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読書感想文2012 part 4

「読書感想文2012」 part3は、7月〜8月の読書録です。

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コメント  ビブリア古書堂の事件手帖 3 (三上 延著、メデイアワークス文庫)   作品の紹介 

正式タイトルは「ビブリア古書堂の事件手帖 2〜栞子さんと消えない絆〜」。
2011年3月の発売以来、大人気の「ビブリア古書堂」シリーズの第三作。
北鎌倉の古本屋、ビブリア古書堂を舞台にした三編の連作短編集。
三作目も依然としてハイクオリテイーをキープ。 マンネリになるどころか、登場人物を自然に増やしたり、人物間の
関係をさりげなくあぶり出したりのバランスが絶妙です。 この巻では、店主、栞子さんの母、智恵子の過去や謎が
掘り下げて描かれていました。 次巻以降も、物語の核心に近い謎として描かれるのでは? おススメ度:8.2
「ビブリア古書堂の事件手帖」1のブックレビューはコチラ。
「ビブリア古書堂の事件手帖」2のブックレビューはコチラ。

コメント  天地明察 上 (沖方 丁著、角川文庫)   作品の紹介 

徳川四代将軍、家綱の治世。 渋川 春海は、囲碁をもって将軍家に仕える安井家に生まれる。
偉大なる父、安井 算哲なき後、父の養子の義兄、算知が後を継いでもいいのではないかと考えている二十三歳の
青年は、算術や天体観測が気になってしかたがない。 村瀬義益率いる算術塾や、算術の天才、関孝和に刺激を
受け、ますます算術にのめりこんでいく。その一方で、村瀬の塾に土地を貸し支援している荒木家の娘、えんの
ことも意識し始める。
やがて、春海は、老中の酒井忠清から、日本各地の緯度観測を命じられ、建部昌明、伊藤重孝が率いる観測隊に
加わる。一年四カ月にも及ぶ測量の旅で、春海は天体観測や暦に関わる様々な知識を吸収する。しかし、えんは
嫁に行っていた、、、、、、。
上巻は、碁打ちの名家の跡取りとして生まれつつも、退屈な日常に倦み始めている春海の葛藤と新たな旅立ちを
描いています。比較的静かな出だしですが、読者も、春海とともに、次第に算術や天体観測に魅せられていく展開
だと思います。春海の一途さの描き方も秀逸でした。
2010年度「本屋大賞」第1位。 「吉川英治文学新人賞」受賞作。 2012年映画化。 おススメ度:8.2

コメント  天地明察 下 (沖方 丁著、角川文庫)   作品の紹介 

天体観測の旅から戻った春海は、碁の仕事を淡々と続けていたが、二十九歳のとき、十歳下のことを妻として
迎える。江戸と生家の京を往復する忙しい日々だったが、夫婦仲はうまくいっていた。やがて、春海を天体観測隊
に加えた酒井が大老に就任。春海は水戸光国とも親交を結び、以後、光国は春海の有力な後援者となる。
さらに、幕府の要であり、名君の誉れ高い会津藩主、保科正之から新しい暦づくりを依頼される。中国からもたら
された暦は八百年の時を経て、二日の誤差が生じていた。
春海は若くして、新暦づくりの責任者となり、かつての師、山崎闇斎、会津藩の盟友、安藤有益などの支援を受け、
壮大な事業を開始する。しかし、妻、ことの死、親しい人たちの死、計測の誤りなど、数々の苦難が春海に降りかかる。
それでも、春海は、使命感、亡き人たちとの約束、保科正之の思い、そして、再婚したえんに支えられ、一歩ずつ
一歩ずつ暦づくりを進める。そして、四十六歳の時、いよいよ天皇が新暦を決める運命の瞬間が訪れる、、、。
読後感が抜群にいい小説です。 この作品の魅力は、人が人を思うことの尊さ、人が人を敬うことのたいせつさが
全編にあふれていることだと思います。 今の時代には考えられないほど難事業で、世の中に大きな影響力を持つ
新暦づくりに人生を賭けた春海と仲間たちの一途さ、生きざまの美しさにぜひ触れてください。 感涙ものの作品です。
2010年度「本屋大賞」第1位。 「吉川英治文学新人賞」受賞作。 おススメ度:8.7

コメント  田村はまだか (朝倉 かすみ著、光文社文庫)   作品の紹介 

札幌のススキノのはずれにある小さなスナックバー「チャオ!」。 この店に小学校のクラス会から流れてきた40歳の
男3人、女2人が同級生である田村という男を待っている。 田村は宇都宮からクラス会に向かう途中、大雪で千歳からの
列車が遅れ、クラス会にも、2次会にも間に合わなかった。 そして、深夜の3次会では、田村と仲がよかった5人が
口々に「田村はまだか」と叫んだり、溜息をついている。 「チャオ!」のマスター、花輪も、5人が語る田村像に関心を
持ち、田村の到着を今か今かと待つのだが、肝心の田村はなかなか現れない、、、、、、。
6話からなる連作短編形式の長編小説。 1話で田村を待つ5人+マスターを俯瞰し、2話から5話で、田村を待つ同級生
たちの過去や人となりを描いていきます。 そして、5話のラストで明かされる衝撃の事実。 感動の6話。 という構成。
1話から5話までは、回想シーンはあるものの、登場人物は、お店のカウンターに座ったまま。 まるで舞台をみている
ような感じです。 もしかしたら、6話も含めて、映画というより舞台になっちゃうかも、と個人的に予想しました。
2009年 第30回「吉川英治文学新人賞」受賞作。 「本の雑誌」2011年度文庫「エンターテインメント小説」部門:第5位。
おススメ度:8

コメント  サマーレスキュー (秦 建日子著、河出文庫)   作品の紹介 

正式タイトルは「サマーレスキュー 〜天空の診療所〜」。 舞台は北アルプスの凌ヶ岳。
1972年夏。 稜ヶ岳山荘で働く小山は、山の事故で亡くなる人が絶えないことに心を痛めていた。 麓から救助ヘリに
来てもらって怪我人や病人を搬送することはできるが、山荘に医師がいないためにヘリの到着を待たずに息を引きとる
ことが多かった。 小山は、山荘のなじみ客である東京の医師たちに夏の登山シーズンだけでも山荘で患者を診てもらえ
ないか依頼するが、7人の医師すべてに断られる。 失意の小山は、山荘に帰る途中、花村という青年医師に出会う。
小山は、花村に、山荘で夏季のみの診療所を開きたいので協力してほしいと伝える。 花村は「前向きに考える」と
返答するが、その後、連絡が途絶える、、、。 しかし、一年後、入念に準備した花村が山荘の診療所で働き始める。
1992年夏。 大学病院で働く倉木は、効率優先の治療に疑問を抱いていた。 そんな時、同期の友人、沢口から聞かされた
山の診療所に興味を持ち、稜ヶ岳に向かう。 いきなり、指の腱が切れた怪我人を手術するという事態に見舞われるが、
十分な設備がない中、倉木は、看護師の平原の助けを借りて、難手術をやり遂げる。
2012年夏。 速水は、倉木の同期、沢口のもとで、心臓外科の若きエースとして腕をふるっていた。 そんな速水に倉木が
山の診療所で一週間働くことを依頼する。 沢口にも依頼され、しぶしぶ稜ヶ岳に向かった速水を待っていたのは、重篤の
患者二人だった。 救助ヘリを依頼したものの、悪天候のため、ヘリは一往復しかできない。 すなわち、二人の患者の
うち、一人しか搬送できず、速水は、どちらの患者をヘリに乗せるか究極の選択を迫られるが、決断できなかった。
麓にいる倉木の機転で先に搬送する患者が決まる。 速水は残された患者の治療に全力をつくし、事なきを得る。
しかし、東京で検査中だった速水の母親の身体に深刻な病巣が見つかる、、、。
2012年夏、テレビドラマ化された作品のノベライズ本。 ドラマの脚本家自身が小説化しています。 とは言え、テレビを
先に観てしまったので、小説は、ドラマの前日譚、エピソードその1、その2くらいの印象でした。 小説を先に読んでいたら、
作品にもっと感情移入できたと思います。 おススメ度:7.5

コメント  カラスの親指 (通尾 秀介著、講談社文庫)   作品の紹介 

46歳の武沢と45歳のテツは詐欺師のコンビ。 ともに家族をなくした過去、借金で辛酸をなめた過去を持つ。
武沢は、かつてヤミ金業者のヒグチという男を出し抜き逮捕に追い込んだが、七年たった今も、追われていた。
18歳のまひろは高校を卒業したばかり。 上野でスリをはたらいて、相手に追われる途中、偶然通りかかった
武沢とテツに助けられる。 家賃が払えず、アパートを追い出されることになったまひろは、武沢の好意で、
武沢とテツの部屋に居候することになった。 ところが、まひろの姉、やひろと、その彼氏、貫太郎まで武沢と
テツの部屋に転がり込み、ふしぎな共同生活が始まる。 武沢には、かつて、まひろとやひろの母親を自殺に
追い込んだ過去があった、、、。
やがて、武沢を追うヒグチの復讐が再開される。 ヤミ金で地獄を見たやひろとまひろも、武沢とテツに協力を
申し出て、武沢たちは、逃げるのではなく、ヒグチたちと戦う決意をする。 周到に計画を立て、いよいよヒグチ
たちのアジトに乗りこむ、、、。
物語終盤の逆転に次ぐ逆転。 作品全体がだまし絵みたいになっているつくりは、伊坂幸太郎、歌野晶午作品
にも通じるところがありました(手法は違いますが)。 ラストに関しては、(肯定が多めの)賛否両論あるかも
しれないけど、ミステリーとしては一級品。 ハラハラしながらも、肩のこらないつくりは、さすが。
「本の雑誌」2011年度文庫「国内ミステリー小説」部門:第3位。 おススメ度:8

コメント  架空の球を追う (森 絵都著、文春文庫)   作品の紹介 

表題作(「架空の球を追う」)を含む計11編を収録した短編集。
筆力のある著者ならこんなに個性的な短編が書けるんだ、という見本のような上質の作品集。
女性たちの日常と非日常の切り取り方が秀逸。 肩のこらないライトなお話から、少しシリアスなお話まで
さまざまなドラマを堪能し、感心してください。
「本の雑誌」2011年度文庫「エンターテインメント小説」部門:第7位。 おススメ度:8

コメント  ラン (森 絵都著、角川文庫)   作品の紹介 

夏目 環(たまき)、22歳。 9年前に両親と弟を事故で一度に亡くした。 中学生だった環を引き取って
育ててくれた、母の妹の奈々美叔母さんも2年前に病気で失った。 今は、大学を中退し、スーパーで
アルバイトをしている。 唯一、心を許していた自転車屋の店主、紺野も妻と息子を早くに亡くしていた。
紺野は、飼い猫のこよみに死なれ、店をたたみ、故郷に帰ることを決意する。 別れ際、紺野は環に
今は亡き息子のために用意していた自転車「モナミ1号」を環にプレゼントする。
やがて、モナミ1号に乗った環は、冥界と下界を結ぶ連絡通路「レーン」を越えて、冥界にたどり着く。
冥界で両親や弟、叔母さんに再会し、「レーン」越えを繰り返す環。 しかし、彼女が「レーン」越えを
できたのは、紺野の息子、大紀のモナミ1号に対する思いが強かったからだった、、、。
叔母に促され、環は大紀にモナミ1号を返す約束をする(ただし5か月の猶予付きで)。 しかし、モナミ1号
なしで冥界に来るには、40kmのレーンを6時間で走破する必要があった。 折りしも、市民ランナーチームに
参加したばかりの環はひょんなことからフルマラソンに出場することになり、チームメイトたちとトレーニングを
開始する、、、。
チーム主催者のいいかげんな中年男ドコロの過去が明らかになったり、アルバイト先の天敵の主婦がチーム
に加わったり、ひと波乱、ふた波乱が訪れる中、環はフルマラソンに立ち向かう、、、、、、。
森 絵都さんらしいスポーツ小説。 とは言え、スポーツ一辺倒ではなく、主人公、環の再生や成長、そして、
喪失した家族との時間を取り戻す喜びやせつなさなどが描かれていて、読みごたえ十分。
物語のラストも、希望とせつなさのバランスが絶妙で読後感もグッド。 おススメ度:7.8

コメント  浪華の翔風(かぜ) (築山 桂著、ポプラ文庫)   作品の紹介 

江戸時代、十一代将軍、家斉の治世、文政年間のお話。
大坂東町奉行所、与力筆頭、大塩平八郎に仕える芹沢藤九郎は、同僚の与力、由比政十郎の策略にはめられ、
無実の罪を背負い切腹。 九歳の娘、あやは、二十三歳の若き大坂城代、大久保教孝に引き取られ、「御城影役」
と呼ばれる密偵として育てられる。
十年後、あやは、一人前の密偵として成長していた。 ある日、大坂城の堀に捨てられた歯医者の山崎丈庵の
遺体を回収しようとした謎の一団が現れ、あやは首領と切り結ぶが、逃げられてしまう。
この事件の捜査を続けるうちに、あやは、十年前に自分の父親がはめられた事件とのつながり、さらには、大坂
の町を揺るがしかねない巨悪の存在にたどりつく。 そんなあやを助けてくれたのは、大坂の町を影の存在として
守ってきた弓月王という男だった。 十年前の父親の無念を晴らすべく、そして、主人、大久保教孝のため、大坂
の町のため、あやは、命がけで闇の悪に立ち向かう、、、、、、。
美貌の主人公、あや。 腕は立つのですが、正義感が強すぎて、無謀なところもあり、何度も窮地に立たされます。
そんな彼女を助けてくれる脇役たちの人物造形が秀逸。 もちろん、ミステリーとしても一級品でした。
「本の雑誌」2011年度文庫「時代小説」部門:第10位。 おススメ度:7.8

コメント  殺してもいい命 (秦 建日子著、河出文庫)   作品の紹介 

正式タイトルは「刑事 雪平夏見 殺してもいい命」。
ドラマと映画でヒットした「アンフェア」の原作「刑事 雪平夏見」シリーズの第三作。
警視庁捜査一課の警部補、雪平 夏見。 検挙率No.1である一方、犯人を二度射殺した過去を持つ。
仕事漬けの毎日。 バツイチ。 9歳の娘は、夫が引き取って育てている、、、。
雪平は、元夫の佐藤から再婚することを告げられるが、三か月後、佐藤は「フクロウ」と名乗る殺人鬼に殺される。
「フクロウ」は、続いてリストラを敢行中の大手企業の人事担当役員を殺害。 雪平も、相棒の安藤とともに捜査に
加わるが、手掛かりをつかめずにいた。 しかし、その直後に起きた殺人事件で、被害者の靴下の中から一枚の
写真が見つかる。 雪平は、写真に写っていた男にたどりつくために安藤たちとともに、ひとつの賭けに出る、、、。
物語は「フクロウ」の連続殺人事件を縦軸にし、横軸で一見関係のない過去の事件や現在進行形のストーカー事件
を描いていきます。 そして、終盤でそれらの事件が一気に結びつき、犯人があぶり出されるわけですが、真犯人は
意外な人物であり、ちょっと悲しいエンディングでした。 構成が緻密で、作品としてのクオリティーは高いのですが、
ちょっと話が複雑すぎると感じる読者がいるかも。 「アンフェア」ファンにはおススメしますが。 おススメ度:8
シリーズ第一作「推理小説」のブックレビューはコチラ。  シリーズ第二作「アンフェアな月」のブックレビューはコチラ。  
コメント  銀河のワールドカップ (川端 裕人著、集英社文庫)   作品の紹介 

サッカーのクラブチーム「桃山プレデターズ」は、天才の三つ子、降矢兄弟がチームを去り、六年生が四人と
いう危機的状況を迎えていた。 しかし、元Jリーガーの花島との出会いで、三つ子がチームに復帰。 快速
ドリブラーの女子、エリカも加わり、11人のメンバーがそろう。 花島コーチののびのびとした指導のもと、
チームは快進撃を続けるが、全国大会にコマを進めることができなかった。 中学受験に専念したいメンバー
が抜け、チームは再び窮地に追い込まれるが、ライバルチームから二人が加わり、今度は八人制の大会に参加。
みごとに優勝を飾り、スペインで開催される各地域の代表戦に出場する。 しかし、少年少女たちのゴールは
この大会の優勝ではなく、さらにその先にあった、、、、、、。
8人中、5人が超ジュニア級の天才プレイヤーを擁したドリームチームのお話。 でも、ロボットのようなサッカー
エリートではなく、自由にサッカーを楽しみたい個性的な選手ばかり。 コーチの花島も、そんな選手たちの気持ち
をくみとり、練習メニューに工夫を加えるものの、ゲームでは余計な口を出しません。
ゲームの描写がリアルで少年サッカーのお話とはいえ、サッカーファンをも満足させるできばえ。 予測不可能な
物語終盤を堪能してください。 おススメ度:8

コメント  8.1 Game Land (山田 悠介著、角川文庫)   作品の紹介 

計3編を収録した短編集。
「ジェットコースター」:遊園地のジェットコースターが突然、デスゲームの舞台に、、、。
「写真メール」:人間の死体を撮りたいと思っていた男がついに夢をかなえるが、、、。
「人間狩り」:隣村の人間狩りにさらされる村の若者が窮地の果てに見たものは、、、。
山田悠介さんらしい、人間の狂気、恐怖を描いた作品。 好き嫌いが分かれる作風ではあるけど、学生には
絶大の人気があります。 おススメ度:7

コメント  楊令伝 13 青冥の章 (北方 謙三著、集英社文庫)   作品の紹介 

北方「水滸伝」(全19巻)の続編。 「楊令伝」は全15巻。
金の傀儡国家、斉(さい)では、今は亡き扈三娘の兄、扈成が宰相となり、宋禁軍だった張俊が十五万の兵を率いて
斉の禁軍となる。
梁山泊は、張俊が斉に去った後の北京大名府を占領し、商業の税を一割とする。
楊令は、北京大名府を梁山泊に加えることをしなかったが、天下を狙うべきだという声も上がり始める。
岳飛は、金の総帥、完顔成の軍を再度撃破するが、簫珪材の軍に苦戦する。 お互いを好敵手と認めながらも、消耗戦
となった戦に決着をつけるため、岳飛は簫珪材に、一対一の決闘を申し出る、、、。
一方、楊令は、張俊の軍を攻撃し、大勝をおさめる。
致死軍の侯真は、青蓮寺の大物、赫元(かくげん)を捕えるが、二千五百の軍に囲まれる。
わずか四百の致死軍は、懸命に防戦し、敵陣を単身突破した戴宗の知らせによって、秦容の軍に助けられる。
岳飛は、領地が戦いで荒れていく様に耐えかね悩む。 やがて、養子の岳雲とともに旅に出て、梁山泊領内に入る。
そして、楊令、花飛麟、張平と、しばし、戦いを忘れ、語らう。
梁山泊水軍の造船部隊隊長の阮小二が、新型船の試用航海中に、南宋水軍の韓世忠に捕えられる。
すぐさま潜水隊の張敬が、項充、狄成とともに阮小二を救出するが、張敬は命を失う、、、。
岳飛は、領地を治めることに限界を感じ、南宋の禁軍になることを決意する。 岳飛についてきた二万の兵とともに
南宋の北辺の守りにつく。
青蓮寺は、梁山泊を切り崩すべく、李英に狙いをつける。 部下だった秦容にも追い越され、悶々としていた李英は
謀略にはめられ、斉の禁軍への誘いを受ける、、、。
張俊が斉に加わり、岳飛が南宋に加わり、混沌とした状況が続いた巻でしたが、印象に残ったのは、何といっても簫珪材
と岳飛の戦いでした。 まさに、漢(おとこ)と漢の真正面からのぶつかり合い。 次々と兵が減っていく悲惨な戦いである
反面、二人の将の矜持がみごとに描かれていました。 オススメ度:8.2
「楊令伝」公式サイトはコチラ。  「楊令伝」1〜4のブックレビューはコチラ。  「楊令伝」5〜7のブックレビューはコチラ。
「楊令伝」8〜9のブックレビューはコチラ。  「楊令伝」10のブックレビューはコチラ。  「楊令伝」11〜12のブックレビューはコチラ。 

コメント  楊令伝 14 星歳の章 (北方 謙三著、集英社文庫)   作品の紹介 

北方「水滸伝」(全19巻)の続編。 「楊令伝」は全15巻。
斉に迎えられた李英は、張俊のもとで将軍に任命され、二万の軍を与えられる。 姉の李媛は、脱走した李英の捜索を始める。
致死軍の候真も、李英の捜索を続けるが、手がかりをつかめずにいた。 やがて、南宋に下った岳飛と斉の張俊の軍が戦いを
始め、李英は岳飛を相手に十分な活躍を見せる。 しかし、張俊は、岳飛軍と戦うことなく、南宋に加わる。 張俊なきあと
の斉軍総帥と目されるようになった李英は、帝への拝謁の機会に、帝と宰相の扈成暗殺を試みるが、果たせずに自害する。
戴宗は、単身、扈成の屋敷に乗り込み、李英が果たせなかった暗殺を成し遂げる。
候真は、李英が謀略にはめられた裏に扈成の間者、呂英がいると狙いをつける。 苦労の末、呂英を捕えたのもつかの間、
戴宗が、李媛が青蓮寺軍に包囲されているとの知らせをもたらす。 深手を負った李媛を梁山泊に逃がす手はずをとり、候真は
自らが囮になって青蓮寺軍をひきつける。 そこに戴宗が現れ、青蓮寺軍の隊長と刺し違えて、命を落とす。 そして、李媛も
梁山泊で息をひきとった。
梁山泊では、青蓮寺の大物、赫元(かくげん)の尋問が続けられていた。 公孫勝、武松の粘り強い尋問の結果、南宋の皇太子
は、正式な血統ではなく、青蓮寺の李富と李師師の子どもであることをつきとめる。
金では、帝、呉乞買(ウキマイ)の病状が悪化する。 自らの命が残り少ないと悟った呉乞買は、ウジュを金軍総帥に指名し、
楊令を討てと勅命をくだす。
楊令が北京大名府ではじめた自由市場は斉の各地に広がり、斉の物流、経済を支配する勢いとなる。 斉に続き、南宋でも
自由市場が広がることを恐れた李富は、韓世忠に命じて、市場向けの物資が蓄えられている洞庭山を攻める。 しかし、李富の
狙いは勝利することではなく、南宋の本気を梁山泊に示すことだった。 義勇軍二万で組織された南宋軍は李俊率いる梁山泊軍
に大敗を喫する。
南宋は、さらに張俊率いる十二万の禁軍で梁山泊軍に対峙するが、花飛麟、呼延稜、秦容の五万の軍に潰走させられる。
時を同じくして、金軍のウジュが南宋の岳飛軍とぶつかるが、大敗を喫する前にウジュは兵をひく。 同じころ、金の帝、呉乞買
が亡くなる。
童猛と張横は、南宋の奇襲にあい、戦死。 阮小二も、大型船を完成させ、吐血して、生涯を終える。
休む間もなく、梁山泊と南宋との決戦が始まった。 梁山泊は、楊令以下、史進、花飛麟、呼延稜、秦容、郭盛など全軍で出撃。
南宋側も、劉光世、張俊、岳飛の三軍が迎え撃った。 梁山泊は、歩兵隊の隊長、郭盛が戦死するが、南宋側を潰走させ、当面
立ち直れないほどの打撃を与える。
大作「楊令伝」も、いよいよ残すところ、あと一巻。 戦闘が激化し、梁山泊でも、次々と戦死者が出てしまう巻でした。
楊令の理想とする国づくりが完成するのか、それとも、岳飛が楊令の前に立ちはだかるのか、予断を許さないまま、完結に向かう
わけですが、「水滸伝」の完結前と同様、もっともっとこの物語と付き合っていたい気持ちです。 オススメ度:8.5
「楊令伝」公式サイトはコチラ。  「楊令伝」1〜4のブックレビューはコチラ。  「楊令伝」5〜7のブックレビューはコチラ。
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コメント  楊令伝 15 天穹の章 (北方 謙三著、集英社文庫)   作品の紹介 

北方「水滸伝」(全19巻)の続編。 「楊令伝」は全15巻。
梁山泊は再び南宋と開戦。 秦容は岳飛と対峙し、荀響が相討ちを狙うが、岳飛に討たれる。 秦容も絶体絶命の危機を迎えるが、
駆け付けた史進に救われる。
李俊率いる水軍は杭州湾に南宋水軍を押し込める。 勝利は収めたものの、韓世忠の捨て身の攻撃により、多数の大型船を失う。
花飛麟、呼延稜、韓伯竜は江南に出撃。 韓伯竜は、一瞬の隙をつかれ、韓世忠に討たれる。
梁山泊は、大雨による洪水に襲われ、陶宗旺、段景住、蒋敬が犠牲になる。 呉用は、公孫勝とともに臨安府に潜入し、青蓮寺
の総帥、李富を暗殺するが、公孫勝が命を落とす。
金の会寧府で宰相、粘罕(ネメガ)と自由貿易の詰めを行っていた宣賛は、軟禁の上、殺される。 宣賛の救出に向かった武松も
討たれてしまう。 金は、前帝、呉乞買(ウキマイ)の遺勅に従い、反梁山泊の決断を下す。
楊令も、江南の戦線に加わり、岳飛軍を追い詰めていくが、ウジュに率いられた金軍の奇襲を受け、もう一歩のところで岳飛を
討つことができなかった。 金は、梁山泊の本塞にも軍を差し向けるが、呉用と馬霊、救援にかけつけた史進が金軍を退ける。
江南の地では、梁山泊軍が、岳飛の南宋軍と金軍を相手に、大きな犠牲を出しながらも勇敢に戦い、ついに金軍を潰走させる。
そして、楊令と岳飛の最後の戦いが始まる、、、、、、。
次々に倒れていく梁山泊の歴戦の戦士たち、そして衝撃のラスト。 やはり「水滸伝」同様、「楊令伝」もすんなり終わってくれません
でした。 個人的には、「水滸伝」よりも「楊令伝」のラストの方がせつなかったです。 とは言え、北方「水滸伝」は、第三部の「岳飛伝」
へと続きます。 梁山泊の外にいる岳飛が主人公となる第三部が、どんな展開になるのか想像もつきません。
文庫本の発売は、二年くらい先かなあ。 それまで、首を長くして待ちますよ。 オススメ度:8.7
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「楊令伝」読本「吹毛剣」の紹介はコチラ。 
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