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読書感想文2016 part 3
「読書感想文2016」 part3は、5月〜6月の読書録です。
↓ Click NOVEL mark !
湘南シェアハウス (広谷 鏡子著、ハルキ文庫)
作品の紹介
父と母を亡くし、江の島の古いアパートを相続することになった50歳の小説家、夏都。
担当編集者で親友の紀世子の発案で、アパートをリフォームしてシェアハウスにすることに。
ストレッチ教室の講師、アリサ、夏都の大ファンの史子、女子大の准教授の真代など、30代
から70代の女性がシェアハウスのメンバーに決まり、共同生活が始まるが、、、。
小さな衝突や発見を繰り返しながらも、喜びや悩みを共有し、しなやかに生きる女性たちを
ていねいにリアルに描いた秀作。 オススメ度:8.1
レインツリーの国 (有川 浩著、新潮文庫)
作品の紹介
伸行は社会人3年目。 10年以上前に読んだライトノベルが忘れられずにネットで感想を
検索しているうちに、ひとみが書いた感想に出会い、深く共感する。 伸行はたまらず
ひとみにメールをうち、そこから二人のメール交換が始まる。 やがて、伸行はひとみを
デートに誘うが、ひとみは応じてくれない。 ようやくデートにこぎつけたものの、今度は
何かちぐはぐな会話。 しかし、データの終わりに伸行はひとみが耳につけている補聴器に
気づく、、、、、、。
著者お得意の直球のラブストーリー。 とはいえ、聴覚障害に深く切り込んでいて、エンタメ
色の強い恋愛小説ではなく、ある意味、骨太の作品に仕上がっていました。
若い世代に読んでほしい作品。 オススメ度:8.2
書店ガール (碧野 圭著、PHP文芸文庫)
作品の紹介
人気シリーズの第一作。 舞台は吉祥寺の老舗大型書店。
ペガサス書房吉祥寺店の副店長、理子は40歳、独身。 書店員歴20年のやり手のベテラン。
出版社の編集者と結婚したばかりの亜紀は27歳。 公私ともになにかと理子とぶつかることが多い。
しかし、理子が店長に昇格したとたん、吉祥寺店が閉鎖の危機に追い込まれ、亜紀は理子とともに
立ち上がる。 店員一丸となり、吉祥寺店の売り上げは大きく伸びるが、、、、、、。
本好きの人にはたまらない、書店の裏事情が丹念に描かれた一冊。 脇役も含めて、感情移入できる
登場人物が(個人的には)いないふしぎな作品ではあるけれど、物語の展開力は一級品。
2015年ドラマ化。 オススメ度:8
太陽の坐る場所 (辻村 深月著、文春文庫)
作品の紹介
高校卒業から10年。 元同級生たちの話題は人気女優となったキョウコのこと。 クラス会に
彼女を呼び出そうと画策するが、なかなかうまくいかない。 そして、キョウコにコンタクトを
とった人物が一人また一人と連絡を絶ってゆく、、、。
そんな中、ついにキョウコが同窓会に出席することになり、因縁の相手と再会する、、、。
5章だての構成。 1章ごとに主人公が替わり、それぞれの人物から見たキョウコと周りの人物
たちの過去と現在が語られていく。 高校時代の人間関係や現在進行形の悩みにそこまでとら
われるか?と少し疑問には思ったけど、緻密な構成、心理描写は秀逸。
そして、名前をうまく使った「だまし絵」トリックが超一級品。 読者が見破ったと思ったら、
二重のトリックが仕掛けられており、これには脱帽以外の何物ではないと感じました。
2014年映画化。 オススメ度:8.1
「黄金のバンタム」を破った男 (百田 尚樹著、PHP文芸文庫)
作品の紹介
1960年代、敗戦から立ち直り奇跡の復興を遂げる日本国民を熱狂させたボクサー、ファイティング原田。
常識を超えた練習量を自らに課し、19歳にしてフライ級世界チャンピオンとなり、その後、バンタム級をも
制した彼の半生をていねいになぞったノンフィクション。 現在は、4団体で70人の世界チャンピオンが乱立
しているが、8人のチャンピオンしかいなかった60年代に2階級を制した彼の努力、気迫、精神力を余すこと
なく伝えた力作。 原田のみならず、彼のまわりのボクサーたちの努力の軌跡、人間性も、読み応え十分。
本作のタイトルは「黄金のバンタム」と呼ばれた最強の男エデル・ジョフレを破ったことから。
オススメ度:8.2
プリズム (百田 尚樹著、幻冬舎文庫)
作品の紹介
体調を崩し会社を辞め、専業主婦の生活を送っていた聡子、32歳。 体調もよくなり、世田谷の資産家の
家で家庭教師を始める。 そこで主人の弟の広志に出会う。 彼は、あるときは紳士だったり、あるときは
暴力的だったり、そしてあるときは芸術家だったり、正体のつかめない男性だった、、、。
やがて聡子は彼が解離性同一性障害、すなわち多重人格であることを知る。 そして、卓也という人格に
恋愛感情を持ち始める、、、、、、。
多重人格を扱った作品は「24人のビリー・ミリガン」のようなノンフィクション系を除けば、荒唐無稽になる
こともありますが、恋愛小説 × ミステリー小説の要素を巧みに盛り込み、エンターテイメント色豊かな
作品に仕上がっていました。 それにしても、著者の描く小説は、ほんとうにさまざまなジャンルに及び、
読むたびに驚かされます。 五十嵐貴久さん級のすごさ。 オススメ度:8.1
歌舞伎町セブン (誉田 哲也著、中公文庫)
作品の紹介
新宿 歌舞伎町で町会長の死体が発見される。 警察は心不全と判断するが、続いて商店街の会長も失踪し、
街が岩谷という人物に買い占められ、蝕まれているのではないかと疑念を抱く人々がいた。
やがて意図的とも言えるやり口で街の噂となった「歌舞伎町セブン」という謎の言葉。
歌舞伎町の過去の闇を知るスナックのマスターとやくざの組長、そして、フリーライター、警官たちが
闇の勢力に立ち向かうために立ち上がる、、、、、、。
どんよりとした曇り空のような世界観を持つ「必殺仕事人」にも似たダークヒーロー小説。
ハードボイルドととるべきか、暗いお話と見るべきか、評価のわかれるところ。 オススメ度:8
異人館画廊 (谷 瑞恵著、集英社文庫)
作品の紹介
「異人館画廊」シリーズの第一作。 正式タイトルは「異人館画廊 盗まれた絵と謎を読む少女」。
18歳にしてイギリスの大学で図像学の修士号を取得した千景は、10年ぶりに帰国し、祖母と暮らし始める。
帰国早々、千景は、盗難絵画の鑑定を依頼される。 気の合わない幼馴染の透麿や祖母の画廊に集まる
仲間たちと調査に乗り出すが、次々と難題が待ち受けていた、、、、、、。
図像学とは、絵画に描きこむことで見る人に様々な影響を与える特殊な図像を研究する学問。
言ってみれば、サブリミナル効果の絵画版みたいなもの。
時には、人の精神に悪い影響を与えてしまう図像もあり、本作で千景が対峙するのも、不用意に見ては
いけない図像が描かれた絵画。 本作は、図像学という斬新なフレーバーをコーティングしたひと味違う
ミステリー。 切り口が新鮮でした。 オススメ度:8
先生の隠しごと (仁木 英之著、新潮文庫)
作品の紹介
正式タイトルは「先生の隠しごと 僕僕先生」。 大人気「僕僕先生」シリーズの第五弾。
唐の時代の中国のお話。 22歳までニートのような生活を送っていた王弁は美女仙人、僕僕と
出会い旅をすることになり人生が一変する。 一度は別れるが、5年後再会し、再び始まった
二人の旅は、新たな仲間を加えつつ続いていくが、王弁の僕僕への想いは報われない、、、。
理想の国ラクシアを治める王、ラクスにプロポーズされた僕僕は、それを受け入れる。
落ち込み放心状態となる王弁。 しかし、旅の仲間、劉欣は、王弁をラクシアの暗部に送り込み
理想郷の裏で奴隷として働かされている人たちを救う算段を図る。 やがて、終焉を迎える理想
の国。 そして、僕僕の過去も明らかになる、、、、、、。
おもしろい作品だとは思うのだけど、これまでの4作と比べると、ややパワーダウンかも。
僕僕の迷いや逡巡も、やや引っ張りすぎの感があり、物語のドライブ感が減速した気がします。
シリーズ第一作のブックレビューはコチラ。
シリーズ第四作のブックレビューはコチラ。
オススメ度:8.2
鋼の塊 (仁木 英之著、新潮文庫)
作品の紹介
正式タイトルは「鋼の塊 僕僕先生」。 大人気「僕僕先生」シリーズの第六弾。
旅を続ける僕僕先生と王弁の一行が次に訪れたのは、程海地域。 ここは唐、吐蕃、南詔の三国が
支配を狙う地帯でまさに開戦前夜。一行は、孤児を育てる宋格之と呉紫蘭に出会う。
程海地域を守るため、僕僕、王弁一行は程海の守り神「鋼人」の封印を解くため、湖底へと向かう。
南詔の軍が攻めてくる中、鋼人がついに姿を現す、、、、、、。
僕僕、王弁のやりとりよりも、宋格之にスポットが当たり気味という印象。 とはいえ、僕僕一行の
キャラ(特に劉欣)も立っていて、満足の一冊。 オススメ度:8.4
千里伝 時輪の轍(わだち) (仁木 英之著、講談社文庫)
作品の紹介
人気の中国歴史ファンタジー「千里伝」シリーズの第二作。
舞台は唐の時代。 軍人の父と妖(あやかし)の母の間に生まれた千里は、18歳になっても、外見は5歳の
幼児のまま。 千里が修行する丹霞洞麻姑山に、空翼という少女がまぎれこむ。 千里は空翼をかくまうが
世界の時間が狂い始める。 この世は、時間と空間で成り立っており、空翼は空の化身だった、、、。
離れ離れになった時と空をひとつにするため、千里は、かつての旅の仲間である吐蕃王国の狩人、バソン、
少林寺の僧、絶海とともに旅に出る、、、、、、。
おもしろかったけど、第一作のほうが話が骨太で読みやすかったような印象。 次作に期待。
シリーズ第一作のブックレビューはコチラ。
オススメ度:8
千里伝 武神の賽(さい) (仁木 英之著、講談社文庫)
作品の紹介
「千里伝」シリーズの第三作。
五年に一度、武宮の代表者たちが強さを競う「武宮大賽」。 優勝者には、因果を操り勝負の行方を決定
できる宝「武神賽」が与えられる。 弓の武宮で麻姑仙人のもと修業に励む千里は、仙人の命で大賽の
開会式で使う「聖なる弓」の材料を集めるため、旅に出る。 旅の途中、かつての仲間で親友のバソンに
出会い、ともに大賽に出場することになる。 一方、千里のもう一人の仲間、絶海は異界の王の娘、蔑収
と修業の旅を続け、ともに大賽に出場することに。 いよいよ武宮大賽が幕をあけ、千里・バソン組と絶海・
蔑収組が優勝を争うことになるが、闇の存在が会場に姿を現す、、、、、、。
第二作までとは一転して、絶海が強さのみを求め、心がダークサイドに落ちてしまうのがみどころ。
千里とバソンは、絶海の心の闇を振り払うことができるのか、と読み進んでいると、物語が次作(最終巻)に
続くかたちで終わってしまいます。 ということで、お楽しみは次作に持ち越し。 とはいえ、リーダビリティー
の高い作品で満足。 オススメ度:8.2
大名やくざ 4 (風野 真知雄著、幻冬舎時代小説文庫)
作品の紹介
旗本の父とやくざの母の間に生まれた有馬 虎之助。 旗本とやくざの二足のわらじをはきながらおもしろ
おかしく暮らしていたが、自らの画策で久留米藩二十一万石の藩主の座を手に入れる。
藩主になったものの、藩に三十万両という借金はあるわ、母が後を継いだ丑蔵一家の縄張り争いにも目を
光らせなければならず、たいくつはしないものの、気を抜けない毎日を送っている。
第四作も、藩の財政立て直し、暗殺者との対決、恋のさや当て、丑蔵一家の危機など、リーダビリティー
ばつぐんの展開。 続きが気になるシリーズです。
シリーズ第一作〜第三作のブックレビューはコチラ。
オススメ度:8.2
大名やくざ 5 (風野 真知雄著、幻冬舎時代小説文庫)
作品の紹介
虎之助の母で丑蔵一家の親分、辰が敵対する万五郎一家に誘拐、拉致される。 虎之助は必死に母を探すが、
なかなか手がかりがつかめない。 偶然、耳にした情報をもとに現場に乗り込むが、ひとあし違いでもぬけのカラ。
やがて、意外な結末を迎える大騒動を中心に展開する第五作。 他にも、後の八代将軍、吉宗を張り倒したり、
赤穂浪士討ち入りの真相をつかんだり、虎之助のトラブルメーカー&シューターぶりを秀逸に描いた一作。
オススメ度:8.2
ちょちょら (畠中 恵著、新潮文庫)
作品の紹介
間野新之介は、播磨の国、多々良木藩の江戸留守居役。 兄の謎の自刃を受けて、役職を引き継いだ。
他藩の先輩留守居役たちにしごかれながらも、真摯な自分なりの方法で幕府内や商人に味方を増やしていく。
しかし、藩の財政は破綻寸前。 折しも、担当する藩に膨大な負担を強いる「お手伝い普請」の情報を得た
新之介は、多々良木藩がお役を逃れるため、新たな知恵を絞り奔走する、、、。
「しゃばけ」、「まんまこと」シリーズとはひと味違った武士もの。 一見、平平凡凡な主人公のまっすぐな
心根が人の輪を広げ、事態を好転させていくさまが見どころ。 オススメ度:8.1
けさくしゃ (畠中 恵著、新潮文庫)
作品の紹介
柳亭種彦こと高屋彦四郎知久は二百俵取りの旗本。 無役で暇を持て余す風流の人。 出世欲の全くない愛妻家。
物語を組み立てながら話す才能は天下一品。 彼の才能を見込んだ版元の山青堂は種彦に戯作を書くように依頼
する。 処女作を書きあげたものの、種彦は次回作を書くよりも、事件を戯作に仕立て謎を解く、という不可思議な
仕事に追われまくる。 そうこうしているうちに、処女作がいきなりブレイク。 しかし、芝居小屋での殺人事件に巻き
こまれ、一転、作家生命の危機が訪れる、、、。
種彦の戯作者としての成長物語とミステリーをうまくミックスした時代小説。 脇役たちの人物造形も秀逸。
「本の雑誌」2015年度「時代小説」文庫:第4位。 オススメ度:8.1
蛇衆 (矢野 隆著、集英社文庫)
作品の紹介
室町末期、各地を転戦する傭兵集団「蛇衆(じゃしゅう)」。 たった六人ながら刀や弓、槍などの名手が
そろい、無敵の強さを誇っていた。 しかし、頭の朽縄(つちなわ)が九州の領主、鷲尾家の跡目争いに
巻き込まれ、蛇衆は大きな企みの渦に巻き込まれる、、、。
アニメ感覚、ゲーム感覚満載のアクション時代小説。 映画にしても、若い層に受けそうなテイスト。
「小説すばる」新人賞受賞作。 オススメ度:8.1
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