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読書感想文2016 part 1
「読書感想文2016」 part1は、1月〜2月の読書録です。
↓ Click NOVEL mark !
木暮荘物語 (三浦 しをん著、祥伝社文庫)
作品の紹介
小田急線の世田谷代田駅から徒歩5分、築数十年、全6室のアパート木暮荘。 老大家、木暮と
女子大生の光子、サラリーマンの神崎、花屋の店員 繭の4人が暮らしている。
計7編の連作短編の体裁をとった作品。 章ごとに主人公がかわり、住人の4人の他に、住人の
まわりの人たち(繭の元カレやお店のお客さん、店主。光子の友人など)が絶妙の距離感で登場。
登場人物たちは、それぞれ性や愛に関する悩みを抱えているが、まわりの協力で、なんとなく解決
の方向に向かっていく、、、、、、。
三浦しをんさんは、何を書いても、ほんとに巧いと改めて感心。 各編のつながりも秀逸。
2015年度「本の雑誌」文庫「総合部門」:第5位。 オススメ度:8.4
ビブリア古書堂の事件手帖 5 (三上 延著、メディアワークス文庫)
作品の紹介
正式タイトルは「ビブリア古書堂の事件手帖 5 〜栞子さんと繋がりの時〜」。
北鎌倉の古本屋、ビブリア古書堂を舞台にした大人気の古書ミステリー。
ビブリア古書堂の店員、大輔は、意を決して、店主、栞子に自らの想いを告白する。
しかし、栞子の答えは、時間がほしい、というものだった。 栞子は、大輔に返事をする前に、母、智恵子に
確認したいことがあった。 栞子は、周囲の人たちに依頼して母にコンタクトをとろうと試みるが、うまくいか
ないまま、時が過ぎていく。 その間も、智恵子が裏で手を引く古書にまつわる謎を解く依頼に向かっていく。
本書の終盤、ついに栞子は大輔に返事をします。 しかし、二人の前に新たな事件の予感が、、、、、、。
2年ぶりにビブリア・シリーズを手にしましたが、あいかわらず高いクオリティーをキープしていました。
物語は、いよいよ終盤にさしかかってきた予感。 次作が楽しみです。
「ビブリア古書堂の事件手帖 1」のブックレビューはコチラ。
「ビブリア古書堂の事件手帖 2」のブックレビューはコチラ。
「ビブリア古書堂の事件手帖 3」のブックレビューはコチラ。
「ビブリア古書堂の事件手帖 4」のブックレビューはコチラ。
オススメ度:8.4
ボーダー (垣根 涼介著、文春文庫)
作品の紹介
人気シリーズ「ヒート アイランド」の第4作(ヒートアイランドW)。
かつては、渋谷No.1のチーム「雅」を率いていたアキとカオル。 ある事件をきっかけにチームを解散して
3年。 リーダーのアキは、裏金強奪のプロとなり、サブリーダーのカオルは、東大生になっていた。
カオルは、友人からアキとカオルの偽者が渋谷でファイト・パーティーを開き、金儲けしていることを聞く。
このパーティーがきっかけで、警察が3年前の事件の真相にたどりつくことを危惧したカオルは、アキに
連絡をとる。 やがて、二人は、アキの裏稼業の仲間、柿沢と桃井とともに、問題解決に乗り出すが、予想外
の事態が発生する、、、、、、。
第4作になっても、パワーが衰えることなく、リーダビリティー抜群の出来。 「君たちに明日はない」もそう
だけど、この作家は、シリーズものの書き方がホントにうまいと思います。
第1作「ヒート アイランド」のブックレビューはコチラ。
第2作「サウダージ(ヒートアイランドV)」のブックレビューはコチラ。
第3作「ギャングスターレッスン(ヒートアイランドU)」のブックレビューはコチラ。
オススメ度:8.4
ストーリー・セラー (有川 浩著、幻冬舎文庫)
作品の紹介
「Side:A」と「Side:B」、ふたつの中編を収録。
「Side:A」は、複雑な思考をすればするほど脳が劣化し、やがて死に至る不治の病を患う作家の女性と
彼女を献身的に支える夫のお話。 生きたければ、作家を辞めるしかないが、妻は作家を辞めることなく、
いちばんの読者である夫のため、自分のため、最期の瞬間まで書き続ける、、、、、、。
「Side:B」は、作家の女性の夫が癌に侵され、いちばんの読者である夫を献身的に見守るお話。
単行本として発売されたときは「Side:A」のみを収録。 作品のデキとしても「Side:A」の方が上。
せつないお話だったけど、きりっとした夫婦の愛のカタチが見事に描かれていて感涙。
オススメ度:8.2(「Side:A」だけなら8.4)
生存者ゼロ (安生 正著、宝島社文庫)
作品の紹介
北海道根室半島沖に浮かぶ石油掘削基地で職員全員が無残な死体となって発見される。 救助に向かった
陸上自衛官三等陸佐の廻田は、皮膚が溶解し血まみれになった異様な死体の山を目の当たりにし、茫然
とする。 この事態を受けて、政府は天才感染症学者の富樫博士に問題解決を依頼するが、元同僚でかつて
富樫を失脚させた鹿瀬の謀略でプロジェクトから外される。 その後、感染は拡大せず、事態は終息したか
に見えたが、九ヶ月後、北海道の中標津で同様の事態が発生し、町は壊滅する。 廻田は、現地に調査に
向かい、前回と同じ惨状を目にした。 その直後、廻田は、自衛隊独自の調査を命じられる。
富樫の存在を恐れる鹿瀬は、富樫のコカイン常用を警察に密告。 富樫は逮捕され、八王子の治療施設に
送られる。 七週間後、道東の広い範囲で三たび感染が広がり、政府はパニックに陥る。
廻田は、若き生物学者、弓削亜紀の協力を得て、ついに事態の謎を解明するが、、、、、、。
壮大なスケールのパニック小説。 500ページ近い大作だけれど、リーダビリティーも秀逸。 映画的な
エンターテインメント色もたっぷり。 事態の謎ときと自衛隊が存亡をかけて戦う終盤の描写が圧巻。
2012年度「このミステリーがすごい!」大賞受賞作。 オススメ度:8.2
キング誕生 (石田 衣良著、文春文庫)
作品の紹介
人気シリーズ「池袋ウエストゲートパーク」の外伝的な青春篇。
本編の主人公、マコトのいちばんの親友にして池袋のキング、タカシの物語。
高校2年の夏、タカシの兄、タケルは、池袋のチームをまとめあげ「Gボーイズ」を結成する。
タケルは、ボクシングでインターハイの準優勝を勝ち取るファイターだったが、その人柄から
みんなに慕われる「陽」のタイプのボスだった。
一方、やりたいこともなく、未来も見えない弟のタカシは、マコトとともに興味半分で手を
出した裏のバイトでトラブルを起こし、それが原因となり、タケルにケガをさせてしまう。
そんなとき、タカシの母が亡くなり、埼玉のチームの双子のボスがタケルを襲撃する。
タカシは、氷のような表情に変わり、兄の敵を討つべく立ち上がる、、、、、、。
IWGP(池袋ウエストゲートパーク)ファンなら、必読の一冊。 シンプルな骨太の作品。
オススメ度:8
シューカツ! (石田 衣良著、文春文庫)
作品の紹介
一流私大の3年生、水越千晴は、難関のマスコミ就職をめざす個性豊かな仲間6人とともに「シューカツ
プロジェクトチーム」を結成。 千晴の第一志望は出版社だが、まずはテレビ局のインターンに無事合格。
仲間の恵理子とともにワイドショーの制作チームで大奮闘。 夏の就活合宿、仲間からの告白、仲間の
就活うつなどさまざまなことを乗り越えながら、いよいよ出版社とテレビ局の選考が始まる、、、、、、。
リーダビリティーは一級品。 ストーリーとしてもおもしろかった。 けど、改めて、マスコミの就職試験
の異常ぶりにちょっと引いてしまったかも。 オススメ度:8.1
明日のマーチ (石田 衣良著、新潮文庫)
作品の紹介
不況の影響で、山形のカメラ工場を解雇された陽介、伸也、イズミ、修吾。 4人は年収二百万の派遣
社員だった。 東京に戻っても仕事のあてはない。 とはいえ、陽介、伸也、イズミは、新幹線で東京に
戻ろうとするが、修吾は東京まで野宿しながら600kmの道のりを歩くと言う。 陽介たち3人は、修吾に
ついて、東京まで歩き始める。 徒歩と野宿のマスター、修吾のおかげで、どうにか旅を続ける4人。
やがて、ITオタクの伸也が始めた「明日のマーチ」がネット上で話題となり、マスコミからの取材が入る。
4人は一躍、派遣切りにあった若者のシンボルとなり、マスコミの寵児となるが、修吾の過去が暴かれ、
一転、バッシングを受け始める。 それでも、メンバーの結束をかため、東京をめざす4人に賛同者が
増えていき、事態は思わぬ方向に、、、、、、。
派遣切りが始まる物語だけれど、ロードムービーさながらの展開は、エンターテイメント色たっぷり。
4人の人物造形も秀逸で、400ページを一気読み。 オススメ度:8.2
夢を売る男 (百田 尚樹著、幻冬舎文庫)
作品の紹介
出版社である丸栄社の牛河原は、やり手の編集長。 文芸賞の応募者たちに「あと一歩のところで大賞を
逃したが、共同出資のかたちで著書を出版しないか」と言葉巧みに持ちかける。 自作の出版を夢見る
応募者たちは、次々と二百万の金を差し出していく。 とはいえ、デキのいい作品でもなく、わずかな数
の書店にしか並ばない本が売れるはずもない。 そんな著者たちのクレームも、牛河原は、あの手この手
でかわしていく。 しかし、快進撃を続ける丸栄社に思わぬライバルが出現する、、、、、、。
共同出版という名の「自費出版」ビジネスの裏側をあますことなく暴露した一作。 ときどき新聞広告で
見かける「あの出版社」のやり口はこうだったのか、と膝を叩きました。 決して褒められることをしている
わけではないけど、なぜか牛河原を憎めない読者も多いのでは? オススメ度:8.2
珈琲店タレーランの事件簿 2 (岡崎 琢磨著、宝島社文庫)
作品の紹介
正式タイトルは「珈琲店タレーランの事件簿 2 彼女はカフェオレの夢を見る」。
京都市内でひっそりと営業を続ける珈琲店「タレーラン」を舞台にした人気シリーズの第2作。
店を切り盛りするバリスタの切間 美星(きりま みほし)のもとに夏休み中の妹、美空がやってくる。
美空は、外見も性格も、姉の美星とは正反対。 美空は、すぐに帰る予定を急遽、変更し、店でバイト
を始める。 美星は、美空がないしょで誰かに会っているらしいと気づく。 そして、店の常連で美星に
好意を寄せるアオヤマも巻き込んだ大騒動の幕が上がる、、、、、、。
第一作のテイストを引き継ぎ、パワーダウンせずに、世界観を広げることに成功しているという印象。
謎だった美星の過去が明らかになり、アオヤマとの関係も発展。 次作に期待。
「珈琲店タレーランの事件簿 1」のブックレビューはコチラ。 オススメ度:8.2
Nのために (湊 かなえ著、双葉文庫)
作品の紹介
同じアパートの住人として知り合った大学生の杉下希美(のぞみ)、安藤望(のぞみ)、西崎真人(まさと)。
杉下と安藤は、石垣島への旅行で、大手商社社員の野口貴弘と妻の奈央子と懇意になり、旅行後も交流が続く。
やがて、安藤は、野口の会社に就職し、野口の部下となる。 奈央子が精神的に弱っていることを知った希美は、
有名フレンチレスランでバイトをしている成瀬慎司にケータリングを依頼し、野口夫妻の部屋でパーティーを企画
する。 当日、奈央子と不倫関係にあった西崎は、花屋を装い、バラを届け、奈央子を連れ出そうとするが、貴宏
に見つかってしまう、、、、、、。
成瀬が部屋に到着したとき、見たものは野口夫妻の死体が発見だった。 遅れてパーティーに向かった安藤は、
部屋に入ることなく、警察が駆けつける。 西崎が、奈央子を刺した貴弘を、自分が撲殺したと自白。 西崎が逮捕
され、事件は決着する、、、、、、。
というのが、物語序盤(第一章)の展開。 第二章以降は、イニシャルNの四人の関係者が事件の真相を回想する
かたちをとっています。 徐々に明らかになる事件の真相。 物語の構成は、緻密ですばらしいけど、もう少し救い
があってもいいのでは?と思ってしまいました。 2014年ドラマ化。 オススメ度:8
スローモーション (佐藤 多佳子著、ピュアフル文庫)
作品の紹介
高校1年の柿本千佐。 父は再婚で、前の奥さんとの間にできた兄、22歳のニイちゃんがいる。
ニイちゃんは、バイクで大事故を起こし、左足が少し不自由になった。 今は、実の母から小遣いをもらい、
無職でぶらぶらしている。 千佐は、最近、すべての動作がスローな及川周子のことがとても気になる。
とはいえ、同級生たちはみんな周子のことを無視し、なかなか彼女に近づきにくい。 ところが、千佐は
周子とニイちゃんの意外な関係を知ることになり、、、、、、。
普通の女子高生、千佐が、周りから一線を引いた世界で生きる二人−周子とニイちゃん−を見つめ、見守り、
ともに笑い、泣いた季節を描いた物語。 著者の初期の作品。 どちらかというと、学生から20代女性向き
のお話かも。 オススメ度:7.8
世の中は偶然に満ちている (赤瀬川 原平著、筑摩書房)
作品の紹介
芥川賞作家(尾辻克彦の名で受賞)である著者の偶然と夢が綴られた日記と小説。
第一章が1977年(40歳)から2010年(73歳)までの偶然日記。 第二章は偶然小説、2編を収録。
とはいえ、小説というよりも著者が体験した偶然をまとめたエッセイに近い体裁のもの。
公私ともに「偶然」に興味を持ち始めた矢先、新聞で偶然、本書の書評を目にして購入。
本書の最後のほうに、「偶然」とは人間的なもの、人間的な現象である、と書かれてあり、
あたりまえのことと思いながらも、妙に納得。 自分としては、人は、けっこう、偶然の中で
生きていて、時には偶然に導かれるように道が開けることがある、と考えているわけです、最近。
個人的には、偶然を必然ということばに置き換えるのは好きではありません。 オススメ度:8
蜩(ひぐらし)ノ記 (葉室 麟著、祥伝社文庫)
作品の紹介
豊後羽根藩の檀野庄三郎は城内で刃傷沙汰をおこし、家老から切腹と引き替えに向山村に幽閉中の元郡奉行、
戸田秋谷の元へ遣わされる。 秋谷は七年前、前藩主の側室との密通、そして小姓を斬った罪を犯したが、
家譜編纂の仕事を続けるため、十年後の切腹を命じられていた、、、。
庄三郎は、家老から、家譜編纂の補助と監視、秋谷の密通事件の真相解明を言い渡される。 しかし、秋谷と
彼の家族と暮らすうち、無実を信じるようになる。
やがて、秋谷と庄三郎は、藩の重大な秘密の核心に近づいていく、、、、、、。
秋谷の清廉な心根を描ききった一作。 切腹の日が決まっているにも関わらず、取り乱さず、命乞いをすることも
なく、人として正しい道を歩み続ける主人公の生き方が感動的。
2007年「直木賞」受賞作。 2014年映画化。 2015年度「本の雑誌」文庫「時代小説」:第2位。 オススメ度:8.2
こころげそう (畠中 恵著、光文社文庫)
作品の紹介
下っ引きの宇多(うた)は22歳。 8人の幼なじみに恵まれ、今でもなかよくしていた。
ところが、千之助と於ふじの兄妹が、神田川で溺れ、死んでいるのが見つかる。
事故なのか、殺されたのかもわからないまま、ふた月が過ぎたころ、於ふじが幽霊となって現れる。
宇多は、於ふじの力を借りて、さまざまな事件を解決するが、残された幼なじみたちの恋は、なかなか
前に進まない、、、、、、。
「しゃばけ」の著者が描く、青春×恋愛×ミステリー時代小説。 いい意味で、「しゃばけ」とは、ひと味も
ふた味も違ったミステリー。 なかでも、宇多の幼なじみたちのせつない恋の描写が秀逸。
オススメ度:8.4
先生のお庭番 (朝井 まかて著、徳間文庫)
作品の紹介
長崎の植木屋で修行中の熊吉は15歳。 突然、出島のオランダ商館への奉公を命じられる。
仕えるのは、商館の医師、シーボルト。 熊吉の仕事は、薬草園をつくることだった。
熊吉は努力の末、薬草園を完成させ、シーボルトと妻のお滝の信頼を得る。
やがて、元の奉公先を離れ、シーボルト直属の奉公人となった熊吉は、シーボルトのため、
日本の草花を集め、船でオランダに届ける工夫を重ねる。 しかし、シーボルトに心酔し、
大好きな仕事に打ち込める熊吉の幸せな日々が、やがて終焉を迎える、、、。
一級品のお仕事小説にして、青春・成長小説でもある作品。 シーボルト、妻のお滝はじめ
登場人物たちの心根の描き方、人物造形が秀逸。 直木賞作家の作品でありながら、本作は
それほど知られていないかもしれないけど、とんだ掘り出しもの。 オススメ度:8.4
ぬけまいる (朝井 まかて著、講談社文庫)
作品の紹介
一膳飯屋の娘、お以乃。御家人の妻、お志花。小間物屋の女主人、お蝶。 若いころは「馬喰町の
猪鹿蝶」と呼ばれた三人も二十八歳。 それぞれに悩みを抱えた三人は、お志花の発案で、突如、
仕事も家庭も放り出し、お伊勢詣りに旅立つ、、、、、。
江戸から伊勢まで、三人が巻き起こす涙と笑いの騒動の数々。 旅の風景や出会った人たちの人情
以外にも、お以乃の恋、お志花が旅立ったわけ、お蝶の浪費ぐせなど、見どころ満載。
いろんなお話を書き分ける著者の面目躍如の一作。 オススメ度:8.1
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