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読書感想文2017 part 3

「読書感想文2017」 part3は、5月〜6月の読書録です。

 ↓ Click NOVEL mark !
コメント  シアター!2 (有村 浩著、メディアワークス文庫)   作品の紹介 

中堅の小劇団「シアターフラッグ」主宰にして、演出家、脚本家の春川 巧、28歳は、
300万円の借金、劇団員の脱退により、劇団存続の危機に立たされる。
しかし、プロの声優、千歳の加入により、ぬるま湯体質から脱却の兆しが見え始め、
兄の司から300万円を借りて、再スタートを切る。 司が巧に出した条件は「2年以内
に返済できない場合は劇団を潰せ」だった、、、(ここまでが第一作のあらすじ)。
司がプロデューサー的な立場となり、劇団の経営をサポートし始め、劇団員の意識
改革を図る。 劇団員たちも、司を恐れながらも、厚い信頼を寄せ、公演の収益も
上向き始める。 いろいろな問題を抱えながらも、劇団員たちのチームワークで危機
を乗り切り、300万円の借金完済が視野に入り始め、、、、、、。
主要な登場人物は司を含めて10人。 キャラクターの描きわけがほんとにみごと。
売れない劇団員たちのリアルを青春群像劇としてまとめあげる著者の筆力もみごと
のひとこと。 感情移入必至の一作。 第三作で完結の予定。
第一作のブックレビューはこちら。  オススメ度:8.4

コメント  謎解きはディナーのあとで 2 (東川 篤哉著、小学館文庫)   作品の紹介 

2011年度「本屋大賞」受賞作の第二作。 全6編を収録したミステリー短編集。
東京 国立署のお嬢様刑事、宝生麗子が宝生家の執事兼運転手、影山の名推理の
助けで次々と事件を解決していく、という第一作に続くおなじみのパターン。
今回も安定のデキばえ。 ミステリー好きではない人でもサクサク読める肩のこらない
一作。 第一作のブックレビューはこちら。  オススメ度:8.2

コメント  鹿男あをによし (万城目 学著、幻冬舎文庫)   作品の紹介 

28歳の「おれ」は大学の教授に勧められ、2学期の間限定で奈良の女子高の教師になる。
1年A組の担任となるが、生徒とのコミュニケーションがうまく取れず、途方に暮れる。
10月、「おれ」の前に神の使いの鹿が現れ、人間の言葉で話しかける。 その鹿は1,800
年前から京都の狐、大阪の鼠とともに大ナマズの力を抑え、日本を地震から守っていた。
鹿は60年に一度の「鎮めの儀式」で用いる「目」の「運び番」に「おれ」を任命する。
「おれ」は鹿の言うように動くが、狐の使い番である人物から「目」は手に入らなかった。
儀式が近づきあせる中、顧問を務める弱小剣道部の救世主として現れた受け持ちの生徒、
堀田が鹿の「使い番」であることを知る。 二人は、協力して「目」を手に入れるための
行動を始めるが、、、、、、。
すでにテレビでドラマを観ていたので大筋はわかってはいたものの、、、それでも、やはり
おもしろい。 ファンタジーをベースにしながら、ミステリー、学園、スポ根、奈良の風情など
いろんな要素をミックスさせた超エンターテイメント作品。 読後感もばつぐん。
2007年「直木賞」候補作。 2008年「本屋大賞」第8位。 2008年ドラマ化。 オススメ度:8.6

コメント  モンスター (百田 尚樹著、幻冬舎文庫)   作品の紹介 

田淵和子は、醜い顔に生まれ、いじめとあきらめの中で生きてきた。 高校で再会
した初恋の男子、英介を思うがあまり事件を起こし、地元にいられなくなる。
祖母の養子となり、鈴原未帆と名前を変え、東京の短大に進学する。 勉強に励み、
数々の資格を取得するが、就職できたのは工場の製造職。 自らの醜さを改めて
思い知らされた彼女は、24歳のとき、初めての整形手術を受ける。
やがて、SMクラブを皮切りに風俗で荒稼ぎをし、整形手術を繰り返した未帆は、
ほぼ完璧な美しい顔を手に入れる。 そして、長い間、封印してきた英介への想い
に気づき、彼の住む故郷の街にレストランを開業する。
ついに、英介との再会を果たす未帆。 妻子のある英介との出会いの結末は、、、。
整形手術の描写がとにかくリアル。 そうとう丹念に取材した結果では。
物語全体を覆う世界観はダークでせつないけれど、リーダビリティーは抜群。
これも著者の筆力のなせる技か。 オススメ度:8.2

コメント  6時間後に君は死ぬ (高野 和明著、講談社文庫)   作品の紹介 

幼いころから他人の未来の一場面が見えた圭史。 この物語は圭史が、その未来を
垣間見た女性たちのせつなさ、苦しさ、幸せを描いた計5編を収録。
表題作「6時間後に君は死ぬ」とその5年後を描いた「3時間後に僕は死ぬ」の二作は
圭史と彼が未来を見た女性、美緒が巻きこまれる事件を描くミステリー。
上記2作以外の3編も圭史の能力をベースにしたリーダビリティーに優れた佳作。
「6時間後」と「3時間後」は著者自身が監督を務め、2008年にドラマ化。
バラエティ豊かな作品が並んだお得な一冊。 オススメ度:8.2

コメント  ラブレス (桜木 紫乃著、新潮文庫)   作品の紹介 

百合江と里実の姉妹は北海道の開拓村、標茶町で極貧の家に育つ。 姉の百合江は
中学卒業と同時に薬局に住み込みの奉公に出されるが、やがて旅芸人一座に身を
投じる。 一方、妹の里実は地元に残り、理容師の道を歩み始め、釧路の理髪店に
引きぬかれる。 百合江が20代の半ばのとき、一座は解散。 一座の女形と流しで
生計を立てるが妊娠が発覚。 里実の働く釧路で娘を出産するも、その直後、男は
姿をくらます。 三年後、里実は理髪店の息子と結婚。 子どもができない中、夫が
愛人に産ませた子どもを引き取って育てることに。 百合江は公務員の男と結婚するが、
夫の借金返済のために旅館で働き始める。 やがて、旅館の宴席で歌い始め評判になる。
二人目の娘を出産するが、上の娘は、金目当てで義母と夫によって養女に出される。
里実はその後、娘を出産。 経営者の才能を発揮し、アパート経営に乗り出す。
百合江は離婚し、父の死を契機に母を引き取る。 やがて始めた洋裁店が軌道に乗る。
物語は、その後の百合江、里実姉妹、そして、二人の娘、理恵、小夜子の現在を描いて
いきます。 昭和20年代から平成にかけて、波乱万丈の人生を生きた姉妹の哀しさ、
せつなさ、絶望、希望を高い筆力で描き切った骨太の佳作。 タイトルのおしゃれさ
とはうって変わった、演歌みたいな物語。
第19回「島清恋愛文学賞」受賞作。 オススメ度:8.1

コメント  月魚 (三浦 しをん著、角川文庫)   作品の紹介 

古書業界では名の知れた老舗の古書店「無窮堂」の三代目、本田 真志喜。
真志喜のひとつ年上で25歳の瀬名垣 太一も、同じ古書業界に身を置いている。
太一の父は古書業界ではアウトサイダーの存在だったが、真志喜の祖父や組合の重鎮、
梅原に目をかけられていた。 しかし、太一が12歳の夏、無窮堂で眠っていた幻の本を
見つけだし、面目を失った真志喜の父が失踪。 太一の父も業界から足を洗う。
この夏の事件の前から兄弟のように育った太一と真志喜の交流は今も続いているが、
真志喜は太一に気を遣われているような気がしてならない、、、。
ある冬の日、太一は真志喜を誘い、山奥の村に古書の買い取りの旅に出かける。
その村で、二人の間に暗い影を起こした夏の事件が蘇るできごとが起こる、、、。
硬質なものからソフトなものまで、熱いものからクールなものまで、描き分ける著者の
実力を改めて認識した作品。 決して体温の高くない、どちらかというと静謐な世界を
描いているのだけれど、主人公ふたりのちょっとした熱さが伝わってくる感じがいい。
同時収録の短編二編も、本編の世界観をいかした好印象な仕上がり。 オススメ度:8.1

コメント  イコン (今野 敏著、講談社文庫)   作品の紹介 

人気の「安積警部補シリーズ」神南署編の長編。
パソコン通信上で話題になり新しいタイプのアイドルとなった有森恵美。
しかし、誰も彼女を観たことがなく、ライブにも顔を出さなかった、、、。
そんな有森恵美公認のアイドルとバンドのライブで、観客同士の乱闘の中、
高校2年生の男子生徒、古橋洋一がナイフで刺され死亡する。
目撃者が見つからず、捜査は難航するかに見えたが、安積班は殺された古橋の
中学時代の同級生で会場にいた男子、相川渡、阿部輝彦と女子、葉山由里子を
マーク。 さらにライブの企画が、退職した、3人の元担任、峰岸裕一であることを
知る。 安積は同じ署の交通課の同期、速水に助っ人を依頼。 速水も安積班に
加わり、捜査が始まる。 やがて、峰岸が企画した同様のライブで有森恵美にメール
で呼び出された阿部が殺害され、捜査本部が開設される。 安積は本庁 生活安全
部の同期である宇津木を捜査本部に招聘。 安積班と宇津木が捜査を続けていく中
で、有森恵美の正体、そして、殺された二人と相川、葉山の関係が明らかになる、、、。
このシリーズは第一期:臨海署、第二期:神南署、第三期:臨海署と30年に渡り
続いている著者の代表作。 本作は第二期:神南署の二作目。
正体不明のアイドルとファンという設定を巧みに使い、精緻に組み立てられた構成、
リーダビリティーが秀逸な一作。
2009年ドラマ化。 ドラマもシリーズ化。 オススメ度:8.2

コメント  神南署安積班 (今野 敏著、ハルキ文庫)   作品の紹介 

原宿の神南署を舞台にした「安積警部補シリーズ」神南署編の四作目にして
神南署編の最後の作品。 計9編を収録したシリーズ初の短編集。
45歳の警部補、安積剛志を班長とした5人の安積班の活躍を描いた警察小説。
安積の同期で交通課の速水との掛け合いも、この作品の見どころ。
同じ著者の「隠蔽捜査シリーズ」の竜崎と伊丹の同期コンビを彷彿させる。
タイトルの通り、安積班のチームワークと個々人のキャラクターにフォーカスを
あてた作品。 本作の終盤で安積班の臨海署への異動が決まる。 オススメ度:8

コメント  悲しみのイレーヌ (ピエール ルメートル著、文春文庫)   作品の紹介 

パリ警視庁のカミーユ・ヴェルーヴェン警部は、異様な手口で惨殺された二人の
女性の捜査を開始。 やがて、同一犯による過去の犯罪が次々と明らかになる。
犯罪はすべてミステリー小説の中の殺人をなぞって実行されたものだった。
カミーユは、ミステリー小説に詳しい大学教授と古書店店主の協力を得て捜査を
進めるが、新たな悲劇が彼を襲う、、、。
「その女アレックス」で海外ミステリーの話題を独占した著者のデビュー作。
「その女アレックス」同様、第一部と第二部の構成。 読者は第二部のどんでん
返しに驚愕すること必至。 二作とも、緻密な構成、圧倒的なリーダビリティー
で読者をうならせるハイクオリティーのミステリーであると思うけど、あまりにも
ダークな世界観に眉をひそめる人も少なくないのでは。 タイトルを見たとき、
いやな予感がしたけど、予想通りの救いのないエンディングはせつなかった。
「コニャック・ミステリ大賞」など四冠を達成した佳作。 オススメ度:8.2

コメント  1Q84 BOOK3 前編 (村上 春樹著、新潮文庫)   作品の紹介 

BOOK1、BOOK2と続いた青豆と天吾に加えて、BOOK3からは青豆を探す牛河の章が
交互に続いていく構成。
青豆は宗教団体「さきがけ」のリーダーを暗殺後、隠れ家となった部屋から以前、天吾
を見かけた公園を監視し、天吾が現れるのを待っている。
天吾は「空気さなぎ」の作者で「さきがけ」のリーダーの娘、ふかえりを匿い、空気さなぎ
の中の青豆に会うため、千葉の施設に入院中の父を見舞う。
牛河は「さきがけ」のメンバーから青豆の捜索を依頼され、懸命に捜査を続けるが、核心
にいま一歩のところでたどり着けないでいた。
やがて、青豆は妊娠に気づく。 直感的におなかの子は天吾の子であると確信する。
天吾は、二週間の滞在ののち、東京に戻るが、部屋にふかえりの姿はなかった。
牛河は、青豆と天吾の関係に気づき、天吾と同じアパートに部屋を借り、監視を始める。
物語が終局に向けて動き出していく感じが静かに、でも確実に伝わってくる前編でした。
BOOK1、BOOK2のブックレビューはこちら。  オススメ度:8.1

コメント  1Q84 BOOK3 後編 (村上 春樹著、新潮文庫)   作品の紹介 

青豆は彼女を匿ってくれている老婦人の部下、タマルから牛河の存在を知らされる。
その直後、天吾を尾行する牛河の姿を偶然、目にし、牛河の潜伏先のアパートに天吾が
住んでいることを知る。 青豆は、タマルに天吾への伝言を依頼し、二人は二十年という
長い年月を経て、再び巡り会う。 そして、1Q84年の世界から二人で元の世界に戻るため
この世界への入口と出口があると思われる高速道路に向かう、、、。
BOOK3は、1Q84の謎解きというよりは、青豆と天吾が再び出逢うプロセスに重点が置かれて
いる印象。 個人的にも、それでいいと思う。 驚きはないけど、納得のエンディング。
BOOK1、BOOK2のブックレビューはこちら。  オススメ度:8.2

コメント  マルドゥック・スクランブル 圧縮 (沖方 丁著、ハヤカワ文庫)   作品の紹介 

「マルドゥック・スクランブル」シリーズ三部作の第一作。
マルドゥック・シティの賭博師シェルは、15歳の未成年娼婦バロットを車ごと爆破する。
しかし、ドクター・イースターと事件屋、ウフコックが瀕死のバロットを救う。
ドクターはマルドゥック・スクランブル-09という緊急法令に基づき、法的に禁止された
科学技術を駆使した電子干渉能力をバロットに与える。 バロットは、委任事件担当官
にして万能兵器のネズミ、ウフコックをパートナーとし、シェルを告訴する。
しかし、シェルに雇われた、かつてのウフコックの相棒である委任事件担当官、ボイルドが
科学技術で改造されたボディを持つプロのヒットマンたちをバロットのもとに差し向ける。
バロットとウフコックは、ヒットマンたちを退けるが、ボイルドが自ら現れて、、、。
斬新な世界観と舞台設定、圧倒的なリーダビリティーとドライブ感。 SFファンでなくても、
骨太の作品に魅了されるはず。 「天地明察」の著者の作品とは思えない作風に驚き。
2003年「日本SF大賞」受賞作。 「ベストSF2003」国内編:第1位。 オススメ度:8.2

コメント  マルドゥック・スクランブル 燃焼 (沖方 丁著、ハヤカワ文庫)   作品の紹介 

「マルドゥック・スクランブル」シリーズ三部作の第二作。
ボイルドの襲撃を受け、バロットとウフコックは、打つ手がないところまで追い詰められる。
二人の危機を救ったのはドクターだった。 一行は、かつてドクターが属していた、かつて
の宇宙戦略実験施設、通称「楽園」に逃れる。 楽園のトップで三博士の一人、フェイス
マンはバロットを歓迎する。 ドクターがウフコックの修理を終えたころ、ボイルドが楽園を
訪れる。 バロット、ウフコック、ドクターは、間一髪でボイルドの追撃をかわして脱出する。
バロットは、シェルの犯罪の証拠となるデータが、シェルの経営するカジノの100万ドル
チップ4枚に記録されていることを楽園で探り出していた。 三人はカジノで頭脳的プレイに
より大金をを手にする、、、。
アクションたっぷり、ドライブ感たっぷりの第一作とはうって変わって、「静」の巻かなと思った
けど、カジノでの勝負のドライブ感や戦略の描き方はなかなか。 オススメ度:8

コメント  マルドゥック・スクランブル 排気 (沖方 丁著、ハヤカワ文庫)   作品の紹介 

「マルドゥック・スクランブル」シリーズ三部作の第三作。
バロット、ウフコック、ドクターは、カジノでシェルとの直接対決の結果、100万ドルのチップに
隠されたシェルの犯罪の証拠を手に入れる。 カジノを出た後、ボイルドが三人を襲撃するが、
何とか逃げのびる。 バロットが手に入れたデータにより、シェルは逮捕される。
シェルの雇い主であり、婚約者の実家でもあるオクトーバー社は、ボイルドを雇い、保釈中の
シェルを殺害しようと画策する。 そして、バロット、ウフコックとボイルドとの最後の戦いが
ついに幕を開ける、、、、、、。
SFではあるけれど、しかけに頼らず、しっかりストーリーで読ませる、独特の世界観を持った
佳作。 オススメ度:8.1

コメント  マルドゥック・ヴェロシティ 1 (沖方 丁著、ハヤカワ文庫)   作品の紹介 

「マルドゥック・スクランブル」以前のボイルドとウフコックを描いた「マルドゥック・ヴェロシティ」
シリーズ三部作の第一作。
ボイルドは、戦地で友軍への誤爆という罪を犯す。 その後、軍研究所に収容され、重力を
自由に操る生物兵器として新たな存在意義が許される。 三博士が統治する研究所では、
ボイルドと同様、戦争のための特殊能力を与えられた改造人間たちが暮らしていた。
ボイルドは、知能を持つネズミ型の万能兵器、ウフコックとペアを組み、任務に備えていた。
しかし、戦争が終結し、ボイルドたちを廃棄処分にするための部隊が研究所を襲撃する。
ボイルドは仲間と共に交戦するが、決着がつく前に停戦が成立する。 やがて、三博士から
それぞれ、兵士たちに今後の身の振り方についての提案がなされる。 ボイルド、ウフコックは
気の合う仲間たちと共にクリストファー博士と行動をともにすることを選択する。
かくして、ボイルドと6人の改造人間の仲間、そして、2匹の動物兵器、イースター博士は、マル
ドゥック・シティで法で禁止された科学力の行使を認める「マルドゥック・スクランブル-09」の
執行員としての活動を開始する、、、、、、。
「マルドゥック・スクランブル」と姉妹作でありながら、よりハードなテイストの一作。
ウフコックと心を通わせる、人間らしい面のあるボイルドが、どういうプロセスを経て、非情な
男となり、ウフコックと決別するのか、今後の展開が気になります。
「本の雑誌」2007年度 文庫「国内SF部門」:第2位。 オススメ度:8.1

コメント  マルドゥック・ヴェロシティ 2 (沖方 丁著、ハヤカワ文庫)   作品の紹介 

マルドゥック・シティのギャング、ネイルズ・ファミリーの犯罪の捜査を進めるうち、ボイルド
たちは、彼らと同じ改造人間の集団、カトル・カールと対峙することになる。
やがて、ボイルドの仲間、ハザウェイがネイルズ・ファミリーのボスの娘、ナタリアのウイルス
攻撃によって命を落とす。 しかし、一転、ナタリアが「マルドゥック・スクランブル-09」メンバー
の保護対象となり、人工授精によって、ボイルドの子を宿す。
カトル・カールとの戦いが激化する中、クリストファー博士が誘拐される、、、、、、。
「1」に続き、ハードなSFというテイストはキープしつつも、ミステリー作品としてのカラーも濃く
現れてきた第二巻でした。 オススメ度:8.2

コメント  マルドゥック・ヴェロシティ 3 (沖方 丁著、ハヤカワ文庫)   作品の紹介 

誘拐されたクリストファー博士は、カトル・カールによる拷問の末、惨殺される。
「マルドゥック・スクランブル-09」vs「カトル・カール」の戦いは激しさを増し、双方のメンバーが
次々と倒れていく。 ボイルドは、すべての事件の黒幕を暴くため、執念で捜査を続けるが、
それは相棒ウフコックとの決別をもたらす。 仲間や協力者、最愛の人を亡くし、孤独となった
ボイルドはひとりで最後の戦いへと赴く、、、、、、。
ハリウッドの映画にもできるような世界観を持った作品。 SF、ミステリー、近未来、エンター
テインメントがぎゅっと詰まった大作。 ただ、前作であり、本作のその後を描いた「マルドゥック
スクランブル」で、ボイルドが冷酷無比な非情な男となった理由にはやや納得できず。
オススメ度:8.2

コメント  百億の昼と千億の夜 (光瀬 龍著、角川文庫)   作品の紹介 

アテネのプラトンは理想の都、アトランティス滅亡の原因に大きな関心を寄せていた。
旅の途中のエルカシアの宗主から「アトランティス王国滅亡の原因はこの世の外に
ある」と聞かされる。 そして目覚めると、アトランティスの司政官オリオナエになって
いた。 アトランティスは、王であるアトラス7世とその父、ポセイドニス5世の巨大神の
命のもと、惑星開発委員会のプログラムに沿った移動に失敗し、滅亡の時を迎える。
プラトンとして再び目覚めた彼は、何かに導かれるようにTOVATSUEへ向かう、、、。
釈迦国の太子、シッダルタは四人のバラモン僧に導かれ、梵天王に会うため、兜率天
(とそつてん)へ向かう。首都TOVATSUEで梵天王から天上界が破滅に向かっており、
阿修羅王と帝釈天との4億年にも及ぶ戦いが続いていることを知らされる。シッダルタは
阿修羅王と会見し、共に、56億7千万年後に人々を救うとされている弥勒菩薩のもとへ
向かう。 しかし、そこには巨大な弥勒の像があるだけだった。 阿修羅は、シッダルタ
に、弥勒は56億7千万年後の破滅を予言し去った宇宙外の者であると告げる、、、。
ナザレのイエスはヨルダン川の川岸で予言者ヨハネと大天使ミカエルに出会う。
その後、エルサレムで12人の弟子たちと布教活動を始めるが、ローマ帝国の総督の命
で捕えられ、ユダヤ教の司教たちの非難の中、ゴルゴダの丘で磔の刑に処せられる。
イエスは天に昇り、エルサレムの人々は奇跡の目撃者となる、、、。
シッタータは、長い眠りから覚めて、3905年のトーキョーで、サイボーグとして生きなが
らえるオリオナエと出会う。 オリオナエはシッタータに、1,000年前から全宇宙でエネル
ギーの低下が進んでいることを告げる。 さらに、7,000年前に宇宙の果てからやってきた
生命体が「アスタータ50における惑星開発委員会は『シ』の命を受け、アイ星域第三惑星
にヘリオ・セス・ベータ型開発を試みることになった」と伝える。 そこに、惑星開発委員会
において地球の開発管理官となったナザレのイエスが現れ、二人を襲う。
さらに阿修羅王も姿を現し、シッタータとともにイエスを迎え撃つ。 イエスは亜空間に
逃げ込み、シッタータ、阿修羅王、オリオナエも亜空間に向かう、、、。
三人がたどりついた先は、アスタータ50だった。 この星の都市、ZEN-ZENは、都市として
の機能を失い、市民はコンパートメントと呼ばれる生命維持装置で眠りについていた。
そして、すべてのコンパートメントは苦痛や死を共有する「群体」だった。
三人は、地球だけでなくアスタータ50におけるヘリオ・セス・ベータ型開発も失敗に終わった
ことを悟る。 そして、最終目的地、惑星開発委員会に向かう、、、。
惑星開発委員会のビルに現れたイエスに、阿修羅王は委員会の意図や狙いを理解して
いたと告げる。 次に姿を現したMIROKUは阿修羅王、シッタータ、オリオナエに「使命を
与えたのは誰か」と問う。 三人の旅は最終局面を迎え、使命を与えた存在を知る、、、。
先に萩尾望都さんが描いた漫画版を 読んで、その世界観に圧倒され、いつか原作を
読みたいとずっと思っていた思い入れの強い一冊。
「日本のSFの最高傑作のひとつ」と評価されるだけのことはある大作。 スケール、着想、
世界観すべてが超ハイクオリティー。 でも、漫画を先によんでおいてよかった、と思った
のも確か。 そんなことはめったに思わないけど、この作品に限れば、やや難解な原作を
理解するのに漫画版はかなり有効。 萩尾望都さんだからできた技であるとは思うけど。
あと、原作を読んで漫画版に対する理解が深まったのも事実。
欲を言えば、個人的には、もう少し明確で救いのあるラストにしてほしかったなと思う。
SFマガジン「SFオールタイムベスト(1989年版)」国内部門:第1位。 オススメ度:8.2

コメント  金曜のバカ (越谷 オサム著、角川文庫)   作品の紹介 

若者に人気の著者の短編5編を収録した作品。
表題作は、護身術をイヤイヤ学ぶ女子高生をストーカーみたいに恋するニートの
青年とのおバカな5番勝負を描いた一作。
個人的には2作目の「星とミルクティー」がおススメだけど、全体的に若者テイスト
全開。 著者のファンの高校生向きの一冊かな。 オススメ度:7.8

コメント  サイコパス (中野 信子著、文春新書)   作品の紹介 

かつてはシリアルキラーなど反社会的人格を説明するために使われてきた概念である
サイコパス。 しかし、近年、脳科学の進歩により、サイコパスの正体が徐々に明らかに
なりつつある。 本書は脳科学の視点から「サイコパス」を新鮮に解説した一冊。
ややアカデミックな語り口ではあるけれど、サイコパスとは、他者に対する共感性や「痛み」
を認識する部分の働きが弱い人であることが語られている。 サイコパスとは必ずしも冷酷
で残虐な犯罪者ばかりではなく、大企業のCEO、政治家、弁護士、外科医など、大胆な決断
をしなければならない人たちにその傾向の高い人が多いという研究結果もある。
およそ100人に1人の割合で存在すると言われるサイコパス。 サイコパス的な傾向を持つ
と日ごろから自覚しているだけに、話題の本作を速攻でゲット。 この本を読んでわかった
のは、自分にはサイコパス的な一面はあるものの、行動面ではそうではないということ。
自分なりのこじつけかもしれないけど、サイコパス的な一面があると自覚している人間には
アドラー心理学が有効だと思う。 オススメ度:7.8

コメント  女の機嫌の直し方 (黒川 伊保子著、インターナショナル新書)   作品の紹介 

男女の脳の違いをもとに、女性の機嫌の直し方を解説した一冊。
女性は会話にプロセスと共感を求め、男性は結論と問題解決を求める。
女性は、「こわい」、「ひどい」、「つらい」のストレスが男性よりも強く働き、長く残る。
女性のストレスは、共感されることによって、解消に向かう。
女性は近くを見て、男性は遠くを見る。 女性は主観を語れるが、男性は気持ちを語れない。
女性は、他の女性の体験に共感することによって、擬似体験の記憶が残る。 その記憶を
時間が経っても取り出せる。 だから歳とともに臨機応変に対応でき、判断に迷いがなくなる。
女性から提案があったとき、男性はいきなり問題点を指摘してはいけない。 女性が男性に
提案するのは「共感」を求めているから。
女性のモチベーションを上げるのは、「成果」をほめるよりも「経過」をねぎらう方が効果的。
女性の機嫌を損ねたら、言い訳せずに「女性の気持ちに言及して真摯に謝る」のがベスト。
なんてことを時には学術的な解説を交えながらも、会話例をもとに具体的にわかりやすく指南
してくれる一冊。 肩の凝らない文章だし、170ページの分量なので、あっという間に読めて
しまいます。 二度読みもOK。 オススメ度:8

コメント  岳飛伝 6 転遠の章 (北方 謙三著、集英社文庫)   作品の紹介 

岳飛は南宋の首都、臨安府に出頭し、宰相の秦檜、帝の趙構と会見する。 秦檜は岳飛
を南宋軍に取りこみ、軍の総帥になるよう要請するが、岳飛は軍閥であることにこだわる。
まもなく岳飛は監禁され、謀反の罪で死罪を言い渡される。 一方、梁山泊では燕青の指揮
のもと、致死軍の候真、羅新が岳家軍の于才とともに、秦檜と裏交渉を始める。
燕青は、南宋の皇太子が正統ではない証拠と引き換えに岳飛の身柄をもらいうける。
岳飛を解放後、南宋は一万五千の軍で再び捕獲を試みるが、致死軍に一蹴され、岳飛は、
かつての部下、姚平とともに、南の国、大理をめざす。
秦容の指揮のもと、南の開墾地では、九百人の人間が甘藷糖の精製、開墾、製鉄、交易に
励んでいた。 さらに、法の整備、貨幣の流通も始まり、小さな国としての体裁が整いつつ
あった。 やがて、秦容は、黄鉞、伍覇とともに象の河を遡り、蒲甘(パガン)の国王に謁見する。
李俊の率いる水軍もいよいよ本格始動の時期を迎えていた。 水軍の要である項充と趙林も
南の地の造船所に到着する、、、。
梁山泊による岳飛救出という本作前半の最大のクライマックスは、軍同士の戦いとはひと味
違った緊迫感があり、一気読み必至。 致死軍の久々の活躍のくだりもグッド。
オススメ度:8.2

コメント  岳飛伝 7 懸軍の章 (北方 謙三著、集英社文庫)   作品の紹介 

南宋では李師師のもと、青蓮寺が秘密裏に動きを活発化し始めていた。
一方、南宋水軍は韓世忠のもと、着々と軍備を増強、梁紅玉を妻に迎える。
秦檜は、日本との交易も視野に入れ始め、梁紅玉を博多津に向かわせる。
梁山泊に救出された岳飛は姚平とともにメコン河沿いの土地に腰を落ち着け、岳家軍
を再興。 やがて28名の兵士が、続いて300名が岳飛のもとに駆けつける。
さらに、梁山泊の王貴が岳飛の娘、崔蘭、息子の崔達、崔史を送り届ける。
西域では、韓成が西の部族を西遼に帰順させることに成功する。
南の開墾地は、水軍を加え、2千人の規模に拡大。 秦容は早くも10万人規模の町を
構想し、小梁山と名付ける。 李俊は、来るべき南宋水軍との戦いに備え、新型船の
建造を進めていた。 張朔は、秦容、李俊のもとを訪れた後、父、張清を討った岳飛の
もとに向かう、、、。
岳飛軍の再興、そして、小梁山の発展を描いた巻。 終盤の岳飛と張朔の対面の場面
は、じーんと来ました。 オススメ度:8.2

コメント  蘭陽きらら舞 (高橋 克彦著、文春文庫)   作品の紹介 

「だましゑ歌麿」シリーズの第四作。 計12編を収録した連作短編集。
この巻の主人公は、十年ぶりに芝居の世界に復帰することになった女形の蘭陽。
第三作の主人公、若き日の葛飾北斎である春朗とふたりで江戸の難事件、怪事件を次々と
解決していく。 二人の他にも北町奉行所 筆頭与力の仙波、仙波の妻のおこう。仙波の父、
左門、平賀源内、勝俵蔵(後の鶴屋南北)などおなじみの人物が脇をかためるシリーズの
ファンの読者にはうれしい趣向。
事件の解決とともに、蘭陽の初恋の謎、決着の行方の描き方もみごと。
第三作のブックレビューはこちら。  オススメ度:8.2

コメント  源内なかま講 (高橋 克彦著、文春文庫)   作品の紹介 

「だましゑ歌麿」シリーズの第五作。 計10編を収録した連作短編集。
この巻の主人公は、隠れ暮らしていたが、幕府の許しで、再び世間を歩けることに
なった平賀源内。 前作に続き、春朗と蘭陽が大活躍。 源内に従い、源内の生まれ
故郷である讃岐への旅を中心に描いた巻。
旅の途中で、近松余七こと重田市九(後の十辺舎一九)や役者を目指して蘭陽の弟分
となる鬼若など、新しい登場人物が物語に華を添える。
巻ごとに主人公が変わるが、おなじみの登場人物がシリーズ感を巧みに紡いでいる
出色の作品。 次作もたのしみ。 オススメ度:8.2

コメント  涅槃の雪 (西條 奈加著、光文社文庫)   作品の紹介 

町与力の高安 門佑は、五年前に妻に先立たれヤモメ暮らし。 新任の北町奉行、
遠山景元に気に入られ、仕事に励む毎日。 そんな中、岡場所の手入れの際に
捕えた遊女のお卯乃を遠山の差配により屋敷に引き取ることになる。
さらに、苦手な二歳上の姉、園江が離縁の末、実家に戻り門佑は頭を抱える。
園江のもと、お卯乃に行儀見習いをさせるうち、門佑とお卯乃は互いに親しみを
おぼえるようになる、、、。
しかし、老中、水野忠邦が推進する天保の改革は、苛烈を極め、江戸の人々の暮らし
を経済的にも精神的にも蝕み始めていた。 盟友の南町奉行、矢部とともに、遠山は
強硬に水野に立ち向かうが、水野は改革の手をゆるめることなく、矢部を罷免。
南町奉行の後任として冷徹な能吏、鳥居を指名する。 逆風の中、門佑は遠山を支え、
懸命に役目につとめるが、、、、、、。
門佑の役人として、男として、人としての矜持、葛藤を描き切った佳作。
遠山の人物造形はもちろん、天保の改革をめぐる水野、鳥居のキャラクターの描き方
も秀逸。 この著者の作品をもっと読みたくなりました。
2012年「中山義秀文学賞」受賞作。 オススメ度:8.2

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