と阿刺の四万に地方軍三万を合わせた十三万の大軍で南宋に侵攻
する機をうかがっていた。
李俊は十三湊に向かうが、瓊英は李俊が到着する十日前に息を引き取っていた。
南宋は金軍を迎え撃つべく、総帥の程雲以下十一万の兵と禁軍一万が拠点に陣を敷く。
他に地方軍十二万のうち、雷州と大理国境に四万が展開していた。 対する金軍は海陵王
の禁軍が二万増員され八万となっていた。 沙歇軍二万と阿刺軍二万は南宋領内を駆け
まわり、南宋軍を翻弄する。 程雲は海陵王の本陣に攻めかかるが、ウジュと胡土児の
騎馬隊四百に押し戻される。 海陵王は程雲直属の一万以下四万の軍に攻撃をかけるが、
二万を失う。 ウジュは、なおも戦い続けようとする海陵王を諌め、退却の上、城郭に
籠るよう勧める。 程雲は阿刺の軍を囲い込み、大幅に兵力を削ぐ。 やがて、海陵王の
軍に迫るが、金軍は沙歇が殿となって退却する。
史進の子午山への想い、金と南宋の戦いなど、見どころはいろいろあったけど、この巻は
なんといっても李俊の巻。 決死の覚悟で南宋に勝利した後の瓊英の死はせつなかった。
オススメ度:8.3

コメント  史記 武帝紀 二  (北方 謙三著、ハルキ文庫)   作品の紹介 

中国前漢の時代。 武帝、劉徹の命を受けた将軍、衛青は、匈奴から河南の地を奪還すべく
動き始める。 甥の霍去病を従者とし、韓安国に四万の軍で陽動目的の出兵を依頼する。
匈奴の単宇(王)の弟、伊穉斜は、一万五千の兵で韓安国の軍を攻撃し、潰走させる。
衛青は、騎馬一万、歩兵二万を率いて、河南の匈奴軍五万にあたる。 漢軍が優勢に戦いを
進める中、匈奴は三万の援軍を送るが、衛青は、念願の河南奪還に成功する。
劉徹の命で西域に赴き、匈奴に捕えられるも、十年後に脱出し、月氏国に対匈奴のための
同盟を申し入れた張騫は、収穫のないまま、長安への帰路につく。 そして、再び匈奴の地で
囚われの身になり、単宇のもとに引きだされる。 単宇は漢に逃亡したのではなく、西方に
旅をした張騫を許す。 やがて、単宇が死去した混乱の中、張騫は妻子、従者とともに脱出し、
漢に帰りつく。 まもなく、張騫は長安に向かうよう命じられ、途中、衛青と会談する。 張騫は、
長安で劉徹に謁見する。
単宇の死後、匈奴では、単宇の息子、於単の軍四万と伊穉斜の軍三万が、次の単宇の座を
かけて戦っていた。 やがて、伊穉斜が勝利し、単宇として首都、単宇庭に凱旋する。
伊穉斜は、次男のこう犁湖に一万の直轄軍を組織するように命じる。
文官、大史令の息子、二十歳の司馬遷は、国内を旅する。 旅から戻ると、見習いである郎中
として出仕し始める。
衛青は、二年ぶりに出陣。 匈奴の王族十数名を捕え、一万数千を俘虜とし、家畜数十万頭を
鹵獲するという大勝利をおさめる。 劉徹は衛青を大将軍に昇格させる。
衛青は、霍去病の軍才を認め、劉徹に推挙。 わずか17歳の将軍が誕生する。 劉徹は、李広
を長安に呼び寄せ、最上位の将軍として軍に復帰させる。 そして、衛青に出陣の命を下す。
衛青は、霍去病、李広をはじめ六人の将軍、十万の兵を率いて、匈奴の地に侵攻。 七つの砦
を築きながら、遭遇戦を開始する。 これまでは三万の兵で機動力を生かした戦を続けてきた
衛青にとって、十万という大軍は勝手がちがうものだった。 膠着を嫌った霍去病は、わずか二千
の麾下を率いて匈奴の地、奥深くまで侵攻し、囮の役割を果たす。
匈奴の地では、こう犁湖が単宇直属の一万の兵を鍛え上げていた。 その中で伊穉斜が見出
した十六歳の頭屠が頭角を現していた。 こう犁湖は頭屠を匈奴の中心となる指揮官として育て
ようとしていた。
衛青は、緒戦をものにするが、これまでのような快勝と呼べるものではなかった。 一ヶ月後、
再度、出陣。 伊穉斜は、二十万の大軍で、漢軍十万を迎え撃つ。 霍去病は、こう犁湖率いる
一万の伏兵に攻められ、窮地に陥るが、間一髪、衛青が駆けつける。 霍去病は九死に一生を
得るが、衛青は頭屠に深手を負わされる。 汚名返上とばかり、決死の奇襲をかけた霍去病の
活躍で匈奴軍は潰走。 漢軍の勝利で戦が終結。 霍去病の軍は五千に増員される。
霍去病、頭屠という若い力の台頭を描いた巻。 「水滸伝」や「三国志」と違って、登場人物が
多くなく、漢 対 匈奴という図式もシンプルで読みやすい。 骨太な作品。 オススメ度:8.2

コメント  大名やくざ 6 (風野 真知雄著、幻冬舎時代小説文庫)   作品の紹介 

シリーズ第六作。 旗本の父とやくざの母の間に生まれた有馬 虎之助。
旗本とやくざの二足のわらじをはきながら暮らしていたが、奇策により久留米藩二十一万石の
藩主の座を手に入れる。
母が仕切る丑蔵一家の敵、万五郎一家が虎之助を亡きものにすべく、五人の刺客を放つ。
そんな中、先送りにしていた久留米への参勤交代が待ったなしとなる。
国入りを覚悟しかけた矢先、虎之助は自分とうりふたつの役者を紹介される。
自分の影武者を参勤交代の駕籠に乗せ、虎之助は久留米に先乗りし、敵対勢力を一掃する。
国元を影武者にまかせ、自らは江戸に戻るが、紀伊国屋文左衛門に姿を見られ、前田綱紀、
荻生徂徠など反虎之助派が失脚工作に乗り出す、、、。
いつもながらの破天荒、傍若無人、でも情け深い虎之助の起こす騒動が今回もも見どころ
たっぷりに描かれていて。 安定した爽快感は健在。
第四作、第五作のブックレビューはこちら。  オススメ度:8

コメント  大名やくざ 7 (風野 真知雄著、幻冬舎時代小説文庫)   作品の紹介 

虎之助は、幕府の大目付、仙石にも姿を目撃されてしまう。 仙石は久留米に密偵を放ち、
虎之助の所在を確認するが、影武者であることを見抜けなかった。 綱吉と柳沢吉保に
このことを伝えるが、捜査を続行する許可を得る。 再び、前田綱紀、荻生徂徠、紀伊国屋
文左衛門、そして仙石が集まり、久留米の虎之助が本物かどうか確かめるために襲わせる
ことを決める。 やがて、久留米の影武者は密偵の襲撃を受け、その刃に倒れる、、、。
虎之助は、吉原で、平戸藩の次期藩主、松浦篤信と知り合い、幕府が外様大名の家をとり
潰す手口を教える。 松浦は、虎之助の話を書きつけるが、その紙が風で飛ばされてしまう。
偶然、その書き付けを手に入れた仙石は綱吉と柳沢に報告、綱吉は、久留米藩、平戸藩を
はじめ、九州諸藩の取り潰しを画策し始める。
一方、虎之助の母、辰が親分をつとめる丑蔵一家の仇敵、万五郎が女房のおしまに暗殺
される。 虎之助は久留米に旅立つ、、、。
クライマックスに向けて、動きがあわただしくなってきた第七巻。 リーダビリティーもアップ。
オススメ度:8.1

コメント  大名やくざ 8 (風野 真知雄著、幻冬舎時代小説文庫)   作品の紹介 

シリーズ完結編。 虎之助がついに江戸の町に戻ってきた。 留守中に辰にやらせておいた策が
みごとにはまり、万五郎一家を舟いくさで一蹴。 辰は一騎討ちでおしまの息の根を止める。
虎之助は、休む間もなく、競馬場建設計画を柳沢と紀伊国屋に持ちかける。 この計画はやがて
綱吉も承認し、さらに久留米から江戸まで馬車で移動できる馬道建設も実現に向けて動き出す。
しかし、荻生徂徠は、馬道は虎之助が九州から騎馬軍を移動させるための隠れ蓑であることに
気付く。 綱吉、柳沢は、久留米藩の改易を決意するが、虎之助は綱吉を暗殺する、、、。
もっと壮大で歯切れのいい結末を期待していただけに、意外な読後感。
「大名やくざ」シリーズは完結するが、その後を描いた「極道大名」シリーズがスタート。
オススメ度:8

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